ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

「ETCでガソリンスタンド決済」の幻想

2004年10月26日 | ITS
改めて電技審答申を読んで、また文句をつけたくなってしまった。
本当にビジネスになるかどうかは、事業を行っているプロが考えるべきで、役所の仕事を信じると痛い目にあうという良い例だ。
いろいろ問題点はあるが、一番はETC技術(DSRC)を活用した商業アプリケーションの可能性を過大に評価していることだ。
特にガソリンスタンド(SS)におけるキャッシュレス決済が牽引車となり、2015年単年度で1兆円になるとしている。
試しに「DSRC ガソリンスタンド」でググってみると、バラ色の未来が山ほど出てくる。
しかしこれは実現しないだろう。

まず、一消費者として考えてもさほど便利な事ではない。セルフのスタンドならいまでもクレジットカードを機械に通すだけでキャッシュレスであるし、フルサービスでも料金の受け渡しがそんなに面倒なことだとは思わない。
つまり、消費者ニーズが薄い。

SS業者にとっては、投資が必要である。しかし、このシステムはコスト低減にも売上増にも結びつかない。料金収受の手間が無くなる事によるコスト低減効果が無いわけではないが、今でもクレジットカード決済ならほとんど手間がかかっていないし、ましてセルフ化が進む中であまり意味もないだろう。

お客さんの車の情報を取得できることから、SS業者にとってのCRM的な側面もいわれているが、現実問題として今のSSにはCRMをやる余裕はないだろう。
フルサービスでお客さんの顔を見ながら商売をするSSは、会員制度などの地元密着型伝統的CRMですでに車検などの付帯ビジネスを獲得している。しかし大部分のSSはセルフ化など、低コストで効率よく燃料を販売する方向に行こうとしている。
車検月はステッカーでもわかる。それをみても車検の勧誘をしないSSが、はたしてDSRCを導入したら勧誘するようになるのか?

もともと薄利商売に苦しむSSがこれに投資するとはとても考えられない。