まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

華麗なる熟女のベトナム案内!

2017-04-07 | フランス、ベルギー映画
 「インドシナ」
 1930年代、フランスの植民地インドシナで生まれ育ったエリアーヌは、養女である王族の娘カミーユを育てながら、広大なゴム園を切り盛りしていた。特権階級に抵抗する独立運動が激化する中、フランス軍将校のジャン・バティストと恋に落ちたエリアーヌだったが、カミーユもまたジャン・バティストを愛するようになって…
 1992年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した、「イースト/ウェスト」や「運命の門」などのレジス・ヴァルニエ監督作品。
 異国情緒あふれるインドシナ(現ベトナム)、激動の時代の中で繰り広げられる運命的な恋と波乱の人生…こういう大河ロマン、大好きです。めっきり作られなくなってる現状が悲しい。内容的には韓流時代劇に近いものがあるけど、ありえない展開やキャラが多い韓流と違い、時代の流れや人間関係の描写も丁寧で、男女のロマンスも複雑で濃密、どこか退廃的でアンニュイ、エレガンスあふれるリッチ感は、フランスならではです。
 フランス占領下のベトナムが、興味深く描かれていました。現地人を奴隷扱い、家畜扱いにし、優雅に豊かに我が物顔なフランス人たち。イギリスや日本もだけど、フランス人も結構やりたい放題だったんですね~。今では考えられない、ありえないけど、植民地時代はあれがフツーだったんですよね。エリアーヌも、支配者側のフランス人にしては現地人に優しく寛大でしたが、決して彼らとは平等とは思ってないし、そんな態度もとらない。なので、偽善者ヒロインにならずにすんでいました。

 支配する側される側のフランスとインドシナが、まるで男女のような、親子のような、決して離れられない愛憎で結ばれた関係のようでした。カミーユを愛し、守っていると同時に支配しようとしているエリアーヌ。エリアーヌへの依存心を捨て自由を求めるカミーユ。二人のヒロインの愛と生き方が、フランスとベトナムの関係と運命にカブっていたのが秀逸でした。時代の大きなうねりの中、ジタバタすることなく冷静沈着に栄枯盛衰を見つめるエリアーヌは(男を追って出奔したカミーユのことを心配してオロオロする以外、意外なまでに何もしてなかったし)、まさにフランス人の愛国心をくすぐるキャラではないでしょうか。

 エリアーヌ役は、泣く子も黙る大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。彼女はこの作品で、初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。70を過ぎた今もなお精力的、意欲的に映画出演を続けているドヌーヴさん、「太陽のめざめ」など近年の彼女は、どっしりずっしりしたオバチャンと化してますが、この映画ではまだ太ってなくて美しいマダム風です。女王さまのような貫禄と威厳、風格がカッコいい。美しいけど、なよなよしい手弱女ではなく、内面はほとんど男な雄々しさ強靭さが、ドヌーヴに代表されるフランス女優の魅力でしょうか。他の作品に比べると、エモーショナルな演技を披露してるドヌーヴ。数ある彼女の代表作の中でも、私はこの映画が特に好きです。彼女のとっかえひっかえな、決して庶民には着こなせないマダムファッションも目に楽しいです。波乱と激動の時代を経て晩年を迎えたエリアーヌの、ほとんど変化がない美魔女っぷりが、まさに女王ドヌーヴって感じです。

 母と娘に愛され親子どんぶりな運命の男、ジャン・バティスト役は、かつてはフランス大物女優の相手役御用達だった色男、ヴァンサン・ペレーズ。この頃の彼は、まさにイケメン絶頂期にありました。熟女も少女もメロメロにするフェロモンが、キツい香水のようです。そんなに肉体美ではないけど、浅黒い艶肌がエロい。でも、痩身で意外と小柄なせいか、軍服があんまし似合ってなかったような。すごいデコッパチで、頭髪がすでにヤバかった。現在のペレーズ氏は、ほとんどそのままま東な頭になってます
 カミーユ役のリン・ダン・ファンが、可憐で凛としててチャーミングでした。韓国や中国といった見慣れてるアジア美女とは違う独特の愛らしさ。純真で情熱的なカミーユのキャラ、強く悲しい生き方も胸を打ちます。エリアーヌを愛している警察署長役のジャン・ヤンヌ、友人役のドミニク・ブランなど、フランス映画ではおなじみの名優が脇を固めています。
 美しいインドシナの風景も、この映画の見どころです。映画の冒頭、カミーユの両親の葬儀シーンが、静謐で清冽で印象的でした。次はベトナムに行きたいな~。王宮やハロン湾、劇中ドヌーヴがお茶してたホテル・コンティネンタル・サイゴンのカフェとか、旅心をそそります。
コメント (4)
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