春の嵐が吹き荒れた今日。もうすぐ卒業式と入学式を待つ地方のある大学のキャンパスを車で走り抜けて、ほんのりと感傷的な気持ちになったのは気候のせいだろうか。
通勤途中に、ぼちぼち見かける振り袖に袴をはいた女子学生の姿。彼女達の姿を見かけると毎年春の訪れに気がつき、懐かしい感情がわいてくる。自信もなく迷いの多かったけれどなにがしかの矜持とともに大学時代を封印した自分の卒業式の袴姿が、ぼんやりと浮かんでくる。
私立大学のマス教育にただ参加する大量学部生には、ホテルでの謝恩会なんぞなかった、と思う。(周囲に出席したという話もなかったから)この点でわずか2クラス、女性上位の華やかな英文科や、女子大のイベント的な謝恩会風景の盛り上がりは、ちょっとうらやましかったりもした。
白楽ロックビル先生という、売れないお笑い芸人のような芸名?をもつお茶の水女子大学理学部(専攻は、バイオ政治学)の教授がいる。
ロックビル先生の「博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生」という本は、論文以上に有名で?、理系学生が一度は手にとる名著である。くだけた調子で寒いギャグ連発なのだが、ロックビル先生は博士号を「足の裏についた米粒みたいなものだ。取らないと気になるが、取っても食えるわけではない」と断言する。この真意は、本をお読みになっていただければおわかりいただけるだろうが、欧米のように博士課程修得者は修士と比較してそれほど学歴の差にみあった待遇の違いもなく、文部科学省はポストドク1万人計画の太鼓を鳴らしたが、その高い専門知識と技能にみあった受け皿もない現状を憂えているのである。
チーーーン、と電卓をはじいて、諸々の経費のお金を計算しつつ、純粋で、だから現実を知らない無知・無邪気ともいえる未来の研究者をめざす卵たちに、シビアに、せつなく、日本の博士の現実を訴えている。
さて、その白楽ロックビル先生が謝恩会に関する思い出をせつせつと語っている。
ある年、家庭が貧しくてアルバイトをしながら通学していた女子生徒が先生の研究室で昼食をとる。メロンパンたったの一個。授業料免除(国立大学には、世帯の所得によって授業料免除あり)、奨学金の申請をつかう小柄でやせている生徒に、白楽先生は本気で学業を継続できるのかと心配をする。学費を援助しようかとも考えたが、生徒のプライトを傷つけることや、人間性が育たないとやめる。そしてようやく卒業式を迎えることとなった。式の後の謝恩会は、ホテルで開かれる。教授は招待なので参加費を知らなかった先生は、彼女もおつきあいで出席することを聞き及び、はじめて会費が3万円だと知った。諸々の経費を考えると、この金額は妥当だと思える。けれども、ロックビル先生は、学生のパンをかじる姿が脳裏にやきつき、その年から謝恩会に出席することはないそうだ。
貧しい彼女への哀れみの同情ではない。
ロックビル先生は、「謝恩」が目的ならば、卒業後10年後自分の働いたお金で「謝恩会」を開いてくれたら喜んで出席したいそうだ。
「卒業写真」を眺めながら、過ぎた日々に思いをはせる今夜だ。
通勤途中に、ぼちぼち見かける振り袖に袴をはいた女子学生の姿。彼女達の姿を見かけると毎年春の訪れに気がつき、懐かしい感情がわいてくる。自信もなく迷いの多かったけれどなにがしかの矜持とともに大学時代を封印した自分の卒業式の袴姿が、ぼんやりと浮かんでくる。
私立大学のマス教育にただ参加する大量学部生には、ホテルでの謝恩会なんぞなかった、と思う。(周囲に出席したという話もなかったから)この点でわずか2クラス、女性上位の華やかな英文科や、女子大のイベント的な謝恩会風景の盛り上がりは、ちょっとうらやましかったりもした。

ロックビル先生の「博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生」という本は、論文以上に有名で?、理系学生が一度は手にとる名著である。くだけた調子で寒いギャグ連発なのだが、ロックビル先生は博士号を「足の裏についた米粒みたいなものだ。取らないと気になるが、取っても食えるわけではない」と断言する。この真意は、本をお読みになっていただければおわかりいただけるだろうが、欧米のように博士課程修得者は修士と比較してそれほど学歴の差にみあった待遇の違いもなく、文部科学省はポストドク1万人計画の太鼓を鳴らしたが、その高い専門知識と技能にみあった受け皿もない現状を憂えているのである。
チーーーン、と電卓をはじいて、諸々の経費のお金を計算しつつ、純粋で、だから現実を知らない無知・無邪気ともいえる未来の研究者をめざす卵たちに、シビアに、せつなく、日本の博士の現実を訴えている。
さて、その白楽ロックビル先生が謝恩会に関する思い出をせつせつと語っている。
ある年、家庭が貧しくてアルバイトをしながら通学していた女子生徒が先生の研究室で昼食をとる。メロンパンたったの一個。授業料免除(国立大学には、世帯の所得によって授業料免除あり)、奨学金の申請をつかう小柄でやせている生徒に、白楽先生は本気で学業を継続できるのかと心配をする。学費を援助しようかとも考えたが、生徒のプライトを傷つけることや、人間性が育たないとやめる。そしてようやく卒業式を迎えることとなった。式の後の謝恩会は、ホテルで開かれる。教授は招待なので参加費を知らなかった先生は、彼女もおつきあいで出席することを聞き及び、はじめて会費が3万円だと知った。諸々の経費を考えると、この金額は妥当だと思える。けれども、ロックビル先生は、学生のパンをかじる姿が脳裏にやきつき、その年から謝恩会に出席することはないそうだ。
貧しい彼女への哀れみの同情ではない。
ロックビル先生は、「謝恩」が目的ならば、卒業後10年後自分の働いたお金で「謝恩会」を開いてくれたら喜んで出席したいそうだ。
「卒業写真」を眺めながら、過ぎた日々に思いをはせる今夜だ。
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