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左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より-週刊ヒッキイ第639号

2023-04-03 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第639号 【別冊 編集後記】

第639号(No.639) 2023/4/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」



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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第639号(No.639) 2023/4/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」
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 前回は、左利きのチェリストを紹介しました。

 今回は、この世界とは異なり左右が逆転した<左利きの世界>を描く
 広瀬正のSF『鏡の国のアリス』からその主人公を取り上げます。

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 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界 (11)
  ◆ 広瀬正『鏡の国のアリス』より ◆
   ~ 左利きの世界におけるサキソフォンの名手 ~  
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 ●広瀬正『鏡の国のアリス』

1972年に河出書房新社より書き下ろしで出版された。
著者の死(1972年3月9日)後三ヶ月のこと。

その後、

集英社文庫・広瀬正小説全集4巻『鏡の国のアリス』1982/5/1



として発売されたものを私は持っています。

あらすじは、

《青年が銭湯に入っていたら、いつの間にか女湯になっていた!
 美容整形医のもとへ性転換手術の相談にきた青年が語る奇妙な体験…。》

左右対称の設計になっている銭湯の男湯の湯船につかっているうちに、
左右反転した異世界に転位した主人公・木崎浩一は、元の世界では、
左利きのサキソフォン(テナーサックス)奏者でした。

女湯から出てきたということで警察沙汰になりますが、
精神に問題があると思われ、精神科医のもとに――。
その人が、<左利き友の会>主宰者の朝比奈だった。

その世界では、「右利き」とされる人はみな左手を使っていて、
「左利き」とされる人が右手を使っていた。
文字はみな左右反転の鏡文字。

そこで、あれこれありまして、木崎は朝比奈先生の下で、
左利き友の会のお手伝いをするように――。

(この「左利き友の会」は、1970年代に実際に活動していた、
 精神科医・箱崎総一さんが主宰したそれをモデルにしています。)


 ●サキソフォン

 《「ラッパじゃないんです。
   サックスは金属製ですが木管楽器なんです」》p.80

 《「サックスという楽器は左右対称じゃないんです。
   だから困るんです」》p.80

 《「サックスは、こういうふうに、右手を下に左手を上にして持って、
   右側に構えるようにできています。指でおさえる鍵(キー)が、
   上のほうは左側に、下のほうは右側についているわけです。
   だから、それが逆になっているサックスは、
   ぼくには演奏できないんです。ぼくは、さっき楽器屋へ行って、
   それをたしかめました。あのサックスを吹けるようになるのには、
   一月練習しないとだめでしょう。だから困るんです」》p.81

これがサックスという楽器です。

木崎さんは左利きなのですが、
元の世界で右利き用のサックスに慣れてしまっているので、
こちらの元の世界の左右反転した
「(元の世界でいう)左利き用」のサックスは演奏できない、
というわけなのですね。


 ●「左利き用」テノール・サキソフォン

あるとき木崎は、朝比奈先生から、
アメリカのキングという管楽器の会社が、
日本での販売キャンペーンとして、職人が手慰みに作った
「左利き用」の鏡像のテノール・サキソフォンを使った懸賞を行う、
というので、そこに出場しないか、と訊かれる。

こちらの世界の「左利き用」というのは、
元の世界での「右利き用」に当たるわけで、
木崎が使っていたものと同じ構造なのですから、
彼にとっては得意とするところ。

元の世界での仕事がそのまま役に立つわけです。

 《「きみは、左きき用のサキソフォンなんかないと、
  この前いっていたね」/
  「ええ、ありません。あるはずがないんです。
  サックスというのは……」/
  「わかっている。右手左手平等に使う楽器だからというんだろう。
  非対称の楽器でありながら、左右平等というのは、おもしろいね。
  非対称なのに、その鏡像が存在し得ない。
  まるでパリティ非保存説だね。だが、そこで、そのおもしろさに
  目をつけた人があったとしたら、どうだろう」》p.220

サキソフォン、テナー・サックス、まあ、どう呼ぶかは別にして、
もう一つよくわかりません。

ジャズの演奏は、どこかで見たような記憶はあります。

サックスは、リコーダーと同じで、右手が下側、左手が上側を担当して、
ギターなんかと同じように、どちらかというと右腰側にかけて持ち、
いってみれば、「右構え」で演奏しています。

確かに他の楽器同様、左用があるようにも思えません。

ただ、いつもいいますように、
両手を使うから左右平等かどうかは、大いに疑問です。


 ●左ききが売り物のバンド「ザ・サウスポー・キングス」

ストーリーにもどりましょう――。

彼にとって難関は鏡像で記された楽譜でしたが、
特訓を重ね、ついに優勝します。
優勝と賞金の他に、その時に伴奏したアメリカ人二人
(ひとりはドラマーで左利き)という仲間を得、バンドを組み、
新しい世界でバンドマンとしての生活をスタートします。

しかし、一つ悩みがありました。

 《「ザ・サウスポー・キングスは左ききが売り物のバンドなんです。
  そうして、それだけです。人気があるといっても、
  お客さんはぼくの演奏を、音楽を聴きに来るんじゃなくて、
  左ききの楽器が珍しくて、来るんです。
  ステージの横に、ふつうのテナー・サックスを置いて、
  お客さんにそれとくらべさせたりして……まるで見せ物なんです。
  僕はつくづく嫌になりました」》p.252

彼は、性転換して、また例の銭湯の湯船につかり、元の世界に戻ろう
と考え、美容整形の先生を訪れます。

先生はいいます。

身体の大きな人がその恵まれた身体を活用して相撲の力士になるのと
同じだ、と考えたらどうだろうか。

相撲だって、君は見世物のように感じるかもしれないが、
見世物をショー・アップという言葉に代えたらどうだろうか。
プロのエンターテイナーは、ショー・アップしてお客を集めておいて、
しかるのちに、自分のほんとうの芸をみせるものだ。

君に音楽の実力がなければ、見世物に飽きて客は去って行くだろう。
しかし、君にほんとうの実力があれば、左利きの看板を下ろしても、
お客はついてくるだろう、と。

かくして、木崎はこちらの世界でお嫁さんをもらい、
幸せに暮らすのでした……。

(以前のこのシリーズで、左利きの人は左弾きで始めよう
 というギター講師のご意見を紹介しました。

第629号(No.629) 2022/11/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見 」
2022.11.5
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界
(7)ギター講師の意見-週刊ヒッキイ第629号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-044348.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/801461827eaef5ba210c119da48fd743

 その時に、左利き演奏の利点として、「見た目にインパクトがある」
 「カッコイイ」といった点が挙げられていました。
 やっぱりここでも、「左利きのサックスが珍しい」
 ということで売りになっている、という記述があります。)


 ●ネットでみたサキソフォンのこと

ネットで調べてみました。

音楽経験ゼロでも吹ける!はじめてのアルトサックス講座
https://goodappeal.site/sax/

のなかにサックスの種類が示されています。

(画像は、別冊編集後記の方で、勝手に転載しています。
そちらをご覧ください。)

左から「バリトンサックス」「テナーサックス」「アルトサックス」
「ソプラノサックス」と順に大きさが小さくなり、音が高くなります。

テナーサックスは二番目に低い音を出すサックスということになります。

 《大きくなると息がたくさん必要なので吹くのが大変ですね。
  一番小さなソプラノサックスは、音のコントロールが
  少し難しい楽器になります。
  というわけで、初心者の方が一番吹きやすいのは
  アルトサックスなんですね。》

とのこと。

 ・・・

ヤマハの「サクソフォン」サイトでは、
「アルトサクソフォン」「テナーサクソフォン」
「ソプラノサクソフォン」「バリトンサクソフォン」
が順に掲載されています。

結構お高いですね。
これでは、初心者は「左用」なんて、言い出しにくいですね。


*参照:
ヤマハ ホーム > 製品情報 > 楽器 > 管楽器・吹奏楽器
サクソフォン
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/index.html

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演奏のようすをみますと、やっぱり「右構え」という感じなので、
左利きの人には不自然な格好かな、という気がします。

『鏡の国のアリス』に書かれていましたが、
左右非対称の楽器でありながら、両手を使い、左右平等の楽器だ、
というのですけれど、どうなんでしょうね。

もう少し調べてから、考えてみたいものです。


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 「★600号までの道のり」は、お休みです。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」と題して、今回も全紹介です。

今回は、何を書くか未定のまま日がたってしまい、焦りました。
ふと、この広瀬正さんの『鏡の国のアリアス』で楽器の話があったなあ、と思い出し、本を引っぱり出して、ざっと読み、サキソフォンのくだりを引用、一回分をひねり出しました。

いつも通りやっつけ仕事になっていますが、なんとか間に合いました。
やれやれっ、と!

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

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