徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:有川浩著、『三匹のおっさん』(文春文庫)&『三匹のおっさん ふたたび』(講談社文庫)

2016年05月26日 | 書評ー小説:作者ア行

注文した時は気づきませんでしたが、『三匹のおっさん』とその続編の『三匹のおっさん ふたたび』の出版社が全然違ってました。まさか複数の出版社から出てるとは思わなかったので、よく確認もせず買ってしまいました。失敗、失敗。どうせなら同じ出版社で揃えたかったのですが、まあ仕方ありません。

さて、この『三匹のおっさん』シリーズの主人公は3人の還暦を過ぎたじーさんたち。かつての「三匹の悪ガキ」は還暦を迎え「じじいの箱に蹴り込まれてたまるか」と町内自警団を密かに結成し、町内の悪を糾すべく夜回りを開始。剣道家にしてアミューズメント施設の嘱託職員キヨこと清田清一、柔道家にして居酒屋元店主シゲこと立花重雄、そして工場経営を現役で続けている頭脳派ノリこと有村則夫の三匹に加えてキヨの孫祐希とノリの娘早苗が絡んで大活躍します。三匹が出くわす事件は、アミューズメント施設の店長による売り上げ横領であったり、頻出する痴漢であったり、「初恋の相手だった」と老婦人に言い寄って信頼関係が築けた頃に何か同情を引く話でお金を引き出させる詐欺であったり、お年寄りの孤独な心に付け込んで強引な手口でバカ高いものをかわせる悪徳商売であったり、いろいろですが、概ね身近に起こりそうなことで、それらをちょっと頭を使って、あるいは腕っぷしに頼って痛快に解決してきます。

それぞれの夫婦関係や親子関係などもリアルに暖かく描写されていて、ちょっとほっこりしてみたり。祐希と早苗ちゃんも高校生らしく少しずつ親しくなって、やがてお付き合いする関係に進んでいくのですが、この二人は今時の子にしては真面目で奥手なんでしょうね。思わずフフッとにやついてしまう初心さ加減です。

続編の方では、時系列では『三匹のおっさん』の1年後くらいで、親世代、すなわち三匹のうちの二匹の息子とその嫁の登場場面が増えます。70万もする浄水器を買って、クーリングオフする羽目になった貴子さん(キヨの息子の嫁)もパートを始めてから常識的な金銭感覚を身に着けて、パート先でトラブりますがしっかりと対応できるように成長しています。旦那の健児さん(キヨの一人息子)もお祭りのための寄進を勤め先の銀行から取り付けるなどお手柄を立てたりします。町内のお祭り再開のエピソードではシゲの息子が実行委員会の代表を務めたり。とある町内会長とトラブりますが、スカッと解決とはいかないまでも、次回はましになりそうな感じで収まってます。最終話では通称『偽三匹』のやはり還暦を過ぎた三人組が登場して、ひと悶着起こります。こちらもまあそこそこ丸く収まります。

何はともあれ、還暦を過ぎた「おっさん」が主人公と言うのが異色で、彼らの活躍は愉快・痛快なところがとても面白いです。どの世代のキャラも細やかに書き込まれていて、世代間交流もリアリティーに溢れています。「こういう人いるいる!」あるいは「こういうことあるある!」と言う親しみやすさが全編に亘って感じることができます。有川作品にしては「きゅん」が少ないとは思いますが。

これ、第3弾が出ても良さそうな感じですね。話題が身近なので、ネタには困らないのではないかと思うのですが…

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