みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

チャーチル戦車の巻(その9)

2006年04月23日 23時27分38秒 | AFV(英・チャーチル)
さて、Modell Transのパッケージになっている写真、これは現在ノルマンディー・ジュノー海岸のGraye sur Merにモニュメントとして展示されている車輌で、1976年に何と「発掘」されたものらしいのです。この車輌について調べてみました。
他の上陸地点と同様、ジュノー海岸も地雷や有刺鉄線、対戦車壕、そしてドイツ軍により水浸しにされた湿地帯に行く手を阻まれていました。ここに上陸したカナダ軍第3師団の第26Assault Squadronも、上陸後すぐさま内陸へと前進を始めましたが、海岸から内陸部へ通ずるほとんど唯一の道を進むには、どうしてもこの対戦車壕(水を流した用水路)を埋めなければなりません。このチャーチルAVRE(英軍所属)は粗朶束(そだたば)でこの溝を埋めるべく前進しましたが、草むらで溝の幅が見えず、用水路に突っ込んでしまい、ハッチからは水が流れ込みます。戦車兵は全員脱出に成功しましたが、前方の十字路に陣取ったドイツ軍からの迫撃砲弾により残念ながら三人が戦死、残りの戦車兵も負傷し、その日の内に英本土に送還されました。さて、とにかく一刻も早く内陸へと進まねばなりません。このチャーチルを引き上げる余裕はなく、その上にそのまま架橋する他にすべはありません。早速チャーチル架橋戦車が、岸からこのAVREの上に橋を架けます。向こう岸に届かない部分にはさらに粗朶束が埋められました。そうして続々と後続の戦車がこれを渡り、十字路付近のドイツ陣地も沈黙させられました。この仮設橋と粗朶束は戦車にとって決して通りやすい道ではなかったようで、何台もの戦車が足を踏み外しますが、他の車輌に牽引されて引っ張り上げられています。結局このチャーチルAVREは「橋」の土台として、味方の戦車を前進させる役目を立派に果たしたと言えます。この「橋」は逐次補強され、戦後はこの上にコンクリートの舗装も施されて、そのまま道として使われました。
1975年に、フランス側の協力の下、有志の人々がこのチャーチルを発掘することになり、翌76年に作業が始まりました。最も注意したのはやはりチャーチルが搭載している弾薬等の爆発物です。乗員の護身用のステン短機関銃とその弾薬に至るまで慎重に処理しつつ、とうとう30年あまりの年月を経て、チャーチルは地上に引き上げられました。元々被弾して放棄されたものではなく、水没した車輌ですから保存状態は非常によく、乗員の糧食のチョコレートも食べられそうな感じのまま発見されたそうです。そして丁寧に補修され塗装されたこのチャーチルAVREは、モニュメントとして水没地点の近くに保存されることとなりました。除幕式には健在だった元乗員も列席したとのことです。
このGraye sur MerのチャーチルAVREについては、
http://sboos.perso.ch/Normandie44/Histoires/Graye_Histoire.htm
http://www.strijdbewijs.nl/normandie3/nor03.htm
http://www.normandie44lamemoire.com/fichesvilles/grayestecroi.html
http://www.cwgcuser.org.uk/personal/lifrance/lifday07.htm
等のサイトを参照。フランス語やドイツ語のもありますが…。
また現在の展示車輌の細部は
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/avre.htm
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/spigot.htm
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/interior.htm
などで見ることができます。