福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

医療崩壊(21)救急医療崩壊(1)「受け入れ拒否」でなく「受け入れ出来なかった」のだ

2008年04月17日 05時07分33秒 | 医療、医学
 医師不足による医療崩壊は、語弊もあるが、端的に言えば急性期医療を担う地域の基幹病院の勤務医不足による機能維持の破綻である。勤務医不足は新臨床研修制度の発足と共に地方の公立病院等から始まったが、今や都市部を含め全国的に問題になってきている。

 小児科や産科、麻酔科医師の不足はよく知られてきているが、総合病院では基幹診療科である内科、外科の医師も不足になってきた。要するに医師不足のために自分の診療領域の業務ですら満足に出来ない状況になりつつある。
 こんな状況の中、多くの病院の悩みは救急医療へ十分にマンパワーを割けなくなってきている。いま全国で、特に大阪とかの関西地区では救急病院の急患のたらい回しが生じ、死亡例も散見される。この時、マスコミは「30数カ所の病院の受け入れ拒否による患者のたらい回しで死者」と一斉に書きたてる。

 私は「受け入れ拒否」などする救急告示病院は無い、と思う。もともと救急診療部門は赤字である。安易に拒否する様な病院は始めから救急告示を辞退する方が良い。それをしていないのは医療機関としての、そこで働く従業員達の、地域に対する責任感、使命感である。だから、医師は通常勤務のあと、粛々と救急外来勤務に就く。外科系医師、麻酔科医は緊急手術で呼び出され、内科系医師は重症患者の対応に呼び出される。

 救急搬送の問題点の実態は「受け入れ拒否」ではなく「受け入れ不能状態でやむなく断らざるを得ない」、と言うことだったと思う。救急医療の現場は、受け入れたくとも受け入れられない実態に向かって状況は確実に悪化している。
 「受け入れ拒否」と言う見出しによる報道は、その実態を何ら表現しておらず「非はすべて病院側にある」と、病院バッシングであり、関連した従業員への社会的な叱責である。

 秋田県で昨年県内の病院に対して行った調査で300人ほどの医師が不足している事が判明した。秋田市内の大規模病院は他の地域に比較すればまだ恵まれていると言えるが、内情は徐々に厳しくなってきている。麻酔科医師の減少で緊急手術を要するような重症救急患者の受け入れは各病院とも困難になりつつある。
 秋田県内の救急医療において、「たらい回し」と表現される事態はまだ無いと報告されているが、ムリにムリを重ねている。「たらい回し」と称される事態が何時起こるか、分からない状況になってきている。早急に対策を始めなければならない。
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