まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

堕天使の心臓

2022-09-06 | 北米映画 80s~90s
 「エンゼル・ハート」
 50年代のニューヨーク。私立探偵のハリー・エンゼルは、謎めいた紳士ルイ・サイファーから失踪した歌手ジョニーの行方を突きとめるよう依頼を受ける。ジョニーを探すハリーだったが、探り当てた関係者は次々と怪死し…
 初めてこの映画を観た時はまだ子どもだったので、ぜんぜん理解できずただもうワケワカメでした。評判ほど怖くもキモくもなかった。当時は実際に起こってる事件のほうがはるかに恐ろしく、こんな悪魔だの呪いだのといった非現実的なオカルトよりも、女性子どもが白昼突然惨殺される通り魔事件とか、一家が皆殺しにされたあげくバラバラに解体されてしまう事件とかいったニュースのほうが恐怖でした。長い年月を経て最近、あらためて今作を観ることができたのですが、やっぱワケワカメでした(笑)。ショッキングでエグいシーンには狎れてしまっているので、この映画程度のホラーシーンはむしろ滑稽。片目を撃ち抜かれり心臓を取り出された死体なども、特殊メイクとかがまだひと昔前って感じで生々しくないんです。

 ハリーの行く先々でむごたらしい殺人が起き、無惨な屍累々…ハードボイルドな探偵ミステリー仕立てなのですが、もう人間技とは思えぬ惨状ばかりなので犯人とか真相とかどうでもよくなってしまいます。ラストは衝撃の真実(ハリーにとっては。ジョニーと悪魔の関係とか、松本洋子先生のオカルト漫画で似たような設定があったような)なのですが、あの人物はいったい何がしたかったの?自分から逃げようとしたジョニーへの制裁?ハリーを弄びたかっただけ?さんざんミステリーテイストで引っ張っておいて、結局はオカルトな結末なのでガクっときます。

 オカルトな話よりも、名匠アラン・パーカー監督のスタイリッシュな演出と映像が見どころです。陰鬱だけどおどろおどろしくはなく、ムーディーでおしゃれなCMっぽいシーンが多い。黒人音楽の使い方も、独特の雰囲気づくりに一役買ってます。
 主役の探偵ハリー・エンゼル役は、80年代に絶大な人気を誇ったミッキー・ローク。当時はトム・ハンクスとかケヴィン・コスナーが大好きだった私には、ミッキーの魅力を解することはできませんでした。彼のファン層は映画通のお姉さまたちって感じだった。そんなお姉さまたちの年齢をはるかに超えた今、やっとミッキーのよさを理解。男の色気って、やっぱガキには伝わらないもの。純粋無垢な子どもには、色気とか悪臭に近いものですよね。とにかく顔が性器に見えるほど色気がハンパないミッキー、でも当時まだ35歳。日本の某事務所のアイドルおじさんたちより年下とかありえんわ~。カッコつけた探偵役はできても、大人のエロさを振りまく探偵役とかできる俳優、日本にはいないですよね~。

 当時はニタニタした笑顔がイヤらしい!とか思ってたけど、今はそのイヤらしさが素敵に思えます。顔が犬みたいで可愛い。声が優しくソフトなのもレディーキラーな武器。ヨレヨレのダボダボスーツも、何だかオシャレ。優しくアンニュイで退廃的なのも、アメリカ男優には珍しい魅力。私が観た出演作の中では、いちばんカッコいいミッキーかも。カッコいいけど全然カッコつけておらず、結構みっともなくズタボロにされたり、かなり体を張ってました。そして過激なセックスシーンあり!全裸はちょっとボテっとした感じで肉体美ではありませんが、ちょっと崩れた中年おじさん好きにはたまらんカラダかも。

 依頼人ルイ・サイファー役は、名優ロバート・デ・ニーロ。今は仕事選ばずな枯れた好々爺になってるデ・ニーロ御大ですが、当時は映画界最高のカリスマ俳優でした。彼が出てるだけで品質保証的な。この作品では出番は少な目ですが、存在感は強烈です。薄気味悪いけど、彼も当時まだ40代半ばの男盛りなので、すごくカッコいいです。女占い師役で、シャーロット・ランプリングも出演してます。チョイ役ですが、ヨーロッパの上流社会の香り高い、エレガントでミステリアスな雰囲気がオカルトに合ってました。
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