まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

こじらせ家族ゲーム

2017-04-11 | 北米映画 15~21
 「たかが世界の終わり」
 劇作家のルイは、ある告白を家族にするため、12年ぶりに帰省する。母と妹のシュザンヌ、初対面の兄嫁カトリーヌはルイを歓迎するが、兄のアントワーヌはとげとげしい態度を取り続ける。やがて家族は、ルイをめぐって激しくぶつかり合うようになり…
 早熟の天才として、世界にその名を轟かせてるグザヴィエ・ドラン監督の新作を、ようやく観ることができました。去年のカンヌ映画祭でグランプリ受賞、そしてフランスの人気スターを集結させた豪華キャストなど、2017年前半これを観ずにして的な作品です。賛否両論あるみたいですが、私は楽しく観ることができました。家族ものも、ハートウォーミング系とかコメディ系は苦手だけど、愛憎でプッツンドロドロな逆噴射ものは好物なんです。この映画、家族がひたすら罵り合い傷つけ合うだけの内容なんですよ。ちょっと「8月の家族たち」に似てる?8月の家族たちより登場人物が少ない分、この映画のほうがシンプルで濃ゆいかも。

 それにしてもフランス人(設定はカナダ人?)、激しいですね~。フランス人って普段はクールでドライだけど、愛となると男女の愛も家族愛も命がけなんですね。激怒も悲嘆も、何だか某半島の人たちみたいで怖かったわ~。何か悪いものに憑かれたようでしたもん。本人たち以上に、見てるほうが疲れます。もうちょっと冷静に穏やかになれませんかね~、そのエネルギーもっといい形で使いましょうよ~と、仲裁に入りたくなりました。家族の中でも特に、ママンと長男アントワーヌのハイテンションさは、ほとんど病気でした。精神的にヤバい人たちとしか思えませんでした。

 和やかさが長続きせず、ちょっとしたことですぐにカっとなってギャーギャー大騒ぎする一家。その異様さが、だんだん笑えてくるようになるんですよ(私だけ?)。ケンカの原因は、ほとんどが実にくだらないことなんです。いちいち&熱心に相手の言葉尻をとらえ、揚げ足をとって波風立てまくり。それが何か、楽しそうにも見えてきたり。わざとやってんのかな?これって、ひょっとしてこの家族のゲームなのかな?和やかに穏やかに過ごすよりも、トゲトゲしくいがみ合うほうが家族愛を実感できるドM一家なのかも?めんどくさい人たちだな~と苦笑。でも、他人は迷惑かけず、家族だけでやってるので、問題ありません

 あまりにも愛が強くて激しいと、その裏返しの憎しみも比例しちゃうんですね。私の家族なんて、ケンカなんかほとんどしません。愛の反対は憎しみではなく無関心だとよく言われてますが、ぶつかり合いすぎて心身ともに疲弊しちゃう愛よりも、平和で穏やかな無関心、距離感のほうが心地よいです。家族に(他人にもですが)何かを期待しすぎ、求めすぎるのもよくないな~とも、つくづく思いました。

 ルイはいったい何を伝えるために帰省したのか、過去にルイと家族の間に何かあったのかなど、はっきりと説明しないところも謎めいてて私は好き。たぶんこうなんだろう、と想像はつくようにしてあります(ルイは余命いくばくもない、たぶんエイズ?とか)。私がもっとも想像をたくましくしてしまったのは、ルイとアントワーヌの関係。アントワーヌがあまりにもルイに対して情緒不安定で、ルイも兄に対して何だかとりわけ辛そうな様子が、まさか兄弟同士で禁断な想い、できごとがあったのでは?!な~んて、思わせぶりなシーンや台詞から深読みしてしまったり。アントワーヌの恨みがましい執念深い態度は、まるで自分を捨てた男と再会し怒ってる女だもん
 ドラ美のもとに集まったフランス映画界の人気スターたちの、激突する個性とアンサンブル演技に目はクギヅケに。主人公のルイ役のギャスパー・ウリエルは、この映画でセザール賞の主演男優賞を受賞!去年に続いてピエール・ニネとの一騎打ちでしたが、今年はギャス男に軍配が上がりました。

 ギャス男、いい役者に成長しましたね~。しゃべくりまくる他の出演者と違って、彼だけはほとんど台詞がなく、ほぼ表情だけで演じてるのですが、すごく優しそうで悲しそうで辛そうで、でも大げさな顔芸などしない静かな痛ましさが胸に迫る名演でした。やつれてくたびれた容貌ながら、やっぱイケメン!家族みんなから愛して!関心もって!とうるさく求められるのも理解できる。美しく才能あるルイ役は、演技力があってもブサイクでは演じられない役です。そこはさすがドラ美、ギャス男を選ぶなんて確かな観察眼、審美眼の持ち主です。あそこまで顔アップに耐えられる俳優、なかなかいません。時おり若い頃の甘い残滓も見てとれて、そこに男の色気も加わって、魅惑的な男ざかりにさしかかってるギャス男です。私、ギャス男の瞳が好きなんですよね~。あんなに優しい瞳は稀有。あの瞳のせいで、ギャス男は悪役はできないかも。映画の冒頭で判明する、映画ポスターでルイの目を覆ってる人の正体が、意外かつ微笑ましかったです。

 ママン役は、大好きな大女優ナタリー・バイ。「わたしはロランス」に続いてのドラ美作品出演。ケバケバしいファッションとメイク、テンション高すぎるキャラがぶっとんでます。シュザンヌから、女装した男みたい!とバカにされるのが笑えた。確かにあんな女装おじさん、いますね(笑)。ナタリーおばさまのKYなコミカルさ、絶望と虚無に老いた顔が、憎めない妖怪ちっく。彼女の存在が、この映画を悲喜劇にしてます。
 アントワーヌ役のヴァンサン・カッセルが、こ、怖い!あんな24時間プッツン兄ちゃんいたら、絶対イヤだ~。キレまくり、どこ踏んでも爆発の地雷男。ほんとどき○がいです。顔もケダモノじみてるし、デカいので迫力、威圧感ハンパないです。ヴァンサンみたいな怪優ではなく美男俳優だったら、怖くはないけどきっと禁断のBLちっになってただろうな~。そこは惜しい。それはそうと。ギャス男って、前はヴァンサンの妹と付き合ってたんだよな~。
 カトリーヌ役はマリオン・コティアール、妹シュザンヌ役はレア・セドゥと、国際的に活躍する働き者女優たちが好演。静かで寂しげな風情のマリ子は、いつもより地味で可愛く見えました。おどおどした遠慮がちな表情、不満や怒りを抑圧してる忍耐顔が秀逸。レアは、ヴァンサン相手にキレまくり応戦!ギャス男に対しては別人のように、シャイで不器用な妹なのが可愛かった。
 独特の演出と編集、こだわりのある音楽の使い方が、相変わらずドラ美の才気を感じさせます。ラストのハトポッポ時計が笑えた。いったい何しに帰ってきたの?なラストのルイも、何か笑えたわ。ひょっとしたら、死なずに来年もひょこっと悲しそうな顔して戻ってきて、また家族と同じことやるのではなかろうか、とか思ってしまいました。
 この映画、日本でリメイクされるとしたら、理想妄想キャストはこうだ!

 ルイ … 妻夫木聡 
 アントワーヌ … 内野聖陽  
 カトリーヌ … 和久井映見
 シュザンヌ … のん 
 ママン … 大竹しのぶ
 
 こんなん出ましたけどぉ~?
 イケメン、ゲイ役、優しそう、30代、台詞が少ないルイ役、ブッキーに適してると思う!のんちゃん、シュザンヌみたいな役でイメチェンしてほしいかも。

 ↑ドラ美とギャス男、まるで恋人同士みたいお似合いですが、ギャス男はバリバリのストレートで、いつの間にか一児のパパになってた!

 ↑この頃の可愛さといったら。ウリ坊と呼ばれてた時代から応援してた者としては、最近のギャス男の成熟ぶりには隔世の念を禁じ得ません…

 ↑つっても、まだ32歳。嵐とかと年、変わんないんだよね~。大人の男だけど可愛さも残してて、理想的な30代ですね。ジョニー・デップの娘共演の新作「ザ・ダンサー」が、年内日本公開!セザール賞で去年はサン・ローラン対決、今年は天才ゲイ監督作品で火花を散らしたピエール・ニネと、いつか競演してほしいわ~
 
コメント (4)
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