『美味しんぼ』『チームバチスタ』補記
1 『美味しんぼ』
前回の記事、反応ありありだった。なるほどと言ってくださる方が多いのは、私のブログの読者だからだと思う。
「不安をあおっていいのだろうか」
といったたぐいもあった。しかし、これらの意見の多くが、
「不安を扱(あつか)うのは控(ひか)えるべきだ」
と牽制(けんせい)する空気を持っていたのは残念だ。
「不安をあおる」
のはいけないが、
「不安を回避(かいひ)する」
のもいけない。当たり前だ。
「原因不明の鼻血」が当時ニュースとなったのは、多くが子どもたちのことだ。大人は経験していても、あまりそれを口にしていない。私も除染作業をしたが、その頃鼻血は出ていない。
天然の真鯛(まだい)は、引き上げられると内蔵を口から吐(は)いて死んでしまう。真鯛は深海魚(しんかいぎょ)だからだ。水槽(すいそう)で泳いでるじゃないか、と思うのだが、彼らは養殖(ようしょく)なのだ。天然の真鯛は、曇(くも)りなく桜色をしている。しかし、私たちの見る「真鯛」は、みんな日焼けしたような褐色(かっしょく)がかっている。浅いところで生きているため、日光の影響があるという。「別物」なのだ。

このおぞましい写真は、窓のない鶏舎(けいしゃ)で「育つ」ブロイラーである。ぎっしり詰(つ)め込まれた鶏は、上から降ってくる餌(えさ)を食べ続け、動けないせいであっと言う間に大きくなる。二週間とも一カ月とも言われる短期間で食肉に処分されるその前、一瞬(いっしゅん)外の光を見るという。ストレスや病気にさらされるため、抗生物質を初めとした、たくさんの薬が入った餌を彼らは食べないといけない。
さて、こんな養魚場・養鶏場(ようけいじょう)の中、奇形で生まれ・育つものが出てきた。それはもうずっと前、半世紀近く前から始まり、今も続いている。『美味しんぼ』は率先(そっせん)してそれらを取り上げてきた。今回の連載(れんさい)で、それらは取り上げられていないはずだ。動植物の異常は原発事故が原因なんぞと、少なくとも今、『美味しんぼ』が言うはずがない。
今でこそ一定程度こういう「食の事情」は知られることとなっている。しかし30年前はこうではなかった。私は「真鯛」で、そして「ブロイラー」で目を見張ったのだ。『美味しんぼ』の果たした役割は大きい。しかし『美味しんぼ』は、私たちの驕(おご)った生活/意識の告発を目的としているのではない。読めばそこには、「食」のすばらしさがよみがえるのだ。
プロの目を持つ山岡と、アマチュアの目線で感じる栗田さんのコントラストが見事だった。二十巻までは文句なしに面白かった。でも、今や栗田さんもプロの目が育った感じだし、彼女は山岡の奥さん&二児(だったかな)の母となってしまって、残念なほど落ち着きを見せている。そのせいなのか、話の展開が緊張を欠くようになったように思う。その上、今度は宿敵(しゅくてき)海原雄山と和解するという。よろしくない。
2 『チームバチスタfinalケルベロスの肖像』

『美味しんぼ』の続きではない。でも、チームバチスタの白鳥を演じる仲村トオルが、以前吉野家の看板(かんばん)をやったから、というのでもない。これは全国紙では見られなかった、と思われる『福島民友』からの記事。香港(ほんこん)の吉野家に貼(は)られたポスターだ。
「香港吉野家は、福島の米や食材を一切(いっさい)使っていません」
という内容である。
これは、昨年の秋に吉野家が、福島県内の農家と米を作る法人を設立(せつりつ)し、復興支援につなげる、と表明したことに始まった。その後、
「吉野家は米を福島産にする。ガンになることが恐(こわ)くないなら食べて」
という情報が、香港で流れたという。これに困った香港吉野家が作ったポスターなのだ。
この米や農産品、漁獲(ぎょかく)品、そして「原因不明の鼻血」もそうだ。これらの問題が結論を得るのはいつのことなのだろう。原爆投下から70年近くを迎(むか)えようとしているのに、いまだに「被曝体験者」と「被爆者」なるふた種類の現実があることを私達は知っているだろうか。「被爆者と認めよ」と、多くの人々が申請(しんせい)している。つまり今も、
「健康被害と原爆の因果関係」
が問われているのだ。
私は現在、楢葉で「除染検証委員会」の委員長をつとめる児玉龍彦教授のことを思う。児玉氏は今、
「私達のやっているのは『除染』ではない。『移染(いせん)』だ」
と、楢葉の人たちに言っている。取り除けないものだから集めて閉じ込める、という考えだ。そんな児玉氏の活動に対して、
「福島の人間を使って人体実験をしている」
という批判もある。しかし児玉氏は、
「福島が安全なところだ」
とは言っていない。児玉氏はひたすら、
「『福島に残りたい』『福島にもどりたい』という人たちの力になりたい」
と言っている。
「『安心』に転化できる部分はある」
と言っている。
それにしても、児玉氏の検証の答えはいつ出るのだろう。私はそこで『チームバチスタfinal』の白鳥を思い出す。
「薬の完全なデータが揃う(そろう)まで90年。それまで多くの患者が亡くなります。私達はそれで、過失(かしつ)を伴う認可を急ぎます」
というセリフだ。薬害が取り上げられる時、新薬の開発現場から、
「これが『有罪』となってしまえば、新薬の開発は出来なくなる」
という声が、必ずと言っていいほど上がる。
児玉氏は50年後、あるいはもっとあとに「奇跡(きせき)の人」と讃(たた)えられるのだろうか、それとも「悪魔の手先」と罵(ののし)られるのだろうか。
はっきりしていることは、
「不安は回避することではなく、検証しないといけない」
ことである。そして、
「これらの不安のもとには原発事故がある。もっと言えば私達がそれをもたらした」
ということだ。
☆☆
マー君、また勝ちましたね。だいぶ苦戦したようです。でも「無敗神話」が続いちゃいました。それと前回の試合後のインタビューで「失投(しっとう)」発言、出ちゃいましたね。残念。そんな人ではなかったと思ったが、まあこれからの苦労と活躍(かつやく)の中で検証されることでしょう。マー君頑張れ~!
ジョーンズ、ようやく調子上げてきましたね。楽天も頑張れ~!
☆☆
昨日、すこしばかり早起きしてテレビをつけたら、F1レーサーの中島悟がロングインタビューで出てました。だいぶ年取ったなぁとも思いましたが、楽しそうにレースの現場で働く姿は、現役(げんえき)の時とちっとも変わってませんでした。
嬉しかったですね。頑張りましょうって思いましたよ。
1 『美味しんぼ』
前回の記事、反応ありありだった。なるほどと言ってくださる方が多いのは、私のブログの読者だからだと思う。
「不安をあおっていいのだろうか」
といったたぐいもあった。しかし、これらの意見の多くが、
「不安を扱(あつか)うのは控(ひか)えるべきだ」
と牽制(けんせい)する空気を持っていたのは残念だ。
「不安をあおる」
のはいけないが、
「不安を回避(かいひ)する」
のもいけない。当たり前だ。
「原因不明の鼻血」が当時ニュースとなったのは、多くが子どもたちのことだ。大人は経験していても、あまりそれを口にしていない。私も除染作業をしたが、その頃鼻血は出ていない。
天然の真鯛(まだい)は、引き上げられると内蔵を口から吐(は)いて死んでしまう。真鯛は深海魚(しんかいぎょ)だからだ。水槽(すいそう)で泳いでるじゃないか、と思うのだが、彼らは養殖(ようしょく)なのだ。天然の真鯛は、曇(くも)りなく桜色をしている。しかし、私たちの見る「真鯛」は、みんな日焼けしたような褐色(かっしょく)がかっている。浅いところで生きているため、日光の影響があるという。「別物」なのだ。

このおぞましい写真は、窓のない鶏舎(けいしゃ)で「育つ」ブロイラーである。ぎっしり詰(つ)め込まれた鶏は、上から降ってくる餌(えさ)を食べ続け、動けないせいであっと言う間に大きくなる。二週間とも一カ月とも言われる短期間で食肉に処分されるその前、一瞬(いっしゅん)外の光を見るという。ストレスや病気にさらされるため、抗生物質を初めとした、たくさんの薬が入った餌を彼らは食べないといけない。
さて、こんな養魚場・養鶏場(ようけいじょう)の中、奇形で生まれ・育つものが出てきた。それはもうずっと前、半世紀近く前から始まり、今も続いている。『美味しんぼ』は率先(そっせん)してそれらを取り上げてきた。今回の連載(れんさい)で、それらは取り上げられていないはずだ。動植物の異常は原発事故が原因なんぞと、少なくとも今、『美味しんぼ』が言うはずがない。
今でこそ一定程度こういう「食の事情」は知られることとなっている。しかし30年前はこうではなかった。私は「真鯛」で、そして「ブロイラー」で目を見張ったのだ。『美味しんぼ』の果たした役割は大きい。しかし『美味しんぼ』は、私たちの驕(おご)った生活/意識の告発を目的としているのではない。読めばそこには、「食」のすばらしさがよみがえるのだ。
プロの目を持つ山岡と、アマチュアの目線で感じる栗田さんのコントラストが見事だった。二十巻までは文句なしに面白かった。でも、今や栗田さんもプロの目が育った感じだし、彼女は山岡の奥さん&二児(だったかな)の母となってしまって、残念なほど落ち着きを見せている。そのせいなのか、話の展開が緊張を欠くようになったように思う。その上、今度は宿敵(しゅくてき)海原雄山と和解するという。よろしくない。
2 『チームバチスタfinalケルベロスの肖像』

『美味しんぼ』の続きではない。でも、チームバチスタの白鳥を演じる仲村トオルが、以前吉野家の看板(かんばん)をやったから、というのでもない。これは全国紙では見られなかった、と思われる『福島民友』からの記事。香港(ほんこん)の吉野家に貼(は)られたポスターだ。
「香港吉野家は、福島の米や食材を一切(いっさい)使っていません」
という内容である。
これは、昨年の秋に吉野家が、福島県内の農家と米を作る法人を設立(せつりつ)し、復興支援につなげる、と表明したことに始まった。その後、
「吉野家は米を福島産にする。ガンになることが恐(こわ)くないなら食べて」
という情報が、香港で流れたという。これに困った香港吉野家が作ったポスターなのだ。
この米や農産品、漁獲(ぎょかく)品、そして「原因不明の鼻血」もそうだ。これらの問題が結論を得るのはいつのことなのだろう。原爆投下から70年近くを迎(むか)えようとしているのに、いまだに「被曝体験者」と「被爆者」なるふた種類の現実があることを私達は知っているだろうか。「被爆者と認めよ」と、多くの人々が申請(しんせい)している。つまり今も、
「健康被害と原爆の因果関係」
が問われているのだ。
私は現在、楢葉で「除染検証委員会」の委員長をつとめる児玉龍彦教授のことを思う。児玉氏は今、
「私達のやっているのは『除染』ではない。『移染(いせん)』だ」
と、楢葉の人たちに言っている。取り除けないものだから集めて閉じ込める、という考えだ。そんな児玉氏の活動に対して、
「福島の人間を使って人体実験をしている」
という批判もある。しかし児玉氏は、
「福島が安全なところだ」
とは言っていない。児玉氏はひたすら、
「『福島に残りたい』『福島にもどりたい』という人たちの力になりたい」
と言っている。
「『安心』に転化できる部分はある」
と言っている。
それにしても、児玉氏の検証の答えはいつ出るのだろう。私はそこで『チームバチスタfinal』の白鳥を思い出す。
「薬の完全なデータが揃う(そろう)まで90年。それまで多くの患者が亡くなります。私達はそれで、過失(かしつ)を伴う認可を急ぎます」
というセリフだ。薬害が取り上げられる時、新薬の開発現場から、
「これが『有罪』となってしまえば、新薬の開発は出来なくなる」
という声が、必ずと言っていいほど上がる。
児玉氏は50年後、あるいはもっとあとに「奇跡(きせき)の人」と讃(たた)えられるのだろうか、それとも「悪魔の手先」と罵(ののし)られるのだろうか。
はっきりしていることは、
「不安は回避することではなく、検証しないといけない」
ことである。そして、
「これらの不安のもとには原発事故がある。もっと言えば私達がそれをもたらした」
ということだ。
☆☆
マー君、また勝ちましたね。だいぶ苦戦したようです。でも「無敗神話」が続いちゃいました。それと前回の試合後のインタビューで「失投(しっとう)」発言、出ちゃいましたね。残念。そんな人ではなかったと思ったが、まあこれからの苦労と活躍(かつやく)の中で検証されることでしょう。マー君頑張れ~!
ジョーンズ、ようやく調子上げてきましたね。楽天も頑張れ~!
☆☆
昨日、すこしばかり早起きしてテレビをつけたら、F1レーサーの中島悟がロングインタビューで出てました。だいぶ年取ったなぁとも思いましたが、楽しそうにレースの現場で働く姿は、現役(げんえき)の時とちっとも変わってませんでした。
嬉しかったですね。頑張りましょうって思いましたよ。