徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『上と外』上・下巻(幻冬舎文庫)

2017年11月06日 | 書評ー小説:作者ア行

『上と外』の上・下巻はかなりの分量なんですが、読み出したら止まらなくなって、読み終わった時は朝の6時でした。昼間寝てばっかりだったので眠くなかったとはいえ、さすがに4時過ぎたあたりから疲労を感じてましたが。。。

『上と外』は恩田作品にしては毛色が変わっていて、ひと言でいえば冒険小説です。両親の離婚によってばらばらになった家族が年に一度集まる夏休みで、考古学者である父の滞在するG国へ中学生の練、妹の千華子、母の千鶴子が行き、取りあえず複雑な家族ドラマを展開させるのですが、マヤの遺跡を見るためにヘリコプターで遠出した矢先にクーデターに巻き込まれ、ヘリコプターを操縦していた軍人が進路を変えてしまいます。そして、何の因果か連と千華子はジャングルの中へ振り落とされてしまいます。そこからこの二人のジャングルサバイバルが始まります。

二人が無事に戻れるだろうことは予想できますが、どこまでひどい目に遭い、どのように救出されるのかは分かりませんのでハラハラドキドキしながら読めます。しかも誰も居ないと思われていたジャングルの中の神殿風の遺跡になにかあるいは誰かが居る気配がし出して、一気に緊張感が高まります。さて彼らがどんなことに巻き込まれていくのか?それは読んでからのお楽しみ

下巻では連と千華子まで離れ離れになってしまい、地震と火山の噴火も相俟っていよいよ事態は深刻になっていきます。こんなサバイバルゲームを体験すれば多感な少年少女が精神的に成長するのは当然とも言えますが、親の方も子どもたちと突然引き離されてしまうことでいろいろと反省します。特にかなり身勝手でわがままな母・千鶴子の自己分析がなかなか興味深いですね。

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