『八月は冷たい城』(2018)は、夏流城(かなしろ)で4人の少年が緑色感冒に侵された肉親の死と向き合うために「林間学校」に参加します。主人公光彦(てるひこ)、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也、大柄でおっとりと話す耕介、そして唯一かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)を迎えに来た【夏の人】または【みどりおとこ】。
子どもたちは緑色感冒にかかった親に会うことは許されないが、死を間近に控えた患者はわが子を見ることができるようになっています。その体面が可能になるように、鐘が3度鳴ると子どもたちはお地蔵様の前に行くよう指示されます。
一度城に入ると、参加者の肉親が全員死亡するまで出られないことになっている中、彼らの命を狙っている何者かがいる気配があり、不安にさいなまされながら、光彦は【みどりおとこ】の正体やこの「林間学校」の意味について考え、幼馴染で女子部の方に参加している蘇芳と壁越しに議論します。はたして彼らは無事に城から出てくることができるのか?
奇妙な設定のサスペンスミステリーで、描写される子どもたちの会話や行動は青春ドラマのようですが、みんなが肉親の死に直面しているのでかなりヘビーです。それぞれがどのように親の死と向き合うかが問われています。【みどりおとこ】の正体に関してはホラーで、グロテスクですね。このため読後感はいまいちでした。
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