レフティやすおの新しい生活を始めよう!

50歳からが人生の第二段階、中年の始まりです。より良き老後のために良き習慣を身に付けて新しい生活を始めましょう。

大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(PHP新書)買いました

2023-09-24 | 左利き
以前紹介しました↓

2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売
(「新生活」版)

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16


を買ってきました。
わがまちでは、19日に本屋さんに並んでいました。

またペラペラとみただけですので、
本格的な紹介はまたいずれということで、今回は、第一印象とでもいますか、「まえがき」「目次」他、全体をパラパラッとのぞいてみた印象をいくつか書いておきましょう。


 ●タイトルについて

まずは、タイトルですね。
かなり工夫の跡が見られます。

著者の大路さんから以前どこかでお聞きしたと思うのですが、前著のタイトルに「左利き」という言葉を入れなかったのは失敗だった、というのです。

前著――
『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10/1


確かに「左利き」のキーワードでの検索ではなかなか引っかかりにくいですよね。

「左利き」に何らかの意味で興味を持っている人であっても、そのストレートなキーワードでの検索では届きにくくなります。

今回はズバリ「左利き」入っているので、その点はクリアしています。


次に「言い分」という表現。

これは工夫でしょうね。
私なら素直に「主張」としますね。

「言い分」の意味を調べますと、ネットの「コトバンク」(精選版 日本国語大辞典)では、
① 主張したい事柄。言うべき箇条。また、不満で、言いたい事柄。不平。言い条。

というふうに、ズバリ「主張」という意味もありますが、「不満」とか「不平」といった意味合いもあります。

もちろん、左利きの立場から「不満」や「不平」を主張することもあります。
特に現状の社会の在り方が「右利き社会」(右利きが優先される社会/右利きに偏重した社会)といわれるなかでは、こういう主張も多いとは思います。

ただ、それをタイトルに付けるかと問われると、私は回避したいという気持ちになります。
「売り言葉に買い言葉」ではありませんが、人によっては「不満」「不平」と受け取って嫌な感じを受ける、ということもありそうです。
ケンカはしたくないので、私は避けたいと思いますね。

「少しぐらい強くいわないと無視されますよ」という考えもあるかもしれません。

「まえがき」のおしまいの方にこうあります。
「左利きであることの不便さを訴える若年層が存在するいっぽうで、意外にもソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)の観点から左利きに関心を示す右利きが増えている」という現実でした。/そう、今まさに「右利き社会」のなかで「左利きの言い分」を分かち合い、右利きと左利きが共感し合いつつ、左利きにやさしい社会へと向かう千載一遇のチャンス到来です。》p.5

今が「左利きの言い分」――たぶんに「不満」「不平」を含む――を届けるチャンスだ、というのです。

それは「あり」だと思います。


 ●内容の概要

さて内容についてですが、まず「目次」を掲げておきましょう。
まえがき
序章 左利きはどのくらい存在し、なぜ生まれたのか
第一章 左利きの苦労
第二章 世界の宗教は左利きをどう捉えたか
第三章 日本における左利きの歴史
第四章 左利きの脳と身体はすぐれているのか
第五章 左利きの才人、偉人たち
第六章 「右利き社会」から「左利きにやさしい社会」づくり
主要参考文献
左利きのためのサポートファイル

*各章末に【注釈】が付されています。


内容は、まず「序章」では、左利きの割合、左利きの定義、左利きの成因、利き手の決まる時期、といった左利き/利き手の科学について。
第一章からは、左利きの前著も踏まえて、左利きの歴史。
左利きの苦難の歴史が綴られている、というところです。

正直この部分を読んでいると、私はちょっと平静ではいられなくなります。
この本を読むのは、つらいところがあります。

著者は私より13年後の生まれで(この本には生年が書かれていませんが、前著には「1967年生まれ」とありました。ちなみに筆者・私は1954年生まれ、昭和30年代に幼少期を過ごしました)、著者には「歴史」になっているような事項でも、私には頭では歴史になっていても、心はまだ「生(なま)」の感覚が残っている部分もあり、かなり厳しい思い出につながるものもあるのです。

第四章・五章は、左利きの脳の話と、左利きの偉人/才人、有名人のお話。

第六章は、いよいよ左利きの現状から未来へのアプローチです。
まずは「右利き社会」の現実に気づき、左利きの生活向上のために「(左手)左利き用品」や「(左右)ユニバーサルデザイン」製品の普及について、左利きを取り巻く新たな「サイレントストレス」について、左利きの人への言葉、左利きの子の育児について、左手書字について、右利きの人との友愛精神と未来作りについて、といった私が一番気になる部分が語られます。


 ●全編を通して感じたこと

先に左利きの苦難の歴史のくだりを読むのが、つらいと書きました。

それだけでなく、全編パラパラッと目を通した程度ですが、そうして読んでいるだけでも、ちょっと腹が立つといいますか、憤りを感じるといいますか、気持ちがいらだってくるのです。

これは、大路さんの考え方や書き方のせいというのではなく、要するに「この社会が間違っている」という事実に、です。
さらにいえば、その現状に甘んじている人が多すぎる、という現実に対する苛立ちですね。

若い人で左利きの不便を訴える人が増えているし、右利きの人で共感してくれる人も増えているそうですが、もっと強力に「社会を変える」という行動に進んでくれる人が増えてほしいものです。

変えようとしなければ、社会は変わりません。

昔どこかの国の左利きの大統領候補で「チェンジ」といって当選した人がいました。

まさに、必要なのは「チェンジ」です。
そして「チェンジ」に向かって「チャレンジ」することが大事です。

もちろん、暴力や武力で変えるというのではなく、言論と“政治”的な行動を通して、ですが。


 ●巻末の「主要参考文献」と章末の「注釈」を読む楽しみ

この本に限らず、私がこれらのリアル系の本(論文や硬派のエッセイ系の文章やドキュメント、ノンフィクションなど)を読むときに一番楽しみにしているのが、巻末の「主要参考文献」の類いを見ることです。
この本では章末に「注釈」がついていて、これも楽しみです。

どういう文献やデータを根拠として書かれているのか、とか、さらなるこちらの興味を誘うような文献等の情報源を知ることができます。
今後こういう事柄に関してはどのような本を読んでみればいいのか、と大いに参考になるからです。

前著の「主要参考文献」とかぶっている部分があるのは当然ですが、25年の間にどういう本や情報を採取し読み込まれたのかなど、私自身の手持ちのデータと照らし合わせながら見てみるのは勉強になります。


 ●「左利きのためのサポートファイル」にわがメルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」が!

最後に、前著同様、巻末に左利きの関連情報「左利きのためのサポートファイル」が掲載されています。
「左利き教材メソッド」(書道・手縫い・ギター)、「左利き専用品」(通販・リアルの販売店)「左利き友愛団体」(日本左利き協会他)、「左利きのためのメールマガジン」(わが左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkiii』)。


ここに掲載していただけて、嬉しく思います。

*追記:
日本左利き協会のサイトの「左利き便利帳」に、わが左利きメルマガ&このブログが紹介されました。
左利き便利帳005:左利きライフ研究家・レフティやすおさんのメルマガとブログ


反面、ネットの時代にもかかわらず、大路さんの御眼鏡に適うこの手の総合的な<左利きサイト>等の紹介がないのは、やはり寂しいと感じます。
25年前にはあった、あるいはその後生まれて長年頑張っていた、そういう左利きサイトというものがありました。

今は、鉄板級のそういうオススメサイトがないというのは、非常に残念なことです。

出でよ、新人左利き研究家&活動家!

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(PHP新書)買いました
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左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii創刊18周年記念号-第649号

2023-09-17 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今月は、2005.9.28の創刊号以来、18年周年となります。



 当初は、軽い気持ちで週刊としました。
 実際書き始めると、なかなか大変で、徐々に手抜きとなり、
 月4回、そして現状の月2回となりました。
 さらに8月は、猛暑を理由に、合併号で月一回なんてことにも……。 

 そういうわけで、週刊とうたいながら、18周年で649号なのです。


 18年といいますと、今では成人年齢となります。
 始めたころに生まれたお子さんも今では大人ということです。

 このようなメルマガでも、左利きの子の育児のアドバイスの
 何かしらの足しにしてくださった方がいたとしますと、
 もうそのお子さんは、二十歳を過ぎていることでしょう。

 どのように育っていることでしょうか。

 幸か不幸か、たいしたことはできていないので、
 マイナスにはなっていないことでしょう。

 そして、少しでもお役に立っていたのなら、幸いです。

 ということもあり、
 今回は、暑さの手抜き? で、記念放談とします。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

  創刊18周年記念号――明日のために

  「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいの気持ちで書き続けたい

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●初心忘るべからず

創刊号の編集後記にこう書きました。


 《=●レフティやすおの編集後記●=======

 色々迷った末の出発です。これからも多少の変更があるでしょう。
 しかし左利きの人のお役に立ちたいという思いは変わりません。
 左利きの人の力になりたい、そして幼い頃の自分のように左利きで
 嫌な思いをする人がいなくなるように、そう願って左利きの活動を
 続けています。
 これからもよろしくお付き合いのほどを!》


あれから18年が過ぎてしまいました。
今も変わらぬ思いは、

 左利きの子供たちに自分と同じ嫌な思いをして欲しくない

ということです。

そのために何かできることはないか、と始めたのがこのメルマガです。

ブログは2003年12月25日、
ホームページは2004年1月1日に始めていました。

それだけでは何かしら満足できず、もっと能動的なイメージの活動を、
と思って始めたのです。

 ・・・

「初心忘るべからず」の初出は、
世阿弥の「花鏡(かきょう)」(1424年)だそうです。

習い始めのころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない、の意。
(出典 小学館 デジタル大辞泉)

から、

「何かを始めた最初のころの気持ちを忘れてはいけない、
 という戒めのことば」

となったといいます。

始めたときの思いを今も胸に秘めて、メルマガを続けていきます。



 ●当時を振り返って

当時、左利きメルマガを出している人がいたのです。

記憶で書いてしまいますが、なんとなく気が合う感じがして、
思いつくネタをいくつか提供しました。

まぐまぐの先輩でもあり「左利きメルマガ」の先輩でもある
渡瀬謙さんの発行する『レフティサーブ』がそれでした。

(のちに、
 『左利きの人々』(渡瀬 けん:名義 中経の文庫)

 にまとめられた。)

メルマガという、こういうやり方もあるのだ、と思い、
ちょっと相談したうえで始めました。

創刊号を書いて「まぐまぐ!」に送り審査の上、発行にこぎ着けました。
渡瀬さんに報告をすると、早速メルマガで紹介していただき、
一気に68部でスタートできました。


その後、教師生活23年、現・教育評論家の親野智可等さんの
家庭教育メルマガ『親力で決まる子供の将来』
https://www.mag2.com/m/0000119482?l=iib0008fb8
(「左利きを直す必要はない」という文章を書いておられるのを知り、
 連絡をし、左利き対応の100ます計算というのを実践されている先生が
 いることをお知らせしたり、時折お便りをしていました。)
でも紹介していただき、
またまた一気に300あまりまで伸ばすことができました。

その後は、私の力が及ばず、発行部数は減る一方です。

卒業される読者も多く、現在は200ちょいになっています。
左利きのお子さまを持つ親御さんの場合、
お子様がある程度大きくなられますと、自然と卒業されていくようです。

それはちょっと悲しいことなのですが、
当面の問題が解消されれば、人はそうなってしまうものなのですね。

喉ものと過ぎれば熱さを忘れる、とも申します。

本音を言いますと、親御さんたちにはいつまでも読者のままで、
左利きの子(および人)の味方でいて欲しいのですけれど……。


 ●大路直哉さんの新刊『左利きの言い分』にこのメルマガも…

基本、読者を想定して書いているつもりですけれど、
どうしてもその時その時の自分自身の思いが先行して、
読者の方々の意識からずれることも多々あるのかもしれません。

反響を待ちながらも、なかなかいただけなくて、
その辺は私の悪い癖が出てしまっているせいかもしれませんね。

お便りをいただけたら嬉しくて、許可も得ずに書いてしまったり……。
反省していますが、遅かりし、かも……。


もう一度初心に戻って、
気を入れてやっていこうと思います。

そういうモチベーションを上げるいい機会になりそうな、
ニュースがあります。

9月16日今日ですが、大路直哉さんの左利きの本が発売されます。
この本の巻末情報欄に、
このメルマガのことも載せていただくことになっています。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉
PHP新書


『見えざる左手』(三五館)、共著『左ききでいこう!』
(フェリシモ出版)につづく、著者三冊目の左利き本。
最初の社会学的アプローチの『見えざる左手』からは、ちょうど25年。

Amazonの情報によりますと、
左利きの人たちが経験してきた、歴史的な出来事やその背景も含めて、
左利きについての世間的な話題をまとめた、
最新版の左利き入門書(応援本)となっているように思います。

楽しみな一冊です。


 ●ネット活動20年の変化

このメルマガは18年ですが、ネット活動は20年になります。

この20年の変化を思い起こしてみますと、
ネット環境が電話回線から光になったということは大きかった変化です。
オフラインで、とかでなく、そのままネットサーフィンというんですか、
検索などできるのは、大きな変化です。

そして、当初はパソコン向けでよかったのが、
今ではスマホ向けを考えなければならなくなっている、ということ。

私のネット活動は、今はまだパソコン向けというレベルですね。
スマホ対応しないと、取り残されていくのでしょう。
このメルマガも、部数を伸ばすことはむずかしいでしょうね。


 ●20年間でいちばんうれしかったこと――教科書に左手書字例

ここで左利きを取り巻く環境の変化について見ておきましょう。

20年で変わったといえば変わっています。
左利きを否定されることが少なくなったのは事実でしょう。

ネット活動を始めたころは、例えば箸使いについていいますと、
左手で箸を持つことは日本の食事作法として認められない、
という意見が強く残っていました。

左手用の躾箸(練習箸)を作っていないメーカーさんがありました。
日本の作法として認められません、という意見です。

裏を取るように、作法・エチケットの本で、
悪い箸使いの一例として「左箸」を上げている人がいました。

今ではそういう例を見つけるのはむずかしくなっています。
実際には(本心は)どうかわかりませんが、
表向きはなくなってきています。

駅の自動改札も挿入式からタッチ式になっている部分もあるようです。
最新型では生体認証装置付きも出てきているようで、
少しは改善されてきているのかもしれません。


一番嬉しかった変化は、2020年に、このメルマガで長年訴え続けてきた
「小学書写教科書に左手書字例を!」
を実現させた教科書が誕生したことでした。

東京書籍の令和2年度用の小学校教科書「新しい書写」がそれでした。

https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/
--
特色 3 書くことが楽しくなる教科書
全ての子供に「分かった!」「できた!」の喜びを。
 特別支援教育への配慮
 色覚多様性への配慮
 左利きへの配慮
--
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/data/shosha_m_pamph_04.pdf
PDFファイル



あたらしいしょしゃ 1 [令和2年度]
(小学校国語科書写用 文部科学省検定済教科書)‎ 東京書籍 2019/3/1

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.9
左利きへの配慮がなされた東京書籍・小学校教科書
「新しい書写 2年度用」
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-0fbe38.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/dd08c16d81a211f5c60266bf57191f20


 ●10年ごとに一区切り

10年ぐらいの間隔で、
左利きの本があれこれと出版されることがあるようです。

理由として考えられることは、世代交代が進むということでしょうか。
十年一昔といいますように、十年もたちますと小学生も成人となり、
その親の世代は人生の次のステージへと進み、
かわって新しい世代が子を持つ親となります。

左利きや利き手についての知見は、学校の教科書には含まれず、
その知識や経験は、一世代毎に個人的に学ばれては失われて行き、
次の世代がまた新たに個人的に学び直すことになります。

そういう状況のなかで、
左利きや利き手に関する知識を本に求める人々が現れ、
そのニーズに応えるように、
こういう現象が起きるのではないか、と思われます。

以下に、ここ20年ほど、主だった左利き本の年表をまとめてみました。


2000年前後――

(1998 平成10)
10/『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提案』大路直哉 三五館
(1999 平成11)5/
『おいしい左きき』造事務所編著 イーハトーブ出版
(2000 平成12)
7/『左ききでいこう!―愛すべき二一世紀の個性のために―』
 フェリシモ左利き友の会、大路直哉 フェリシモ出版
(2001 平成13)
2/『あなたは完全な右(左)利き? それとも○○利き?』鮫島良文
 文芸社
(2002 平成14)
6/『左利きで行こう! 目からウロコの左利きツアー』
 リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー
 丸橋良雄、尾島真奈美訳 北星堂書店


2010年前後――

(2005 平成17)
12/1『左ききのたみやさん。―哀愁ただよう左きき爆笑エッセイ』
たみやともか 宝島社 
(2006 平成18)
7/『「左利き」は天才? 利き手をめぐる脳と進化の謎』
デイヴィッド・ウォルマン/著 梶山あゆみ/訳 日本経済新聞社
10/『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス∥著
講談社ブルーバックス 
(2008 平成20)
7/20『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN選書
12/6『左ききのトリセツ』貫吉達郎 グラフ社
(2009 平成21)
1/1『左利きの人々 悲しくも笑える』渡瀬 けん/著 中経の文庫
1/16『モノ・マガジン』2009年2月2日号「特集・左利きグッズ大図鑑」
ワールドフォトプレス
5/『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』
ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍
6/『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト著
 スタジオタッククリエイティブ
8/31『左利きギターコード1008 -これは便利!左利きギタリスト御用達-』
中央アート
(2010 平成22)
3/5『選ばれし民 左利き』インフォレスト
(2014 平成26)
12/18『ぼくは左きき 本当の自分であるために』度会金孝
(わたらいかねたか)/著 日本機関紙出版センター


2020年前後――

(2017 平成29)
2/7『左利きあるある 右利きないない』左 来人/著 小山 健/イラスト
ポプラ社
(2018 平成30)
8/31『左利きの本【左利き専用メジャー&定規つき】』宝島社e-MOOK 
10/18『左利き専用 綺麗な字が書けるペン字ドリル』岡田崇花/著
ブティック社・ブティックムック
(2020 令和2)
7/23『左利き用 誰でも一瞬で字がうまくなる大人のペン字練習帳』
萩原 季実子/著 アスコム
(2021 令和3)
3/14『左利きギター専用! ギターコードブック』
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
9/29『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社
10/7『ヒミツのひだりききクラブ (レアキッズのための絵本)』
キリーロバ・ナージャ/著 古谷萌, 五十嵐淳子/イラスト 文響社
(2022 令和4)
1/10『左利き用100ページのギター弾き語りノート&204パターンの
 ギターコードブック』楽譜乃音/著 Independently published
5/16『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫
7/29『眠れなくなるほど面白い 図解 左利きの話』八田武志/監修
日本文芸社
(2023 令和5)
7/19『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子/著
日東書院本社



★新刊★
9/16『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著
PHP新書

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』
9月16日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-64dede.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7baf11f00484a6f32b9d06781490e8bf

★新刊★
10/24『左利きさんのためのはじめての棒針編み』佐野 純子/著
日東書院本社

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.11
佐野純子さんの左利き編み物本の第二弾
『左利きさんのためのはじめての棒針編み』10月24日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-e43f26.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a8d6067ceae1b5d06f69e2e65d3c82ba


最近の傾向として、実用書も色々と出版されるようになってきました。
これは、啓蒙書の類いの時代からより実践的な実用書の時代への変化で、
左利きが世間で一般化してきた反映と言えるかもしれません。
よい傾向です。


 ●最後に――明日のために、今書くこと

このメルマガは先にも書きましたように、今も陸続と生まれてくる
左利きの子供たちが健やかに育つことができる環境を整備する
その一助となることを願って書き続けています。

あと何年書き続けることができるのかわかりませんが、
最期の時が来るまで、その時その時精一杯できることを、
と考えています。

ニーチェは、血をもって書け、といっています。

 《およそ書かれたもののなかで、私が愛するのは、
  血をもって書かれたものだけだ。血をもって書け。
  そうすれば君は、
  血こそ精神だということが身に沁みて分かるだろう。》
  『ツァラトゥストラはこう言った』フリードリヒ・ニーチェ
    森一郎訳 講談社学術文庫 2023/6/12
   「第一部 ツァラトゥストラは語る」<読むことと書くこと>p.66


「血でもって書く」とまでは行かないかもしれませんが、
「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいなら私にもできそうです。

それぐらいの意気込みで無理せず続けていきたいと思っています。

では、これからもよろしくお願いいたします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「創刊18周年記念号――明日のために」と題して、今回も全紹介です。

メルマガ18年で649号に達しました。
当初は文字通り週刊でしたが、さすがにしんどくなり、今では月二回発行になりました。
昔は総発行部数を表示するものがありましたよね。
今月は何部、一年で何部に達したとか。
単純に今の発行部数に649をかけると、約130000部になります。
それでどうだ、ということですが。

延べ13万人の人が読んでいる可能性がある、ということですね。
精読者数は1%として1300人、10%なら13000人です。
それでどうだ、ということですが。

これからも最期の日が来るまで頑張ってみようと思います。
これからもよろしくね。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


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私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号

2023-09-16 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」



------------------------------------------------------------------
◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 さて今回は、本と書店の世界といいますか、業界について、
 「元本屋の兄ちゃん」として、本好き・読書好きの人間として、
 私なりに考えていることを書いてみようと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 - 消えゆく書店と紙の本 -

  ~ 紙の本と書店の減少にショック! ~

   それでも本屋さんは生き残る?
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●朝日新聞の記事「本屋ない市町村、全国で26%~」

朝日新聞の記事によりますと、
出版文化産業振興財団(JPIC)による調査では、
書店のない市町村が全国で26%にも上るそうです。

*参照:朝日新聞デジタル記事
本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も
宮田裕介2023年3月31日 19時00分
https://www.asahi.com/articles/ASR3056M2R30ULEI004.html


(画像:朝日新聞デジタル記事より「書店ゼロ」の自治体の数と割合)

 《調査によると、書店がないのは全国1741市区町村のうち456市町村。
  都道府県別で書店がない市区町村の割合は、
  沖縄が56・1%と最も高く、長野の51・9%、奈良の51・3%と続いた。
  4割を超えたのは、福島(47・5%)、熊本(44・4%)、
  高知(44・1%)、北海道(42・5%)。
  一方、広島、香川の両県は全市町村に書店があった。》

調査対象は《大手取次会社を経由して販売契約している新刊書店の数》。

 《「独立系書店」などと呼ばれる大手取次を利用していない書店、
  ブックカフェ、ネット書店、古書店などは数に含まれていない》。

調査方法が違うという、取次・トーハンの2017年の調査では、22・2%。

 《市区町村別ごとでみると、
  書店がない市は792市のうち17(2%)だったのに対し、
  町は743町のうち277(37%)、村は183村のうち162(89%)だった。
  東京23区は全てにあった。
  書店がない市町村がどこかは明らかにしていない。》

書店経営が厳しい背景の要因として、
(1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
(2)ネット書店で本を買う人の増加
など様々な要因がある、といいます。

 《日本書店商業組合連合会の加盟店などの書店業界は、
  自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」
  に支援を要望。
  今春までに提言書をとりまとめ、具体的な支援の検討を始める。》

具体策は、(A)アマゾンなどのネット書店との競争環境の整備

 《本は、定価販売の根拠となる「再販制度」があるが、
  ネット書店では、送料無料やポイント還元で
  「実質的に値引きが行われている」とし、
  一定の制限やルールを設けることを検討する、とした》

ほかに検討材料としては、

(B)公立図書館で同じ本をたくさん仕入れないようルールを定める
(C)出版物への軽減税率の適用
(D)読書推進を目的としたクーポン券の配布

ネット書店や図書館への規制は、

 《読者の利益を損なうことにつながりかねず、批判も多い。
  また、特定の政党の議連に要望していることについて、
  政治との距離の取り方への疑問の声もある。》

といいます。

私には、自民党の議員連盟に要望している点を問題視しているのは、
いかにも朝日新聞的な感じがします。


 ●再販制度――定価販売による価格保証

以前から私が主張していることは、本の流通において、
取次経由の在り方を再考するということ。
卸業そのものは、他の業界にもあり、それ自体は問題ではありません。

問題は、再販制度です。
私の主張は、再販制度を廃止して、書店の自由仕入れ・自由販売にする、
というのが一つ。


再販制度のよいところの一つは、
素人でも資金力があれば開業できること。

地方の資金力のない小さな店でも、販売価格を保証されているので、
ある程度売れれば(!)経営的には一定の利潤を上げられる。
(実際には非常に苦しいのですが、パパママストア的な、配達中心に、
 学生や子供さん高齢者向けに、地元密着でやれば、できなくはない?)

一人の人間の得意ジャンルなどしれたものです。
書店というのは、非常に広いジャンルの商品を扱います。
大規模な書店ならある程度人を集めて、
それぞれの得意ジャンルを担当させればいいのですが、
個人レベルのお店ではそれはできません。
勉強にも限界があります。
ある程度取次に頼るのもありでしょう。

他の商品でもそうですからね。
生鮮食品でも、卸の専門家に仕入れを任せている、
という料理店もあるでしょう。
同じことです。
ある程度の目利きができる必要はあるでしょうが。

話がずれました。
再販制度です。

やはり店側が責任をもって発注して販売する必要があります。
今は返品可能で、山かけで発注して、
大量に売れ残っても返品すればいいや、で済ますこともあるのです。
返品もお金がかかりますけれど、買取よりずっといいですから。

価格も含めて、責任を持ってその商品を売ることが大事です。
自由販売だから売れ残ったら、値引きすればいいや、でもないのです。
そんなことをすれば、儲けが減ってしまいますから、ね。


 ●書店経営が厳しい背景の要因―雑誌の売り上げの急減

話を朝日新聞の記事に戻します。

書店経営が厳しい背景の要因として、
 (1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
 (2)ネット書店で本を買う人の増加
を挙げていました。

(1)の「人口減少」は、これはどの業界も直面している問題です。
これに対する絶対的な答えはありません。

市場を海外に求める、というわけにもいきません。
客を地元だけでなく、ネットを使って広く世界に求める、
というやり方は可能ではありますけれど。


「雑誌の売り上げの急減」には、二つの要因があります。

雑誌そのものに魅力がなくなった、というわけではないと思います。

一つは、コンビニに客を取られている。
もう一つは、雑誌そのものが紙から電子版に切り替えられている。

コンビニの問題は、
私が本屋さんで働いていた30数年前に始まったものです。


雑誌の売り上げは、書店売り上げの半分程度といわれていました。
私のいた店は40%程度でこれを上げなければ売上は上がらない、
といわれていたものでした。

私が働いていたころに取った対策は、雑誌の完売賞を狙うというもの。

入荷数と返品数をしっかり把握して、適切配本になるように調整して、
出版社が完売賞を出している時には、きっちりとこれを獲得する。
もらえる賞品といえば、雑誌のロゴ入りのちょっとした物でしたが、
それよりも、
次回から入荷数を増やしてもらえるようになる利点がありました。

結果として取次からの適切な配本を確保でき、
売り損じや返品過多などの不利益を減らすことができました。


 ●ネット書店で本を買う人の増加

これは確かに大きな要因でしょう。
ただ、ネット書店といっても、二つの面があります。
紙の本の場合と電子版の場合と、です。


紙の本の場合は、
Amazonのように送料無料とかポイントがもらえるとかのサービスは、
一般書店にとっては、ちょっと公平な競争という点では問題ありか、
と思われます。

書店でも無料の配達をやってはいますが、ポイント制は一種の割引で、
定価販売の書店とは違って、一種違反ともいえそうです。


電子版の場合は、
特に雑誌は、若い人の間で非常に進んでいるように思います。

スマホでその場で見られる、という便利さがあります。

一般書籍の場合は、逆に高齢者で愛好者が見受けられます。

文字の大きさを端末で変えられるので老眼でも好都合だ、
という考えの人が多いようです。

また、物が増えない、という収蔵場所の問題もクリアできるので。


紙の本の場合、本屋の消滅がネットへの購買の移行に拍車をかけ、
リアル書店の減少が先かネット書店での購入増加が先か、
というレベルになってきているようです。

ネット書店とリアル書店の違いは、品揃えの差ということになりますか。

ネット書店の場合は、店舗がいらないので、
その分倉庫に割り当てできます。
単なる倉庫なので、単位面積当たりの収容力に差が出ますし、
そもそも立地条件が異なりますので、経費が違ってきます。

そういう意味では
ロングテールといわれる商品を確実に利益にできるという面があります。

リアル書店では、どうしてもそういう面では、
置くべき本を恣意的に選択するしかないので、
売り方との兼ね合いで勝負するしかないのです。

店員さんが何を推すかで決まるというように。

買う人の立場でいえば、「特定の本を買う」という場合には、
圧倒的にネット書店が有利でしょう。
選んでポチ! ですみますから。


 ●リアル書店での「偶然の出会い」

それに対して、リアル書店が優るのは、未知への誘いとでもいいますか、
お客様の漠とした欲求に対して、実際の「もの」でアピールする、
という力があります。

「思いがけない出会い」とかいわれるものですね。

こんな本があったのか、という意外性といいますか。
今まで存在は知ってはいたけれど、
手にすることはなかったといった本に、偶然出会ってしまう瞬間、
というものがあります。

これはやはりネットよりもリアルが勝っているように思います。


ネットでも過去の履歴に基づいた紹介がありますが、
過去の履歴は所詮は過去の履歴で、
現在の興味を反映するものとは限りません。

また、新刊のチェックまでは進んでいません。
目新しい出会い、というのは、なかなかむずかしいように思います。


 ●リアル書店の生き残りについて――「コンビニ+本屋」

朝日新聞の関連記事では、Amazonを不便にすればとか、
「コンビニ+本屋」の例とかが出ています。

「コンビニ+本屋」の例を考えてみましょう。

昔私の通勤途上にそういう例がありました。
私自身何度か本を買いました。
当時は仕事が忙しく、
休みの日でもわざわざ本屋さんに出かける余裕がありませんでした。
そん名と気は非常に便利に思いました。

通勤の帰りにのぞくことが多かったのですが、
時に出勤時に週刊誌などを買うこともありました。

本好きの私には、ふつうのコンビニでは満足できなかったので、
それはそれでよかったのですが、
しかし、本屋の仕事というのは、コンビニの延長ではなく、
やはり別物の仕事でしょう。
きちんとした品揃えをしようとしますと、専任の店員が必要です。

やはり商品の選定というのは、目利きがいないとむずかしいものです。
店の持つ販売力をしっかり把握して、
どういう商品をどの程度、といった発注の問題ですね。

それと現状では取次からの送品にたいしてどう対処するか、
という問題もあります。

正直、店に合わない商品でも大量に送ってくる場合があります。
その返品なども大切な作業です。


 ●ベストセラーではなく、ロングセラーを!

従来は、売れ筋と呼ばれる商品をいかに確保するか、
が一つのポイントでした。

しかし、地方の小さな書店に本がまわってくるころには、
売れていた本もそれほどではなくなっています。

結局大切なのは、お店のお客様に合った商品をどの程度確保できるか、
ということになります。

それと、こういう商品を売りたいという店員側の思い、これも大事です。

公刊されているような本には、それなりの魅力があるものです。
その点をきっちりアピールできれば、当然売れるはずです。

一般商店でも同じですが、売上の落ちてきた店がよくやる失敗に、
店に置く商品を売れる商品のみに絞る、という方法があります。

一見筋が通っているようですが、これがたいてい失敗します。
なぜか、というと、
売れる商品というのは、基本どこの店でも売れている商品です。

どこでも買える商品と言い換えてもいいかもしれません。

それだけに限ってしまうと、店としての魅力が半減してしまいます。

多くのお客様は、この店でこれを、あの店であれを、
と基本的な商品に関しては、買う店を決めているものです。

たまにしか売れない商品が実はあなたのお店の魅力の一つになっている、
というケースが結構あるものです。

一見ムダに見える商品を置くことで、
お客様に選択肢を与えることができます。

そういうお客様の傾向をきっちり抑えて、品揃えをする必要があります。


そして、今○○が流行っていると、
一時的なベストセラーを追いかけるのではなく、
継続的に売れる、ロングセラー、定番商品をしっかり確保する、
これが一番大事で、それがお店の販売の基礎となるものです。


 ●本屋はそのまちの文化のバロメーター

一番大事なことは、本屋さんというのは、
その町の文化を代表する存在の一つだ、ということです。

もちろん文化施設としては、
公立や私立の図書館とか美術館とか博物館などもあります。
あるいは学校――小・中・高校、大学、専門学校などの教育施設などが
あります。

しかし、最も身近な文化施設として、私が思うところは、
やはり町の本屋さんなのです。
これは私の経験からの意見です。

本屋さんに出入りするようになり、私の世界が広がったのです。
今の私につながるような変化を生みました。

それが文化というものでしょう。

本の世界には、文字通り世界のすべてが包含されています。
未知なる世界への入口になるのです。

日常的な生活だけでは、絶対ふれ得ないような世界の広さです。

それが本屋さんというものだと私は思っています。

もちろん、昔でいえば映画やラジオやテレビもそういうものでした。
しかし、それらは自分の手元に置いておくことができにくいものでした。

紙の本なら、それが可能でした。

広い世界へつながる入口――それが本屋さんであり、
文化へ続く道だったのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回は、「元本屋の兄ちゃん」としては、いいテーマを見つけたというところなのですが、しっかり考える時間がなく、中途半端な結果になりました。

また、次の機会に考え直して書いて見ようかと思います。

一言、私の従来からの意見と書いておきますと――
(1)再版制度をやめ、書店の自由販売にする
(2)本の価格を引き上げ、その分を書店や著者、出版社、取次などに配分する
これで、紙の本を残せるか、地方の町の書店が生き延びられるか、は不明です。
それでも、いくつかの可能性は残されているのではないか、と考えています。

結局、書店というものはだれでも経営できる業種ではなく、専門家の手による専門店だという気がします。

都市部の大型店が家賃が払えず退店するとかいう話も聞いています。
書店自身がもうオワコンなのかもしれません。

それでも私はまだまだ、と信じたいのですけれど……。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号
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佐野純子さんの左利き編み物本の第二弾『左利きさんのためのはじめての棒針編み』10月24日発売

2023-09-12 | 左利き
前著の際には、チェックしていなかったので見落としていましたが、今回は他の左利き本(大路直哉さん『左利きの言い分』)のこともあり、あれこれチェックしていて見つけました。

左利きの人形作家で文部省認定毛糸編物技能認定1級の、佐野純子さんの、2023年7月19日発売の『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』に続く、<左利きさんのためのはじめて編み物>シリーズ第二弾です。


私は編み物のことはわかりませんが、従来のものは、右利きの人用のもので、右手に持った編み棒でああするこうする、というものだったようです。
左利きの人は、(1)頭の中で左右を入れ替えて、自己流にアレンジするか、(2)頭っから右手でやるか、しかありませんでした。

ネットで解説するサイトもあったように思いますが、このように紙の本で、目の前において自分で確かめながら、やり方を覚えられるものがあるのは、絶対に有利です。

先の本は、私の市の図書館にも所蔵されていて、結構借り出されているようです。

今度の本も編み物愛好者、および編み物を始めようと思う人たち全体から見れば少数かもしれませんが、左利きの人には宝物のような本になることと思います。


『左利きさんのためのはじめての棒針編み』佐野 純子 日東書院本社 (2023/10/24)

Amazonより
【左利き専用】棒針編み入門書

左利きの編みもの初心者さんはもちろん、ふだんは右手で編んでいる隠れ左利きニッターさんからも話題沸騰した一冊『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』。
その発売後、SNSでたくさん届いたのは「棒針編みもやりたい!」の声でした。

作りながら棒針編みの基本がマスターできる作品をたくさん紹介。
もちろんプロセス写真も編み図もぜんぶ左利き専用!

棒針編みの基本をマスターして、自由に編みものを楽しみましょう!



*(7月に出た先の本)
『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子 日東書院本社 2023/7/19




Amazonより
手芸好きの左利きさん必携の一冊ができました!
【左利き専用】かぎ針編み入門書

編み物を諦めていた左利きの担当編集者が、
どうしても編めるようになりたくて作った一冊

これまでの本では、編み図や写真を頭の中で左右反転させなくてはならなかった左利きさん。
本書は、編み図もプロセス写真もすべて左利き専用だから、難しく考えずにかぎ針編みを始められます。

本書で基本的な編み方をマスターできたら、右利き用の編み図の作品もきっと編めるようになりますよ。

左利きのみなさんにとって
自分らしくかぎ針編みを楽しむきっかけとなりますように。

【著者プロフィール】
佐野純子
人形作家。左利き。
右利きの母から初めて編み物を習う。
きゆなはれる氏主宰「夢民舎」にてものづくりを、同ニットクラスにて細野雅子氏から編み物を学ぶ。
ニットを中心とした新進クラフト作家の誌上ギャラリーをコンセプトとするミニコミ誌[hao]のメンバーとして活動している。
文部省認定毛糸編物技能認定1級



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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank">佐野純子さんの左利き編み物本の第二弾『左利きさんのためのはじめての棒針編み』10月24日発売

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「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売

2023-09-07 | 左利き
以前、大路直哉さんから9月中旬に出るとお聞きしていた、左利きの本の情報が判明しました。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16


Amazonより
--
「自動改札機を通過するとき、腕をクロスさせなければならない」「ハサミや定規、スープをすくうレードルが扱いにくい」など、左利きならではの不便は多々存在する。さらに、かつては左利きだと結婚に差し障りが生じたことすらあったという。中国の古典『礼記』に「食事をする手は右手」と記されているため、日本では長らく左手で箸を持つのは不作法と見なされ、左手で箸を持つ女性は「親の躾がなってない」と判断されることがあったのだ。本書では左利きの苦難の歴史と現状を解説し、左利きが暮らしやすい社会を生むための取り組みも紹介。坂本龍一や石原慎太郎など左利きの著名人のエピソードも語る。

●人類における左利きの割合――世界と日本
●なぜ左利きが誕生するのか?
●「左利きは九年寿命が短い」説
●儒教の教え――「食事をする手は右手」
●日本神道の教え――「左は右よりも尊い」
●左利きだとお嫁にいけない?!
●「左利きは右脳型」説は本当?
●左利きの才人、偉人たち
●左利きへの共感を示した米津玄師

著者について
「日本左利き協会」発起人。大阪府高槻市生まれ。滋賀県大津市育ち。左利き。早稲田大学卒業後、英国滞在中に左利き専門店との出会いがきっかけで利き手への探究心が開花。帰国後、出版関連業などに携わりつつ、左利きの関連記事や文献の発掘にいそしみ左利きに関する著作を出版。左利きにとって役立つ情報発信や総合学習への協力など、左利きと右利きが共感し合えるコミュニティづくりに取り組んでいる。
著書に『見えざる左手』(三五館)、『左ききでいこう!』(フェリシモ出版)などがある。
--


上の「著者について」にもありますように、「日本左利き協会」発起人で、左利きサイト「クラブレフティ」の活動や、
国立国会図書館関西館で開催される資料展示「左手をご覧ください!―左利きというまなざしで、見えてくる風景―」


「第1章 左利きをめぐる歴史」で、『神々の左手』エド・ライト/著 ricorico/訳 (スタジオタッククリエイティブ, 2009.6)などの本とともに掲げられている著書

『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10

の著者、大路直哉さんの新しい左利き本です。

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.08.25
左利き資料展示「左手をご覧ください!」国立国会図書館関西館で開催
(「新生活」版)

大路さんの左利きの本としては他に、当時通販で「左利きカタログ」を出していた「フェリシモ左きき友の会」との共著

『左ききでいこう!!―愛すべき21世紀の個性のために』大路直哉・フェリシモ左きき友の会/編著 フェリシモ出版 2000/6/1

があります。

このような実績のある著者による、最初の研究書『見えざる左手』から25年ぶりの左利き本です。
大いに期待されます。

目次からの勝手な判断ですが、本書の主な内容は、左利きに関して世間一般で主な話題となっている事柄を中心に、旧著の一部をカットしてアップデートした、左利き入門書の体裁になっているように感じました。

通常の新書はせいぜい200ページ少々ですが、本書は280ページとボリュームもあり、手に取るのが楽しみな一冊です。

私の左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』も巻末に紹介していただいているそうです。
それを確認するのも楽しみです。(大路さん、ありがとう!)

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売
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西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式

2023-09-04 | 左利き
ここんところ、チェックしてこなかったため書いていなかった<サウスポー始球式>のネタを!

昨年の2022.5.18サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式以来となります。

その間(のみならず、それまでの間にも)左投げの始球式があったかと思いますが、チェック漏れのうち、一つ二つはその内またアップしたいものです。

 ・・・

9月1日、ベルーナドームで行われた「西武特急シリーズ」埼玉西武ライオンズ-福岡ソフトバンクホークス戦のセレモニアルピッチに、乃木坂46の向井葉月さんが登場。

大きく振りかぶった左腕から投じた一球は、ツーバウンドで捕手のミットに。








(画像:[日刊スポーツ]より―西武対ソフトバンク セレモニアルピッチに臨む乃木坂46の向井葉月(撮影・滝沢徹郎))

西武沿線で生まれ育ち、観戦もするという大のライオンズ・ファンだそうで、源田選手の妻で元・乃木坂46メンバーの衛藤美彩さんからも前夜に頑張ってと連絡をもらったそうです。

YouTubeの動画で見ました。

【感涙の投球!】大のライオンズファン、乃木坂46向井葉月さんがセレモニアルピッチに!
埼玉西武ライオンズ

(動画:YouTube)

投球はご自身としては残念な結果だったようですが、楽しめる映像でした。

*参考ニュース:(1)
【西武】乃木坂46向井葉月が初の始球式、源田壮亮の妻・衛藤美彩からも前夜に激励
(2)
「乃木坂46」の向井葉月さんが始球式に登場 “大胆振りかぶり”投法に場内大歓声


*【過去の<サウスポー始球式>】:

・2022.5.18サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式
「新生活」版
・2022.3.21サウスポー“スーパーガール”桃月なしこが始球式で左腕から大暴投
「新生活」版
・2021.11.22左利きの女優・吉高由里子さんが4年ぶりプロ野球日本シリーズ第2戦でサウスポー始球式
「新生活」版
・2021.4.2
左利きの女優・森七菜さんのサウスポー始球式
「新生活」版
・2018.4.19
地元アイドルNegiccoのKaedeさんが左投げで新潟知事の代役始球式
「新生活」版
・2017.10.30
吉高由里子がサウスポーで伸びやか始球式 日本シリーズ第2戦
・2017.6.15
左利きの女優・剛力彩芽さん、四度目の始球式登板も…
・2017.5.26
サッポロビールイメージガール川辺優紀子さんの左利き始球式
・2017.5.7
女優の松井愛莉さんがサウスポー始球式
・2017.5.2
ピンクラインのサウスポー、女優でモデルの新川優愛さんが始球式
・2016.8.17
左利きのSKE48日高優月(ひだかゆづき)が始球式
・2016.7.23
左利きの女優すみれさん左腕で始球式
・2016.6.29
左利きの剛力彩芽さんの3度目の始球式は大暴投: レフティやすおのお茶でっせ
・2016.6.5 AKB48Team8/AKB48TeamB兼任の坂口渚沙さん (画像のみ)
AKB48選抜総選挙、暫定21位倉野尾成美・同53位坂口渚沙はTeam8の左利き
・2016.3.7
左利きのあっちゃん前田敦子の始球式

・2014.8.6 右利きの石原さとみさんの左投げ(撮影で右腕を痛めたということで「サウスポーでやります」と宣言。)
終わったはずのクチコミ「右利き? 左利き?」がまた

・2013.12.4 体操新技「シライ」の白井健三選手
体操新技「シライ」の白井健三選手は左利き
・2011.5.12 『五体不満足』の著者の乙武洋匡さん
乙武洋匡さんのサウスポー始球式
・2004.11.11 アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずき選手
素敵な光景:野口選手の左利きの始球式

*【カテゴリ:<サウスポー始球式>

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式
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楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号

2023-09-03 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 7月以来の「楽器における左利きの世界」です。
 前回は「『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
 と題して、左利きの人の音楽的才能について、調べてみました。

 今回は、再び<左用ピアノ>への第一歩として、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみようと思います。

 <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクトとして
 やっていけたら、と思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(1)
-コロナ禍で吹奏楽器は…… -
  『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)

私のまちの図書館で、ふさわしい本を見つけました。

『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19


長くなりますが、奥付にある著者紹介文を転載します。


南川朱生(ピアノニマス)Minamikawa Akeo (Pianonymous)

1987年生、東京都在住、元IT企業の銀座OL。
日本を代表する鍵盤ハーモニカ奏者・研究家。
世界にも類を見ない、鍵盤ハーモニカの独奏というスタイルで、
多彩なパフォーマンスを行う。
所属カルテット「Tokyo Melodica Orchestra」は
米国を中心にYouTube動画が37万再生を記録し、
英国の世界的ラジオ番組classic fmに取り上げられる。
研究事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」のCEOとして、
大学をはじめとする各所でアカデミックな講習やセミナーを多数実施し、
コロナ禍で開発したリモート学習教材類は
経済産業省サイトに採択・掲載される。
東京都認定パフォーマー「ヘブンアーティスト」資格保有。
これまでにCDを11作品リリースし、
参加アルバムはiTunesインスト部門第2位を記録。
楽器の発展と改善に向け多方面で精力的に活動している。
趣味は日本酒とテコンドー。


経歴だけでもすごいですが、この本の内容がまたスゴい!
まだ目次を見たぐらいですが、
鍵盤ハーモニカのことがすべてわかる本といってよいかと思います。

出版社の紹介文も一部転載しましょう。


《鍵盤ハーモニカに人生を捧げたプロ奏者による、長年の研究の集大成。
 鍵盤ハーモニカの製造の歴史や教育現場での受容、内部構造の秘密、
 そして〈誕生〉の瞬間など、様々なシーンを豊富な資料とともに巡る。
 楽器愛に満ちた、読んで、見て、楽しい究極の一冊。〔口絵2〕

 誰もが知ってる楽器の、誰も知らなかった世界!
 たったひとりの楽器に取り憑かれた人によって、
 その魅力は膨れ上がる!
 ――トクマルシューゴ(ミュージシャン)》

この本を読みながら、
まずは鍵盤ハーモニカについての知識を補充していこうと思います。

そして、<左(利き)用鍵盤ハーモニカ>の可能性を考えてみる予定です。


 ●序章から――鍵盤ハーモニカって何楽器?

今回はまず「序章」を簡単にみてみましょう。

<鍵盤ハーモニカは何楽器?>とあります。

鍵盤ハーモニカといってもご存じない方もいらっしゃるでしょう。
私のような世代は、使ったことのない人が大半でしょう。
お子さんがいらっしゃる方は、子供が使っていたよ、
ということはあるでしょうけれど。


本書の第一章の冒頭に、
《大人の方に「小学校で鍵盤ハーモニカを吹いたことがありますか?」
 と問うと》
三十代の人は、《大方「あるある? 懐かしいねぇ」》と答え、
六十代の人は、《ないなぁ、娘と息子はやってたけどねぇ》、
四十代から五十代の人は、「ある派」と「ない派」に分かれるそうです。
「ない派」の人に、小学校では何を演奏していたのですか、と問うと、
「ハーモニカ」と「たて笛」だそうです。

商品名でいいますと、
「ピアニカ」や「メロディオン」という名で出ています。


(画像:国産の鍵盤ハーモニカの代表の一つ、YAMAHA(ヤマハ) ピアニカ P-32E)

それなら聞いたことがある、という年配の方もいらっしゃるでしょう。

では、この楽器は「何楽器」に分類されるでしょうか、
というのが最初の話題です。

 《問題:次の楽器は何楽器に属するか答えましょう。》
   ヴァイオリン (  )楽器
   小太鼓    (  )楽器
   トランペット (  )楽器
   フルート   (  )楽器
   鍵盤ハーモニカ(  )楽器

分類条件は、様々ですので、「学校の教科書」で正解とされる回答は、

それぞれ、弦楽器(擦弦楽器)、打楽器、金管楽器、
フルートが引っかけで、金属だけど木管楽器。

で、この鍵盤ハーモニカは? といいますと、

 《ここでは「鍵盤ハーモニカは○○楽器である」
  と片付けてしまうことはせず、
  この楽器の特徴をいくつか洗い出しながら、
  鍵盤ハーモニカの「複数にまたがる定義」、
  通称「ジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義(generic melodica)」
を一緒におっていきたいと思います。》

となっています。

「鍵盤ハーモニカ」というぐらいですから、
鍵盤がついているので「鍵盤楽器」という答えも考えられます。

しかし、この楽器の誕生当初は、
鍵盤の代わりにボタンやレバーがついたものもあったそうです。

それでも一応、「ジェネリックな」鍵盤ハーモニカの定義として、
読者がパッと見てピンとくるデザインを優先し、
いったん「鍵盤楽器」としておきましょう、といいます。

次に、この鍵盤を押し下げ、どうすると音が出るかといいますと、
口で息を「吹く」ことで音が出ます。
ハーモニカのように、吸って音を出す場合もあるらしいので、
必ずしも「吹く」とは限らないようですが、
基本的には「吹く」ことで音を出す楽器ということで、
「吹奏楽器」としたい、と著者はいいます。


 ●いかにして教育現場に浸透したか

本書は、「第I部 国内歴史篇」が、鍵盤ハーモニカが教育現場で、
一人一台必携の楽器となるまでの歴史を探っています。

戦後、当初はハーモニカが小学生の楽器として普及したわけですが、
音を出すとき、息を吹いたり吸ったりする発音方法があるなど、
むずかしいということで、徐々に現場から消えてゆくことになりました。

輸入品を参考に、国内メーカーが次々と参入します。

音楽の器楽教育を進めるという一種の「国策」もあり、
閣内メーカーの努力(開発および営業)もあり、
ピアノが弾ける音楽大学卒の先生にも扱えること、
鍵盤を押すことで決まった音が出せる
(実際には、様々な発音の技法があるらしいのですが)ので、
子供にも簡単ということで、
鍵盤ハーモニカが採用されることになった、ということです。


 ●フリーリードを震わせる吹奏楽器

「第II部 内部構造篇」では、
内部の構造、音の出る仕組みを解明します。

<第五章 鍵盤ハーモニカの叫び>によりますと――

結論だけ書きますと、楽器の内部には、それぞれの音に対応する、
フリーリードという金属製の細長い板が鍵盤の数だけ並んでいます。

それぞれの金属板はみな個別の部屋にあり、
息を吹きこみますと楽器内全体に空気がたまります。

鍵盤を押しますと、
押された鍵盤に対応する金属板の部屋のバルブだけが開き、
空気が外へ排出されます。
この空気の流れが、個別の金属板を震わせ、その音が鳴ります。

(私の理解が正しければ)こういう仕組みになっています。


(画像:144-145p 発音メカニズムについて――別冊編集後記を参照)


 ●「ホーナー社製ボタン式メロディカ」はかわいい

「第III部 海外歴史篇」は、ヨーロッパでの開発の歴史です。

一部で、鍵盤ハーモニカは日本が発祥という説があるそうです。
笙のような楽器がその源とされています。

実際は、世界同時発生的に、
色々なものがあちこちで作られてきたようです。
そのヨーロッパでの歴史を解説しています。
いかにも今ある鍵盤ハーモニカらしいものが誕生したのは、
19世紀頃のようです。

詳細は、本書をお読みいただくのが一番ですね。

 ・・・

本書で見てきた鍵盤ハーモニカで、私が気に入ったのは、
p.38やp.44、p.57の「ホーナー社製ボタン式」ですね。
形状も両手を使うところも、かわいいです。



(画像:p.44「ホーナー社製ボタン式メロディカ」、
 p.57上・中 鈴木楽器製ボタン式「メロディオン(ソプラノ)」
 下「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

このボタン式メロディカに「非常によく似た」ルックスの楽器が
日本のみならず世界中で作られた、といいます。

それだけ魅力的なデザインだった、ということのようで、
のちにホーナー社の広告に
「類似品にご注意」という文言が出るようになったそうです。

詳細はこちらのページ(pp.184-188)

「鍵ハモの楽堂――ボタン式メロディカ、クローズアップ!」

両手で演奏するタイプのようで、白鍵に当たるボタンが右手、
黒鍵に当たるボタンが左手で演奏するようになっています。
キーの配列も演奏自体も基本右手が主体ですが、
少しは左手も使うので、
左利きの人もちょっとぐらいは演奏した気になれるかもしれません。

あくまでも私の追求する理想とする形は、左右反転形の左手用です。


 ●<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ

最後に、本書を一読して気になったのが、
「第三章」の<エピローグ>にあった、

コロナ禍で、学校の教育現場では口を直接楽器に触れることや、
飛沫の飛散という、衛生面から使用が制約されている、という点です。

今年の5月以降、規制が解除されてきたものの、現場ではどうなのか、
ちょっと気になります。

さらに、近年は少子化でメーカーの販売数が減っているとか、
今後もかわらず、教育現場で一人一台の楽器として利用されていくのか、
非常に気になります。

コロナ禍でタブレット端末が一人一台携帯されるようになりますと、
画面でキーボードを出して演奏する、
なんて形にならないとも限りません。

そうなると、私の考えていた
<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ、
というプロジェクトが空中分解しかねません。

さて、どうなるのでしょうか。

 ・・・

もちろん、電子キーボードの方が断然開発しやすいとは思うのです。
しかし、現状において、物としての鍵盤ハーモニカの左用を実現して、
ピアノの左用へとつなげてこそ、意義があるという気がします。

なんとかメーカーさんにお願いして実現させたいものです。

要はお金の問題だという意見もあるのです。
でもそれをいいますと左用のお道具の類いの問題は
みなそれに集約してしまいます。

そうではなくて、あくまでも多様性の実現という観点から、
左利き用の楽器を他の左利き用のグッズの類いと同じように、
普及させていきたいと思い、この問題を考えていきたいのです。

 ・・・

次回は、過去のメルマガで、この鍵盤ハーモニカをどう扱ってきたのか、
その辺を振り返ってみたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(15)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」と題して、今回も全紹介です。

今や小学校の教育現場で一般化している楽器、鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。

私自身は、このピアノへつながる第一歩の楽器とされる鍵盤ハーモニカで、左用を採用させて、次にピアノへと進めてゆこうというのが、一つの左用楽器普及への道だと考えているのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号
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<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-楽しい読書349号

2023-09-01 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年8月31日号(No.349)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・
 東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年8月31日号(No.349)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・
 東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」
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 一回遅れてしまいましたが、
 「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から」の三回目
 「集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。」
 からの一冊を紹介します。

 先号でも書きましたように、

 大阪も連日35度を超え、時に37度、38度といった猛暑の日々、
 予定していた、東野圭吾『白夜行』が読み切れず――
 文庫本860ページ、十年ほど前に一度読んでいるので大丈夫、
 と軽く見ていたのですが、メモ取りしながら読むと……。

 時間切れとなり、予定を変更することになってしまいました。

 
新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏推し2023
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2023 | 集英社文庫
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ 2023年テーマ:青春の思い出も背景に散りばめられた一冊 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)

  集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-昼と夜または光と闇、明と暗-

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。

どんな作品が選ばれているのかといいますと――

★映像化する本よまにゃ(3) [既読作品]0

★ワクワクな本よまにゃ(18)0

★ハラハラな本よまにゃ(19)人間失格 白夜行

★ドキドキな本よまにゃ(15)0

★フムフムな本よまにゃ(26)23分間の奇跡 舞姫 星の王子さま
                夢十夜・草枕    

全81冊中、既読作品は、6冊だけ。
海外作品や古典的名作が選ばれていない
ということも理由ではありますが、ただただ、私自身、
最近の日本の作家の作品をほとんど読んでいない、ということですね。

新たな作家さんと出会ういい機会なはずなのですが、
今年は、子供の頃や思い出をテーマに選んだ感じですので、
少ない既読作品の中から、最も最近の作品である、
東野圭吾さんの『白夜行』を取り上げます。


・東野圭吾『白夜行』集英社文庫 2002/5/25




 ●東野圭吾『白夜行』

前回の角川文庫は、「わが青春の思い出の一冊」として、
筒井康隆『時をかける少女』を紹介しました。

今回は、わが青春の日々の思い出を背景に散りばめた、
といいますか、
私の青春時代の1970年代辺りから90年代辺りまでの
約20年を背景にしたクライム・ストーリーです。

巻末解説の馳星周さんによれば、ノワールとのこと。
ノワールというのは、私の思うところでは、
暗黒界、闇の世界の住人たちによるクライム・ストーリー
というところでしょうか。

11歳の小学生時代から30歳まで19年にわたり
太陽の光の下を歩いたことのないという、少年と少女の日々の物語。

19年の歴史を綴るわけですから、
やっぱり文庫本で860ページは必然だったのでしょうね。

読み応え十分で、あっという間に読み終えられる名作です。
(こういうと、ちょっと矛盾を感じるかもしれませんね。
 でも、年のせいなのか、集中力がないのですね。)


 ●始まりは19年前、主人公たちは小学5年生

冒頭、いきなり「近鉄布施駅」が登場します。
私の家の最寄り駅でもあります。
小説では、駅を出ると西に行くのですが、私の家は東です。

西へ行きますと、わが故郷・東大阪市ではなく、大阪市になります。
東野圭吾さんは大阪市出身ですので、いってみれば、
故郷を描くということになるのでしょうか。


「第一章」
「事件」の舞台も、わが故郷に近い場所で、
描かれる時代も、わが青春の日々の1970年代のようです。
《三月に熊本水俣病の判決がいい渡され、新潟水俣病、四日市大気汚染、
 イタイイタイ病と合わせた四大公害裁判が結審した》とありますので、
これは昭和48年(1973)のこととわかります。

公園近くの、今では子供の秘密の遊び場となっている、
工事途中で廃ビルになった建物で、近所の質屋の主人・桐原洋介が
細身の刃物で刺し殺される事件が起きます。

これが発端。

担当刑事の笹垣らが、捜査に当たります。
質屋の主人には妻・弥生子と一人の小学5年生の息子・亮司がいて、
店には店長の松浦がいた。

桐原は当日、銀行で100万円をおろしたのち、手土産にプリンを買って、
店の常連客の一人、小学5年生ながら美人の雪穂という娘を持つ、
シングルマザー・西本文代の元を訪れていた……。

結局、事件は迷宮入りとなり、
容疑者とも目された西本文代はガス中毒事故で死亡。
発見者は娘の雪穂と部屋の鍵を開けた不動産屋。

「第二章」
雪穂は、母の死後、
父方のお花やお茶の先生をしている親戚の上品な婦人の養女となり、
今や私立女子校の中学三年生となっていた。
他校の男子生徒から盗撮されるほどの美人の人気者であった。
テニス部の美少女が襲われ、偶然発見したのは、雪穂と友人の江利子。
一方、桐原の息子・亮司は地元の荒れた公立大江中学校の生徒であった。
ここの生徒が雪穂の盗撮をしていたのだった。


 ●ストーリーの時代背景

こういう風にストーリーを追っていると、
いくらスペースがあっても追いつきませんので、
物語の背景などについて書いてみましょう。

冒頭の四大公害裁判の結審に現れているような、
その時代を示す社会的出来事の記述が各所で登場します。

何しろ19年の流れを持つ小説ですので、
その時代時代の背景がストーリーにも適宜織り込まれることで、
臨場感といいますか、時代感覚が明らかになります。

また、主人公たちの成長が、特に亮司の生業が
ちょうどパソコンやゲームの普及や発展の歴史と相まっていて、
インベーダーゲームや、ワープロ、PCなどの固有名詞が
時代背景を現実的にみせています。

私のようにそれなりに、
この時代を青春時代のひとときとして過ごしてきたものには、
とても郷愁の湧くものがあります。

松田聖子の聖子ちゃんカットなんていうのも出てきましたね。


 ●昼・光・明の雪穂と夜・闇・暗の亮司

雪穂は、お花やお茶の先生をしているという、
上品なご婦人の養女となり、家庭教師を付けてもらったり、
私立のお嬢さま学校に進学、中学高校大学と進んでゆきます。

そして、大学のソシアルダンス部に入部、
合同練習相手の永明大学の大企業の御曹司のエリート男性と知り合う。
結婚後も貪欲に自分の夢の実現に向けて努力を続け、
自分の資産で遂にアパレルの店を持ち、離婚後も事業を拡大、
経営者として成功を収める。

というように、
雪穂は光、昼日中花咲く明るい世界を歩んでいるように見えます。


一方、亮司は、荒れた地元の公立の中学に進学し、
危ない世界にも足を踏み込んでゆきます。

1985年(事件から12年後)の年末12月31日、
当時一緒にやっていたパソコンやゲームの店『MUGEN』の閉店後、
同僚の従業員の友彦や弘恵が来年の抱負を話すとき、

 《亮司の答えは、「昼間に歩きたい」というものだった。/
  小学生みたい、といって弘恵は桐原の回答を笑った。
  「桐原さん、そんなに不規則な生活をしてるの?」/
  「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなもんやからな」》p.436

ともらすように、亮司は日の当たらぬ闇、暗い世界の住人のようです。

「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなもんやからな」――
まさにこれがタイトルになっているのですね。



 ●雪穂の場合

しかし、そんな雪穂も、物語の終わりの方で、こう言います。

 《「(略)人生にも昼と夜がある。(略)人によっては、
  太陽がいっぱいの中を生き続けられる人がいる。
  ずっと真っ暗な深夜を生きていかなきゃならない人もいる。
  で、人は何を怖がるかというと、それまで出ていた太陽が
  沈んでしまうこと。自分が浴びている光が消えることを、
  すごく恐れてしまうわけ。(略)」》

 《「あたしはね」と雪穂は続けた。
  「太陽の下を生きたことなんかないの」/
  「まさか」(略)「社長こそ、太陽がいっぱいじゃないですか」/
  だが雪穂は首を振った。
  その目には真摯な思いが込められていたので、夏美も笑いを消した。
  「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。
  でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。
  太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。
  あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることが
  できたの。わかるわね。あたしには最初から太陽なんかなかった。
  だから失う恐怖もないの」/
  「その太陽に代わるものって何ですか」/
  「さあ、何かしらね。夏美ちゃんも、
   いつかわかる時が来るかもしれない」》p.826



「太陽の下を生きたことなんかないの」
「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。」といい、
それでも「暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから」と。
太陽に代わるものが何かはわかりませんが、
「その光によって、夜を昼と思って生きてくることができたの」
といいます。
さらに、
「あたしには最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの」
という。

こういう振り切った生き方をすることになる原因とは何だったのか、
そして、
そんな自分に力をくれた太陽に代わるものとは何だったのでしょうか。

いよいよラストでは、謎解かれる部分もあれば、
何だったのか明らかにされない部分もあり、
深い内容の物語です。


 ●現実に負けないで戦う者同士?

全編、主人公を視点にするのではなく、周辺の人物を視点に、
主人公たちの行動を垣間見せてゆくという技法を取っています。

この手法が時に謎を深めながら、時に謎解きをほのめかせながら、
読者を引っ張ってゆく力になっています。

最終的に、雪穂と亮司の関係はどうだったのでしょうか。
明らかにされているのは、小学生時代、図書館で二人は会っていた、
同じ本を読んでいたということ、ぐらいです。

二人の関係は、
昼と夜または光と闇、明と暗の補完しあう関係だったのでしょうか。

あるいは、闇の中を光を求めて、互いに手に手を取り合い、
助け合って歩む者同士、という関係だったのでしょうか。

それとも全く違う形の何かであったのでしょうか。

作者は何も書いていませんので、私たち読者にはわかりません。
ただ自分なりに想像するだけです。

ラストを思いますと、なんらかの形で、ほのかな希望を胸に、
反骨精神でもって、現実の社会の重さに負けないように、
歯を食いしばって上を目指す者同士だったように思います。

そして、その戦いはまだ終わってはいないようです。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」と題して、今回も全文転載紹介です。

わが青春時代の思い出が色々と時代背景の説明として登場する一編です。
冒頭、わが故郷である東大阪市一の繁華街を持つ近鉄布施駅が登場します。
1973年から始まる19年間の物語で、主人公の一人の少年~青年は、パソコンやゲームの世界を背景に生きていくので、インベーダー・ゲームやスーパーマリオ、ワープロやPCなどの固有名詞が出てきます。
松田聖子の聖子ちゃんカットや、ソノレゾレノ時代を代表する歌手の名なども次々と出てきます。
オイル・ショックの時のトイレット・ペーパー騒動なども背景の話として登場します。

ストーリーそのものではないのですが、こういう時代を思い返す読み方も楽しいものです。

映画やドラマにもなったようですが、私は見ていないので、本文中でもふれていません。
見ていたら、また別の楽しみもあるのでしょうね。
あの役はこの俳優さんじゃないよとか、この俳優さんがよかったとか。
「見てから読むか、読んでから見るか」みたいな……。

 ・・・

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-楽しい読書349号
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