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ETC2.0専用 新規格料金所は絵に描いた餅

2015年08月23日 | ITS
ETC2.0に関するリリースでは現行ETCに対する利便性向上についていろいろ書かれているが、その中身は実際たいしたことはないのでこれからETCを買う人は実売5000円程度の現行タイプで十分だ。以下のまとめをみてほしい。


このまとめにはあまりにバカバカしくて入れなかったが、ETC2.0専用のゲートバー無し新規格レーンという構想もある。
最近のthe PAGE で井口裕右氏が紹介されているETC2.0の記事にもその記載がある。
「2016年春頃の導入を予定しているという新規格の高速道路料金所では、ゲートバーを廃止して一定速度で通過できるETC2.0専用のレーン設置が計画されており、これまでよりもスムーズに料金所を通過できることが期待されます。」

しかし、これはほとんど実現不可能だ。新規格料金所が実現不可能というのではない。それをETC2.0専用にするということが不可能なのだ。

現在国交省と各道路会社はETC専用レーンを端っこから真ん中に移す工事を進めている。それにともない、徐行せずに通行できるようにレーンの幅を拡大すると思われる。
はたして、このレーンを16年から「ETC2.0専用」で運用できるだろうか?いまETC装着車のうち2.0は1%しかない。100台に1台しか通れない料金所をレーンの真ん中に作れるわけがない。また、現行でも徐行すれば通過でき渋滞問題は解消しているのに「徐行しなくていい」というだけの付加価値を評価しETC2.0に移行する消費者はいないだろう。
さらに、実用面での問題として99%を占める通常ETC装着車の誤侵入を防げるわけがない。誤進入に対してバーを設けるというようなジョークはしないだろうから、通常ETCが誤進入しても課金することになる。なぜなら、現行ETCでも100キロ程度での通過であれば読み取りに何ら問題はない。
いや、ちょっと待って、それのどこがETC2.0専用レーンなのか?

これがほとんど無理筋だということはおそらくもう国交省や道路会社関係者には了解されていると思う。だから最近のリリースには出てこない。

ETC2.0は鳴り物入り(とはいえ一般での認知は極めて低いが)ではじまったETCの「DSRCその他利用」の目玉であり、すでに民間を巻き込んでかなりの投資がされている。
一般認知が低いからメディアも勘違いして新しい何かのようにいうけど、実際はもう10年やって普及しないというお荷物案件だとも言える。
ここに至ってその普及のために「ETC2.0でしか享受できないサービス」を打ち出してきた。これは販売戦術としては正しいが、一番の目玉らしい「経路に応じた割引」にしたって技術的には現行ETCで対応可能であり、消費者にとっては欺瞞だ。これは国交省側はきちんと説明する義務がある。

今後もETC2.0普及のためになりふり構わない施策が出てくる可能性があるので十分注視していきたい。