南斗屋のブログ

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警察の監察課

2009年01月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
被害者遺族「署員が威圧」(読売新聞)

 交通事故のご相談の中には、警察官の発言や態度に不満があるというものがときどきあります。

 その中にはだいぶこれはひどいなあと思うものもなくはありません。

 さて、では、そんなときにどのような法律上の手段が取れるのかというと、実はこれといったものがないのが現状です。

 ずさんな警察官の捜査方法により被害者が損害をこうむった場合、警察相手に損害賠償請求できないだろうかとお考えの方もあるかもしれませんが、これは今のところ最高裁で明確に否定されてしまっております。

 この最高裁判決は、
「犯罪の捜査及び検察官による公訴権の行使は、国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではない」
と言い切ってしまっており、警察官の犯罪の捜査は、犯罪の被害者の利益のためではありませんよと言っているのです
(最高裁平成2年2月20日判決 判例タイムズ 755号98頁)

 今のところ、できるもっとも現実的な方法は、冒頭の新聞記事でも示唆されているとおり
 県警本部にある監察室とか監察課
に訴えることであると思います。

 この記事では、山梨県警の監察課が事実関係を調査し、被害者サイドの言い分に耳を傾けてくれたものです。

 しかし、被害者が正しい主張をしても、この記事のように警察が謝るということはまれなことだと思います。

 監察課は警察のお目付け役とも言うべきところですが、警察は組織体として自分達をかばうという性質も持っており、監察が正常に機能しなければ、結局は、起きたことを追認するだけの機関ということにもなりかねませんので。

 今後もこのような被害者の要請に丁寧にこたえられるかどうかが問われることでしょう。

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