ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

日産カーウイングス第3世代は本当にすごいのか?

2004年10月09日 | ITS
日産カーウイングスが第3世代に入る。一部では随分注目されているようだが、聞こえてくる画期的な新フューチャーはドコモのi-modeとの連携「送っとケータイ」。これが本当に画期的なの?
少なくとも名前は脱力だけど。

その中身は以下の通り。
「送っとケータイ」サービスを選択するとクルマの現在地位置、カーナビに設定された目的地位置、経由地などが送信される。
その情報を元に、コンテンツプロバイダーが各ユーザー向けに地図やタウン情報を盛り込んだページを作成し、そのURLを返信する。
たとえは「ぐるなび」と「ゼンリンデータコム」では、それぞれ現在地周辺の飲食店情報、目的地周辺の地図を提供する。
ユーザーはクルマから降りたら、メールに記載されたURLアドレスに接続すれば、目的地周辺の地図やタウン情報がケータイで見られる。

これってそんなに画期的に便利なのか?単にタウン情報を獲得する時の位置情報をクルマのGPSから取得するというだけのことである。別に携帯に現在地をインプットする手間がなくなるだけの様な気がする。というか、GPS携帯なら携帯だけで出来てしまう。

先進安全装備

2004年10月08日 | ITS
世界ITS会議 名古屋でトヨタがインテリジェンス安全装備を公開する。
新型レジェンドにもナイトビジョンやレーダーが用意されている。
ITSの目玉は結局車両安全装備なんだとおもう。

先進安全装備は、レーダーやカメラによる追突防止やレーンキープといった機能とナビ情報などが組み合われて更に進化していく。

そして、こうした機能が今後の自動車のキラー装備になるんだろう。
将来、自動車業界は燃料電池化という産業の大転換が起きる。それに向けての合従連合が起きた。
しかし、その前に先進安全装備による小転換がおきる事になるだろう。先進安全装備が付いていない車は売れなくなる。こうしたコンポを自社で開発出来ない中小メーカーは他社や部品サプライヤーから購買しなくてはならず、競争力の差がさらに拡がる。

中期的な自動車におけるキラーコンテンツは通信やテレマティクスではない。安全装備だ。
そのために通信が必要なら、使えばいい。ローカルスタンドアロンでいけるなら、そうすればいい。いずれにしても実は通信がキーワードではなく、安全だということに気が付くべきだ。

「クルマが通信でつながればすごいことが起きる」というよう前提で物事を考えない方が良い。

新型レジェンドのインターナビ

2004年10月07日 | ITS
トヨタ、日産がテレマティクスのリニューアルを発表する中、ホンダは本日発表の三代目レジェンドから「インターナビ・プレミアムサービス」のサービスをアップグレードする。

元々このサービスの最大の売りは会員からの通信によるフィードバック(プローブ)に基づいた渋滞予測であるが、今回のバージョンでは高速道路の車線別渋滞予測まで示される。これはすごい。

ホンダのテレマティクスの他二社との違いは、顧客に対してテレマティクスとは呼ばず、あくまでナビのサービスの進化であるとしている点である。したがって、今回のバージョンアップもナビとしての使い勝手を向上させていることに主眼をおいている。

このアプローチは極めて正しく、また顧客オリエンテッドだと思う。顧客が求めている物はクルマを運転する上での利便性であり、通信で繋がることに価値を求めている訳ではない。



JARIのITS産業動向調査報告

2004年10月07日 | ITS
日本自動車研究所(JARI)は04年度版「ITS産業動向に関する調査研究報告書」を発表した。

これによると、ナビの累計出荷は07年度末に3400万台、ETC車載機は08年度末で1600万台に達すると見ている。
ETCに関しては、既に年間200万台レベルの販売となっており、今後車両標準装備が進めば1600万台は妥当な予測だと思う。

一方で遅れているDSRCの商業利用については、電技審予測(00年立ち上がり、2010年には9千億円市場)は大きく外れて04年時点でまだ立ち上がっておらず、業界アンケート、ヒアリングの結果からは06年前後立ち上がりとなり、結果電技審予測から5-6年ずれ込むだろうという見解を示している。

しかし、DSRCの商業利用がいまだ立ち上がらないのは遅れている訳ではなく、私が繰り返し主張している通り単純に顧客ニーズがないからではないのか?5-6年遅れでシナリオ通り立ち上がるというのは業界の希望的観測にすぎないと思う。

モバイル放送・追加

2004年10月07日 | ITS
昨日、モバイル放送について書いたが、忘れていたことがある。地上波デジタルとの競合である。地上波デジタルはすでにインフラ整備が進んでいる上に、ハイビジョン対応、なおかつ民放は無料。
これらの条件差を考えると、モバイル放送の将来はきつい。

将来ナビなどに標準装備されて普及が進むというシナリオにしても、今の状況では地上波デジタルチューナーが採用される事になるだろう。

モバイル放送

2004年10月06日 | ITS
モバイル放送が10月20日より正式にサービスをスタートさせる。ニュースリリース

モバイル放送の最大のメリットはギャップフィラーという中継アンテナにより安定した画像を走行中にも見ることが出来るということである。
これはマーケットあり、とみる。車載の場合は、走行中にドライバーが見るのはまずいが、それは建前であって実際のマーケットでは視聴可能にしているクルマがとても多い。そして、消費者の最大の不満は画像の悪さである。
車内以外でも、例えば娘がボーダフォンのTV携帯に機種変したが、これも画像の悪さが不満である。

車載テレビをつけてみると判るが、どうしてもラジオよりテレビを見てしまう。やはりテレビというメディアは偉大な暇つぶし娯楽媒体だ。移動中までTVを観るという需要が存在するかどうか疑問視する向きもあるようだが、これは絶対にある。

さて、問題は月々の視聴料だ。今のところ映像+音楽で2500円/月程度、映像だけなら1800円/月程度の様だが、これでは急速な普及はないと思う。
まず、音楽コンテンツにあまり可能性はない。今あるメディアに不満がないからである。
TVコンテンツについては、ニーズは間違いなくあるが、「画像の改善」に対して、車載機代5万円と聴取料年間2万円を払うというのはまだまだマニアレベルの話だろう。
多分立ち上がりに発表された専用車載機は売れないと思う。見た目の華がないし、販路がどうなるのかも判らないし、ずいぶんがんばった値付けなんだろうけど、まだ値頃をはずしていると思う。が、今後ハイエンドナビに組み込まれる等して徐々に拡大する可能性はある。

だけど、配線を工夫して走行中にTVが映るようにしている人(私もそうです)も、走行中は画像が乱れるからあまり画面を見ないんだと思う。これが、常にキレイに映ったらマジに事故が心配。

クルマの情報化

2004年10月05日 | ITS
日経BPの2002年「クルマの情報化市場調査」からもう少し。

ITSやテレマティクスが今後ユーザーに提供していくと思われるサービスのなかで、消費者が有料でも利用したいと回答している項目のトップは盗難防止、安全関連である。
(上位3項目:盗難車両追跡46%、駐車時不正動作時の携帯への通知41%、緊急通報38%等)

一方、有料情報として事業者が皮算用するロードサイド情報、目的地情報などは軒並み10%以下となっている。

※なお、「有料でも利用する」というよりは、「有料サービスに値する」という意味でのYes回答が含まれており、実際にYesと答えた人が有料サービスを利用する訳ではない。

当然、ショッピング関連の情報には消費者は絶対に料金を払わないから、どうやら消費者はセキュリティと安全関連以外にはお金を払う気はないようだ。

実際、インターネットでも単純に有料コンテンツとしての情報提供でビジネスを成立させている例はBtoCではほとんどないと言っていいのだろう。
インターネットの場合はビジネスモデルをネット広告に依存している。

テレマティクスの事業化を考えると、これと同様の広告に依存するビジネスモデルが車内で組めるかがポイントとなるだろう。

ここで車の特殊性が出てくる。走行中に車の画面を漫然と見ることは許されない。従って広告は画面ではなく、音声で行われなくてはならない。しかし、誰でも運転中は音楽かラジオを聞いている。それに割り込む広告を消費者は容認するだろうか。絶対にあり得ないと思う。
もう一つは、事業者から料金を徴収してそのレストランなどを検索結果の上位に持ってくるというグーグル方式がある。しかし、これも度が過ぎると情報の質を見抜かれて、誰も利用しなくなる。旅行ガイドがバックマージンをもらえる店を紹介するのと同じだ。

光ビーコンの民間開放

2004年10月04日 | ITS
警視庁は光ビーコンの民間利用を開放する。
10月4日付け日経朝刊

うーん。DSRCの民間利用だってそんなに明るい未来はなさそうな状況なのに、何でさらにそれと競合するような動きをするのだろうか?
自車位置情報や車両のメンテナンス情報の提供なんていっているが、新聞記事では光ビーコンの場合エンジンを始動するたびに車両側のIDはランダムに変更されるため、個人情報は保護されるとしている。それじゃあ、いったい何の情報を企業やディーラー向けに提供するのだろう?
殆ど商業施設内での駐車場誘導くらいしか使い道がないと思うが。

「ITS市場は60兆円」について

2004年10月01日 | ITS
どうも、天文学的ITS市場予測金額に対する懐疑論は結構前からITS事業者の間では出ていたようである。2002年4月の日経BP調査で、この予測に対して「やや厳しい」「非常に厳しい」と回答したITS関連事業者の割合は75%に達している。(私が答えるとすれば「殆ど夢物語」だけど)

もっとも、この60兆円という数字は2000年~2015年の累計で、かつETC利用による高速料金やDSRC利用によるガソリン代金決済といった、ITSによって需要が創造される訳ではないものも含まれている。含まれているというよりも、それがすごく大きい。

この有名な60兆円は電気通信審議会1999年2月の答申である。国交省のITSホームページでも、未だに50兆円という数字がでている。こちらはVERTIS試算となっているが、詳細は不明。
いずれにしても何故そんなに古いデータがまだ生きているのか不思議だ。

この日経BP調査はいろいろ面白い内容を含んでいる。これをベースにしばらく書いていきたい。

フェリカとDSRC

2004年10月01日 | ITS
JRのスイカやソニーのEdyで使われている非接触型ICチップ「Felica」によるキャッシュレス決済が携帯電話にも内蔵され、「おさいふ携帯」と宣伝されている。
Edyの状況などを考えてもキャッシュレス決済というのはそんなに普及する物じゃないかな、と思っていたが、携帯に内蔵されると状況が変わってくるかもしれない。
ドコモの宣伝攻勢の威力はすごい。あれだけ大量に宣伝すれば、マーケットを説き伏せるように市場浸透する可能性がある。

実は私もEdyを持っている。
しかし、殆ど使っていない。なぜなら、チャージが面倒。加えていつ使うか判らないことに多額のチャージをしたくない。それ以上に、享受されるベネフィットであるキャッシュレス決済にさほどのメリットを感じない。キャッシュレス決済による利便性よりもチャージするという行為の面倒くささが勝ってしまう。
携帯の場合は、I-mode経由でチャージできること、利用明細が画面で確認出来ることといったアドバンテージがある。ベネフィットは小さくとも、この機能が付いた携帯が普及すれば、じんわりと広がっていくのだろう。

そうなると、コンビニやファーストフードのキャッシュレス決済はフェリカという事になる。それに加えてETCで使われているDSRC利用によるキャッシュレス決済が入り込む余地があるのか、大いに疑問だ。
DSRCのアドバンテージはノンストップ決済である。たとえばドライブスルーでのノンストップ商品授受が実現されれば可能性もあるが、それはあり得ない。仮に予約して作っておいてもらったとしても、受け取った商品の確認が必要だからである。

もともとDSRCの商業利用なんてあり得ないと主張してきたが、フェリカが台頭するというシナリオ下ではさらに絶望的だ。