ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ナポリの100年を歌う

2008-10-17 02:13:00 | ヨーロッパ


 ”Napulitanata” by Eddy Napoli

 エディ・ナポリの盤を聴くのは久しぶりだ。なんていうとこの歌手に詳しいみたいだが、何のことはない、ナポリの民俗派ポップス歌手としてはもうベテランの彼の盤を聴くのは、当方、これが2枚目。

 それにしても前に聞いた盤は日本盤だったんだから今思い出しても驚き呆れる。あれはオーマガトキ・レーベルだったっけ?こんな、日本においては何の知名度もない、興味を持つ人もあんまりいそうにない人の盤をよく出したなあ。
 売れなかったろうなあ。マニアとしてはありがたい話だけど、そういう商売、きつかろうなあ。ありがたい話だけどなあ。あんまり無理しないで、とか心配になってしまうよなあ。

 で、前回のその盤、もう軽く10年は前に出た盤と記憶しているんだけど(探せばどこかにあるんだけど、面倒でね)いかにもディープにナポリの伝統音楽を探求するアーティストの作品、という重い出来上がりで聴き応えあり、当方としては、う~むと唸って感心し、そして大事にレコード棚にしまい込んで、そのまま盤の存在自体を忘れてしまった。
 敬して遠ざける、ってのはこういうのを言うのかね。どうも情けないが当方、基本的に軽薄なポップスファンなんで学術的な奴とか相手にするとこうなってしまう。お許し願いたい。 

 けど、今回のこの盤はそのようなこともなく、たびたび引っ張り出して聴くことになりそうだ。なにしろ今回は、いかにも庶民に愛されて来た巷間の流行り歌、みたいな親しみやすい”歌謡曲”が満載の一発だから。
 イタリア人の、というかやっぱりナポリ人のと言うべきなんだろうな、普段着の彼らの体温が伝わってくるような気のおけないメロディが目白押し。聴いていると南イタリアの陽光溢れる青空がスコンと頭上に開ける感じだ。これは無条件で楽しいね。

 エディはシリアスな研究家の貌をかなぐり捨て、あるときは臆面もなく哀感を込め、あるときは思い切り楽しげに声を張り上げて、それら人々の心の襞にしっかりと馴染んだ歌歌歌を歌いつくす。
 マンドリンやアコーディオンやタンバリンなどを全面に押し出した、イタリアの民族色を濃厚に漂わせた伴奏もイナたくて実に良い感じ。マンドリンの運ぶ海の香りがことに嬉しい。

 何しろジャケにはイタリア語の解説しかないんで、どのようないわくのある歌が収められているのかは分からない。曲目の下に書かれている数字がそれぞれの曲が世に出た年を指すなら、冒頭のタイトル・ナンバーが1884年製で最古の曲、以下、20世紀のあっちこちの年代から満遍なく曲を拾い集めて、最後にエディ自身の作になる2007年製の曲で締めるという形だ。
 100年を超えるスパンでナポリの大衆歌謡の歴史を俯瞰してしまった訳で、これはとんでもないアルバムと言うべきなのかも知れないな。収められている音楽の楽しさゆえに、そんな事はまるで頭に入ってこないんだけどね。
 
 それにしても、エディ・ナポリって芸名(?)も凄いよね。こんな名前でナポリ歌謡を歌う稼業をやってきてるんだから。日本で言えば、フランキー・博多とか中洲のジョニーとか名乗るようなものでしょ?どういうつもりで・・・まあ、どうでもいい話だけどさ♪


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