まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

サッカー&ジェントルマン

2020-06-17 | 欧米のドラマ
 Netflixのイギリスドラマ「ザ・イングリッシュゲーム」を観ました。全6話。
 19世紀末のイギリス。労働階級の青年ファーガスは才能を見込まれ、親友のジミーとともにダーウェンのチームに移籍するが、プロ選手が認められていない中、報酬を条件にやってきた彼らをチームメイトたちは白眼視する。一方、上流社会のチームを率いる銀行家のキネアードは、社会と同様にサッカーの運営やルールにもある格差に疑問を抱き始めていたが…
 大人気だったドラマ「ダウントン・アビー」と同じ制作チームの作品だとか。ダウントンアビーもゲーム・オブ・スローンズ同様、いまだに観られずにいるシリーズのひとつ。どんなに面白そうでも、長いドラマは苦手なんですよね~。その点このドラマは、6話で完結というコンパクトさ。集中力と持続力のない私でも何とか完観できる長さです。

 19世紀にイギリスでサッカー(イギリスではフットボール)がどのようにして庶民も親しめるスポーツに発展したのか、どのようにして現在のような形に組織化されルールが制定されたのかが、イギリス映画&ドラマではおなじみ(お約束?)の上流階級と労働階級との格差を通して描かれていました。サッカーファンではない私でも、当時の今とは異なる驚きのサッカー事情はとても興味深かったです。当時はまだ上流社会の紳士たちが運営を牛耳ってて、プレーで金を稼ぐプロ選手は認められておらず、まるでラグビーのような荒々しく危険な行為もプレー中OKだったんですね~。

 サッカーの話も階級の格差の話も面白かったのですが、何だろう、あっさり薄口というか、いい人たちのいい話って感じで、誰が観ても差し支えのないポリコレなドラマだったのが、ちょっと物足りませんでした。悪人がまったく出てこない話って、やっぱ味気ないです。イギリスの上流社会ものって、優雅さの下に隠された冷徹で底意地の悪い欺瞞や偽善が魅力だと思うんですよね~。イギリスの上流社会ならではのスノッブさを楽しみたかったのに。

 プロのスポーツについていろいろ考えさせられました。お金で他のチームに移籍するファーガスが、カープから金満球団へ鞍替えする選手たちとカブって複雑な気持ちに。ファーガスにとって、サッカーは趣味でも娯楽でもなく、貧しい生活から脱し家族を養うための生活の手段。上流社会の紳士たちが唱える清く正しい精神論なんかクソくらえ。それはすごく理解できる。カープを捨てた選手たちも、きっとファーガスと同じなのでしょう。でもね~。ファーガスを信じてチャンスを与えたオーナーや、不平等さに目をつぶって彼を受け入れたチームメイトや、地元の新しいスターとして応援したファンにとっては、それはないんじゃない?!な悲しい裏切りですよ。スポーツは非情なビジネスでもある、そのことをあらためて思い知りました。

 キネアード役で、若手バイプレイヤーなエドワード・ホルクロフトが、ついに主演!威風堂々とした体躯と優しそうな雰囲気が素敵!19世紀のフォーマルなスーツとタキシードがすごく似合う!英国俳優はやっぱそうでなきゃね。サッカーのユニフォーム姿も爽やかでカッコよかった。誇り高いけど思慮深く思いやりにあふれている理想の紳士を好演していました。すごい美男ではないけど、ふとした瞬間にハっと魅入ってしまうほど美しく見える顔。ちょっと顔デカですが(奥さん役の女優の2倍ぐらいあるように見えた)威厳と知性を備えた風格ある人物の役は、小顔俳優よりもデカ顔俳優のほうが合ってます。誰かに似てるよな~と前から思ってたのですが、あ!元カープのエルドレッドだ!エルドレッド、カープの外国人選手屈指のイケメンでしたよね~。

 ファーガス役のケヴィン・ガスリーも、よく見えると可愛いイケメン。大柄なエドワードと並ぶと子どもみたいに小柄に見えるところも可愛かったです。ファーガスのチームメイトでデモを扇動する若者役のサム・キーリーもなかなかイケメンでした。キネアードの上流社会チームには美男もイケメンもいなかったのが残念。

 イギリス映画&ドラマファンにはたまらない、美しく優雅な衣装や屋敷、庭園などもたっぷり堪能できます。私は食事シーンがすごく好きなんですよね~。でもいつもあんな風にきちんと正装して礼儀正しく食事は、憧れるけど庶民の私にはキツいかも。労働階級側の生活描写も丁寧。私もパブで楽しく飲んでみたいです。

 ↑ 主演だってイケるいい男&いい役者!最新作の“Corvidae”は、これまた注目の英国イケメン、ジャック・ロウデン共演作!早く観たい!
 
 
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きっと蜂起

2020-02-26 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVミニシリーズ「ガンパウダー」を観ました~(^^♪全3話。
 17世紀のイギリス。エリザベス1世の死後、政治の実権を握るロバート・セシルはジェームズ1世を王座に就け、カトリック教徒への弾圧を強化する。敬虔なカトリック教徒であるロバート・ケイツビーは、仲間と共にジェームズ1世の暗殺を企てるが…
 英国時代劇、大好物です。イギリスで毎年、人形を燃やして祝う行事がありますが、その由来となった有名なガイ・フォークス事件の顛末を描いたドラマです。当時の王ジェームズ1世は、「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」のヒロイン、メアリー・スチュアートの息子なんですね~。エリザベス1世といい、母親が処刑されても子どもは生き延びて王座に就く、という血塗られた数奇の運命が英国王室の面白さです。

 そのジェームズ1世によるカトリック教徒への峻烈で凄惨な弾圧に屈せず、蜂起して王や政治家たちを斃そうとするケイツビーたちですが…蜂起というよりテロ?確かにあの弾圧は非道すぎて許しがたいのですが、ケイツビーたちのやろうとしてたことって、やられたらやり返す!的な報復みたいだった。巨大権力にダメージを与え、自分たちの都合のいい世界に変えようとしているケイツビーたちの復讐心や妄執は、日本でサリンを撒いた某邪教や、アメリカで同時多発テロを起こした某組織とカブりました。自分たちの信仰や志のために無関係な人、無辜な人の犠牲も厭わないという自爆的な考え方には、理解も共感もできません。ケイツビーたちの計画も、血気に逸りすぎで稚拙かつ無謀。あれでよく成功すると信じたよな~。

 王室の権力争いを描いたイギリス時代劇といえば、お約束の処刑&拷問シーン。このドラマのそれは、今まで私が見た中で最もゲロゲロ(死語)な残虐さで、ヘタなホラーなんかよりよっぽど怖いです。こんなのほんまにTVで流したの?!と、にわかには信じがたいほどに。斧で斬首や火あぶりは言わずもがな、首を吊って苦しめた後、生きたまま手足を順番に切っていったり内臓をえぐり出したり、鉄の塊で圧死させたり。バラエティーに富み過ぎな地獄絵図は見ていて気分が悪くなりました。まるで人気アーティストのライヴ会場のように、公開処刑に盛り上がる庶民たちの血に飢えた野蛮さも怖すぎる。気の弱い人にはオススメできないドラマです。同じ時代劇でも、おんな子ども、高齢者、みんな観ても大丈夫なNHKの大河ドラマとは大違いです。

 メインキャストには、今後ブレイクが期待できるイギリスの新進イケメン俳優たちが。まず、主人公ロバート・ケイツビー役のキット・ハリントンいや~彼ってほんとカッコカワいいですね~。ワイルドな童顔が可愛く、つぶらな瞳が悲しげで美しい。小柄だけどかなり鍛えてるマッチョで、体格も歩き方もイカツいのが男らしくて素敵。このドラマのプロデューサーも兼ねていたので、演技にも気合が入ってました。ケガの手当てシーンでちょっとだけサービス脱ぎしてます。どんな役でも下品さや庶民臭がしないキット、さすが良家(金持ち、セレブとは違う)出身。ここがハリウッドのスターと違うところです。
  
 キットはカッコカワいかったけど、ケイツビーの意固地で偏狭なキャラは好きになれませんでした。今回も不幸で悲運な男役でしたが、ハッピーで明るいキットってそういえば見たことないわ。不幸が似合うイケメンって大好きだけど、たまにはコメディにも出てほしいな。珍しく子どもがいる役でしたが、あんな大きな息子がいるキットに違和感。年の離れた兄弟にしか見えんかった。怒りや恨みにとらわれて息子を愛せず、つい冷たく当たってしまい悩むキットも切なく可愛かったです。

 ケイツビーの同志トマス・ウィンター役で、「ロンドン・スパイ」や「キングスマン」シリーズのエドワード・ホルクロフトが出演してます。今まで観た作品の中ではいちばんイケメンで出番も多い彼でした。見せ場は特になかったが。そろそろ主演作も観たい俳優です。ガイ・フォークス役は、アンドリュー・ヘイ監督作「WEEKEND」でゲイ役を演じたトム・カラン。ミステリアスな野獣って感じで目を惹きます。仲間の青年貴族役のダニエル・ウェストも気になるイケメン。ジェームス1世の男妾役のヒュー・アレクサンダーは、ちょっとエディ・レッドメイン似。英国若手俳優、まさにライバルだらけの群雄割拠ですね~。誰が一足先に抜きんでるか楽しみ。
 政治の実権を握るロバート・セシル役は、シャーロックの兄役で知られるマーク・ゲイティス。彼も「ロンドン・スパイ」に出てましたね~。冷酷で狡猾な悪人ではなく、穏やかに冷静に権謀をめぐらせる真面目な政治家って感じでした。カリスマなカトリック神父役のピーター・ミュランも、シブくて人間味のある好演。ケイツビーのいとこ役のリヴ・タイラーが、ほぼ紅一点のキャラ。久しぶりに見たけど、ずいぶんおばさんになったな~。キットよりデカい!男みたいだった。キットとロマンスな役じゃなくて安堵。
 華美ではないシンプルで趣ある衣装、撮影に使う本物の城や館も英国時代劇の魅力。郊外のロケ地も美しく、ますますイギリスに行きたくなりました。

 ↑ キット~日本では「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」が近日公開。マーベル映画最新作「ジ・エターナルズ」ではリチャード・マッデンと再共演!楽しみすぎる!




 
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ある日森の中イケメンに出逢った

2019-12-12 | 欧米のドラマ
 イギリスBBCのドラマ「チャタレイ夫人の恋人」を観ました~。
 20世紀初頭のイギリス。大富豪の貴族クリフォードと結婚したコニーだったが、クリフォードは戦場で負傷し下半身不随となってしまう。性的に満たされぬ日々を余儀なくされたコニーは、新しい森番のメラーズに強く惹かれるようになるが…

 D・H・ロレンスの原作小説は、何度も映像化された不朽の問題作。私のお目当ては言うまでもなく。メラーズ役のリチャード・マッデンリチャマ、やっぱ男前~そんなに前の作品ではないけど、何となく若い、ていうか、少年っぽさが残ってる感じのリチャマでした。ワイルドな風貌、ぶっきら棒で寡黙なリチャマ、すごく男らしいのですが、同時にすごく傷つきやすそうなナイーブさもあって、母性本能をくすぐります。リチャマといえば、不幸顔、不幸オーラ。階級社会の中で受ける理不尽で不公平、屈辱的な扱いに、怒りと悲しみをくすぶらせながら諦めきってる風情や、コニーへのあふれる恋慕や欲情でウルウル潤んでる瞳には、もうキュン死寸前になってしまいました。不幸や悲運が似合いすぎるリチャマ、もう明るくて幸せな彼は想像もできません。

 セクシーフェロモンもリチャマの魅力ですが、彼ってエロくはないんですよね~。イギリスのイケメン俳優のほとんどがそうですが、脱いでも色白で柔和な裸はあまり眼福ではない。まあ、いかにも鍛えました!な不自然なまでにバキバキ筋肉よりマシ。体毛が濃ゆいリチャマですが、胸毛が苦手な私もリチャマだったらチクチク痛くても無問題!

 日本では卑猥小説と見なされ発禁となった経緯とか、シルビア・クリステル主演作とかの影響で、禁断のエロ小説というイメージを持っていましたが、この作品はBBCのTVドラマということもあって、甘く美しい文芸ドラマに仕上がってました。濡れ場とは言い難い、とてもソフトなラブシーン。貴族の奥様が身分卑しい下男との情事に溺れる、という背徳感は希薄。身分差を超えて愛し合う男女のロマンスドラマになってました。ロレンスの小説は不倫の性愛と同時に、イギリスの階級社会のシビアな実態を描くことを意図してたと思いますが、このドラマではどちらもかなり薄口。コニーにはあまり葛藤とか苦悩、罪悪感がなく、すごくサバサバと明るく軽やか。ほとんどためらうことなく偽善に満ちた貴族生活を捨てるなど、現代女性に通じる自由さと強さ。
 
 メラーズも階級差への怨嗟や劣等感で、もっと屈折してたり刺々しいはずの男なのですが、かなり素直で純真になってたのが可愛かったけれど、ちょっと物足りなくもあった。身分差という枷があまり活かされてなかったような気がします。後継ぎが欲しいのでコニーに男をすすめたりするクリフォードの不道徳さ、退廃が貴族らしかったです。内心ではメラーズや使用人など虫けら同然に思ってるのに、表面的には常に優しく紳士的で慇懃なクリフォードの態度も、いかにも英国貴族。同じ格差社会でも、乱暴で下卑た韓国とはやはり違います。百年の恋も醒めるようなことをコニーに言ったりしたりするクリフォードですが、みじめすぎる寝取られ亭主っぷりには同情を禁じ得ませんでした。

 コニー役のホリデイ・グレンジャーは、ふっくらと健康的なピチピチギャルみたいで、可愛いけど貴婦人って感じは全然なし。クリフォード役のジェームズ・ノートンは、イケメンではないけど優しそうで親しみやすい顔。電気ショック療法シーンの感電演技が悲惨だけど笑えた。複雑な役を好演、熱演していました。クリフォードがコニーにあてがおうとする貴族の青年役で、「キングスマン」シリーズや「ロンドン・スパイ」などのエドワード・ホルクロフトがチョコっと出てました。メインキャラがみんな若い役者たちだったので、不倫とか背徳とかといったドロドロしい話にそぐわぬ爽やかで清々しい作風になってました。
 コニーとメラーズが情事を重ねる森が美しい!さわさわと森の木々の声のような風、静かで優しい雨etc.私もあんなところで暮らしたり情交してみたいものです。壮麗かつ気品あふれるチャタレイ夫妻の邸宅も素晴らしかった。夫妻のファッションも、韓国の成金とは真逆な優雅さ、趣味の良さです。

 ↑ ゲーム・オブ・スローンズ、観たいけど…ずっと悩んでます

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フレンチな緊急取調室!

2019-09-23 | 欧米のドラマ
 ネットフリックスのオリジナルドラマ「クリミナル」は、イギリス編、フランス編、ドイツ編、スペイン編とヨーロッパ各国で製作されたインターナショナルな企画ドラマ。好きなスターが出てるフランス編を観ました~。全3話、1話完結という超コンパクトさが私にピッタリ。
 第一話:テロに巻きこまれた女性は、実は現場におらず被害者給付金を騙し取っていたのではないか?第二話:建設中のビルで起きた転落は事故ではなく、建設会社の女性幹部による殺人ではないか?第三話:路上で殴り殺されたゲイの男性。容疑者の男は同性愛者を嫌悪する差別主義者なのか?
 事件捜査ものは和製も洋ものも食傷気味で、よほどな新しい切り口か、好きなスターが出てるかじゃないと、最近は観なくなってしまってる私。このドラマは後者だったので観ました(^^♪第二話に大女優ナタリー・バイが、第三話にはジェレミー・レニエが容疑者役で出演してます。

 ナタリーおばさまもすっかりおばあさんになりましたが、さすがフランス女優というか、ばばあ臭は全然しません。年下の男と恋愛してるバリバリの現役女役も不自然ではないところがスゴいです。見た目はシックでフェミニンだけど、内面は男よりも強く毅然とした豪胆なところが、いかにもフランス女性です。ラスト、悲しい真実を突きつけられ、泣き崩れるようなことはしないけど、苦悩から一気に老婆になってしまったかのような表情が印象的でした。

 ジェレミーもすっかりおじさんになりましたが、レオナルド・ディカプリオとかと同じで、少年っぽさも残ってる可愛いおじさん。雰囲気や体つきが男らしいところが好き。同性愛差別主義なゲス野郎かと思いきや。意外な正体が悲しかったです。世界でいちばんLGBTの人々が生きやすい国だと思われてるフランスも、実のところはまだまだ彼らにとってはイバラ状態なんですね。

 「変態村」や「レミング」のローラン・リュカが、すっかり枯れたシブい熟年になってて驚きました。登場人物は5人の取調官と容疑者だけ、ほぼ取調室だけでドラマは展開する舞台劇のような内容。劇的な展開はありませんが、容疑者との激しい攻防、取調官同士の軋轢など、緊張感があって退屈しません。それにしても、尋問が挑発的すぎ攻撃的すぎ。すごい失礼で無礼なんですよ。もし容疑者が事件に無関係だったら、後で訴えられそう。チームを指揮する若い女警部が、メンバーから嫌われすぎて可哀想だった。そんなにヤな女じゃなかったけどなあ。若い女、美人、有能なエリート、ということが男からも女からもやっかみや敵愾心を受けちゃうんでしょうね。テロや労働問題、同性愛差別など、事件に重く暗い社会問題を絡めていたのも、いかにも面白おかしく作ったフィクションっぽさのないリアリティをドラマにもたらしていました。 

 ↑ ジェレミーの新作は、イザベル・ユペールの息子役を演じた“Frankie”が楽しみ(^^♪
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守ってあげたい

2019-09-11 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマ「ボディガード 守るべきもの」を観ました~。全6話。
 アフガニスタンでの過酷な任務で心身に深い傷を負い、PTSDに苦しんでいる元軍人の警察官バッドは、列車での自爆テロを未然に防いだ功績により法務大臣ジュリア・モンタギューの警護に抜擢される。野心的なジュリアの政治姿勢に反感を抱きながらも、暗殺の危機に瀕する彼女を守り抜くバッドだったが…
 BBCのドラマは映画に比べても遜色なし、いや、ヘタな映画よりクオリティが高いです。全6話というのも、ダラダラと長々しいシリーズものが苦手な私にピッタリ。緊張感とリアリティがあり、余計なエピソードもキャラも極力排除してギュっと濃縮されてたので、集中力に欠ける私も一気に観ることができました。そうできたのはドラマの面白さもですが、主演のリチャード・マッデンによるところも大きかったです(^^♪♪

 「ロケットマン」でエルトン・ジョンを骨抜きにし食いものにする色男マネージャーを演じたリチャード・マッデン略してリチャマに、myイケメンレーダーはビビビと激しく反応。他の出演作も観ねば!と奮い立ったのですが、いちばん有名&人気の「ゲーム・オブ・スローンズ」は、とてもじゃないが長すぎて私には無理でもこのドラマは6話とコンパクトで、しかもBBCドラマ史上最高視聴率を記録し、主演のリチャマがゴールデングローブ賞ドラマ部門の主演男優賞を受賞と、まるで特典だらけのお買い得商品みたい。観ない理由がない!

 リチャマ、ロケットマンの胡散臭いダンディ色男とは役も見た目も別人。硬派で精悍な闘う男リチャマも超カッコよかったです短髪だといっそう男らしく、そして若々しい。ビシっとしたスーツ姿、警護中の姿勢の美しさに惚れ惚れ。そんなに大柄ではないけど、ガッシリと屈強そうな体格、シャープで俊敏な動きやストイックな雰囲気が、命がけの任務を遂行する男の役にピッタリ。

 いい男だけどカッコつけたヒーロー然としたところは全然なくて、心に傷と闇を抱えた男の暗さや虚無もデリケートに演じていて、役者としての力量も遺憾なく発揮していました。寡黙で無表情なんだけど、すごい悲しそうな顔、せつない目をするので、可愛く見えるんですよ。こんな男に守られたい、そして守ってあげたい、と強さと弱さで女心をグワシと鷲掴みなリチャマです。

 ジュリアとの年の差、身分違いのロマンスも、なかなかの大人テイスト。ラブシーンも美しくてセクシーでした。情事の後ベッドから出るシーンで披露する、リチャマのすっぽんぽんも見どころです。それにしても。二人が美熟女、イケメンだから発展した恋なんだろうな~。辻本清美大臣、ジャイアンツの田口警護官みたいな組み合わせだったら、抱きたい抱かれたいにはならないでしょうし。

 テロをめぐって内務省、警察、保安部が三つ巴の主導権争いと対立、そしてそれぞれの内部での権力争いが複雑に絡み、出し抜こうとしたり足を引っ張ったりの暗躍も面白かったです。それにしても。お偉いさんたち、権力と保身のためには国民の命や幸福なんてどーでもいいのね。いつどこでテロや暗殺が起きても不思議ではないロンドン、住んでみたいけど危険すぎるのでやっぱやめといたほうがいいかもね

 今の風潮に合わせての意図的な配慮でしょうか。女性と有色人種が地位の高い有能な役を担っていました。法務大臣のジュリアを筆頭に、バッドの上司、捜査を指揮する警察のトップ、バッドに協力する刑事、冒頭のテロ対策チーム長もスナイパーも、みんな女性でした。逆に、ジュリアと対立する首相や政治家、ジュリアの地位を狙う副官、その手先となる官僚、保安部長とその実行部隊、犯罪組織のボスなど、悪い連中はみんな悪そうな白人男性だった。

 策謀や陰謀に奔走するお偉いさんたちではなく、ザコだと思ってたキャラがラストに重大な関与、意外な正体を現すどんでん返しも秀逸でした。中途半端にハートウォーミング、たまにコミカル、なんて生ぬるさは一切なし。内容も演技もシリアスでハードなドラマでした。冷酷で醜い政治の世界、宗教と人種の社会問題、大人のロマンス、リアルなハードボイルド。どれも日本のドラマでは味わえません。同じボディガードドラマでも、ちょっと前にあったキムタク版とは大違い!だいたいキムタクみたいなチビで貧相なおじさんが要人警護なんてありえんし。実際にTVに映る、政治家の警護や犯人連行してる警察官って、みんなゴツくて勇猛そうでカッコいいもんね。

 危険すぎるけど、やっぱロンドンには憧れます。英国映画ファンにはおなじみのロンドンの風景も、ステイタスの高い人々が客のハイソなレストランも、庶民的なパブやカフェも、ロンドンまた行きたいな~と思わせてくれました。シーズン1、とあったから、まだ続くのかな?楽しみだけど、あれで終わりでも良いのではとも。私がバッドなら、もう警察辞めるわ!命がいくつあっても足りん!

 ↑ いい男!リチャード・マッデンパトリス・ルコント監督の「暮れ逢い」や、TVシリーズの「チャタレイ夫人の恋人」など、旧作もチェキってみよっと(^^♪



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The Romanoffs ①~④

2019-05-19 | 欧米のドラマ
 amazonのドラマ「ロマノフ家の末裔 それぞれの人生」第1話から4話まで観ました~。全8話。長々しい連ドラは苦手ですが、これは1話完結のオムニバスだったので、集中力と持続力がない私でも観ることができました~(^^♪
 ロシア革命で処刑された皇帝ニコライ2世一家を描く大河ドラマかと思ってたのですが、ぜんぜん違ってました。ロマノフ家の子孫だと信じてる人々を通して、現代的な人間関係や社会問題を炙りだす悲喜劇、ブラックコメディ調のドラマでした。
 第1話「ヴァイオレット・アワー」
 パリで暮らすアメリカ人のグレッグは、ロマノフ家の末裔だと称している金持ちの伯母マヌシュカの気難しさに辟易しながらも、彼女の遺産相続人になるために機嫌をとっていた。そんな中、新しい家政婦として派遣された若く美しいイスラム系の女性アジャルに、アヌシュカは難色を示すが…
 パリの意地悪ばあさんなアヌシュカの、イヤミや毒舌、あてこすりが笑えた。イスラム人はみんなテロリスト、女は多産で男はみんな複数の妻がいると本気で信じてる差別偏見が、トランプさんを支持してるアメリカ人とカブって皮肉な笑い。フツーの人なら速攻で辞めるか殴るかだけど、何を言われてもクールにスルーし、自分のペースでテキパキ仕事をこなすアジャルの忍耐強さ、賢さが素敵でした。二人の女性が、世代も人種も階級も超えて親密になってゆく姿が、ユーモア&ペーソスでもって描かれていました。

 アヌシュカがアジャルに遺産を遺さぬようにするため、アジャルを誘惑するグレッグが最低なゲス男なんだけど、ラストの痛快で優しいドンデン返しのおかげで後味は良かったです。
 アヌシュカ役はスイス出身のベテラン女優マルト・ケラー。デヴィ夫人をクール&エレガントにした感じの美老女。シャキっとした姿勢の良さ、ほっそりしたスタイルの良さ、趣味の高いファッションで、老いさらばえ感ゼロでした。グレッグは美男子という設定だったので、ブサイクじゃないけど地味なアーロン・エッカートはミスキャストだったのでは。アーミー・ハマーとかならピッタリな役。でも、素朴でおおらかなアメリカ人らしい風貌は、返ってパリの街ではカッコよく見えました。アジャル役のイネス・メラブが、すごい美人で可愛かった。パリの街並みも、観光プロモーションフィルムみたいに美しく撮られていました。

 第2話「空しい望み」
 陪審員に選ばれたマイケルは、美しい人妻ミシェルに心を奪われ、彼女に近づくためわざと裁判を長引かせる。マイケルの妻シェリーは、仕方なく独りでロマノフ家の末裔クルーズツアーに参加するが…
 中年ハゲおやじの下心丸だしな浮かれた言動が不快!ミシェルへの執着もほとんどストーカーでキモかった。陪審員裁判って、あんな風に簡単に一人のメンバーの身勝手な都合で左右されちゃうのもありえるんだよな~と、日本の裁判員制度について考えさせられました。悲劇で喜劇な結末が皮肉でした。ゴージャスなクルーズ船に感嘆。私もあんなリッチな船旅がしてみたい。船内の催し物が、楽しいけどバカバカしくもあって、これもすごい皮肉だった。

 第3話「栄華の果てに」
 ロマノフ家の最期を描くドラマの撮影に参加するため、アメリカ人女優のオリヴィアはオーストリアの田舎にやって来る。元女優のフランス人監督ジャクリーンやスタッフの、どこか不可解な態度に戸惑うオリヴィアだったが…
 イザベル・ユペールが大暴れ!ヤバいイカレ女を毒々しくエキセントリックかつ、のんしゃらんとスットボケ怪演。しらじらしい表面的すぎる親切や物分かりのよさで油断させといて、いきなり別人のように意地悪で冷酷な鬼女の正体を現す二重人格なユペりんが笑えた。俳優たちへのモラハラパワハラ演出シーンとか、レストランでの怨霊にとり憑かれた?イタコ演技とか、楽しそうでノリノリ。正気なのかコワレてるのか判らない言動は、オリヴィアだけでなく視聴者をも惑わします。小柄で華奢だけど、ものすごい存在感。アメリカのテレビ俳優が、同じ土俵に立って互角に渡り合える相手ではありません。

 テレビドラマの撮影風景が、興味深く描かれていました。役者さんもスタッフさんも大変そう!オリヴィアやジャクリーンに起きる怪奇現象?霊体験?は本物?それとも幻覚妄想?オカルト?ニューロティックもの?と思わせて、実は…なオチと皮肉な結末も楽しいです。
 第4話「秘密の重さ」
 ニューヨークの裕福な人妻ジュリアは、娘のエラの出産を間近にし悩んでいた。エラの実父は夫ではなく、元恋人の作家ダニエルだという秘密を、長年ジュリアは抱えていたが…
 ジュリアを筆頭に、みんなギスギス刺々しくて不愉快でした。アメリカ人を含め西洋人って、他人に対して無神経で意地悪なところが、東洋人よりも露骨ですよね~。ジュリアの、夫や娘の舅姑、お医者さんに対するものの言い方とか、カフェでのジュリアをバカにしたような若者たちの態度とか、イヤな人たちだな~と思った。ジュリアの思いやりのない、自分本位な生き方と性格に不快になるだけの話でした。ニューヨークの街並みや高級デパートなどは目に楽しかったです。
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イギリスおっさんずゲス不倫!

2018-11-15 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマ「英国スキャンダル セックスと陰謀のソープ事件」を観ました~。
 60年代のイギリス。議員のジェレミー・ソープは、厩舎で出会った青年ノーマンを愛人として囲う。情緒不安定が悪化し、それに辟易したソープに捨てられたノーマンは、ソープの母親や警察に二人の同性愛関係を暴露しようとするが…
 ヒュー・グラントとベン・ウィショー共演のイギリス版おっさんずラブです。同じおっさん同士の同性愛でも、ピュアな日本のオリジナルと違い、こっちはゲス不倫。男たちが繰り広げる欲望、打算、保身、恨みつらみ、といった人間の醜さが、イギリスらしいブラックでシニカルな笑いで描かれてました。

 日本でもちょっと前に、政界でゲス不倫が流行?しましたが、こっちは男女ではなく男同士ですからね~。スキャンダル度は格段に上です。実話というのにも驚かされます。殺人計画や裁判沙汰など、みんなまるでネタを提供するために騒いでるとしか思えませんでした。みんな大真面目で必死なところが、皮肉な笑いを誘います。ソープとノーマンのキャラ立ちした強烈な個性と言動が、とにかく驚異で愉快です。とにかく二人が、まるで競ってるかのようなゲスっぷり!どっちもゲスなんだけど、塩と砂糖ぐらい種類が違うゲス、というのが面白かったです。

 まずは塩ゲスのソープ。これぞ英国のエリート!な、スノッブで裏表がありすぎる政治家。常に他人をなめくさってる不遜な言動と思考回路、何でも自分の思う通りになって当然、自分に従うのは当然と思ってる傲慢さや、邪魔者や必要でなくなった者は虫けら同然扱いな薄情さ非情さなど、まさに人でなしの鬼畜。こんな政治家ぜったいイヤ!なんだけど、不思議と不愉快さとか怒りはほとんど感じません。常にひょうひょうとしてて軽やかなので、悪人には全然見えません。それはもう、ソープ役のヒュー・グラントがいつも通りの演技をしてるからでしょう。

 ズルくてスケベで軽薄なんだけど憎めない男役、はグラント氏の専売特許ですもんね。アメリカ人俳優だと演技が巧くても不快になるだろう役を、こんなにも笑える楽しいヒールにしてしまうなんて、グラント氏にしかできない芸当かも。困惑顔で毒を吐く、というグラント氏ならではの演技が今回も冴えてました。軽薄だけど教養ある育ちの良さそうな雰囲気、慇懃無礼な物腰も、ハリウッドのコメディスターにはないグラント氏の武器でしょうか。でもグラント氏も、すっかり爺さんになったな~。顔はもうシワクチャ。「モーリス」の美青年が、年月を経て再びBL、でもおっさんずゲス不倫なんて。自己軽視なセルフパロディ演技で、往年のファンをおちょくってるかのようなグラント氏の皮肉な人柄が、これまた極めてイギリス的ですね。

 そして、砂糖ゲスのノーマン。こいつがね~。ほんまソープじゃなくても始末したくなりますよ。底抜けのアホ?いや、実はズル賢い?どっちの面もクルクル見せて、ソープも視聴者も翻弄、困惑させまくり。悪人ではないけど、悪人よりもっとタチが悪いんです。ピュアすぎて融通がきかず、自意識が過剰で常に悲観的で精神不安定。虚言と被害妄想がはなはだしく、自分が不運で不幸なのは全部ソープや社会のせい、と思い込んでウジウジメソメソ、だけならいいけど、イヤ~な方法で意趣返しをしてくる攻撃性も発揮しまくるなど、弱々しい見た目に猛毒を秘めた害虫みたいな男なんですよ。多くの人に嫌われる反面、愛してくれる人も同じぐらいたくさん現れて、彼らの親切や情につけこみながら迷惑やトラブルを撒き散らして生きてる調子のよさに呆れます。

 そんなノーマンを、ゲイ役をやらせれば世界一のベン・ウィショーが大熱演!これほどまでにガラス細工でギザギザハートなオカマ心を表現できる役者、ベン子さんしかいません。ナヨナヨとクネクネしたキャマキャマしい仕草や歩き方が、堂に入りすぎ。目つきや喋り方がメンヘラすぎて怖い、けど、かなり笑えます。ビクビクおびえてるくせに、自分の身だしなみやいい男の目を常に意識してるところとか、国民カードへの固執など、かなりズレてて滑稽。ラストの法廷シーンでの、赤裸々すぎるセックス暴露や、女優かよ!なドヤ顔&ポーズも、ノリノリなベン子さんに喝采!少年のような肢体のベン子さんが着こなす、60年代の英国ファッションも目に楽しいです。とにもかくにも、メンヘラのオカマほどヤバい生物はないと思わせるベン子さんの怪演に瞠目!ヤバいメンヘラおかま役ながらも、その可愛らしく痛々しい風情で、ユーミンじゃないけど守ってあげたい~♪なベン子さん、魔性っぷりもハンパじゃないです。
 
 グラント氏とベン子は、冒頭に濃厚なイチャイチャシーン(ソープがノーマンをウサギちゃん♡と呼んで可愛がるのがキモ笑!)はあるものの、すぐに決裂しちゃうので一緒のシーンは少ないです。これが実話だということ以上に、これをテレビで放送できるイギリスという国に驚嘆です。露骨なゲイセックスシーンこそないものの、内容がエグすぎる。日本では絶対に制作不可能。同性愛が法律で禁じられていた、というのも今となっては信じがたい史実です。LGBTが犯罪か病気扱いされていた当時のイギリスでのゲイの生き辛さは深刻で、ゲスであると同時に哀れでもあったソープとノーマンです。

 あと、ゲス恋愛中にラブレター(現代だとメールや写メ)を送るのは軽率で危険。そして、恋愛後のアフターケアも怠ってはいけません。ソープがノーマンの国民カードを何とかしてあげてたら、あんな面倒なことにならなかったでしょうし。きれいに別れるのが肝要、でも難しい、とソープの不注意や手ぬかりを見ていて痛感しました。

 ↑ベン子さんの新作は、名作の続編「メリー・ポピンズ リターンズ」です
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ホロウ・クラウン2 薔薇戦争

2016-10-14 | 欧米のドラマ
 「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」シーズン2を観ました~。ヘンリー5世亡き後に勃発し、数十年にわたって繰り広げられた内乱“薔薇戦争”を描いています。全8話。
 前半は、ヘンリー6世編。父王ヘンリー5世が他界し、生後間もなく即位したヘンリー6世ですが…彼がシーズン1・2通して最も悲惨、可哀想な王さまだったかも。地獄の鬼嫁や佞臣奸臣たちに散々振り回され利用されまくり、挙句の果てにはゴミのように見捨てられ、荒野を彷徨う裸の原人となり果てて…リチャード2世も悲惨でしたが、ヘンリー6世はさらに無残。気が狂うのも当然な目に遭うヘンリー6世を、デリケートに悲しく演じたトム・スタージェスは、イケメンではないけど若いのになかなか魅せる役者っぷり。
 それにしても…薔薇戦争、もうハチャメチャすぎて笑えます。ちょっとは仲良くしようよ~信じ合おうよ~分け合おうよ~と言いたくなるほど、王族も貴族もおのれの権勢欲、野望にとり憑かれてて、ほぼ10分ごとに殺し合いしてますもん。罠や裏切り、陰謀や奸計のオンパレードで油断すると一寸先は闇、一瞬も安心して暮らせない百鬼夜行の王宮は、東京都庁どころじゃない伏魔殿。そこに愛や信頼など微塵もありません。

 ↑可哀想なヘンリー6世。荒野の原人姿がとにかく強烈!
 権力の移り変わりが目まぐるしすぎて、さっきまで天下獲ったでぇ~!!と意気揚々だった人が、5分後にはさらし首になってたり。もうその繰り返しなんですよ。諸行無常な急転直下の展開は、ジェットコースタードラマみたいで飽きさせません。権力って手に入れたら必ず滅びると分かっていながら、みんな血眼になって争奪し合わずにはいられぬ甘い毒リンゴみたいなものなのでしょうか。でもほんと、当時の英国の権力争いって、荒っぽいですよね~。敵の陥れ方が、強引すぎで短絡的すぎ。日本の戦国時代のほうがまだ、公明正大さとか様式美を大事にしてたような。英国の王族貴族、権力のためには手段選ばず、情けも無用、ですもん。卑劣な鬼畜が多すぎ。国民のことなんて、これっぽっちも考えてないし。当時の平民、ほんといい迷惑だっただろうな~。
 シーズン2で最も強烈なキャラだったのは、ヘンリー6世の王妃マーガレット。こいつ、ほんと非道いんですよ!見た目も性格も言動も、野蛮で峻烈。権力掌握のために、猛然と屍を重ねていくマーガレットを激演してるのは、「ホテル・ルワンダ」などでの好演も忘れがたい黒人女優のソフィー・オコネドー。黒人女性がフランス王室出身の英国王妃?!と、意表を突きすぎ。どこかの蛮族の女酋長にしか見えません。周囲が次々と非業な死を遂げて消えていくのに、ボロボロになってもしぶとく生き延びて最後まで毒を撒き散らすマーガレットは、そのあまりの猛烈キャラっぷりゆえにだんだん笑えてくるキャラに。リチャード3世の時代になっても、どこからともなく現れて狂態を見せるマーガレットは、見せ場も多く最初から最後まで出てくる唯一の人物で、いちばん美味しい役だったかも。女優なら一度はやってみたい役なのでは。
 後半は、悪名高いリチャード3世編。この時代が、いちばん陰惨な地獄絵図かも。邪悪な野望のために、肉親や近臣を次々と容赦なく葬り王位に就くリチャード3世は、その極悪非道なモンスターキャラ同様、見た目も怪異な化け物となってます。

 昔でいう、せむし?身体障害が不気味で、これいいのかな~日本では絶対ムリだよな~な役。演じてるのが、今や日本で最も人気がある英国スター、ベネディクト・カンバーバッチ。渾身の大熱演です。彼もまた、舞台俳優としての実力を遺憾なく発揮してます。
 動きが大変そうな身体障害演技も壮絶ですが、こんな卑劣でズルくて冷酷な人間いるのか~とゾっとするような、世の中や人を不幸にするために生まれてきたような、善いところなど一切ない非情無情な悪鬼野郎を、唾がこっちにまで飛んできそうなほど圧巻の大熱演をしつつ、非道すぎて何だか笑えてくる、ちょっとドぎついユーモアをこめて楽しそうにも演じてるバッチさんに、役者やのお~と感嘆することしきりでした。

 劇中、もう非道いことズルいことしかしないバッチさん。カメラ目線になって邪悪な本音を視聴者に告白したり、邪悪なことを考えたりしたりしてる時の顔芸が、ヤバすぎて笑えます。どんどんエスカレートしていく邪悪さが、何だかワクワク感にあふれていたり。

 最低最悪な役をチャーミングに見せなければならないリチャード3世役は、生半可な俳優には演じられない難役でしょう。極悪凶悪な役でも、大真面目だけどどこか浮世離れしててヘンなところが可愛い、というバッチさんならではの魅力も十分に活かされてました。

 ↑可憐で可哀想なリトル・プリンスふたり
 権力争いに敗れて非業な死を遂げる人たちは、因果応報というか自業自得なのですが、巻き込まれただけの無垢な人たち、ヘンリー6世とか、特にリチャード3世に始末されてしまう幼い兄弟ふたり、エドワード5世とその弟が哀れすぎて涙。あの子たち、リチャード3世のコンプレックスを刺激するほど可愛くて賢すぎたのが仇になっちゃいました。ブサイクで頭が悪いガキんちょだったら、死なずにすんだはず…演じてる二人の男の子が、ほんと賢そうで可愛かったから、その悲運に胸が痛くなりました…
 リチャード3世の母役、泣く子も黙る大女優ジュディ・デンチが、貫禄と哀感たっぷりの存在感。その他も、「ダウントン・アビー」など人気英国ドラマに出てる、どっかで見たことあるな~な俳優も、たくさん出演してます。

 上質の舞台を観てるような演技と演出、美しいロケ地の映像や建築物、衣装も、時代劇の素晴らしさを堪能させてくれます。台詞が詩的で格調高く、日常生活でも使いたいほど(笑)。こんな大人が楽しめる日本の時代劇も観たいな~。
 リチャード3世を斃して即位するヘンリー7世は、The Tudorsのヘンリー8世の父。薔薇戦争は終わったけど、王室の内紛はどんどん複雑に血生臭くなっていくんですね~…

 ↑どんな役してもイヤミがなく、ユニークで可愛いバッチさん。彼主演のコテコテおばかコメディが観たい!そんなバッチさんの最新作は、話題のアメコミ映画「ドクター・ストレンジ」です。楽しみ♪
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僕の彼氏はスパイだった

2016-10-11 | 欧米のドラマ
 前から観たくて観たくて仕方がなかった英国のドラマ「ロンドン・スパイ」を、ようやく観ることができました~(^^♪全5話。
 ロンドンで暮らすゲイの青年ダニーは、アレクッスという若い男と出会い、恋に落ちる。ダニーは寡黙で謎めいたアレックスを本気で愛するようになるが、突然アレックスは失踪してしまう。アレックスの変死体を彼の部屋で発見したダニーは、すでに恐るべき陰謀に巻き込まれていた…
 イギリスといえば、スパイとBLですが。このドラマ、その二つが合体した美味しすぎる内容なんですよ。スパイもBLも私には無縁な世界なので、まさにファンタジー感覚で楽しむことができました。
 まず、スパイの部分…

 ほとんど姿や実態を現さず、邪魔者や不要な者たちを抹殺したり、証拠隠滅したり、罠にハメたり、警察や郵便など公的機関も操作するのが、不気味で怖かったです。特に、ダニーをHIVに感染させるとか、ひ、非道い!アレックスの死も、非道すぎる。なぜアレックスがあんな非業の死を遂げなければならなかったのか、ラストに判明するのですが。いくら何でも、末路が無残すぎ。もっと他に方法なかったのかな~。アレックスの死は、彼らにとってもすごい損失だったでしょうに。現実にもあんな風に、国家権力って非力な市民を虫けら同然に踏み潰すのでしょうか。いきなり事故で死んだあの人も、政府の陰謀だー!と騒いでイタい人扱いされてるあの人も、ひょっとしたら…?

 007でおなじみのMI6が、非情で気味の悪い組織として描かれてました。ほんとにあんなことやってるのなら、恐るべき犯罪集団ですよ。ジェームズ・ボンドを見る目も変わるわ~。
 そして、BLの部分は…

 男同士の愛は、やっぱ切ない悲劇が似合います。ダニーとアレックス、悲しい運命の恋でした。出会ってしまったせいで、お互いに不幸になってしまったけど、短くも激しく深い愛に生きることができた二人が、すごく羨ましかったです。二人が共有する、痛みをともなった幸福。彼らの傷つきやすくも静かで優しい時間が、胸にしみました。
 主人公のダニー役は、今やゲイ役を演じたら世界一のベン・ウィショー。

 ベン子さん、今回もリアルでナイーブなゲイゲイしさでした。少女のようなガラス細工の繊細さだけど、不屈で毅然とした強い男でもあって。男でも女でもない、男と女どっちの強さ弱さを持ってる複雑さや多面性は、他の俳優にはないベン子の魅力です。小柄で華奢な彼、ほとんど少年の風貌と雰囲気。裸もBL漫画の男の子みたい。美しく力のある瞳も、彼の武器ですよね~。役者は瞳が大事。
 ラブシーンは、これをTVで!?お茶の間レベルをかなり超えてます。「怒り」のブッキーには、これぐらい頑張ってほしかったかも男ふたりが、ケツ丸だしの全裸になってガッツリネットリ絡んでます。そういうのが苦手な方には、かなりキツいかも。

 濡れ場は第1話に1回あるだけですが、かなり濃密でインパクトあり。私が衝撃を受けたのは、ベン子が上になってたこと!ベン子がタチ!ってのが意外でしたLGBTに対する差別や偏見が、今もかなり厳しいイギリスの現実も興味深かったです。

 007でMI6職員のQ役を演じてるベンがダニー役、というのがなかなか小粋なキャスティグです。ベンのファッションが、フツーっぽく庶民的ながらもトラッドなところが、さすが英国。

 アレックス役は、「キングスマン」ではスパイ候補生役だったエドワード・ホルクロフト。マティアス・スーナールツを優しくした感じの顔?天才は孤独で不幸、他人とうまく付き合えないコミュ障さを、静かに悲痛に演じてました。スーツが似合う彼も、さすが英国人です。

 ダニーの親友で元スパイのスコッティ役は、「アイリス」でオスカーを受賞した名優、ジム・ブロードベント。スコッティの、年の離れたダニーへの父親のような愛とせめぎあう、ダニーへの男としての恋心が切なかった。老いたゲイの悲哀をにじませながら、開ききった丸い大きな眼球が何だか狂気じみていて怖かったです。
 アレックスの母役は、「さざなみ」での名演も記憶に新しい大女優シャーロット・ランプリング。

 冷徹で謎めいた上流階級のマダムを、いぶし銀のシブさでクールに演じてるランプリングおばさま。出演シーンは多くはないのですが、さすがの存在感です。彼女のエレガントにマニッシュなファッションも、やはりハリウッドの女優とは違うハイセンスさで素敵でした。
 あと、ダニーの前に現れる謎の男役で、イタリアの人気スターであるリッカルド・スカマルチョも出演してます。久々に見たリッカルド、めっちゃ濃ゆくなった巨人の高橋由伸監督に見えた…ダニーとかつて爛れた関係だったらしいゲイの男役、シャーロックの兄マイクロフト役で有名なマーク・ゲイティスが、危ないキモい怪演。

 ロンドンの街並み、テムズ川や公園、郊外にある貴族の屋敷など、イギリスだ~と感嘆。ロンドン、また行きたいな~。いや、ちょっとだけ住んでみたいな~…

 ベン子さんの出演作は、日本では早春に「未来を花束にして」が公開されます。主演のキャリー・マリガンの夫役みたいです。ゲイ役じゃないのか~。ちょっとガッカリ
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ホロウ・クラウン⑨~⑪ ヘンリー5世

2016-09-30 | 欧米のドラマ
 「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」第9話から最終回の11話、ヘンリー5世編を観ました。
 ヘンリー4世亡き後、ハル王子は王位を継いでヘンリー5世となる。フランスとの戦争が激化し、ヘンリー5世は自ら兵を率いて戦地に乗り込むが…
 おバカな放蕩プリンスだったハル王子が、別人のような凛々しく英邁な王さまに変貌。トム・ヒドルストンが、堂々の出ずっぱりな一枚看板主演です。いや~王さまになったトムヒも、めっちゃカッコよかったです!王者らしい威風堂々さ、勇猛さ峻厳さは、まさに漢(おとこ)!甘い二枚目っぽさを封印した剛毅な演技が、やっぱトムヒも元々は舞台で鍛えた役者なんだよな~と思い知らせてくれます。劣勢の中、戦場でイギリス兵や臣下を鼓舞する演技は神々しくもあり、圧巻の迫力とカリスマ的魅力です。

 王の気高さ、威厳がありつつ、ハル王子時代と変わらない気さくさ、親しみやすさもヘンリー5世の魅力です。トムヒの明るい人なつっこい笑顔、まさに魔性に近い人たらしな武器ですよね~。俺たちもう友だち?と勘違いさせてしまうような、名もなき兵士や下民に対する磊落さが、ヘンリー5世の人間の大きさを表してるようでした。戦場では鬼神のごとく、敵のフランス王には厳しいヘンリー5世。結婚相手となるフランス王女には、オチャメで優しい。王女にプロポーズするシーンのヘンリー5世が、めっちゃ可愛いんですよ。グイグイ押しまくると同時に甘く紳士的で。王女じゃなくても惚れるわ~。ルックスには自信ないけど、みたいなことを王女に言うヘンリー5世ですが。はぁ!?本気で言ってるの?鏡、見たことないの?と驚かされます。史実ではヘンリー5世って、ブサイクな王だったのかな?なら、トムヒは超ミスキャストあんなイケメン王に求愛される王女が羨ましかった。王女、はじめっから全然イヤそうじゃなかったもんね。そりゃそうでしょうよ。あれがブサイクな爺の王だったら、絶対イヤー!!だったでしょうから、ほんとあんな男前王で良かったね!

 ヘンリー5世と、英語が解らないフランス王女とのやりとりが、トンチンカンだけどロマンティック。王女役のフランス女優、メラニー・ティエリーが美女ではなく好感のもてるブスカワ女優だったのが良かった。侍女役のジェラルディン・チャップリンとのトボけたやりとりも笑えます。
 フランス王族役のフランス男優たちも、なかなかイケてました!

 フランス王シャルル6世役は、英語圏の作品でも活躍している国際派、ランベール・ウィルソン。かつての美青年も、すっかりシブい熟年に。今でも麗しい!理想的な美熟年。気品と優雅さは、英国男優にも負けてません。王太子ルイ役のエドワード・アクロートも、なかなかのイケメンでした。ルイの弟オルレアン公役は、前からちょっと気になってたスタンリー・ウェバー。出番も台詞も少なく残念、でもやっぱいい男!3人とも英語ペラペラで、フランス人同士でもずっと流暢な英語を喋ってました王女だけ英語ダメで、ほぼフランス語オンリーだったのはなぜ?

 ↑イメケンブラザーズの王太子ルイと弟オルレアン公。エドワード・アクロートとスタンリー・ウェバーは、「バトルフィールド」という映画でも共演してるので観ねば!
 日本の戦国ものも同じですが、戦争に駆り出される下民も悲惨ですよね~。ぜったいあの時代の兵士にはなりたくないです。このヘンリー5世編では名優のジョン・ハートがナレーションをしてるのですが、最後に登場する彼の正体が意外かつ、なるほど~な筋立ての巧さでした。
 シーズン2には、ベネディクト・カンバーバッチが登場♪

↑スタンリー・ウェバー、1985年生まれの現在31歳!シ、シブすぎ!嵐の二宮とか相葉と同じ年頃だなんて、信じられん。英語が得意なスタンリーは、「アウトランダー」など英米のTVドラマでも活躍中
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