徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:池井戸潤著、『下町ロケット ヤタガラス』(小学館)

2018年10月03日 | 書評ー小説:作者ア行

マドリード旅行から帰って、片付けもしないまま読み出して止まらなくなってしまった『下町ロケット ヤタガラス』。旅行の行きと帰りに読んだ本を含め3冊分一気に書評を書く羽目に…

ロケット計画で付き合いの長い財前がヤタガラスの打ち上げを最後に異動になり、そこで立ち上げた衛星ヤタガラスによって可能になった精確な位置情報を利用した無人農耕機プロジェクトに佃製作所が参加することになってしましたが、財前の属する派閥と対立する的場がプロジェクトの総責任者となり、佃製作所が供給する筈だったエンジンとトランスミッションを内製化することを決定し、佃製作所はまたしてもピンチに陥りますが、プロジェクトのキーテクノロジーであるヴィークル・ロボティクスを供給する北大教授の試作機に協力することで、農耕機用のエンジンおよびトランスミッションの独自開発を進めます。

下町ロケット ゴースト』で佃製作所に助けられたのにもかかわらず、「ギアゴースト」社長・伊丹大は帝国重工の特に取締役的場俊一に復讐するために佃製作所のライバル社「ダイダロス」と手を組み、無人農耕機のプロジェクト「ダーウィン」で帝国重工の無人農耕機のプロジェクトに対立します。

いくつもの対立関係が絡み合い、緊迫感溢れるストーリー展開で目が離せません。最後に「日本の農業を救おう」という理念が貫かれるところが素晴らしいですね。改めて見直される下町の人情、使う人のことを考えるものづくりの姿勢が現実に取り戻されればどんなにいいかと、変に捻じれた日本経済を余計憂えてしまうことになるかもしれませんが、ひとまずは池井戸潤的カタルシスを存分に味わえる作品です。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『BT’63 上・下』(講談社文庫)

書評:池井戸潤著、『民王』(文春文庫)

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書評:池井戸潤著、『ようこそ、わが家へ』(小学館文庫)

書評:池井戸潤著、『花咲舞が黙ってない 』(中公文庫)

書評:池井戸潤著、『銀翼のイカロス』(文春文庫)

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書評:池井戸潤著、『下町ロケット ゴースト』(小学館)