ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

トロット戦線7年目

2011-02-19 02:23:14 | アジア
 ”BORN AGAIN”by HAN HYE JIN

 韓国のトロット演歌歌手、ハン・ヘジンの昨年出たアルバムであります。
 ジャケにやや大きめに”7”の文字が。「この数字には今回、思い入れがあるのよ、お客さん」と言わんばかりだが。実際、このアルバムが彼女にとっては7枚目・・・というのは彼女がそこそこキャリアのある人、というのが分かるだけの話だが、”7年ぶりのリリース”でもあるという事実はただ事ではない。

 ゼニになりそうな才能の持ち主にはガンガン仕事をさせて儲けるだけ儲け、あとは使い捨て、なんて論理で動いてるんじゃないかなと想像するかの地のトロット・シーンで7年間も動きがなかったなんて、そりゃ実質、引退同然だったんじゃないのか。何があったのか知らんが。
 実際、彼女はこの7年間、ろくにアルバムも出せない不遇な状態が続いていて、おもいあまって自分でアルバム製作の費用を捻出しようとしたりなどの苦労もしたようだ。何でそんなことになったのか、検索してもまるで情報が引っかかってこないが。

 (同姓同名の女優がいて、そちらの情報の山にも見込まれたみたいで、何も見つからない。ちょっと話はずれるが、韓国ではこの同姓同名問題がやたら多い気がする。芸能界に同じ名前の歌手が三人、俳優が二人、とか平気で存在しているのだが、後からデビューした奴が違う芸名にしたりとか、何らかの工夫があってもいいんじゃないのか。この辺も国民性というか、そうは行かない何かがあるんだろうか)

 ともかく彼女も、やっとのことで再デビュー、という気分だったのだろう、タイトルも”ボーン・アゲイン”と再生を謳い、ジャケ写真だって根性が入っているぞ、ちょっとエッチだ(裏ジャケも中ジャケもこんなんだぞ!)そして内容はといえば、当然、7年間の冷や飯食らいの怨念を晴らさんが如く、もう頭来たかんね、の情念の世界が期待されるんだが。

 冒頭、アップテンポのファンク・アレンジされたド演歌で幕を開けるが、韓国の演歌歌手に多い野太い声帯を生かした、タフなだみ声を叩きつけるヘジン女史の迫力はたしかに”恨7年”の恨み晴らさずにおくものか、といった思いが込められている感じで、こいつは痛快である。
 が、2曲目は、今回の再デビューを応援してくれた男性歌手と想像するんだが、彼としっとりと歌い上げる美しいラブ・バラードだったりする。う~ん・・・
 まあ、それは違うんだよなあ、とかいう私のほうが変な期待をしすぎなのかも知れない。

 とはいえ、かなり棘のあるハスキー・ボイスの持ち主であるハン・ヘジン、辛口に凄みを利かせて歌うナンバーの方が断然魅力的なんだなあ、やっぱり。綺麗なバラードとか懐メロっぽいおとなし目の恋歌などしおらしく歌っても、なんか物足りなく思える。ちなみに、ハード演歌はアルバムの半分強を占めます。韓国の人たちも、この辺が好きだと思うんだが。そればっかりでも困るんだろうか。

 なんて次第で、まるでボクシング観戦しているみたいに「行け!もっと行け!」とか妙な方向に焦れつつ、アルバムを鑑賞する私でありました。




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