ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

うそついた

2010年03月26日 | ひとりごと
仕事前の、歌の練習したり、洗濯したり、床拭きしたりしてた午後、急に玄関のベルが鳴った。

時間を確かめると、誰も来る予定の時刻では無い。
宅配の車が停まった音も聞こえなかった。
こういう時はドアを開けるのが躊躇われる。

ドアを開けると、そこには二人の女性が立っていた。
ふたりともとてもにこやか。
ひとりはドアのすぐそばに、もうひとりは階段のそばに、少し距離を置いて立っていた。
ドアの方に居る女性の手に、宗教のパンフレットのような冊子があった。
ああやっぱり……。

「Can you speak Japanese?」

う~んう~ん……困ったなあ……わたしは神のような、なにかとてつもなく大きな存在を信じているし、八百万の神様を確信しているけれど、
こういう、ある一定の団体や集団に属する、という状態がすごく苦手で、それらにつながる事には足を踏み入れないと決めている。
こう決めたのには訳がある。足を散々踏み入れて、すっかり心が疲弊してしまった経験があるから。

だからうそをついた。
信仰を勧めに来てくれている、見るからに温和そうな日本人女性ふたりに、わたしは心苦しかったけれどうそをついた。

「No, I can't」

するとふたりはびっくりしたような表情で、互いに顔を見合わせた。
もう今さら後には引けなくなったわたしは、発音が日本人英語にならないように注意しながら、彼女達の質問にさらに答えなければならなくなった。

「御国は中国ですか?韓国ですか?」
「韓国です」(これはまんざら完璧なうそでもない。なぜなら、韓国人の誰もが、おまえは韓国人だと太鼓判を押すのだから)
「そうだったんですか。それはそれは失礼しました。わたし達はこの家にはきっと、日本人の方が住んでいらっしゃると思ったもんですから」
え……?
わたしの脇の下に、うっすらと汗がにじんだ。いったい、なにを根拠に、彼女はそんなことを言うんだろう。
「だってこれ」
と、彼女が指を指した所に視線を移すと……招き猫の風鈴……ぐわぁ~ん……が郵便受けにぶら下がっていた。もちろんわたしがぶら下げたのだ。
「あ、ああ、これは、日本人の友人からもらったのです」

彼女達はつるりとわたしのうそを信じてくれた。それからもしばらく英語で話をしてから、「どうもお邪魔しました」と丁寧に詫びながら去って行った。

この話をすると、どんなことにしてもうそが大っ嫌いな旦那は、「どうして普通に断れなかったんだ」とわたしを叱った。

久しぶりについたうそは、思った以上にわたしの心を傷つけた。
ごめんなさい。

さくら横ちょう

2010年03月26日 | 音楽とわたし


春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう

想出す 戀の昨日
君はもうここにいないと

ああ いつも 花の女王
ほほえんだ夢のふるさと

春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう

會ひ見るの時はなからう
「その後どう」「しばらくねえ」と
言ったってはぢまらないと
心得て花でも見よう

春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう


大人の戀のうたです。
今日は冷たい雨。夜には零下4℃まで気温が下がるそうです。
首にタオルを巻いて、温かいハチミツレモンを飲んで、明日の舞台に備えて喉を大切にしています。
自分の体が楽器になるって、こういうことだったんだなあと、改めてしみじみ、美しい音色を作り出す難しさと面白さを体験しています。



明日は、この水墨画のさくらのような、しっとりとした日本の情緒を、審査員の方々に伝えられたらいいなあ。