夢枕獏の『陰陽師』シリーズをちょっと休憩して、久々に恩田陸作品を読みました。『ドミノ』(角川文庫)は2004年発行のちょっと古い作品です。
1億円の契約書を待つ締め切り寸前の関東生命八重洲支社。八重洲支社からお菓子の買い出しに出た柔道女子。子役のオーディションに出る少女たちとその付き添いの母親たち。ホテルのカフェで変装して人を待つ女。推理力を競い合う大学生たち。女との別れを画策する青年実業家と別れのためのだしとして引っ張り出されたいとこ。初めて東京に来て、東京駅の待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。千葉県の顧客のところから1億円の契約書を持ち帰ろうとする関東生命八重洲支社営業部長。来日中のホラー映画監督とそのペット等々。爆弾の試作品を試そうとする過激派。本来お互いに全く関係のない人たちがすれ違い、交錯する運命の一瞬に向かっていくストーリー。
最初は無関係の細切れのシーンがちょこちょこ切り替わって、何がどうなっているのかよくわからないので戸惑いますが、その細切れのカメラワークが繰り返されていくうちに段々全体像が見えてきてスピード感に溢れたストーリー展開になっていて、読み出したらダーッと一気に最後まで読まずにはいられない面白さです。『常野物語』シリーズや『夜の底は柔らかな底』シリーズのような説明なしの不思議ワールドが展開する恩田作品とはかなり違って、「こういう作品も書くんだ」と驚きながら楽しませてもらいました。