大学生活も3年の終盤にかかると、そろそろ就職活動に本腰を入れる時期になる。氷河期からややあかるい春の兆しがみえてはきたが、以前厳しい状況にはかわりがない。けれども、「世界で最も長い就職試験」と言われるのが、英国の議会への就職、議員になるための道である。
現与党である労働党、野党の保守党の候補者選考は、基本的に各選挙区の党本部が決定権をもつ。
労働党では、労働組合の推薦者が有利ではあるが、各選挙区の当支部が厳格な候補者コンテストを行い、選別してたった一人の人間を”公認候補”として決定する。一方保守党では、候補者になるためにはまず党本部に経歴を送り、「承認候補者リスト」に載せてもらう。次に自分の立候補したい選挙区に書類を送って応募できる。(労働党のような推薦は、不要。)
しかし、まずこの候補者になるためには、党内の熾烈な競争に勝ち抜くというレースが待っている。
英国選挙事情を「世界で最も長い就職試験」と評した保守党エド・ベイシー議員の場合、97年総選挙で伝統的に労働党が強いブリストル東部選挙区から立候補して、あえなく落選。その後01年総選挙では、イアン・ダンカンスミス元保守党党首の選挙スタッフとして働き、党内での実績を積んだ。この時の実績が、のちの競争でいかされることになる。彼は昨年5月の総選挙で、議席を占めていた保守党の議員引退が決まったため、後継者として候補者に名乗りをあげる。200人を超す候補者から、書類選考で「ショートリスト」と呼ばれる18人に残った。次に一次面接で8人、幹部面接で「ファイナル・ショートリスト」の4人に入る。最後の難関は、選挙区の党員全員の前で行われる、政策に関する自分の考えとセールスポイントの演説と質疑応答である。
党員からは、実に多くの質問が飛ぶ。欧州連合と英国の関係をどう考えるか、環境、医療、年金問題から、ブレア政権のキツネ狩り禁止に賛成か反対か。ここでのワンステージ選挙区の党員1000人から秘密投票で200人が投票して、最終的にたったひとりベイシー議員が、公認候補者として決定された。選挙の前に、なんという厳しいプロセスを経て、候補者になるのだろう。
英国の選挙区は、伝統的に労働党が絶対的に強い指定席が1/3、保守党が絶対的に強い指定席も1/3という”セーフ・シート”があり、残りが浮動選挙区である。つまりこの浮動選挙区を制することが、党の趨勢を決める。
ブレア首相も、最初は候補者にもたどり着けなかった。82年ロンドン西部ビーコンズフィールド選挙区で候補者になるものの、落選して惨敗。しかしこの最初から勝ち目のない保守党のセーフ・シートで、いかによく闘ったかという実績(選別をクリアーする)を残すことによって、党内の評価を高めて幹部に印象を残すことに成功した。翌年には、労働党のセーフシートのセッジフィールド選挙区から、ショートリスト、ファイナルショートリストと候補者に選ばれて当選した。
かの国、英国では、かようにテレビでの知名度、単なる議員の妻やこどもという血筋でなく、厳しい事前選考というプロセスを戦い抜いた、本当にプロフェッショナルな政治家しか、議会の舞台を踏むことは不可能である。日本は、政治の仕組みを英国に見習っている。しかし肝心の政治家になるための”プロセス”が全く異なっているために、その中身はまるで違っていると言えないか。英国でもまれに議員の子息や妻も議員というケースもある。しかしそれは、長く党員として活躍し、同じ過程を経て候補者の席をつかんで議員になっているのである。選考過程において、情実や世襲の意識は選ぶ党員にも、立候補する本人にもいっさいない。
二世議員、タレント議員、弔い合戦、こんなことばが新聞で当り前のように見かける日本の選挙の現状を、私は心底”ださい”と恥じている。
現与党である労働党、野党の保守党の候補者選考は、基本的に各選挙区の党本部が決定権をもつ。
労働党では、労働組合の推薦者が有利ではあるが、各選挙区の当支部が厳格な候補者コンテストを行い、選別してたった一人の人間を”公認候補”として決定する。一方保守党では、候補者になるためにはまず党本部に経歴を送り、「承認候補者リスト」に載せてもらう。次に自分の立候補したい選挙区に書類を送って応募できる。(労働党のような推薦は、不要。)
しかし、まずこの候補者になるためには、党内の熾烈な競争に勝ち抜くというレースが待っている。
英国選挙事情を「世界で最も長い就職試験」と評した保守党エド・ベイシー議員の場合、97年総選挙で伝統的に労働党が強いブリストル東部選挙区から立候補して、あえなく落選。その後01年総選挙では、イアン・ダンカンスミス元保守党党首の選挙スタッフとして働き、党内での実績を積んだ。この時の実績が、のちの競争でいかされることになる。彼は昨年5月の総選挙で、議席を占めていた保守党の議員引退が決まったため、後継者として候補者に名乗りをあげる。200人を超す候補者から、書類選考で「ショートリスト」と呼ばれる18人に残った。次に一次面接で8人、幹部面接で「ファイナル・ショートリスト」の4人に入る。最後の難関は、選挙区の党員全員の前で行われる、政策に関する自分の考えとセールスポイントの演説と質疑応答である。
党員からは、実に多くの質問が飛ぶ。欧州連合と英国の関係をどう考えるか、環境、医療、年金問題から、ブレア政権のキツネ狩り禁止に賛成か反対か。ここでのワンステージ選挙区の党員1000人から秘密投票で200人が投票して、最終的にたったひとりベイシー議員が、公認候補者として決定された。選挙の前に、なんという厳しいプロセスを経て、候補者になるのだろう。
英国の選挙区は、伝統的に労働党が絶対的に強い指定席が1/3、保守党が絶対的に強い指定席も1/3という”セーフ・シート”があり、残りが浮動選挙区である。つまりこの浮動選挙区を制することが、党の趨勢を決める。
ブレア首相も、最初は候補者にもたどり着けなかった。82年ロンドン西部ビーコンズフィールド選挙区で候補者になるものの、落選して惨敗。しかしこの最初から勝ち目のない保守党のセーフ・シートで、いかによく闘ったかという実績(選別をクリアーする)を残すことによって、党内の評価を高めて幹部に印象を残すことに成功した。翌年には、労働党のセーフシートのセッジフィールド選挙区から、ショートリスト、ファイナルショートリストと候補者に選ばれて当選した。
かの国、英国では、かようにテレビでの知名度、単なる議員の妻やこどもという血筋でなく、厳しい事前選考というプロセスを戦い抜いた、本当にプロフェッショナルな政治家しか、議会の舞台を踏むことは不可能である。日本は、政治の仕組みを英国に見習っている。しかし肝心の政治家になるための”プロセス”が全く異なっているために、その中身はまるで違っていると言えないか。英国でもまれに議員の子息や妻も議員というケースもある。しかしそれは、長く党員として活躍し、同じ過程を経て候補者の席をつかんで議員になっているのである。選考過程において、情実や世襲の意識は選ぶ党員にも、立候補する本人にもいっさいない。
二世議員、タレント議員、弔い合戦、こんなことばが新聞で当り前のように見かける日本の選挙の現状を、私は心底”ださい”と恥じている。
5月6日の総選挙を控え、英国でもテレビ討論会が行われたようですね。英国の選挙事情は情報誌「選択」で私も知りました。
米国流のマスメディアを通じた討論会の是非もあるかと思いますが、政治家としての資質を常に厳しく問われて勝ち抜いた者だけが政治の世界という舞台に登壇できる諸外国に比較すると、日本は石器時代の選挙だと思っています。
情けないですが・・・。
いよいよ裁判員制度が始まってしまいますね。
この記事は、雑誌の「選択」で英国の選挙事情を知りあまりにもお粗末な日本の政治家への成り立ちに怒りとともに感想を書いたのですが、自分の中でも印象に残っています。
リンクの件、承知致しました。
ご指摘のとおりです。深く絶望しています。
どう考えても、英国選挙事情と杉村議員応援の内容が並ぶのは、節操なく顰蹙ものですよね。
杉村議員の志望動機など、所詮ミドルティーンが芸能人になりたくて「モーブス。」のオーディションに応募するのと大差なしです。ただ中身がからっぽだから、これから詰めようがありそうです。だから自民党も今のところ利用価値ありと判断しているし、官僚も相手にしてくれるのです。
こういった政治家の公設秘書という位置から、日本の政策に関わるのもなかなかおもそろそうです。私はペトロニウスさまのような人材が、適任ではないかと考えています。
英国のようにすぐれた政治家をつくるシステムとしては、民主党と共産党がまだ近いかもしれません。
松下政経塾で勉強して、政界に出るパターンも定着しました。ただ気になるのが、彼らは優秀かもしれないが、保守的ではないでしょうか。共産党も不破議長が退任されますね。志位委員長も、感情的にならず理路整然と広範囲に弁がたつ方ですが、求心力に欠ける印象がします。だから小泉劇場の役者森喜朗氏のチーズと缶ビールをもった演技に負けるのです。やがては二大政党時代がくると思います。
でもまー僕も田舎があり、その地域の古い家なので、どういう理由で投票するかはすごくわかります(笑)。日本は、しょせん、まだそんなもんですよね。。。。
>悲しくなりますね
私は、悲しみをこえて怒っております。お粗末過ぎます。立憲君主制の民主主義国家、島国と似ているけれども、政治家の成立ちの違いははなはだしいです。これも、地域の利権に結びつく日本的な政治の構造のせいかもしれません。豪雪で家が倒壊したお年寄りの方達を観ると気の毒だと思いますが、生活圏の向上だけでなく、もっと広い視野で世界を考えて、政治家を選択しようという国民の意識も低く、関心もうすいというところに原因もあります。そういう政治家をうむ土壌を国民が作っている部分もあります。(伝統的に保守政治が強い地域に住む従兄弟たちの、投票の動機を聞くと笑えます。あまりにもなので、とても公表できません。)
ブログでも書きましたが、いっそのこと杉村議員のような人物に期待したいというアナーキストになってしまいそうです。