実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

高倉健/カンナ屑 実戦教師塾通信六百七号

2018-07-06 11:22:00 | 福島からの報告
 高倉健/カンナ屑(くず)


 1 高倉健
 山本哲士氏が、今まで福島に来ているのは大体が南相馬だった。いわきに来るのは初めてである。いわき市立美術館で現在、高倉健の追悼(ついとう)特別展をやっている(今月16日まで)。その記念講演に、山本氏が招聘(しょうへい)された。ちょうど私も福島にいる時だった。

講演冒頭で話しているのを聞いて思い出したが、だいぶ前のことだ、山本氏が骨折(複雑)したおり、医者の勧めた手術を拒否し自力で直したという、恐るべき出来事があったのである。その自宅での安静期間中、高倉健の全作品を見たというのがきっかけで本が出来上がった。

この本に書き上げたこと(一部)を話したのである。
 開始時間より早めに行けば、少し話でも出来るかなと思って会場に行ってみて驚いた。定員40人、最上階にある小さな会場はすでに満杯で、臨時で通路に入れた椅子でも間に合わず、私はドアを開け放った入口で話を聞くことになった。分かりづらいが、スクリーン前で話しているのが山本氏。

年配の方が多かったが、若い女性の姿も見られた。みんな時折(ときおり)会場を笑いでうずめ、あるいはじっと聞き入るのだった。
 任侠(にんきょう)映画で人気を博した高倉健である。当時、仲間や先輩がこぞって見に行っては高倉建に「成りきって」いる姿を見たのだが、私はまったく興味を持てず、結局見た映画は『野性の証明』と、遺作の『あなたへ』だけだった。
 山本氏の、
「仁義を貫(つらぬ)くためには、俗悪な世界に足を踏み入れないといけない」
「踏み込んではいけない境界に行ったとき生まれる苦悩を『美』と呼ぶ」
話もそうだったが、美術館ふたつのフロアをまたいで、たくさんのスクリーンを惜しげもなく使った高倉健全作品の映写は、見応えがあった。もちろんすべてエッセンスなのだが、それらを見た私は、高倉健の任侠映画を見たいと思うようになっていた。

     講演会後、ロビーで。館長さんに撮ってもらいました。

「柏までだったら送るよ」
私がすすめるまま車に乗った山本氏は、続きを話した。
①「侠客一代」
②「昭和残侠伝 死んで貰(もら)います」
がお薦(すす)めなのだった。

 2 「握手しときゃよかった」
「部活? 終わりました」
この日は土曜日だったので、午後の部活はないのだなと私は思った。
「いや、終わったんです」
楢葉・渡部さんの息子のこの言葉に、ようやく私は察した。高校での部活、バドミントンが終わったのである。あと一回戦を勝ち抜けば県大会だったという。胸の内こそ分からないが、彼の表情はいつものようにさばさばしていた。

     ちょうど牛さんたちの食事時でした。

 かたわらで大工さんたちがかんなをかけてるところで、3mもあろうかという木材が快い音を立てていた。

もらっていいですかと私が手にしたカンナ屑は、この写真では分からないが、向こうが透けて見えるのである。良く聞いていた話ではあるが、現物を見たのは初めて。ひたすら感動した。

これは、お茶の時間に大工さんが、カンナ屑をくるくる丸めて作った「キノコ」。
「たわしに使えんだ」
渡部さんが解説した。お盆に完成予定の母屋(おもや)は、もう間仕切りまで作られている。
「(自分の)部屋で休んで来るよ」
という息子なのだ。

「(スパリゾート)ハワイアンズの直下に活断層があってよ」
「再開するかどうか検討してる間、フラガールは全国を回ったんだ」
思い出す。震災の年、私が長い間世話になった旅館「ふじ滝」の窓からは、無残に崩(くず)れ落ちたハワイアンズが見えていた。
「お忍びで来てくれた有名人は良かったね」
奥さんが言う。春菜愛、沢村一樹、そして仲村トオル。
 新しい母屋の床は、それが思ったより高くなって、
「鴨居(かもい)がその分低くなった感じでさ」
と、奥さんは続ける。
「これじゃ、仲村トオルさんの頭がつかえちゃう」
と笑う。そして、
「握手しときゃよかった」
また言ってる。



 ☆後記☆
福島第二原発廃炉(はいろ)決定のニュース。地元では号外が出たのです(『福島民報』6月14日)。

     これは『福島民友』。

東海第二原発の方も目が離せません。再稼働するための資金不足を、東電が助けようって話。基準に「合格」を出した規制委員会も、その東電に「いかがなものか」と疑義を出しましたね。茨城県水戸市議会は再稼働反対を決議しました。
 ☆ ☆
大谷君、復帰しましたね。それだけでも嬉しい。そして、さっそくのマルチ安打。すごいなあ。せっかくのマリナーズ戦なのに、イチローがいないのがなんか不思議です。クラブハウスで見てんでしょ。残念ですが、仕方ない。

藤井君も頑張れ~

明日は七夕~☆☆