「ガープの世界」
シングルマザーの看護婦ジェニーに育てられたガープは、さまざまな人や出来事と出会いながら成長する。やがて作家となったガープは、幸せな家庭を築くが…
ロビン・ウィリアムズの急死は、世界中の映画ファンに衝撃と悲しみを与えました…
「グッドモーニング、ベトナム」や「いまを生きる」、オスカーを受賞した「グッド・ウィル・ハンティング」など、数々の佳作秀作で名演を披露してきたロビンの出演作の中で、私がとりわけ好きなのが、人気作家ジョン・アーヴィングの小説を映画化したこの作品です。
主人公ガープの波乱に富んだ人生を通して、病める現代アメリカ社会を明るく温かく、それでいて過激にシニカルに描いた悲喜劇です。全編かなりぶっ飛んだ珍妙エピソードがテンコモリなのですが、まずガープの出生がスゴすぎます。子どもは欲しいけど結婚したくない男も要らない看護婦のジェニーが、見ず知らずの瀕死の負傷兵をレイプ?して身ごもり生んだのがガープ。こんなフツーじゃない生まれ方をしたガープが、フツーの人生を歩めるわけもなく、次々といろんな人、いろんな出来事と遭遇し、喜びや悲しみを経験。それがポップにスピーディに、ちょっとファンタジックな味わいでつづられていて楽しいです。ガープ少年の描いた絵がアニメになって動き出したり、飛行機が家に突っ込んできたり、作家になったガープの描く小説世界とか、滑稽だけどどこか悲しい、不安や不吉な翳りもうっすらとかかっている感じが、病的で歪んだ価値観や、危険で有害な情報やモノが氾濫してるアメリカで、健全に無事に生きることの困難さを伝えているようでした。同じジョン・アーヴィング原作の「ホテル・ニューハンプシャー」もそうでしたが、病んだ社会で悲劇や不幸に襲われながらも、たくましく明るく生きるアメリカ人の強さ、前向きさには感服せずにはいられません。
ほのぼの温かい幸福と、ショッキングな不幸がめまぐるしく交錯するガープの人生は、まさに禍福は糾える縄のごとし。愛する人たちが次々と非業な死を遂げたり、人間として耐えられない悲劇にも襲われる彼ですが、同時に愛し愛された愛に恵まれているその人生は、とても豊かに思えて羨ましくなりました。愛し愛されることって、傷ついたり傷つけたり憎んだり恨んだり、しんどいことも多いけど、やはり幸せなことなんだな~とガープを見ていて思いました。私なんか、傷つくこともほとんどなく、大きな不幸も悲しみもない代わりに、大きな幸せも喜びもない無難すぎる人生。胸躍る出会いも、胸が痛む別れもない。何てつまんない、退屈でセコい人生でしょう。ある意味、そっちのほうが悲劇なんじゃないかと。
悲劇や不幸のオンパレードなのに、お涙ちょうだいにはしておらず、悲惨な中にもどこかブラックな笑いが。ガープの妻の浮気相手の末路とか、悲惨きわまりないのに滑稽で笑えます。
ガープ役のロビン・ウィリアムズ、まだ若くて可愛い!
すごい優しそうで、温かそうで、それでいていつも悲しそうで。彼の強すぎる感受性が、ガープのキャラに合ってました。自分がおかしなことをするのではなく、周囲のエキセントリックな人々や珍奇な出来事に対しての躁鬱的リアクションで笑いをとっています。笑えるんだけど、ほんと悲しみがつきまとってるんですよね。そこがロビンの持ち味で魅力ではあるのだけど、いい人なのに幸せになれないという不幸体質な役がハマリすぎて、実際の悲しい最期が重なって切なくなります。不幸で悲しいけど、活き活きとしたロビンの演技に胸が痛みます。急死が、かえすがえす惜しまれます。あらためてロビン哀悼…
この映画、ロビンが主演なのですが、彼以上の好演と存在感でほとんど主役となってしまっているのが、名女優グレン・クローズです。
ガープのママ、ジェニー役のグレンおばさま。これが映画デビューなのだとか。昔風で言うと“飛んでる女”なジェニーを、クールかつ珍妙に演じて目立ちまくってます。世間の目や常識などどこ吹く風で、颯爽としなやかに我が道を行くジェニー、すごくカッコいい女性です。ガープへの厳しくも優しい愛情も素敵でした。作家志望のガープよりも先に、何気なく書いた自伝書がベストセラーとなってしまうジェニー、フェミニスト運動のカリスマに祭りあげられてしまう展開が笑えるのですが、自分の舌を切り落とす狂信的な女たちとか、まるでオ○ムみたいな連中が不気味な空気を流し始め、やがて起こる悲劇を予想させます。
常にナース姿、堂々と凛としつつも、ちょっとズレてる変人ジェニーを好演したグレンおばさまは、デビュー作で早くもアカデミー助演女優賞にノミネートされました。受賞しなかったのが不思議。いかにもな大熱演ではなく、サラっと自然で爽やかながらもパンチが効いてる演技が素晴らしいです。
ジェニーの信奉者でガープの友人となるニューハーフ役、ジョン・リスゴーの強烈なヴィジュアルと、心温まる名演も忘れがたいです。
映画のオープニング、ビートルズの“When I 64”が流れる中、ふわふわ空に浮かぶ赤ちゃん(ガープ)が超可愛いです。
シングルマザーの看護婦ジェニーに育てられたガープは、さまざまな人や出来事と出会いながら成長する。やがて作家となったガープは、幸せな家庭を築くが…
ロビン・ウィリアムズの急死は、世界中の映画ファンに衝撃と悲しみを与えました…
「グッドモーニング、ベトナム」や「いまを生きる」、オスカーを受賞した「グッド・ウィル・ハンティング」など、数々の佳作秀作で名演を披露してきたロビンの出演作の中で、私がとりわけ好きなのが、人気作家ジョン・アーヴィングの小説を映画化したこの作品です。
主人公ガープの波乱に富んだ人生を通して、病める現代アメリカ社会を明るく温かく、それでいて過激にシニカルに描いた悲喜劇です。全編かなりぶっ飛んだ珍妙エピソードがテンコモリなのですが、まずガープの出生がスゴすぎます。子どもは欲しいけど結婚したくない男も要らない看護婦のジェニーが、見ず知らずの瀕死の負傷兵をレイプ?して身ごもり生んだのがガープ。こんなフツーじゃない生まれ方をしたガープが、フツーの人生を歩めるわけもなく、次々といろんな人、いろんな出来事と遭遇し、喜びや悲しみを経験。それがポップにスピーディに、ちょっとファンタジックな味わいでつづられていて楽しいです。ガープ少年の描いた絵がアニメになって動き出したり、飛行機が家に突っ込んできたり、作家になったガープの描く小説世界とか、滑稽だけどどこか悲しい、不安や不吉な翳りもうっすらとかかっている感じが、病的で歪んだ価値観や、危険で有害な情報やモノが氾濫してるアメリカで、健全に無事に生きることの困難さを伝えているようでした。同じジョン・アーヴィング原作の「ホテル・ニューハンプシャー」もそうでしたが、病んだ社会で悲劇や不幸に襲われながらも、たくましく明るく生きるアメリカ人の強さ、前向きさには感服せずにはいられません。
ほのぼの温かい幸福と、ショッキングな不幸がめまぐるしく交錯するガープの人生は、まさに禍福は糾える縄のごとし。愛する人たちが次々と非業な死を遂げたり、人間として耐えられない悲劇にも襲われる彼ですが、同時に愛し愛された愛に恵まれているその人生は、とても豊かに思えて羨ましくなりました。愛し愛されることって、傷ついたり傷つけたり憎んだり恨んだり、しんどいことも多いけど、やはり幸せなことなんだな~とガープを見ていて思いました。私なんか、傷つくこともほとんどなく、大きな不幸も悲しみもない代わりに、大きな幸せも喜びもない無難すぎる人生。胸躍る出会いも、胸が痛む別れもない。何てつまんない、退屈でセコい人生でしょう。ある意味、そっちのほうが悲劇なんじゃないかと。
悲劇や不幸のオンパレードなのに、お涙ちょうだいにはしておらず、悲惨な中にもどこかブラックな笑いが。ガープの妻の浮気相手の末路とか、悲惨きわまりないのに滑稽で笑えます。
ガープ役のロビン・ウィリアムズ、まだ若くて可愛い!
すごい優しそうで、温かそうで、それでいていつも悲しそうで。彼の強すぎる感受性が、ガープのキャラに合ってました。自分がおかしなことをするのではなく、周囲のエキセントリックな人々や珍奇な出来事に対しての躁鬱的リアクションで笑いをとっています。笑えるんだけど、ほんと悲しみがつきまとってるんですよね。そこがロビンの持ち味で魅力ではあるのだけど、いい人なのに幸せになれないという不幸体質な役がハマリすぎて、実際の悲しい最期が重なって切なくなります。不幸で悲しいけど、活き活きとしたロビンの演技に胸が痛みます。急死が、かえすがえす惜しまれます。あらためてロビン哀悼…
この映画、ロビンが主演なのですが、彼以上の好演と存在感でほとんど主役となってしまっているのが、名女優グレン・クローズです。
ガープのママ、ジェニー役のグレンおばさま。これが映画デビューなのだとか。昔風で言うと“飛んでる女”なジェニーを、クールかつ珍妙に演じて目立ちまくってます。世間の目や常識などどこ吹く風で、颯爽としなやかに我が道を行くジェニー、すごくカッコいい女性です。ガープへの厳しくも優しい愛情も素敵でした。作家志望のガープよりも先に、何気なく書いた自伝書がベストセラーとなってしまうジェニー、フェミニスト運動のカリスマに祭りあげられてしまう展開が笑えるのですが、自分の舌を切り落とす狂信的な女たちとか、まるでオ○ムみたいな連中が不気味な空気を流し始め、やがて起こる悲劇を予想させます。
常にナース姿、堂々と凛としつつも、ちょっとズレてる変人ジェニーを好演したグレンおばさまは、デビュー作で早くもアカデミー助演女優賞にノミネートされました。受賞しなかったのが不思議。いかにもな大熱演ではなく、サラっと自然で爽やかながらもパンチが効いてる演技が素晴らしいです。
ジェニーの信奉者でガープの友人となるニューハーフ役、ジョン・リスゴーの強烈なヴィジュアルと、心温まる名演も忘れがたいです。
映画のオープニング、ビートルズの“When I 64”が流れる中、ふわふわ空に浮かぶ赤ちゃん(ガープ)が超可愛いです。