高次脳機能障害も以前に比べて、知識が広まってきており、弁護士のホームページなどでも高次脳機能障害については触れられてきております。
そのほとんどは、交通事故の加害者に対する損害賠償の関係ですが、実際にご相談をうけていると、いろいろな問題がでてきます。
高次脳機能障害と生命保険というのは、これまたひとつの大きな問題です。
たとえば、家族のひとりに、生命保険をかけていた。交通事故にあってその家族が高次脳機能障害で重度後遺障害を負ったので、生命保険会社に請求をしてみたが、保険会社は、「寝たきりになるような場合でないと、重度後遺障害とはいいませんよ」といって、全然扱ってくれない。
この保険会社の言い分は正しいのか?
という問題です。
この点が問題となった裁判例として、東京地裁平成18年1月31日判決(公刊されている裁判例集には載っていないようです)というのがあります。
被害者側は、生命保険に対して高度障害状態を残したとして保険金3000万円の請求をしたのですが、裁判所は請求を認めませんでした。
問題は、「高度障害状態」とは何なのかという点です。
このケースでは「高度障害状態」というものが、次のように約款に定められていました。
「高度障害状態」
=中枢神経系又は精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
そして「終身介護を要するもの」には、次のような規定がありました。
「終身介護を要するもの」
=食物の摂取、排便、排尿その後の始末及び衣服着脱、起居、歩行、入浴のいずれもが自分ではできず、常に人の介護を要する状態。
結論として裁判所は、この被害者は「高度障害状態」ではないとしました。
なぜならば、このケースでは被害者は、自賠責等級2級が認定されているが
・食事は不完全な場合もあるものの、自分で行うことができる
・排便、排尿は、排便の拭き直しはあるものの、便意を感じてトイレに行き、用を足して終えることは可能
・起居や歩行動作は自力で行える(但し、転倒のおそれあり)
・衣服の着脱や入浴については監視、必要に応じて介助が必要にすぎない
だから、先ほどの「終身介護を要するもの」の定義にあてはまらないからです。
この考えからは「高度障害状態」というのは、遷延性意識障害のようなケースでしか認められないのではないかと思ってしまいます。
そして、まさにそのような限定的な考えをしている裁判例もあります。
東京地裁平成18年6月30日判決(これも公刊されている裁判例集には載っていないようです)は
「自力で身体を動かすことができたり、食事を一部でも自力で摂取できる場合は、高度障害状態には該当しないと解すべきである」
と言いきっています。
高次脳機能障害は、1級の場合でも自力で食事を食べられない、などという例はまれですから、今紹介した東京地裁の解釈からすれば、高次脳機能障害は「重度障害状態」とはいえないことになってしまいます。
つまり、重度後遺障害を理由として、生命保険金請求はできないということになってしまいます。
このような解釈でよいのかは、私は非常に疑問に思っています。
というのは、生命保険の約款では
両眼の失明
ということだけでも「高度障害状態」となると、規定していることが多いからです。
両眼の失明の障害者と、重度の高次脳機能障害者のどちらの障害が困難かは、なんともいえない問題ですが、少なくとも高次脳機能障害者の方が軽いと断定はできないはずです。
そうすると、約款の解釈をもっと緩やかにするか、約款自体を改正して高次脳機能障害者を救済する方向で、変えなければならないと思います。
そのほとんどは、交通事故の加害者に対する損害賠償の関係ですが、実際にご相談をうけていると、いろいろな問題がでてきます。
高次脳機能障害と生命保険というのは、これまたひとつの大きな問題です。
たとえば、家族のひとりに、生命保険をかけていた。交通事故にあってその家族が高次脳機能障害で重度後遺障害を負ったので、生命保険会社に請求をしてみたが、保険会社は、「寝たきりになるような場合でないと、重度後遺障害とはいいませんよ」といって、全然扱ってくれない。
この保険会社の言い分は正しいのか?
という問題です。
この点が問題となった裁判例として、東京地裁平成18年1月31日判決(公刊されている裁判例集には載っていないようです)というのがあります。
被害者側は、生命保険に対して高度障害状態を残したとして保険金3000万円の請求をしたのですが、裁判所は請求を認めませんでした。
問題は、「高度障害状態」とは何なのかという点です。
このケースでは「高度障害状態」というものが、次のように約款に定められていました。
「高度障害状態」
=中枢神経系又は精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
そして「終身介護を要するもの」には、次のような規定がありました。
「終身介護を要するもの」
=食物の摂取、排便、排尿その後の始末及び衣服着脱、起居、歩行、入浴のいずれもが自分ではできず、常に人の介護を要する状態。
結論として裁判所は、この被害者は「高度障害状態」ではないとしました。
なぜならば、このケースでは被害者は、自賠責等級2級が認定されているが
・食事は不完全な場合もあるものの、自分で行うことができる
・排便、排尿は、排便の拭き直しはあるものの、便意を感じてトイレに行き、用を足して終えることは可能
・起居や歩行動作は自力で行える(但し、転倒のおそれあり)
・衣服の着脱や入浴については監視、必要に応じて介助が必要にすぎない
だから、先ほどの「終身介護を要するもの」の定義にあてはまらないからです。
この考えからは「高度障害状態」というのは、遷延性意識障害のようなケースでしか認められないのではないかと思ってしまいます。
そして、まさにそのような限定的な考えをしている裁判例もあります。
東京地裁平成18年6月30日判決(これも公刊されている裁判例集には載っていないようです)は
「自力で身体を動かすことができたり、食事を一部でも自力で摂取できる場合は、高度障害状態には該当しないと解すべきである」
と言いきっています。
高次脳機能障害は、1級の場合でも自力で食事を食べられない、などという例はまれですから、今紹介した東京地裁の解釈からすれば、高次脳機能障害は「重度障害状態」とはいえないことになってしまいます。
つまり、重度後遺障害を理由として、生命保険金請求はできないということになってしまいます。
このような解釈でよいのかは、私は非常に疑問に思っています。
というのは、生命保険の約款では
両眼の失明
ということだけでも「高度障害状態」となると、規定していることが多いからです。
両眼の失明の障害者と、重度の高次脳機能障害者のどちらの障害が困難かは、なんともいえない問題ですが、少なくとも高次脳機能障害者の方が軽いと断定はできないはずです。
そうすると、約款の解釈をもっと緩やかにするか、約款自体を改正して高次脳機能障害者を救済する方向で、変えなければならないと思います。