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震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

学校再開 実戦教師塾通信七百五号

2020-05-22 11:21:05 | 子ども/学校

 学校再開

 ~休校中の親/現場からの声~

 

 ☆初めに☆

千葉県柏市も、分散登校から本格的な学校再開へのスケジュールが明らかになりました。休校が異常事態だったのですから、再開して正常になるはずもありません。私たち大人や教師が、今のうちからやるべきこと、やるべきでないことの識別と心がけをしておかねばなりません。

この三カ月、多くの親や教師からいただいた相談や報告から考えてみたいと思います。

 

 1 学習の遅れ

 一番多かった相談内容が、学習に関することだった。ニュースでも繰り返されているように、「学習が遅れる」「宿題/課題の指導/点検が出来ない」等の間に、オンライン授業に対して「全く集中できない」「ちっとも勉強しない」「家にネット環境がない」等の不安が入っている。

 話していて感じたことは、大体が「今に始まったことではない」だった。たとえば、ある中学校の登校日、校庭に集合した時「しゃべってはいけない」のは、「うるさい」からではなかった。「感染防止のため」だという。笑える。一方、「遅れ」への悩みは切実だ。年度末の3月はともかくも、新学期の4、5月のブランクは大きい。一単元の遅れがすでに出ていると考えていい。課題を出しても、教室で「隣同士の教えあい」やら「終わった生徒から提出」が出来るわけではない。やっとアップしたラインの授業は、隣の子や先生に聞こうとしても不可能で、先生からの、

「おいコラ、シンゾウ! 聞いてねえな~」

などという声もない。校庭の元気な声や小鳥のさえずりが、合間に聞こえるわけでもないのだ。

 寄せられる悩みには、大人たちの先行きの見えない、初めて尽くしのストレスが横たわっているように思えた。たとえば、仕事を休むか仕事が無くなるかした日常のかたわらで、子どもが「特にやることのない顔」をして、夏休みより長い期間を過ごしている。これがすべての引き金になっていると思えた。

「工場を子どもがウロウロしてちゃ、危なくて仕事に集中出来ねえよ。でも怒鳴るわけにも行かねえし」

という父親のいらだちと、子どもを不憫(ふびん)に思う言葉はリアルだ。そして普段からやる気のない子は、まったくやる気がない。私は親に、

①学習の遅れや学習環境の不備はどの子も同じ。たとえば九九を、自分の子どもだけが遅れるわけではない。それぞれやる気をそがれているし、みんな教科書をろくに使えずにいる。

②ここは学校を信じて任せる方がいい。学校が出来ないことまで家庭は出来ない。それが出来る家庭は限られている。そんな格差社会のあり方は前と同じだ。

③勉強によって自分の成長があったわけではないことを、親は思い出すべきだ。いま大切なことが何なのか、親は子どもを見守る中で考えてあげた方がいい。

等と言っている。

 

 2 地域差/学校差

 さて、学校が始まると、保護者や子どもたちの前に別な不安が姿を現す。それはテレビ授業などにすでに見られる、涙ぐましい試行錯誤である。どれを見ても、「学習とは知識や理解力の獲得」になっている。今が学校におけるICTの夜明けだ、とすり替えているとしか思えない主張には許しがたいものがある。

 「涙ぐましい試行錯誤」の大々的報道が露出させるのは、地域差や学校差である。いわく、「◇◇市では模擬授業」「◇◇県はライン授業の環境を整えた」等々。それでなくとも「我が家は よその家より不足不備」な思いが、親の余裕を削(そ)いでいるという時、これらは「よそはバッチリやってます」と追い込む。また良くないことに、学校はこれら「先進例」に弱い。「ならばウチも遅れてはならじ」という追随を、今までもずっとやって来た。今度がそうならないとは思えない。付け足せば、今年の学力テストは中止となったが、来年実施の時はその結果をめぐって「自治体ごとのコロナ対策成功/失敗」と、目を覆(おお)わんばかりの報告/評価が並ぶはずだ。恐ろしい。

 ついでながら「学校差」ということで柏市内の卒業式を。これは校長の考えが明確に反映された。保護者が体育館内で参加できる学校。正面&側面扉の扱いは、全面開放し外から見ることが出来るものから、すべてシャットアウトし封鎖するという「3密違反」を侵(おか)すものまで様々だった。最後の例は、「何もしないのが一番」という校長の普段の姿勢から、保護者には「やっぱりそうか」というものだったらしい。

 さて、授業における効率性や到達度は、教師の技術が第一ではない。それは教室の「空気」、つまり子どもたちの相互関係と、教師対子どもの関係の方にある。「学びの面白さ」や、「勉強なんてあんまり向きになるもんじゃない」と思える「開かれた空間」が、そこにはある。学校生活終了後に残るのは、そっちの方だ。東大出たけどダメだったナと思う仲間や教え子は、少なくないわけである。「隣の芝生がよく見える」のは、自分が余裕のないせいである。大切なのは、自分の庭の良さを見いだすことだ。自分が、そしてメディアは心しないといけない。とりあえず、夏休みの「短縮期間」はどうあるべきか、我が胸に手を当てて考えてみよう。

 

 3 その他

(1)私たちへの警鐘

 私たちが「自ら判断する」のでなく「誰を信じるか」が大事という、よろしくない現在の状況の中で抑(おさ)えておきたい。新型ウィルスへの恐怖心が「先進国」に特徴的であることは前回書いた通りだ。同じく地球の気候変動も人類に対する警鐘と思える。ひとつ振り返る。経済白書が「もはや戦後ではない」(1956年)と言った前の年、幼児の死亡原因のトップが「交通事故」になっている。悲しい出来事と経済成長は前から同じ道を歩んできたのだ。繰り返すが、今回のことが経済やら先進国やらを標的にしているのは間違いない。子どもたちの明日を考える私たちは、「学び」「遊び」「成長」について考えるチャンスをもらったと考えたい。

(2)「FLASH」「朝日新聞」

 ゴーマニズムの小林よしのりと、今回波長があったようです。

19日発売『FLASH』より

小池都知事をチクリチクリとやった宣言。他の週刊誌でも、ようやく他の疾患や年齢による比較を始めたようだ。

 「朝日の記事(17日の1、2面)を読んだら、前回のブログが腑に落ちました」という感想をいただいた。私は安心すると同時に、もっと分かりやすく丁寧に、という思いを強くしました。

 

 ☆後記☆

驚きましたね。賭けマージャンの方もですが、若者中心にネットを通して政治が動いたことです。「政治? 関係ねえ~」ってわけではなかったのですねえ。私たち年寄りも頑張らないといけません。芸能界も頑張れ! キョンキョンのCD買おう!

そして、賭けマージャンの方ですが、どう判断したらいいでしょうか。三択で考えました。①メディアがスクープねらいでスクラムを組んだ ②世論でなく本人のスキャンダルで辞任という方向を、官邸が仕組んだ ③自分の不始末が原因で辞めるなら官邸に迷惑もかからないし、世論もトーンダウンするという本人の作戦

私はすべてが入り組んだ結果と思えるのですが、皆さんはどう思いますか。5月1日からのタイムラグと、「どうしてバレたのか」が引っかかるのですよね。

巣籠もり生活のために、というキャンペーン商品。「六花亭」です。

 ☆ ☆

今は私も、子どもたちのためにせいぜい動き回っています。この3カ月間の子どもたちの巣籠もりで、一体どんなことが起きていたのか、私たちは覚悟しないといけません。