徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

2017年08月26日 | 書評ー小説:作者ア行

『おこぼれ姫と円卓の騎士』第17巻と同時発売された『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』ですが、こちらは中華風ファンタジー。白楼国の後宮で女官をしている皓茉莉花(こう・まつりか)16歳が、ある日ひょんなことから若き皇帝に出会い、その常人離れした記憶力を買われて官吏になるよう仕向けられるというお話。当人は自分を「ちょっと物覚えがいい」だけの人間で、下働きの宮女から女官に抜擢されただけでも恐れ多いと思っていたので、皇帝・珀陽(はくよう)の「科挙試験を受けて官吏になれ」という要求など「とんでもない」と逃げを打つばかりですが、珀陽は折角の才能を逃すまじとかなり強引に彼女を科挙試験準備のための太学に編入させてしまいます。

最初のうち茉莉花は「覚えることができるだけ」で成績が芳しくありませんでしたが、珀陽の執拗な説得に根負け(?)して本気を出し、自ら師を求めて本気で頑張りだし、最終的に文官になる決心をするというところまでが本編の内容です。後日談・エピローグで彼女の官吏としての活躍を綴った『茉莉花官吏伝』が国中に広まったみたいなことが書かれてますが、これは新シリーズの始まりなのかなと思わせる節もありますね。

サブタイトルの『皇帝の恋心、花知らず』が暗示するように、珀陽が茉莉花の才能だけでなく、彼女自身に惹かれているっぽいことは描写されていますが、茉莉花の方はそんなこと露ほどにも知らず、本当に片思いで終わってます。だからこそ、この二人のその後の物語が綴られるのかも知れないと思ってしまうのですが。

中華風なだけに『彩雲国物語』とイメージがかなり被ってしまうような感じがします。それなりに面白いし、危機的な状況もあり、またちょっとほろっとするところもあるんですが、なんとなく上滑りしているような気がしないでもないです。全体的に「いまいち」ですかね。

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書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)