徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:恩田陸著、『木曜組曲』(徳間文庫)

2018年02月20日 | 書評ー小説:作者ア行

『木曜組曲』は物書きの女ばかりが登場するミステリーです。謎の死を遂げた耽美派小説家・重松時子が木曜日を愛したことから、彼女を偲ぶ宴も命日のある週の木曜日を挟んだ3日間催されることから、このタイトルが来ています。

商品説明

耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺か? 気鋭が贈る長篇心理ミステリー!

感想

商品説明だけではこの作品の魅力が伝わらない気がします。亡くなった時子を含めて6人の女たちはそれぞれに一癖も二癖もあって、その独特のキャラクターがよく描写されており、また6人のうちの4人は血縁関係(静子が時子の異母妹、尚美、つかさが時子の姪)にあり、それはそれで複雑に絡んだ感情がうごめいているし、編集者のえい子は時子を見出して育ててきたという数十年に及ぶ濃厚な関係があり、また現役編集者としての若手作家たち3人(尚美、つかさ、絵里子)に対する思惑もあるので、かなり濃厚な心理ドラマが味わえます。

「謎のメッセージ」は花束と共に来ます。差出人は「フジシロチヒロ」。時子の最後の作品となった「蝶の棲む家」の主人公の名前。カサブランカの花束は、時子の旧居「うぐいす館」にある黒い花瓶のためにしつらえたかのよう。一体こんなことをしたのは誰なのか?

「重松時子さんの家に集う皆様に
皆様の罪を忘れないために、今日この場所に死者のための花を捧げます。」

この差出人は何を知っているのか?「皆様の罪」は何を指しているのか?時子の謎の服毒死はやはり他殺?それぞれの記憶を突き合わせていくと色々と不自然な点が出てきます。

自殺か他殺かの結論が出てからさらに2バウンドくらいして話が終わるところがまた面白いです。

物書きの女たちって怖い(笑)

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