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学びの共同体づくり

2012-08-15 23:54:37 | 教育・子ども

いじめや不登校など、さまざまな困難を抱えていたり、低学力に悩む学校を立ち直らせる教師らの自主的な学校改革の挑戦が、小・中・高校3500校に広がっています。
 「学びの共同体」づくりです。 これを20年ほど前から提唱・先導してきた佐藤学・学習院大学教授に聞きました。

 学校の役割は、一人残らず子どもに学ぶ権利を保障することです。かつ最高レべルの教育にいつも挑戦できることです。教師たちも一人残らず生きがいを持って仕事ができ、成長できる。また、大方の保護者・市民がその学校を信頼して改善に協力・参加できる学校に仕上げる必要があります。

それには三つの哲学が必要です。まず公共の哲学。学校が公共空間として地域に開かれ、教室は同僚教師に開かれていること。二つ目には民主主義の哲学です。子どもから校長まで、聞き合う関係を通して一人ひとりの声が尊重され、学校運営や授業に生かされる。三つ目には卓越性の哲学です。最高のレべルの学びを追求するという意味です。
 授業改革について述べましょう。どんな学びも個人ではできません。あらゆる学びは新しい世界との出会いと対話であり、対象・他者・自己との対話による意味と関係の編み直しです。その根本は協同的です。

 ですから小学校低学年は全体の学びとペア学習、3年生以上と中学・高校は男女混合4人の小グループで協同的学びを中心に授業を組織しています。
 学び合いは、わからない子が「ねえ、ここどうするの?」と質問するところから出発します。
 この質問に答えてくれる子がいて、わからない子どもは一人で学ぶ限界を超えることができるのです。自らの力で窮地を抜け出す能力、すなわち他者を信頼し、援助を求める能力を育てます。学び合いは互恵の関係です。
 この学びが成立していればグループ内でつぶやきが交流され、一人ひとりが仲間のつぶやきや言葉に耳をすまし深く考え合います。
 誤解されやすいのは「教え合い」との混同です。教え合いはおせっかいの関係です。それは「待つ子ども」を育ててしまい中学・高校になると自分を見捨てた教師、友だちを「恨む子ども」へと転じてしまいます。
 学力は向上するのかとよく聞かれます。「学びの共同体」の学校改革において学力向上は結果であって目的ではありません。しかも最後に手にする結果です。
 すべての子どもが学びに参加し、問題行動がなくなり、不登校の子どもが激減し、そのあとに出てくる結果なのです。その間2、3年を必要とし、時期が熟すと一気に、脅威的に学力は向上します。

「学びの共同体」の改革の中心目的の一つは教師が専門家として成長できる学校づくりです。教師の成長には職人としての成長と専門家としての成長の二つがあります。前者の方法は模倣、後者は授業研究です。
 授業研究はベテラン教師も含めて教師が授業を公開し、相互に学び合う関係を築いてこそ改革の実があがります。そこに教師同士の同僚性も育まれます。
 学校改革の最大の障害は教師と保護者との対立・不信です。
 私は「モンスター・ペアレント」(文句をつける親)という言葉は間違っていると思います。どんな苦情であれ、親は発言する自由がある。 学校はこれをうけとめなければいけない。
 教師たちもはっきりものを言えばいいんです。お互いが普段思っている事を言う。そうでなければ信頼関係は築けません。それを保障するのが教育委員会の役目です。

 ここで一つ大いなる誤解を解きたい。教育は「サービス」でしょうか。いいえ、教育は次世代を担う子どもにたいする社会とおとなの責任です。 新自由主義教育政策が教師を「サービス」の提供者、保護者をその享受者とし、教師の責任を「応答責任」から「説明責任」へと転換させました。「説明責任」とは、納税者が払った税金だけ仕事をしているか、という責任です。
 教育は応答、すなわち引き受けるところからスタートします。どんなに困難な子でも、複雑な子でも引き受けないと教育は始まらないのです。
教師と保護者との相互不信の関係を醸成した原因は、教育は「サービス」という考えです。

 この誤解を解きほぐし教師と保護者が責任を共有し、信頼関係を作り直す必要があります。
 そのために私は、保護者の「学習参加」を求めてきました。「授業参観」ではなく、授業づくりに参加するのです。
 「学びの共同体」の改革は10年ほど前からやってきました。全国どの地域より困難な学校が多い地域、貧困が多い地域でも、外国人の子どもが多い地域でも、改革によって不登校が激減しましたし、低学力が深刻な学校でも長くて4年かければ全国レベルに回復できました。
 学校改革の一番の基本は信頼です。子ども同士、子どもと教師、教師同士、校長と行政、教師と保護者。これを築くことなしには教育の環境はよくなりません。


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