みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

ノルマンディー上陸作戦、場所と時間と技術の奇襲

2007年06月10日 13時47分20秒 | 書籍
 今日は写真は、なし。
 雑誌『軍事研究』はよく目を通します。5月号と6月号にはディエップ上陸とノルマンディー上陸が採り上げられていました。軍事史的に大きな意味を持つ二つの作戦についてはすでに様々な本が書かれています。でもこの二つの記事は、面白く読みました。まず、6月号のノルマンディー上陸について。藤井久著「『場所』と『時』の奇襲 ノルマンディー上陸作戦」(シリーズ連載:戦史解題17)です。
 ドイツ側はもっと北、カレーに近いあたりを上陸地点だと予測していたのに、連合軍はノルマンディーを上陸地点に選んだ。これが「場所の奇襲」です。もうひとつ、上陸作戦の常識として、上陸開始時刻は高潮時を狙うもの、しかし敢えて連合軍は低潮時を狙った。これが「時間の奇襲」です。もちろん低潮時に上陸すれば、舟艇から岸まで兵士は砂浜を数百メートル走らなければならない。常識的にはそんな危険なことはできない。しかしこの場合、ロンメルが海岸に地雷付きの障害物を多量に設置していた。高潮時に舟艇で突っ込めば損害が大きい。低潮時に姿を現した障害物を工兵が除去しながら上陸するために、敢えて低潮時を狙った、その為にドイツ側が油断していた、ってことです。もちろんそれは、連合軍側が制空権を完全に握っていて、諜報活動により沿岸防備が比較的手薄であることを知っていて、しかも直前に徹底した爆撃と艦砲による準備砲撃をする、という前提で選択できた作戦です。
 もうひとつの「技術の奇襲」。この指摘はなるほどと首肯しました。上陸してもその橋頭堡を維持し、内陸へ侵攻するには、大量の物資を補給しなければならない。もちろんノルマンディーに上陸すれば、近くのシェルブールをすぐに奪取しなければならない。しかし万一シェルブールが落とせなければ…
 そこで発案されたのが人工港湾「マルベリー」でした。これを迅速に曳航してノルマンディーで組み立て、物資の揚陸に使う。そして内陸侵攻のための物資供給を最悪の場合すべてこの人工港湾から行おう、と決心した。そのため連合軍としては上陸地点もその後の侵攻も港湾の確保を最優先する必要がなくなった、というわけです。
 反対にドイツ側からすると、連合軍の上陸地点はきっと港湾だ、という予測が外れたのみならず、ノルマンディーに上陸が始まった後も、それは陽動作戦で、主力は別の港湾を狙うはずだ、という思いこみを生んだ。結果的に機甲師団を打撃のために投入することを遅らせた、というわけです。これが「技術の奇襲」。なるほど、それは以前読んだ『ノルマンディーのロンメル』(朝日ソノラマ)とも符合することが多く、納得しましたね。


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