ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

春はすぐそこ

2010年03月06日 | 音楽とわたし
ずいぶん暖かくなりました。積もったままだった雪も、今日のお日様でかなり溶けました。今日から1週間、最高気温が10℃周辺まで上がります
ここにもやっと春が来てくれたようです。まだまだ油断大敵ではありますが……。

今日はいつもより1週間早いACMAの月例演奏会。今月末にカーネギー出演をかけたオーディションがあるので、少し予定が変わったのでした。
演奏会が始まる前に、来月4月の演奏会でアルベルトと弾く『I Got Rhythm』の合わせ練習をしに、いつもより1時間早く会場に行きました。
旦那の仕事が終わるタイミングと合わなかったので、今日は電車に乗って行ったのですが、行きの電車賃、タダでした?!
週末のマンハッタン行きは、途中で乗り換えなければならないのですが、いつも車内で切符を買うのに、買おうにも車掌さんが一向に来てくれず、
終着駅の一個手前の駅が過ぎると、車掌さんが皆の切符を回収に来るので、じゃあその時にと待っていると、わたしに何も聞かずに過ぎ去る車掌さん……。
いいのねいいのね、今日はわたし、タダでいいのね?嬉しいハプニングでした。

終着駅のペンステーションに着き、地下鉄E線までの地下街の通路を歩いていると、突然ワン!ワン!ワン!と吠える大きな犬が現れてビックリ!
丁度わたしはそのワンちゃんのすぐ後ろを歩くことになり、犬の綱をしっかり持っている男性の背中にPOLICEと書かれてあるのを見てまたまたビックリ!
いったい何に吠えてるんやろと、その犬の前を歩いている4人の男女を見てまたまたビックリ!
だって、後ろに組まれた両手首にしっかり手錠がかかっていて、その男女カップルを引っ張るように連行している警察官が何気に小さくて頼りな気で……。
ひぇ~~~逃げたらどないすんのぉ~~~
あ、そうか、だからあのデッカイ、見るからに恐そぉ~な真っ黒犬が、すぐ後ろで吠えてるのか。
でも……一応納得しましたけど、あんな普通のとこ、手錠かけられた人達を連れ歩いてええんでしょうか?
だいたい、気がついたらとんでもない状況に巻き込まれている事が異常に多かったわたしの人生、
もしあのふたりのどっちかがいきなり暴れ出して、ほんでもってクルッと回ってわたしの方にダッシュしてきて、ほんでもってほんでもって……、
メチャクチャな勢いで頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消える妄想の数々。
そこでハッと気がつきました。後ろをついて歩かへんかったらええねんやん。
わたしも成長したもんです。前はこういうことすら思いつきませんでしたから……。
でもまあ寄りたくなるような店も用事も無かったので、とりあえずそのままワンちゃんの後ろをテクテク。ワンワン!テクテク、ワンワン!テクテク。
女性はずっと「わたしの手がなにしたっての?あんた、見たわけ?え?わたしはなにもしてないって!聞いてんの!」とわめいていらっしゃいました……。

会場に着いたら、地下のホールからなにやらお洒落な音楽が。アルベルトのピアノとクラリネットとチェロの、オーディション用の練習なのでした。
うへぇ~、もう本番間近っぽいほどの勢いです。こっちはまだ音符ひとつも見てないっつぅ~のに……トホホ……。

彼らの練習が終わり我々の番に。
『I Got Rhythm』の始まりには、わたしが単音で弾くテーマがあり、それを弾いた瞬間に「う~ん、まうみ、それはジャズじゃないなあ」とアルベルト。
グサッ!旦那が練習のたんびに言うてくるのとそっくりおんなじ!!
そこでまた弾き直すと、「う~ん……」
グサグサッ!!旦那の「ほれみぃ~」顔が瞼の裏に浮かんできて更にムカムカ!!
もういっぺん弾いてみたら……「まあ……そこは今度までに」
グサグサグサッ!!!

いったいどこがおかしいんやろか?いったいどういうふうにノリが違うんやろか?わたしには弾けてるように聞こえるねんけど……。
うぇ~んハッピー先生、教えに来てぇ~!
とにかく、明日から録音しまくり練習に切替えにゃ~。

さて、今日のコンサートもまたまた新人さんが続々登場。
本日のスターはなんといっても、カウンターテナーのタイラー君。細身の体から豊かで深みのある美しい声を聞かせてくれました。
音域もとても広くて、どの音域も無理のない、のびのびとした響きをもっています。すばらしいカウンターテナーでした。
カウンターテナーというと、変声前に去勢することで高音域を保つカストラートをついつい思い浮かべてしまうのですが、もちろんそれとは全く別。
彼は演劇を学んでいて、趣味で歌っていたらしく、ほんの3年前まではバリトンだったそうです。
けれども、ファルセットで歌うのが好きで、どうもそっちの声の方が気持ち良く歌えるので、とうとう決心して変更したそうな。
『もののけ姫』、日本語特訓して歌ってもらおっかな?
「いつかわたしにも伴奏させてね!」と、しっかりメルアドの交換をしてもらいました。
先月のスター、チェロ弾きのカイル君は、もうすでに多くのピアノ弾きからの予約でいっぱい。ちょっとおもしろくなってきました。
今日のプログラムは、今年がショパンの生誕200年ということで、ピアノ演奏はやはり、ショパンが目白押し。
「初めての人はまあ許すけど」とアルベルト、常連にはとうとう『ショパン禁止令』が出てしまいました。 

演奏会後の食事会を楽しく過ごし、後から来た旦那と一緒に、今夜は地下鉄に乗りバスで帰ることにしました。
地下鉄に下りる長い長いエスカレーターに乗りながら『I Got Rhythm』のメロディを旦那と口ずさんでいると、対抗する上りのエスカレーターに乗っている黒人の若者4人が、ノリノリで踊って見せてくれました。互いに手を振ってバイバイ!
バスターミナルに着いた時にはギリギリの5分前。地下の階段をダダダッと上がり、5階までの階ごとにバラバラの場所についているエスカレーターもダダダッと上がり、あと30秒をさらにダッシュ!マジで死ぬかと思いましたです。
動きかけていたバスを旦那が止めてくれて、無事に車中へ。最後部座席に倒れ込むように座り、間に合って良かった良かったと喜んでいると、
「マウミ、オソッ……トシトッタナ」と旦那。隣に人がいなかったら多分、クビ絞めてましたね。普段よりちょい心持ち力込めて。


さてさて、わたしが今取り組んでいるのは、ガーシュインの『I Got Rhythm』、ミヨーの『スカラムーシュ』、そしてそろそろ高校のスプリングコンサートの伴奏曲、おそらく15曲ぐらいが加わる予定です。

そしてなんと、またまた事態は急展開していて、オーディションにA子と組んで挑戦することになりました。
といっても、A子の渡米は4月の半ば。オーディションには間に合いません。
そこで、A子の初めてのソロCD『INORI』の中から、日本歌曲の演奏を聞いてもらい、まずA子の歌の能力を皆に認識してもらう。
そして、オーディション当日は、なんとなんと、わたしが伴奏パートを弾きながら歌うことにヒトはコレを弾き歌いと言ふ……
「そんな無茶な~」と抗議しましたが、日本語で歌える人がいないし、伴奏だけ弾いたんじゃオーディションで審査するわけにはいかないと言われ……。
A子、ごめん!とりあえずわたしだけで頑張ってみるし。
なんてここで言うてる場合ではありません。早急に楽譜を送ってもらわにゃ


1年のうちで1番好きな春が、ゆっくりだけど確実に、冷たく厳しかった冬を、少しずつ少しずつ溶かしてくれています。
コメント (6)
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