福田の雑記帖

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医療崩壊(26)医療の安全の確保に向けた「厚生労働省第三次試案」(1)

2008年04月27日 06時39分14秒 | 医療、医学
 医師法21条の拡大解釈は医療崩壊の一因になっている。
 この法は「医師が異状死体を診た際に24時間以内に警察に届けねばならない」とするもので、本来は犯罪被害者の発見のためである。この条文で異状死体の定義がないが、日本法医学会が異状死体の定義として独自の見解を勝手に発表したことから医療界、司法界ともに一気に混乱することとなった。

 法医学会は医療関連死も異状死、異状死体と見なしたからである。その後この条文は広く解釈される様になり、都立広尾病院の事故例、福島県立大野病院の事故例はこの法の対象となって院長が検挙され、治療医が逮捕拘留される様になってきた。
 この後、医療機関側でも隠蔽とされることを恐れ、警察に届ける事象が増えてきている。届けがあれば警察は捜査せざるを得ないが、この場合は犯罪性の有無を中心に医療関係者は刑事罰の被疑者として、医療に関しては全く素人である警察によって取り調べが行われることになる。

 医療は「大きなリスクを回避するために、小さなリスクを与える」業務である。しかも機械等の修理とは異なり不明の因子が多数絡んでくる。常に期待された良い結果がもたらされるとは限らず、時に患者が死亡することもある。医療行為には基本的には犯罪性は無いはずであるが、患者が死亡した事によって医師を始めとする医療関係者が刑事事件の被疑者扱いされるとすれば、大問題であり、これでは危険度の高い医療行為は出来ない事になる。

 救急医療や高度先進医療を行っている医療機関では高いリスクの重症患者を扱うが、もたらされた結果によってその業務が告訴の対象になるとすれば、業務が成り立たないし、一歩踏み込んだ治療は出来ず、萎縮診療になる。これは医師側にとっても患者側にとっても望ましいことではない。

 現在問題になっている医師不足による医療崩壊は、現実的には救急医療や高度先進医療を行っている医療機関の医師不足が一気に進んだために顕在化してきたが、その背景に医師法21条拡大解釈による医師のモチベーションの低下があり、医療現場から去っていく事も原因になっている。

 医療事故に関しては直接警察に届けるのではなく、中立的第三者機関の設立が望まれてきた。
 現在厚労省が中心となって準備が進められ、具体化しつつある。中立的第三者機関の設立はもう一歩と言うところまで進んでいるが、これは医療界にとって、患者側にとっても意義は大きい。
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