ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

”R&Bのキムヨナ”の光芒

2010-01-23 01:19:35 | アジア

 ”不朽の名作”by Lena Park(Park Jung-Hyun)

 え~、”R&Bのキムヨナ”ってのは他の人の使っていたフレーズです。誰だったかなあ。で、”不朽の名作”ってのは、このアルバムのタイトルを日本語訳するとこうなるらしい。
 で、そんな彼女は韓国R&B界のもはや大スターですな、Lena ParkことPark Jung Hyunちゃんであります。

 1976年3月23日生、生まれも育ちもアメリカのロサンジェルスです。父親が牧師で、彼女は幼い頃からその教会で歌っていて、ゴスペルのコンテストで何度も優勝し93年にはゴスペルのアルバムまで出している。これはもう、幼い頃より筋金入りだったようだ。
 で、98年にアルバム『Piece』で韓国デビュー。お洒落な帰国子女として売り出されたんだろうなあ。ともかくそのアルバムが50万枚も売れ、大会場でのコンサートも即刻チケット売り切れの大騒ぎだったそうな。
 その後も彼女は充実した音楽活動を続け、韓国R&B界の若き重鎮となりつつある、と。

 とか書いていてもなかなか苦しいものがあるのは、私はその時点の彼女をリアルタイムで追いかけていないんですな。当時、韓国の音楽を聴いてはいたんだけど、トロットとかポンチャクとか、ディスコ演歌路線の音ばかり聴いていて、この辺は外角低めに見送るというか軽くスルーだったのだった。だからよく知らないんだ。今頃になって付け焼刃で彼女の事を調べたりしている状況で。
 何でそんなことになるかというと、彼女が「アメリカ帰りのお洒落なR&Bの妖精、リナ・パーク」としてはじめて韓国の音楽ファンの前に姿を現した頃のレコーディングがこうして”不朽の名作”なる凄いタイトルで再発されたから。

 名作と呼ばれながらも、ながらく絶版だった天才少女リナ・パークの1stから3rdまでがセットで、しかも一枚分の価格で再発されるというんで、こいつは良い機会だと購入してみたら、これが良かった。素直にこういうものも聴いておかなきゃいけないなと反省しつつ、今、この3枚組の迷宮に踏み迷って出られない状況であるわけです。
 韓国音楽ファンには「今頃、何を言っている」と呆れられるんだろうが、ふん、笑わば笑えというのだ。

 確かに幼少の頃からゴスペルを歌っていただけあって、特にスローバラードなどの輝きはただ事ではないと素直に脱帽します。とにかく”凛”という漢字がめちゃくちゃ似合うキリッと歌声の屹立する様子は、そりゃあもう、あと一息で天国の扉の輝きがあります。
 1stのレコーディング時で彼女は21歳、まだ声に幼さがあるものの、ウィークポイントになっていない。むしろそれまでも一つの個性として表現の中に生かしてしまう。この年齢の女の子でなくては表現し得ない、鮮烈なハングルR&B表現がもはやデビュー作で一つの完成を見ているといっていいのではないか。

 ところで彼女、祖国においてそれだけの成功を収めながら、人気に一段落付くとアメリカに帰国し、大学に復学してしまうんだから、クールなお話で。要するに彼女、あくまでも”韓国系アメリカ人”なんだろうな。この、どこか気の抜けるような挿話も含めて、なかなか良い話だなあと思う次第で。

 で、さて、問題はその後の彼女のアルバムも集めようかどうしようか、ということで。この先を聴き進めば、「これはちょっときついかな」ってな作品に出会ってしまうかもしれない。そう上手い話ばかりは転がっていないのが現実というものですからね。このままデビュー当時の天才少女ぶりにただ酔い痴れていたい気もするのですなあ。