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50歳からが人生の第二段階、中年の始まりです。より良き老後のために良き習慣を身に付けて新しい生活を始めましょう。

『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(14)利き手調査(3)第23回H.N.きき手テスト-週刊ヒッキイ第621号

2022-06-19 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第621号 別冊編集後記

第621号(No.621) 2022/6/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [14]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(14)「利き手調査」その3-1
 第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト」


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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第621号(No.621) 2022/6/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [14]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(14)「利き手調査」その3-1
 第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト」
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 <利き手調査アンケート>編の6回目です。

 3種類目の利き手テストを紹介します。

 H.N.きき手テストがそれ。
 これは、前回紹介しましたエディンバラ利き手テストが
 西洋のテストということで、日本人の利き手を正しく判断する上で、
 不都合な点があるとされ、一部の項目が変更された、
 「日本人による日本人のための利き手テスト」
 とでもいうべきものになっています。

 日本では、長年左利きが忌避され、
 右手使いが正しい作法という考えから、「矯正」と呼んで、
 特に箸使いと字を書くことに関して、
 無理矢理、左利きの子供を右手使いに転換させることが
 行われてきました。
 
 その影響から、「字を書く」という項目が
 真の「利き手」を判断する指標にはなりにくい
 という事実がありました。

 その欠点を補正するために調査項目の変更が為されたのです。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(その22)
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [14]
  <左利きプチ・アンケート> 全公開(14)
  「利き手調査」アンケート編・その3-1
  第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
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 ●第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト

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左利きを考える レフティやすおの左組通信
 Lefty Yasuo's HIDARIGUMI Announcement
 
  <左利きプチ・アンケート>
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<左利きプチ・アンケート>

第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト 

(初出)2005.12.24(最終)2007.04.29

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<左利きプチ・アンケート>
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト 
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前原勝矢著『右利き・左利きの科学』に紹介されていた
側性係数(LQ)に始まり、
前回は、エディンバラ利き手調査を紹介しました。
そして、今回は利き手調査第三弾です。 

H.N. きき手テスト

これは、エディンバラ利き手調査や
アネット尺度(イギリスの利き手研究家の使用した利き手テスト)では、
社会的文化的影響を強く受けている日本人の利き手を
正しく判断できないという考えによって作成されています。

文字や絵を書/描く動作、およびナイフやスプーンあるいは箸を使う
といった摂食に関わる動作を割愛して、
いわゆる「矯正」の影響を省こうとしています。
(八田武志・中塚善次郎氏によって作成された故、
その頭文字をとってこう呼ばれているようです。)

※参照―八田武志『左ききの神経心理学』医歯薬出版 1996.11


以下の動作においてあなたはどちらの手を使いますか。

▼調査項目:

1・消しゴムはどちらの手に持って消しますか?
2・マッチをするのに軸はどちらの手に持ちますか?
3・ハサミはどちらの手に持って使いますか?
4・押しピンはどちらの手に持って押しますか?
5・果物の皮をむくときナイフはどちらの手に持ちますか?
6・ネジまわしはどちらの手に持って使いますか?
7・クギを打つときカナヅチはどちらの手に持ちますか?
8・カミソリ、または口紅はどちらの手に持って使いますか? 
9・歯をみがくとき歯ブラシはどちらの手に持って使いますか?
10・ボールを投げるのはどちらの手ですか?  

▼判定基準:

左手の場合には、-1点、
どちらでもないとき(どちらともいえない場合)は、0点、
右手の場合は、+1点、
 を配点する。

その合計点数が、
-4点以下は、左利き、
+8点以上は、右利き、
それ以外(-3~+7)は、両手利き、
 とします。


さて、あなたは右利き、それとも左利き、あるいは両利き、
いずれに判定されましたか。
以下の中で当てはまる番号に投票してください。

*今回は利き手調査のため、利き手別投票ではありません。
(手の不自由な方は、それぞれの判断で考慮の上、
投票に参加不参加を決定してください。)

*一言言わせて、という方は投票後に表示されます
一番下の「ご意見ボード」をご利用ください。
もっと言わせて、という方は掲示板もご利用ください。
貴方のご意見ご感想をお聞かせください


1 +9以上~10
2 +8以上
3 +5以上
4 +1以上
5 0
6 -1以下
7 -4以下
8 -8以下
9 -9以下~-10

________________________________________

●利き手調査テスト関連アンケート
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト


------------------------------------------------------------------
投票結果

実施期間2005.11.27-12.24(総数:28)
------------------------------------------------------------------

1 右利き  +9以上~10 3
2  〃   +8以上   1
3 両手利き +5以上   2
4  〃   +1以上   2
5  〃    0     1
6  〃   -1以下   2
7 左利き  -4以下   3
8  〃   -8以下   5
9  〃   -9以下~-10 9

------------------------------------------------------------------
投票結果について

初出締め切り時(2005.12.24)の結果
------------------------------------------------------------------

*投票総数:28

・右利き(+8以上):4
・両手利き(+7~-3):7
・左利き(-4以下):17


今回の投票結果について、思うところを述べて見ます。

グラフの分布を見ていただくと、ちょうど「J」の字を右に倒した
(90度回転させた)ような形になっています。
これは一般的な利き手分布曲線の裏返しになっています。

一般的な利き手分布グラフの曲線は、右端に右利き100%、
左端に左利き100%を置くと、ちょうど「J」の字型になります。

すなわち右利き100%に近い人が最も多く、
その割合が低くなるにつれて次第に減少し、
左端の左利き100パーセントに近いところで少し盛り上がりを見せます
(「J」の字の尻尾の部分)。

ところが、このアンケートではその逆の結果になっています。
これは左利きの読者の多いサイトのアンケート結果であるための偏向で、
いってみればこの曲線は、途中図といったものと考えられます。
このまま総数を伸ばしてゆくと本来の「J」の字になるのでしょう。

一番の特徴として感じることは、
左利きの度合いの強い人がやはり多いということ。

もうひとつの特徴としては、
中間的な人―両手利き―も意外に多くいる、ということでしょう。

従来は書字や箸使いが右なので
単純に「右利き」と思い込んでいた人の中にも、
実はこういう「非右利き」の要素を持った人がいる、
ということが明らかになったのではないでしょうか。

メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』
「左利き講座」でも書いていることですが、左利きの人だけでなく、
このような「非右利き」の人たちの存在を考えると、
左利きの問題を解決する新たな糸口になるような気がします。


------------------------------------------------------------------
投票結果 2007.04.29
------------------------------------------------------------------

1 右利き  +9以上~10 37
2  〃   +8以上   39
3 両手利き +5以上   33
4  〃   +1以上   68
5  〃    0     72
6  〃   -1以下   26
7 左利き  -4以下   58
8  〃   -8以下   41
9  〃   -9以下~-10 66

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~過去に実施した主な<左利きプチ・アンケート>~

第1回 左利きイメージ調査
第2回 左利きで困ったこと(物理的バリア編)
第3回 左利きの子に右手使いを試みるか否か
第5回 左利き?と思うのはどんな仕草ですか
第7回 左利きでも字は右手で書くべきか
第11回 「利き手(左利き)の矯正」という言葉をどう思いますか
第17回 学校での配膳は左利きの子も伝統的ルールに従うべきか
第29回 左手での毛筆(習字/書道)は是か非か?
第32回 非利き手使い指導を受けたことがありますか

●利き手調査テスト関連アンケート
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト

○最近のアンケート
第34回 あなたの父母は右利きor左利き?
第36回 利き手は変えられると思いますか
第38回 LYグランプリ2006 があったら…
第40回 スポーツで左利きは有利だと思いますか
第42回 左利きの日はどっちがいい?
第43回 タレントさんの左手使いは気になりますか
第44回 じゃんけん、ポン!はどっち?
第45回 左利きのための生活技術指導者・コーチは必要か?
第47回 左利き(利き手)研究会は必要?参加協力する?
第48回 「ぎっちょ」は差別的な言葉だと思いますか?
第52回 利き手をケガしたとき不便を感じましたか?


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投票結果 2012/06/21
------------------------------------------------------------------

1 右利き  +9以上~10 132
2  〃   +8以上   122
3 両手利き +5以上   119
4  〃   +1以上   191
5  〃    0     180
6  〃   -1以下   126
7 左利き  -4以下   148
8  〃   -8以下   121
9  〃   -9以下~-10 186

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<左利きプチ・アンケート>
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト

http://personal-dictionary.com/enq/view/view.asp?EID=38207

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↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2022.6.16(追記)

「ご意見ボード」の書き込みなど見ましても、
結構「両利き」の人が多いのがわかります。

○○は右で××が左といったご意見があります。

また教えてもらう人により使う手(利き)が異なるというケースも。
ある意味では「左利きの人あるある」かもしれません。

毎回書くことですが、この手の利き手テストをしますと、
どうしても自分の利き手が定かではないという人が、
多く参加されるようです。

その結果、このアンケートでは
こういう中間の人が多数になるケースが多くなります。


 ●「エディンバラ利き手テスト」と「H.N.利き手テスト」との比較

ここでもう一度、「エディンバラ利き手テスト」と
「H.N.利き手テスト」との違いを確認しておきましょう。

(八田武志『左対右 きき手大研究』DOJIN文庫 2022/5/16 より

 以下、表記は同書に従う。)

「エディンバラきき手テスト」
1 文字を書く 
2 ボールを投げる 
3 ハサミを使う
4 歯ブラシを使う 
5 絵を描く
6 マッチをする
7 箒をもつとき上になる
8 フォークオをもたないときにナイフをもつ 
9 箱の蓋を開ける
10 スプーンをもつ

 
「H.N.きき手テスト」
1・消しゴムはどちらの手にもって消しますか?
2・マッチをするのに軸はどちらの手にもちますか?
3・ハサミはどちらの手にもって使いますか?
4・押しピンはどちらの手にもって押しますか?
5・果物の皮をむくときナイフはどちらの手にもちますか?
6・ネジまわしはどちらの手にもって使いますか?
7・クギを打つときカナヅチはどちらの手に持ちますか?
8・カミソリ、または口紅はどちらの手にもって使いますか? 
9・歯をみがくとき歯ブラシはどちらの手にもって使いますか?
10・ボールを投げるのはどちらの手ですか?  

それぞれ10項目の片手動作をあげています。
共通するのは、
ボール(2と10)、ハサミ(3と3)、歯ブラシ(4と9)、
マッチ(6と2)、ナイフ(8と5)の5項目。

いちばんの違いは、書字動作と摂食動作をあげるか省くかです。
「H.N.」ではこられを排除しています。
日本では従来これらの動作は、
左利きの子供の場合、右使いに変更させることが多かったからです。
利き手を判断する動作にはなり得なかったからです。


このアンケートの参考文献である、
八田武志さんの『左ききの神経心理学』(医歯薬出版 1996年刊)の
その後の研究をまとめた『左対右 きき手大研究』の文庫増補版が
今年発行されましたが、この本で追加された文章に、
「日本人のきき手検査」があります。

そこに「エディンバラ利き手テスト」と
「H.N.利き手テスト」との比較について書かれています。

前者は、

 《1970年当時のイギリス人の日常生活で使う片手動作項目の
  母集団から統計学的な手続きを経て作成されたもの》

で、後者は、

 《日本人のきき手を調べるために、
  1970年ごろの日本人の生活での片手動作項目から作成されたもの》
で、

国別のきき手の割合を調べたいのなら、
多数の国で共通する動作項目を探さねばならない。

しかし、その国の左利きの人の諸特性の検討するためには、
そのいう共通的なテストでは感受性が低くなる。

両者を比較した研究では、両テスト結果の相関関係は、
「右利きと左利き」の区別では、r=0.96と極めて高いものでしたが、
「両手利き」を考慮した分類を行うと、
エディンバラきき手テストでは、12.1%
H.N.きき手テストでは、20.0%が「非右利き」となり、
かならずしも一致しない。

 《手前味噌といわれそうだが、エヴィデンスは日本人対象の研究では
  H.N.きき手テストの使用が望ましいことを指摘し、
  使用するテストの選択は研究目的に応じて行うことが大切
  と考えている。》

とあります。

現代ではかなり左利きを取り巻く状況に変化が見られます。
「左利きの子は左利きのままで」という風潮が広がっています。
しかし、今でも一部にはこれらの動作に関して、
「作法として右使いが正しい」と主張する人もいます。

あるいは、
「日本の字は右手で書くように作られていて、
 きれいな字を書きたければ右手で」
と主張する習字教室の先生もいます。

そういう状況を考えますと、まだまだ日本においては、
「H.N.きき手テスト」の利き手テストしての存在感は大きい、
と判断できそうです。

 ・・・

 次回は、引き続き、「H.N.きき手テスト」を、
 アンケート投票者の利き手別に投票するタイプの新版を紹介します。

 <左利きプチ・アンケート>
  第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト

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<左利きプチ・アンケート>
●利き手調査テスト関連アンケート
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第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト

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 「★600号までの道のり」は、お休みです。

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [14] <左利きプチ・アンケート> 全公開(14)「利き手調査」その3-1 第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト」と題して、今回も全紹介です。

利き手調査のアンケートの3種類目のその1回目です。

1970年当時のイギリス人のための利き手判定テスト「エディンバラ利き手テスト」に対して、1970年頃の日本人の生活に準じた、日本人による日本人のための改良版の利き手判定テストとして考えられた「H.N.利き手テスト」の紹介です。

当時の日本の風潮は、以前にも弊誌やブログでも紹介しましたように、1970年代を一つの境に左利きが徐々に容認されるようになる時期でした。

・1971(昭和46)年、私が17歳の時に、箱崎総一先生による「左利きの友の会」が誕生(1975年に解散)

・1973(昭和48)年、19歳のとき、麻丘めぐみさんの歌う「わたしの彼は左きき」(作詞・千家和也 作編曲・筒美京平)がヒット

・1973年、74年と二年連続でプロ野球・巨人軍の王貞治選手が三冠王

・1977年頃、「日清食品・どん兵衛」のテレビCMで、左手箸でうどんを食べる左利きの山城新吾さん、川谷拓三さんが登場

・1978(昭和53)年には、ピンクレディーさんの歌う「サウスポー」(作詞・阿久悠 作曲・都倉俊一)がヒット

・1979(昭和54)年、(25歳のときに地元の図書館で見つけて読み、左利きであることに自信を持たせてくれた、箱崎総一さんの著書『左利きの秘密』出版

*参照:
第601号(No.601) 2021/8/21
「創刊600号突破記念―私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一」

2021.8.21
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第601号
(「新生活」版)


そういう時期ですので、書字描画や摂食行為における左手使いに否定的な傾向が残る当時の状況では、それらの片手動作を利き手テストの項目に含めるのは、正確な利き手の判定に取ってマイナスとなるとされるのは、当然のことだったでしょう。

そして、現状でもまだまだ高齢者を中心に、周りに左利きの人がいない環境にある人たちなどでは、左利きを忌避する人もいます。

本質的な真の意味での利き手動作を項目にあげている、という見方ができるといってよいかと思います。。
そのいう観点からいいますと、現状でも、かなり有効な利き手テストであるといえそうです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

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私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―<2022年岩波文庫フェア>から-楽しい読書320号

2022-06-17 | 本・読書
 ―第320号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2022(令和4)年6月15日号(No.320)
「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』
―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」


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         ― 読書で豊かな人生を! ―
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和4)年6月15日号(No.320)
「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』
―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」
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 今回は、久しぶりに<岩波文庫フェア>を取り上げます。
 2019年以来の<岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」>です。

2022年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」
https://www.iwanami.co.jp/news/n46643.html

 毎年夏休みに恒例の新潮文庫・角川文庫・集英社文庫の
 三社夏の文庫フェアは、
 こちらでも私のお気に入りを紹介してきました。

 それに引き比べ岩波文庫の方は、一時期扱っていただけ。
 どうしても一社のみのフェアですので、
 扱える範囲が限られるということもあり、

 毎年は取り上げに食い物があります。

 また近年は、フェアの特集冊子が発行されなくなり、
 それもさびしく、取り上げにくくなっています。

 無料であれだけ有意義な内容の冊子を作っていたのですから、
 「スゴイ」の一語でした。

 もちろん、のちにまとめて一冊の文庫本に仕立てて、
 ラインアップにくわえてはいましたけれど。



<過去に扱った岩波文庫フェア>

2019(令和元)年6月30日号(No.250)-190630-
「2019年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」小さな一冊...」

2019年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」小さな一冊...
―第250号 別冊 編集後記
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2019/06/post-b015ac.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e3a5116ac2b0a7abfec291e180ec97ce

2016(平成28)年8月31日号(No.182)-160831-
「2016年岩波文庫フェア-名著名作再発見から―森の生活、論語」

2016年岩波文庫フェア-名著名作再発見から―森の生活、論語
―第182号 別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12194826487.html
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2016/08/2016--3cd9.html

2015(平成27)年7月15日号(No.155)-150715-
「私の読書論-69- 2015年岩波文庫フェア-名著名作再発見」

持ち時間別に読む本~私の読書論69-2015年岩波文庫フェア
-名著名作再発見 ―第155号 別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12048469836.html
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2015/07/69-2015--b3c3.html

2014(平成26)年10月15日号(No.137)-141015-
「私の読書論-61- -古典を考える-
 岩波文庫フェア 小冊子から(4) その他あれこれ」

古典を考える-岩波文庫フェア小冊子から(4) その他:私の読書論61
―第137号 別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11938507746.html
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/10/-461-255f.html

2014(平成26)年9月15日号(No.135)-140915-
「私の読書論-60- -古典を考える-
 岩波文庫フェア 小冊子から(3) 外岡秀俊」

古典を考える-岩波文庫フェア小冊子から(3):私の読書論60
―第135号 別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11924535782.html
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/09/-360-4a5d.html

2014(平成26)年8月15日号(No.133)-140815-
「私の読書論-59- -古典を考える-
 岩波文庫フェア 小冊子から(2) 伊藤真」

古典を考える-岩波文庫フェア小冊子から(2):私の読書論59
 ―第133号 別冊 編集後記
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/08/-259-04f9.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11909797601.html

2014(平成26)年7月15日号(No.131)-140715-
「私の読書論-58- -古典を考える-
 岩波文庫フェア 小冊子から(1) 安藤元雄」

古典を考える 岩波文庫フェア/名著・名作再発見! 小冊子から
 ―第131号 別冊 編集後記
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/07/post-2f48.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11893553438.html

2012(平成24)年8月31日号(No.88)-120831-
2012年岩波文庫フェアから
<名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう> 

2012年岩波文庫フェアからの古典のおススメ ―第88号 別冊 編集後記
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2012/08/2012-fcb9.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11341482084.html

2011(平成23)年6月15日号(No.59)-110615-
私の読書論-22-初心者のための読書の仕方を考える
 (4)最初の一冊の選び方

岩波文庫<名著・名作再発見!>最初の一冊の選び方:
「原典」から入ろう! ―第59号 別冊 編集後記
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2011/06/post-1678.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-10922640244.html

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 私の読書論159 -
  ◆ 精神の自由と幸福に生きる方法 ◆
  ~ 元奴隷の哲学者の人生哲学 ~
  エピクトテス『人生談義』―『語録』『要録』
   <2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!――から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●2022年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」

まずは、そのラインアップから紹介しましょう。


2022年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」

▼1.五輪書【青2-1】  宮本 武蔵/渡辺 一郎 校注
▲2.学問のすゝめ【青102-3】  福沢 諭吉
3.善の研究【青124-1】  西田 幾多郎
▲4.遠野物語・山の人生【青138-1】  柳田 国男
5.新版 きけ わだつみのこえ【青157-1】
 日本戦没学生記念会 編
6.君たちはどう生きるか【青158-1】  吉野 源三郎
7.意識と本質【青185-2】  井筒 俊彦
▲8.論語【青202-1】   金谷 治 訳注
9.北斎 富嶽三十六景【青581-1】  日野原 健司 編
▼10.エピクテトス 人生談義(上)【青608-1】  國方 栄二 訳
▼ エピクテトス 人生談義(下)【青608-2】  國方 栄二 訳
▼11.マルクス・アウレーリウス 自省録【青610-1】  神谷 美恵子 訳
12.永遠平和のために【青625-9】  カント/宇都宮 芳明 訳
▼13.読書について  他二篇【青632-2】
 ショウペンハウエル/斎藤 忍随 訳
▲14.死に至る病【青635-3】  キェルケゴール/斎藤 信治 訳
▼15.ラッセル 幸福論【青649-3】  安藤 貞雄 訳
▼16.ロウソクの科学【青909-1】  ファラデー/竹内 敬人 訳
17.生命とは何か【青946-1】
 シュレーディンガー/岡 小天,鎮目 恭夫 訳
18.何が私をこうさせたか【青N123-1】  金子 文子
・19.古事記【黄1-1】   倉野 憲司 校注
▲20.源氏物語(一) 桐壺―末摘花【黄15-10】 柳井 滋,室伏 信助,
 大朝 雄二,鈴木 日出男,藤井 貞和,今西 祐一郎 校注
21.西行全歌集【黄23-2】  久保田 淳,吉野 朋美 校注
▼22.新訂 方丈記【黄100-1】  鴨 長明/市古 貞次 校注
・23.新訂 徒然草【黄112-1】  西尾 実,安良岡 康作 校注
24.芭蕉 おくのほそ道【黄206-2】  末尾 芭蕉/ 萩原 恭男 校注
▲25.こころ【緑11-1】  夏目 漱石
▲26.夢十夜 他二篇【緑11-9】  夏目 漱石
27.柿の種【緑37-7】  寺田 寅彦
▼28.濹東綺譚【緑41-5】  永井 荷風
29.銀の匙【緑51-1】  中 勘助
30.萩原朔太郎詩集【緑62-1】  三好 達治 選
▲31.蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇【緑70-7】 芥川 竜之介
▲32.童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇【緑76-3】
 宮沢 賢治/谷川 徹三 編
・33.江戸川乱歩短篇集【緑181-1】 千葉 俊二 編
・34.桜の森の満開の下・白痴 他十二篇【緑182-2】 坂口 安吾
35.自選 谷川俊太郎詩集【緑192-1】  谷川 俊太郎
36.茨木のり子詩集【緑195-1】  谷川 俊太郎 選
37.危機の二十年【白22-1】  E.H.カー/原 彬久 訳
▲38.日本国憲法【白33-1】  長谷部 恭男 解説
39.民主体制の崩壊【白34-1】   フアン・リンス/ 横田 正顕 訳
▲40.自由論【白116-6】  J.S.ミル/関口 正司 訳
41.マルクス エンゲルス 共産党宣言【白124-5】
 大内 兵衛,向坂 逸郎 訳
42.プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神【白209-3】
 マックス・ヴェーバー/大塚 久雄 訳
43.職業としての政治【白209-7】
 マックス・ヴェーバー/ 脇 圭平 訳
44.アイヌ神謡集【赤80-1】  知里 幸惠 編訳
▲45.ソポクレス オイディプス王【赤105-2】  藤沢 令夫 訳
▲46.動物農場【赤262-4】  ジョージ・オーウェル/川端 康雄 訳
47.対訳  ディキンソン詩集【赤310-1】  亀井 俊介 編
▲48.人間とは何か【赤311-3】  マーク・トウェイン/ 中野 好夫 訳
▲49.新編 悪魔の辞典【赤312-2】  ビアス/ 西川 正身 編訳
▲50.若きウェルテルの悩み【赤405-1】  ゲーテ/竹山 道雄 訳
52.バウドリーノ(上)【赤718-2】 ウンベルト・エーコ/堤 康徳 訳
 バウドリーノ(下)【赤718-3】 ウンベルト・エーコ/堤 康徳 訳
53.白い病【赤774-3】  カレル・チャペック/阿部 賢一 訳
54.伝奇集【赤792-1】  J.L. ボルヘス/鼓 直 訳
55.20世紀ラテンアメリカ短篇選【赤793-1】  野谷 文昭 編訳
56.やし酒飲み【赤801-1】  エイモス・チュツオーラ/ 土屋 哲 訳
57.失われた時を求めて1 スワン家のほうへI【赤N511-1】
 プルースト/吉川 一義 訳
▼58.星の王子さま【赤N516-1】  サン=テグジュペリ/内藤 濯 訳
59.声でたのしむ 美しい日本の詩【別冊25】
  大岡 信,谷川 俊太郎 編

(全59点61冊)※2022年5月27日発売(小社出庫日)

 ▼ 岩波文庫版で読んだもの
 ▲ 他社版で読んだもの
 ・ 一部読んでいるもの

私の読んだ本、一部読んだ本など25点。

弊誌で取り上げた作品も『論語』や『星の王子さま』など、
いくつもあります。


 ●私のオススメの名著・名作

どれも読んでおいて損はない名著名作揃いなのですが、
比較的最近、私が読んだものの中から、
私のお気に入りのオススメ本をあげますと――

名著(リアル系)では、

 エピクテトス 人生談義
 ロウソクの科学  ファラデー
 死に至る病  キェルケゴール
 人間とは何か  マーク・トウェイン

名作(小説・フィクション系)では、

 濹東綺譚  永井 荷風

あたりでしょうか。

『死に至る病』は、実は途中までしか読んでいません。
もう一度機会を見て読んでみようと思います。
途中まではいいんですがね、なんといえばいいのか……。

『ロウソク――』と『人間――』は、
ともに読み応えのある小著(「小さな一冊」)といっていいでしょう。


その他の定番中の定番ともいうべきもののうち、
私の既読のものから、特にここに書き出しておきたい作品として
あげておきますと――

名著では

 五輪書  宮本 武蔵
 学問のすゝめ  福沢 諭吉
 論語
 読書について  ショウペンハウエル

など。

フィクション系では、

 ソポクレス オイディプス王
――現存するギリシア悲劇三大詩人の作品中の最高裁大の傑作
 蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 芥川 竜之介
――芥川龍之介の児童ものの名作集
 星の王子さま  サン=テグジュペリ
――『トム・ソーヤーの冒険』と並ぶ私のベスト・ワンを争う双璧

それぞれ「小さな一冊」と呼んでいいでしょう。
でも中身は読み応え十分です。


 ●本年第一位――『エピクテトス 人生談義』

今年の59点から私の選ぶ一点は、『エピクテトス 人生談義』です。

*(新訳)
『エピクテトス 人生談義(上)』國方 栄二 訳 岩波文庫【青608-1】
‎ 2020/12/17
『エピクテトス 人生談義(下)』國方 栄二 訳 岩波文庫【青608-2】
‎ 2021/2/18 



元奴隷の哲学者エピクテトスの
奴隷という立場からの生き方を反映したと思わせる人生哲学です。

『エピクテトス 人生談義』は、
古代ローマ時代の元奴隷の哲学者エピクテトスの講義録のようなもので、
弟子のアリアノスという人がまとめた『語録』
(現存するのは全八巻中の四巻のみ)と、その『要録』(抄録作品)と、
「断片」からなる。

タイトルの『人生談義』は、
旧訳の鹿野治助訳(1958年)の書名を継承したもの。

*(旧訳)
『人生談義〈上〉〈下〉』エピクテートス/著 鹿野 治助/訳
岩波文庫 1958/7/5

エピクテトスは、
ローマ皇帝で『自省録』の著者マルクス・アウレーリウスや
セネカと並ぶ古代ローマの後期ストア派の哲学者で、
奴隷の子に産まれ、奴隷として長年暮らし、哲学を学び、
解放後は学校を開き、哲学の講義を行った。
アリアノスはその弟子の一人。

近代以降の哲学は、学者のための学問のようになって、
一般人には縁遠い高邁なものになってしまった印象があります。

しかし、古代の哲学は、まさに「よく生きる」ための学問で、
人生とは何か、どうすればしあわせに生きることができるのかを問う
人生論・幸福論のような一般人にもなじみ深いものになっています。

『エピクテトス 人生談義』は、
まさにそういう生き方論の考え方を教えてくれる
教科書のようなものではないでしょうか。

前回の「私の読書論158」では、
アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を取り上げましたが、
それにも似た、幸福論の一冊として読めるものです。

アリストテレスのような理詰めの論文調とは違い、
講義録といっても、『論語』に近いものかもしれません。
しかも内容的には、『老子』のような逆説に満ちています。
しかし一見逆説に見えますが、
よくよくきいてみるとなるほどと納得できる転回があります。

この『要録』を自身の『幸福論』の中で紹介している
スイスの哲学者カール・ヒルティは、こう書いています。

 《この書物は、現在そうであるよりも一層広く読まれる価値があり、
  ことに学校でもっと多く読まれてよいものである。
  まさにストア主義は、向上の精神にもえて修業の道にいそしむ
  青年の魂と性格とに、
  非常な魅力と、鼓舞の力とを与えるものである……》p.43

   ――ヒルティ『幸福論(第一部)』草間平作訳 岩波文庫

*『幸福論(第一部)』ヒルティ/著 草間 平作/訳 岩波文庫 1961/01)


日本では、このヒルティの『幸福論 第一部』中の「要録」が
最もよく読まれたエピクテトスでしょう。

旧訳の『人生談義』はあまり読まれてはいなかったように思います。
抄訳の方は、
『世界の名著(13) キケロ エピクテトス マルクス・アウレリウス』
 (責任編集/鹿野治助 中央公論社 1968)に収録され、
これは今も読まれているようですけれど。

今度の新訳はもっと読まれてほしいと思っています。

訳者の國方栄二さんの著作

『ギリシア・ローマ ストア派の哲人たち』
(中央公論新社 2019――ストア派哲学の初期から後期まで、
特に後期のエピクテトス、セネカ、アウレリウスについての著作)

で、この新訳が出るという話を知り、出るや早々購入したものでした。

本書の上巻の巻末解説「エピクテトスの生涯と著作」の末尾に、
<幸福論・人生論として>と書かれているように、
そういう読み方をしていただきたいものです。


 ●われわれの力の及ぶものとわれわれの力の及ばないもの

具体的に内容に触れておきましょう。

いちばん衝撃的といいますか、感銘を受けたのは、冒頭のこの一節です。

『語録』「第一巻/第一章
 われわれの力の及ぶものとわれわれの力の及ばないもの」より

 《われわれの力の及ぶものは、
  最も善いように処理しなければならないが、
  力の及ばないものは自然のままに扱うようにしなければならない
  ということだ。/「自然のままにとはどういうことだ」/
  神がのぞむままにということだ。》『上巻』p.23

 《(略)何が自分の手元にあるだろうか。何が私のものであり、
  何が私のものではないのか、何が私に許されており、
  何が許されていないのかを知ること、
  これ以外に何があるだろうか。》同 p.24

 《(略)私を縛るのか。君は私の足を縛るだろう。
  だが、私の意志はゼウスだって支配することはできない。》同 p.25


次に長いですが、『要録』の「一」の冒頭部分を。

 《物事のうちで、あるものはわれわれの力の及ぶものであり、
  あるものはわれわれの力の及ばないものである。
  「判断、衝動、欲望、忌避」など、一言でいえば、
  われわれの働きによるものはわれわれの力の及ぶものであるが、
  「肉体、財産、評判、官職」など、一言でいえば、
  われわれの働きによらないものは、
  われわれの力の及ばないものである。
  そして、われわれの力の及ぶものは本性上自由であり、
  妨げられも邪魔されもしないが、
  われわれの力の及ばないものは脆弱で隷属的で妨げられるものであり、
  本来は自分のものではない。
  そこで次のことを心に留めておくがいい。
  本性上隷属的であるものを自由なものと考え、
  自分のものでないものを自分のものと考えるならば、
  君は妨げられ、苦しみ、神々や人びとを非難するだろう。
  だが、君のものだけを君のものと考え、自分のものでないものは、
  実際そうであるように、自分のものでないものと考えるならば、
  だれもけっして君を強制したりしないし、邪魔したりもしないし、
  君はだれをも非難したりせず、だれかを咎めることもなく、
  なにひとつとして不本意におこなうようなこともなく、
  だれも君を害することはないし、敵をもつこともないだろう。
  なにか害を受けることもないからだ。》『下巻』p.360


要するに、
「われわれの力の及ぶもの」と
「われわれの力の及ばないもの」とを分けて考えよ、
という教えです。

「われわれの力の及ぶもの」――自分の意志で変えられるもの、と
「われわれの力の及ばないもの」――
自分の意志でどうにかできるとは限らないもの、
とをごっちゃに考えるから、事態が難しくなるというのです。

いい成績を取ろうと思い、一所懸命勉強することはできますが、
結果としていい成績を残せるかどうかは、なんともいえません。

自分の評判を上げようと、
人の気に入られるような行動を取ることはできますが、
それで評判が上がるかどうかは分かりません。

しかし「私は努力した」と、自分の気持ちを満たすことはできます。
人の心というものは、自分の力ではどうにもできませんが、
自分の心は自分の力でどうにかできる、自分の力の及ぶ範囲です。

究極ともいうべきは、
「君は私の足を縛れるが、私の意志は縛れない」というのがそれですね。

精神の自由を奪うことはできない、という宣言です。

奴隷の子に産まれ奴隷として過ごしてきた人、
エピクテトスらしい発想といえましょう。


 ●松井秀喜さんの『不動心』にも……

この「われわれの力の及ぶもの」と
「われわれの力の及ばないもの」を分けて考えよ、という教えは、
日本のプロ野球やアメリカの大リーグでも活躍した
松井秀喜さんも、その著書『不動心』(新潮新書 2007/2/16)の中で、

「自分のコントロールできることとできないことを分ける」

という言葉で表現されています。

左手のケガで試合に出場できなくなったとき、出場に向けてケガを治し、
無事な部分の体力筋力を維持するという、最善の準備をした、と。

最善の準備は、自分の力の及ぶ範囲のことですが、
結果は、自分の力の圏外のことです。

*『不動心』松井秀喜 新潮新書 2007/2/16


 ●私たちは劇の俳優だ、選ぶのは他の人

もうひとつ書いておきたいことがあります。

それは、『要録』の「一七」――。

 《次のことを心に留めておくがいい。
  君は劇作家がのぞむような俳優なのだ。
  劇作家が短いものを望めば短い劇の俳優になるし、
  長いものを欲するなら長い劇の俳優になるのだ。
  もし君に物乞いを演じることを望めば、
  それを上手く演じるようにせよ。(略)
  というのは、君の仕事は、
  あたえられた役を立派に演じることだが、
  どの役を選ぶのかは、他の人の仕事であるから。》『下巻』p.372


『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業
――この生きづらい世の中で「よく生きる」ために』
(荻野弘之 かおり&ゆかり[漫画] ダイヤモンド社 2019)

というエピクテトスの本をもとに、
一般向けに人生訓・幸福論として
漫画と解説でわかりやすく紹介する本があります。

この最終話「さよなら、エピさん」(漫画)にこうあります。

 《どんな国に生まれ/どんな身体/どんな両親や兄弟を持ち/
  そして/どのような環境や立場に/置かれるかは/
  すべて神次第じゃ/
  しかし/神の仕事は/そこまでじゃ/
  そこからは/我々の仕事じゃ/
  神に与えられた場で/どのように/生きるかは/
  「我々次第」で/あるからな》

いま「親ガチャ」という言葉があるそうです。
俗に「ガチャガチャ」と呼ばれる
お金を入れてダイヤルを回すと丸い透明ケースに入った景品が出てくる
というヤツ、ですね。
あれのようにどんな親に生まれるかは当て物のようなものだ、
というわけです。

確かに経済力のある家に生まれれば、有利に人生を始められます。
あるいは遺伝的に優位の親の下に生まれれば――
例えば、頭がいいとか運動能力に優れているとか、であれば――
その素質を受け継いで、優良な人間になれるかもしれません。

しかし、神様の仕事はそこまでで、そこからは自分の努力次第です。
優れた素質を活かせるかどうかは、本人次第なのですから。

エピクトテスは、それを俳優に例えています。
私たちは、雇われた俳優で与えられた自分の役を精一杯演じるのみです。
勝手に主役を演じたりはできません。
たとえ端役でも腐ったりしないで、今自分の持てる力を精一杯ぶつける。
そうした努力を続けていれば、いつかは実力が正当に認められ、
自分にふさわしい役どころを得る日も来るかもしれません。

人生というものもそうで、与えられた場所で、
精一杯自分を活かすように努力するしかないのです。
そここそが自分の力の及ぶ範囲なのですから。

そして、自分の力の及ばないものに関しては、煩わされないようにする。

この二つの違いをしっかり見極めて自分らしく生きていきましょう!
――というお話でした。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ★創刊300号への道のり は、お休みします。

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本誌では、「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」をお届けしています。

今回も全文紹介です。

前回同様長くなっていますが、ご容赦のほどを!

まあ、毎度のことで驚きはないでしょうけれど。

今回紹介した『エピクトテス 人生談義』は、プラトンの『クリトン』(ただ生きるのではなく「よく生きる」云々)などの<ソクラテス対話篇>の諸編、アランの『幸福論』、最近では前号でも紹介しましたアリストテレスの『ニコマコス倫理学』などとともに、私の気になる哲学書の一つです。
冗長な部分もありますが、『語録』『要録』を並べて読んでみれば、何かしら感じるところがあるかと思います。

なかでも冒頭の「われわれの力の及ぶものとわれわれの力の及ばないもの」をしっかり見極めて分けて考えよ、の教えは、非常に有効なものだと思います。

努力には、有効な努力とムダな努力があると思います。
自分の力の及ぶ範囲を見極めることで、ムダな努力を減らし、有効な努力に注力する。
人生は短い、そういう努力が必要だと思います。

「ムダな努力」が不要だとは思いません。
「努力することにムダはない」という考え方もあります。

しかし、物事には明らかに「ムダな努力」としかいえないものもあります。
そういうものを減らし、有効な努力に変えてゆく。
自分の力の及ぶ範囲のこと、自分がコントロールできることに注力する。

自分の力の範囲で生きるということは、人生の舞台で与えられた役回りを精一杯演じること。

それが大切なことで、<よく生きる>ことにつながるものでしょう。

[追記 2022.6.17]

私のもう一つのメルマガ、左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』の2021年の新春号で、2021年末に出た『人生談義(上巻)』をもとにした文章を書いていました。



『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

第586号(No.586) 2021/1/2
「2021(令和3)年 新春放談 自分の力の及ぶものと及ばないもの」

<別冊編集後記>
2021.1.2
2021(令和3)年 新春放談 自分の力の及ぶものと及ばないもの-週刊ヒッキイhikkii第586号
(「新生活」版)

当時は、(下巻)はまだ出ていなくて、待ち遠しく感じたものでした。

すっかり忘れていましたが、結構エピクテトスの『人生談義』(『語録』と『要録』)について書いていたのですね。
別のメルマガの方だったので、チェックもれしていました。

私にとってそれだけ強烈な印象を持っている著作だった、ということです。

 ・・・

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―<2022年岩波文庫フェア>から-楽しい読書320号
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左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(4)昔の楽器-週刊ヒッキイ第620号

2022-06-05 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第620号 別冊編集後記

第620号(No.620) 2022/6/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(4)昔の楽器」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第620号(No.620) 2022/6/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(4)昔の楽器」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「左手・左利き用楽器」による左利き楽器演奏について考える、
 の4回目です。

 前回は、左右の手・腕の動きを一つの鍵盤で試すことができる
 「左右合体型鍵盤」について考えてみました。

 今回は、一部その続きと、昔の楽器には左右の別がなかった、
 というお話を。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界 (4)
  ◆ 左利き演奏と右利き演奏 ◆
   ~ 原始、楽器に左右はなかった ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●前回の続き――楽譜の左右

前回紹介しました、ガボちゃんさんのブログ

2022.4.5
妄想楽器?(^_^;)

に、余談としてこうあります。

 《右から左へ進行する楽譜はアラビア語圏であります。
  歌詞の進行方向の事情からでは?。過去日記です。》

その過去日記をみますと、

2008.07.07
ウイグル音楽の楽譜 (2)

 《ウイグル語ってアラビア語系だから、
  日本語や英語、中国語などと違い
  右から左へ進む横書きなんですよね。
  ↑
  (この文だと「。ねよすでんなき書横む進へ左らか右」
  ってことです。)
  だから、楽譜も右から左へ進むわけで、(略)》



慣れの問題があるとはいえ、
この逆綴り(進行)の楽譜というのは、結構大変な感じを受けます。

まあ、考えてみますと、私たちの日本語というのは、
本来は縦書きで、右から左へと進行します。

マンガ本も、右側のページから左側のページへ、
右のコマから左のコマへと読み進むので、
外国の人は最初は戸惑うようです。

その辺と同じ感覚でしょうか。


前回、右利きの人の場合、キーボードは左から右へ、
低音から高音へ弾いていく方が、腕の動き的に都合がよいのでは?
と書きました。

曲の展開的にも、
そういう方向性(低音から高音へと)が多いように思うのです。

そういう展開(左から右へ・低音から高音へ)が
右利きの人の心身的に快適なのではないか、という気がします。

ところが、楽譜の進行が逆に、右から左となりますと、
ちょっと混乱するような気がするのですけれど、どうなのでしょうか。

この右から左への楽譜は、
左利きの人が左利き用の逆キーボード(右から左へ・低音から高音へ)
を手にして、左利き演奏が実現した暁には、
感覚的に都合のいい楽譜になるのではないか、という印象があります。



 ●原始、楽器に左右はなかった

ここで、また別のお話を――。

以前ネット検索で見つけた記事です。

フルートを吹く少年
2019-12-08 01:13:44

オランダの画家、ユディト・レイステル
(Judith Jans Leyster:1609ー1660) 描くところの
「フルートを吹く少年」という絵画のお話です。




 《この少年が吹いているフルートは一時期物議をかもしました。
  フルートの構えが左右逆であることで、
  反転しているのではないか?と言われたのです。

  現代のフルートはキーが複雑で右に構えるしかありません。

  この作品が作られた1630年頃はバロック時代。
  バロックフルートが発明されていました。

  四つに分かれて、金属キー
  がついています。

  それよりも古い時代
  ルネサンスのフルートトラヴェルソは

  こんな感じ 
  穴が空いているだけなので、左右どちらにも構えられます。
  この少年の吹いているのは、ルネサンスフルートに近いものでは?



  フルートは新しい楽器の発達ともに
  古いタイプの楽器は忘れさられた。
  というわけではなく、
  実際には国ごと、地域ごと、町ごとに横笛があり、
  現代でもそういう楽器が人の生活に根差して活躍しています。》

とありました。

昔の横笛は、穴が空いているだけで、左右どちらにでも構えられた、
というところが、新鮮です。

何事も同じだと思うのですが、
そもそもの始まりは、たいていのもので、左右性というものはなかった、
と考えられます。


例えば、漢字なども、
そもそもは右手で書きやすい形のものではなかった、ようです。

単にそのものの形を映しただけの象形文字から始まっているのです。

左から右へ線を引くといった規則や、横画は右下がりの傾きで引く、
といった決まりはなかったのです。

それが時代とともに、右手で書くときに便利なように、
特定の方向、角度を持たせるように変化していったのです。

今のような右手の書き癖が標準化して、
文字としての美形と認められるようになったのは、
文字が生まれてしばらくたってからのことでした。


楽器も初めは、単に音を出すだけの道具に過ぎなかったものが、
より色々な音を出せるように工夫されてきたのでしょう。

その過程で、右利きの人が多数なので、構え方や音の調節の仕方など、
右利きに使いやすい形に変形(進化?)していったのでしょう。


世界各地にある様々な楽器を見ていけば、
きっとその歴史は、そういう左右の別のないものから、
左右性を持つものへと変化していったのではないでしょうか。

調べてみるとおもしろいかもしれません。

今ある近代的な楽器の大半は右利き仕様ですが、
歴史を見てゆけば、いろんなものが出てくるでしょう。

そして、この方が書いておられるように、
世界には、地域や文化等の生活に根ざした、左右性のない楽器や、
左利きの人の演奏に向いた左仕様の楽器もまだまだあるのではないか、
と思われます。

アラビア語が右利きの人には不都合な?右から左へ筆記するように、
左利きの人に向いた?楽器が何かしらあるのではないか、と。

 ・・・

今回は、簡単ですがこの辺で。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(4)昔の楽器」と題して、今回も全紹介です。

今回も全文転載です。
短いので、まあ、今回はこんなものでしょうか。

 ・・・

この「フルートを吹く少年」の絵は、左右反転しているのでは? という疑問が持たれたそうですが、壁に掛けてあるバイオリンの横のリコーダーらしきものは、最下段の穴の位置が構えたときの右側によっており、右利き仕様のものになっています。
ですから、左右反転はないでしょう。

今でも小学生時代のリコーダー(縦笛)を持っています。
それもこれと同じ穴位置です。

これが右利き仕様だというのは、横笛のように横に構えれば分かります。

笛の先を右横に持ってきても、このままの持ち方でも不都合はありません。

逆に、左右の手をそのままに、左側に構えようとしますと、腕が窮屈で演奏できません。
左右の手を上下入れ替えれば、左側にしても構えられます。

 ・・・

下調べが思いのほか進んでいません。
音楽や楽器に興味はあるのですが、根本的に知識がないので、なかなかこの話題を広げて行けません。

実は、他にも、30代初めに買ったおもちゃに毛が生えたような、カシオのミニキーボードなんかも持っています。
弾けもしないけれど、弾きたい気持ちはあって……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(4)昔の楽器-週刊ヒッキイ第620号
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私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から-楽しい読書319号

2022-06-01 | 本・読書
 ―第319号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2022(令和4)年5月31日号(No.319)
「私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』
―<NHK100de名著>から」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         ― 読書で豊かな人生を! ―
------------------------------------------------------------------
◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2022(令和4)年5月31日号(No.319)
「私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』
―<NHK100de名著>から」
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 本来ですと、月末は古典の紹介、
 現在は「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」で、
 その17回目なのですが、今回はお休みさせていただきます。

 今回は特別編で、

  私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』
   ―<NHK100de名著>から

 をお届けします。


 <NHK100de名著>に関しましては、
 以前、ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』で
 私のお気に入りの名著・名作を取り上げてきました。

 『レフティやすおのお茶でっせ』カテゴリ:
NHK100分de名著

 をご覧ください。

 5月の放送が、私のお気に入りの名著の一つ
 (内容を「理解」できているかどうかは別ですよ!?)
 「アリストテレス『ニコマコス倫理学』」で、
 久しぶりに取り上げようと思ったのですが、時間的に無理でした。

 とはいえ、日にちがたってしまってもどうか、と思い、
 あえてこちらで取り上げてみようと思います。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 私の読書論158 -
  ◆ 人生の究極目的を問う ◆
  ~ 幸福とは? 友愛とは? ~
  アリストテレス『ニコマコス倫理学』
   <NHK100de名著>2022年5月――から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●<NHK100de名著>と私

<NHK100de名著>は、
月曜日の夜、10時台のEテレで放送されている番組です。
以前は結構見ていました。
気になる名著・名作を扱った分は、ブログで紹介してきました。

ところが、ここ何年かは、全くといっていいほど見ていませんでした。

気になるタイトルを扱っていないということもありました。
しかし、それだけではなく、
何となく視聴習慣がなくなってしまった、というのが理由でしょう。


結局今回も、私は放送をほとんど見ることができませんでした。
第4回の最後の10分程度だけ。

一度視聴習慣を失うと、そういうものでしょうね。
もちろん、録画して見るという便利な方法が
この世の中にはあるらしいのですが……。

そこでここでは、テキストの内容を中心に、
私が以前この本を読んだ時の印象などを交えて、
この名著を紹介してみようと思います。


 ●<NHK100de名著>2022年5月―アリストテレス『ニコマコス倫理学』

まずは、<NHK100分de名著>のサイトの情報から――

名著119「ニコマコス倫理学」アリストテレス
2022年4月28日 午前11:58 公開

プロデューサーAのおもわく。

 《天文学、生物学、詩学、政治学、論理学、形而上学など
  あらゆる分野の学問の基礎を確立し、「万学の祖」と呼ばれる
  古代ギリシアの哲学者アリストテレス(前384- 前322)。
  そんな彼が「倫理学」という学問を史上初めて体系化し、
  その後の「倫理学」の「原点」となったともいえる名著が
  「ニコマコス倫理学」です。新生活がスタートしてまもない五月。
  「五月病」など職場や学校に適応できず人生に悩む人が多い
  この時期に、「幸福」や「生き方」を深く考察する
  この著作をわかりやすく読み解くことで、
  現代に通じるメッセージを掘り起こします。

  アリストテレスは、幸福が人間がもっている本来の固有の能力を
  発揮することにあり、その能力を十全に発揮するためには、
  外的な幸運を生かすための内的な力である「徳(アレテ―)」を
  身につける必要があると考えました。
  この「徳」は一定の行動を何度も繰り返し習慣化することで、
  「性格」として身につけることができるといいます。
  いわば、彼の倫理学は、
  義務や禁止などの堅苦しいルールを学ぶ学問ではなく、
  人間が幸福になるための知の体系なのです。

  ただし、この書物は単に偉大な哲学者の豊かな思索の跡を
  読者にたどらせてくれるだけではありません。
  現代において私たち一人ひとりが
  「よく生きる」「充実して生きる」ことを目指す際に活用できる
  豊かな洞察が散りばめられた書物でもあります。
  哲学研究者の山本芳久さんによれば、千年単位で受け継がれてきた
  この名著のエッセンスを読み解いていくと、
  単に倫理の知識を学ぶにととまらず、読者の一人ひとりが
  それぞれの人生において活用していくことのできる
  生きた知恵を学ぶことができるといいます。

  番組では、山本芳久さんを指南役として招き、
  ギリシア哲学の名著「ニコマコス倫理学」を分り易く解説。
  アリストテレスの倫理学を現代につなげて解釈するとともに、
  そこにこめられた【幸福論】や【生き方論】、
  【友情論】などを学んでいく。》

【指南役】山本芳久(東京大学大学院教授)
…「トマス・アクィナス 理性と神秘」でサントリー学芸賞受賞。

【朗読】小林聡美(俳優)【語り】小坂由里子【声】羽室満

アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2022年5月 (NHKテキスト)
NHK出版 2022/4/25







(画像:<NHK100de名著>テキストと私の持っている『ニコマコス倫理学』光文社古典新訳文庫版の訳本)

 ●テキスト――【はじめに】「いかによく生きるか」を考える学問

冒頭、山本さんは、

 《哲学とは、言葉による思索を通じて
  物事を根本から理解し直そうとする学問》

だとし、フランスの哲学史家ピエール・アドによると、

近代のそれは、専門家向けの難解なものになっているが、
古代のそれは、万人に対して開かれた仕方で、人々に生の技法、
「生き方」を教えてくれるものだといいます。

その「生の技法」を教えてくれる代表的な一冊が
この『ニコマコス倫理学』だというわけです。

私がこの『ニコマコス倫理学』がお気に入りの一冊というのも、
そういうところにあります。

私が哲学に期待するものは、「いかに生きるか」であり、
「いかにして幸福となるか」です。

古代ギリシアの哲学で私の識名ものは、
プラトンのソクラテス対話篇の初期の『ソクラテスの弁明』や
『クリトン』や『饗宴』に『メノン』など。
特に『クリトン』における「よく生きる」というくだりですね。

 ・・・

このあと、山本さんの哲学読書歴を紹介されています。
『ニコマコス倫理学』は三回に渡って出会っているといい、
一回目は大学生の時。

高校時代から哲学に興味を持ち、

 《様々な入門書やプラトンの対話篇やニーチェの著作など、
  比較的読みやすい作品を読んでいた》

そうで、この辺は、私の50代以降の哲学読書と共通の遍歴です。

そして、本格的な哲学の古典として初めて「通読」したのが、
これだったそうです。

「通読」したというのは、それまでにもカントやハイデガーなどで、
挫折を経験していたから。

しかし、この『ニコマコス倫理学』は、
途中で分からないところもありながらも、
最後まで読み通すことができた本だった、といい、
哲学研究者としての出発点といったものだったそうです。

それは、そこに書かれていた「幸福とは何か」「人生の目的とは何か」
といった内容が、自分自身の関心と重なり合っていたから。

この辺も少し私と似ていますね。

そういう意味でも『ニコマコス倫理学』は、
多くの人にとっても哲学への入口になる本といえそうです。

 ・・・

古代ギリシアのアリストテレス(前384-前322)が著わした全十巻からなる
『ニコマコス倫理学』は、史上初の体系的な倫理学の本で、
倫理学とは、哲学の一分野で、「いかによく生きるか」を考える学問。

 《単に考えるだけでなく、
  それを実践に応用することに力点を置く学問でもある》

といい、「実践哲学」と呼ばれることもある、というものです。


 ●第1回 倫理学とは何か

【放送時間】2022年5月2日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

 《「ニコマコス倫理学」は、
哲学史上初めて「倫理学」を体系化した書物である。
「倫理学」と訳されているギリシア語は、語源的には、
「人柄に関わる事柄」という意味である。
どのような人柄を形成すれば幸福な人生、
充実した人生を送ることができるのかを考察するのが
アリストテレスの倫理学なのである。
第一回は、「倫理学」とはどのような学問なのか、
「倫理学」を学ぶことにはどのような意味があるのかを、
「理論的学」と「実践的学」の区別という
アリストテレスの学問論に基づいて明らかにする。》

アリストテレスの倫理学は、「幸福論的倫理学」と呼ばれるそうで、
「幸福と何か」「どうすればそれを実現できるか」を考える倫理学で、
違った角度から「徳倫理学」ともいわれる。
「徳」とはギリシア語で「アレテー」といい、
「卓越性」「力量」と訳される言葉。

 《アリストテレスは、人は徳を身につけてこそ初めて
  幸福を実現できると考えました。》

 《アリストテレスの倫理学では、
  人間としての力量である徳を身につけることが核となってきます。》

「幸福論的倫理学」は、「目的論的倫理学」ともいわれます。

それは、人間の存在や行為というものの究極的な目的は、
幸福にあると考え、どのように実現してゆくかを考える倫理学だ、
ということです。

そこでは「善」という言葉がキーワードとなります。
「幸福とは最高善である」という言い方がされ、
幸福という最高に善いものを探求してゆくという立場が
「幸福論的倫理学」です。

これと対比されるのが、「義務論的倫理学」で、
「○○すべきだ」といった義務や、
「○○してはいけない」といった禁止に基づいて考えるもので、
カントなどに代表される学問です。

倫理学に関するイメージとしてはこちらの方が強いかもしれません。
しかし、ここでは、人生を前向きに生きるための知恵を獲得しよう
というのが、このテキストでの狙いだそうです。

私もそういう方が好きです。

 ・・・

このあといよいよ本題に入り、
第一巻第一章の有名な冒頭の一節が引用され、
第二章の冒頭の引用へと続きます。

この回の結論的には、

 《アリストテレスの倫理学は、「徳」を身につけることで、
  「性格」をよりよい方向に変容させていき、
  それによって「幸福」を実現するという基本構造を有しています。》

人間の「性格」や「人柄」は、
「習慣」の積み重ねによって形成される。
勇敢な行為を積み重ねることで、勇敢な人間になる、というように。


そして、「倫理学」とは、

 《どのような人柄を形成すれば幸福な人生を送ることができるか、
  を考察する学問。》

だといいます。


 ●第2回 幸福とは何か

【放送時間】2022年5月9日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

 《アリストテレスの倫理学は、「幸福」という
古今東西の誰もが深く願うテーマを軸に展開している。
だからこそ、二千数百年の時を超えて
現代においても深く影響を与え続けているのだ。
「幸福になりたい」という願望は誰もが抱くものだが、
実際に「幸福」になるのは容易なことではない。
真に幸福になるための地道で手堅い道筋を示しているのが
『ニコマコス倫理学』なのである。
第二回は、「義務」や「禁止」といった概念を軸にした
堅苦しい倫理学(義務論的倫理学)ではなく、
幸福な人生の実現へと読者を導いてくれる実践的な指南の書として
『ニコマコス倫理学』の全体像に迫りつつ、
「社会的生活」と「観想的生活」という、
幸福な人生の二つの類型について明らかにしていく。》

第一巻第四章、第五章からの引用とともに、
ここでは「最高善」とされる「幸福」とはいかなるものかについて。

「善」という言葉が『ニコマコス倫理学』におけるキーワードの一つで、
「幸福とは何か」とは、「善とは何か」という意味でもあるのです。

「何らかの善を目指している」のが人間で、
それが究極目的としての「幸福」というものであり、
それは単にはるか遠くにあるのではなく、
「いま、ここ」の自分の行為に常によっている。

第二回の結論としては、
 
 《人間が持っている可能性・能力を
  可能なかぎり現実化していくことによって達成される
  充実した在り方、そこにおいてこそ幸福が見いだされる》

 《徳を身につけることが
  幸福な人生を送るための不可欠な条件になる。》

「徳」はギリシア語で「アレテー」といい、
「卓越性」「力量」などと訳されます。

馬の「アレテー」は、速く走ること。
ナイフの「アレテー」はよく切れること。

優れた働きを為すことがでできるように高められていること、
それを「徳」と呼びます。


 ●第3回 「徳」と「悪徳」

【放送時間】2022年5月16日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

 《アリストテレスの説く「幸福」は、
単なる「幸運」とは大きく異なっている。
幸運にも高額の宝くじに当選した人の中にも、
堅実な人生の軌道から逸れ、
「不幸」な人生を送ってしまう人もいる。「幸福」になるためには、
外的な幸運を真に生かすための内的な力が必要なのだ。
その力のことを、アリストテレスは「徳(アレテー)」と呼び、
それが一定の行動を何度も繰り返し習慣化することで、
「性格」として身についていくという。
第三回は、勇気、節制、正義、賢慮といった、
現代でもそのまま活用することができる様々な「徳」と、
それに対立する「悪徳」を分類しつつ、
「徳」を身につける方途を探っていく。》


第二巻第一章からの引用とともに、
知的な能力・可能性を育てることで身についてくる「力」を
「思考の徳」と呼び、私たちが一般的に思い浮かべる、
人柄の在り方に関わるものについては「性格の徳」と呼びます。

徳を身につけるのは、技術を身につけるとのと同じだといい、
一回の成功体験が二回目以降の上達につながりやすいといい、
素早くできることと喜びを感じることが、
その技術が身についた証拠だアリストテレスはいいます。

 《一回一回善い選択肢を選び取り続けていくことによって、
  どういう選択肢を選んで生きていきたいかという
  基本的な心の在り方自体を成熟させていくことができるのです。》

人間には欲望がありますが、その欲望自体を変容させることができる。
当初は節制のない人でも、欲望の在り方を整え、選択を重ねることで、
コントロールすることができるようになるというのです。

 《アリストテレスに従えば、徳を身につけることで
  はじめて達成することができる充実があります。そうした仕方で
  人間存在としての可能性を十全に実現した在り方こそ、
  彼が言うところの幸福な人生なのです。》


 ●第4回 「友愛」とは何か

【放送時間】2022年5月23日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

 《人間は「社会的動物」であり、
人間と人間との深いつながりなしには、幸福な人生は考えにくい。
そのような人間同士の相互的な絆のことを、
  アリストテレスは「友愛(フィリア)」と呼んでいる。
  「人柄のよさに基づいた友愛」「快楽に基づいた友愛」
  「有用性に基づいた友愛」という友愛の三分類や、
  「友愛は、愛されることよりも、愛することにその本質がある」
  という愛の本質についての分析、自己愛と友愛の関係などなど、
  『ニコマコス倫理学』の友愛論は、
  「愛」について考察するための豊かな素材に満ちている。
  第四回は、人類の思想史のなかで最も有名な友情論
  と言っても過言でないアリストテレスの友愛論を紹介して、
  人間にとって、真の「友情」とは何か、
  真の「愛」とは何かに迫っていく。》

『ニコマコス倫理学』第八巻と第九巻で論じられる「友愛」について。

まず、友愛が成立する条件を挙げます。

(1)相手に好意を抱く
(2)その好意が相互的なものである
(3)互いに気づかれている

この三つがそろったときだといいます。

アリストテレスの言葉では、(1)は「相手に善を願う」となります。
これがアリストテレスの友愛の核となります。
善が人と人をつなぐ紐帯となる。
善には、「道徳的善」「有用的善」「快楽的善」の三つがあり、

それに従い、友愛にも三つある。

(1)人柄の善さに基づいた友愛
(2)有用性に基づいた友愛
(3)快楽に基づいた友愛

(2)や(3)の友愛は、
あくまでも「自分にとって」善いものが得られるから愛しているのだ、
という限定がある、条件付きの友愛だといいます。

自分にとって相手が快いものでなくなれば、有用なものでなくなれば、
その友愛は消えてしまう。
そういう自己中心的な観点があり、持続性・安定性がない。

ただ、快楽的友愛は、互いにいっしょにいたいと思い、
いっしょにいることに喜びがある点で、友愛らしい側面がある。

一方、(1)人柄の善さに基づいた友愛 は、相手を全体として愛する。
人柄に基づくものなので、持続的であり、安定性がある。
そして、人柄の善い人は、一緒にいても快い存在であり、
また困ったときにも無条件で助けてくれる有用な人でもある。
(2)も(3)も兼ね備えた存在で、完全な友愛だというのです。

しかし反面、そういう優れた関係はまれなものでもある、と。

では、アリストテレスは、
これらの友愛をどう評価しているのでしょうか。

山下さんは、アリストテレスは
(2)や(3)の有用性や快楽に基づく友愛を否定していない、
と考えているといいます。

真の友人は、(1)人柄の善さに基づいた友愛 のみで、
それ以外は本当の友人ではない、として排除するのではなく、
不十分な友愛ではあるが、それを自覚した上で、
人生にとって重要な人間関係として認め、
友愛の在り方のグラデーションをつけた上で、全体を友愛として認める。

そういう懐の広さがアリストテレスのテキストにはある、と読み解きます。

 ・・・

さて、番組テキストには、他にも名著の名著たる所以ともいうべき、
有用性についても書かれています。

日常生活とは無縁に思われる古典の中に、
なにかしら人生についての「気づき」を与えられることがある、と。

理解できるできないにかかわらず、
自分に合った哲学書を見つける知の旅を続ける機会にして欲しい、
と結んでいます。


 ●読みやすい哲学書について

私の感想をひとこと。

第一回の山下さんの読みやすい哲学書の読書歴に、
プラトンのソクラテス対話篇やニーチェの本をあげていました。

私もそういうところを読んできました。
もちろん、理解云々はなんともいえませんが、
『クリトン』の「よく生きる」についてのソクラテスの対話とか、
ニーチェの『ツァラトゥストラ――』とか『善悪の彼岸』のような
アフォリズムのような本、『この人を見よ』のような小著などは、
とっつきやすい。

私は先の「よく生きる」というような、
幸福論的な生き方論を読むのが好きです。
そういうものが哲学書だと思い込んでいる部分があります。

そういうものこそ、真に役に立つ実用本位の本だと。

三大幸福論と呼ばれる――アランやラッセル、ヒルティの『幸福論』。
ショーペンハウエルの『幸福について』、
ヒルティ『幸福論 第一部』に紹介されている
エピクテトスの『語録』等の後期ストア派の本――セネカや
ローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウス『自省録』など。

そしてこのアリストテレス『ニコマコス倫理学』。

こういう本が好きで読んできました。

こういう本は目的がはっきりしていますので、読みやすいと思います。

アラン『幸福論』は短文集ですし、
エピクテトスや『自省録』は語録といったもの。
短い文読みや牛氏、すべてを理解できなくても、わかる部分もあります。

そして、機会があるたびにポチポチと読んだり、見たりしていると、
そういう読み方を続けるうちに、何となく理解が進むのかもしれません。

まあ、お試しを。


参考:
【山下芳久さんの本】
『トマス・アクィナス 理性と神秘』山下芳久/著 岩波新書 2017/12/21
―アリストテレスの思想とキリスト教学を統合したアクィナスの入門書

『ニコマコス倫理学』アリストテレス/著 朴 一功/訳
京都大学学術出版会 西洋古典叢書 2002/7/1
―<NHK100de名著>テキストで山下さんが引用している翻訳

【アリストテレスに関する入門書】
『90分でわかるアリストテレス』ポール・ストラザーン/著
 浅見昇吾/訳 WAVE出版 2014/5/1
―こちらは<90分でわかる哲学者>シリーズの一冊。「生涯と作品」
 「言葉」など小著ながらそれなりにポイントを抑えている。

【私の持っているアリストテレスの本】
『ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス/著
渡辺 邦夫, 立花 幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2015/12/8

『ニコマコス倫理学(下)』アリストテレス/著
渡辺 邦夫, 立花 幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2016/1/8

『詩学』アリストテレス/著 三浦 洋/訳 光文社古典新訳文庫 2019/3/8

『アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論』アリストテレース/著
F.Q. ホラーティウス/著 松本 仁助/訳 岩波文庫 1997/1/16


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 ★創刊300号への道のり は、お休みします。

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本誌では、「私の読書論157-読むのは「内容」か「文章」か―『ミステリマガジン』連載コラム[本の話]第4回から」をお届けしています。

今回は全文紹介です。
ブログの<NHK100de名著>の紹介記事に準じた形で、2022年5月分のアリストテレス『ニコマコス倫理学』についてテキストを中心に私なりに気になった部分を紹介しています。

 ・・・

アリストテレス『ニコマコス倫理学』にこんな言葉があります。

「平和な生活を求めて、戦争をする」(第十巻 1177b,5-6)

 『90分でわかるアリストテレス』ポール・ストラザーン/著
  浅見昇吾/訳 WAVE出版 2014/5/1 p.94)

ウクライナ側からいえば、まさに平和な生活のために戦う、という状況なのでしょう。


この後に続く部分に、こうあります。
(なぜなら、だれ一人として、戦争をすることを目的として戦争をしたり、戦争を企てたりしないからである。
  実際、もし人が戦闘と殺戮が起こるべく友人を敵にする、というようなことをするなら、その人こそまったくの「血の汚れがしみついた輩」であると思われるだろう)

 『ニコマコス倫理学(下)』アリストテレス/著
   渡辺 邦夫, 立花 幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2016/1/8 p.404
と。

ロシアによるウクライナ侵攻がはじまって三ヶ月。
どういう目的で始めた戦争なのか、私にはよくわかりません。
しかし、もう遅いかもしれませんが、少なくとも、上に書かれたような輩と思われたくなければ、プーチンさんには早急に戦闘をやめて欲しいものです。

 ・・・

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 ・・・

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から-楽しい読書319号
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