千の天使がバスケットボールする

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グリーンスパン氏の過ち

2009-04-04 12:08:05 | Nonsense
今さらではあるが、世界中に未曾有の金融危機の爆弾をまき散らした米国住宅バブルの真犯人は誰か。
私としての諸々感想はあるのだが、今月号の「選択」の巻頭インタビューに登場された学習院大学教授の岩田規久男氏の解説がとてもわかりやすかった。そもそも住宅バブルだけでなく、あらゆるモノのバブルは経験していないがはじけた後の泡沫を経験している日本人としては、似たような過ちを米国すらも犯していることに疑問すらもっていたのだが、岩田氏のインタビューを読むと、金融工学が発達して金融業界で跋扈する狩猟民族の習性を思えば、むしろ米国だからこそ陥った愚行とも感じてくる。(以下、要約)

昔からあらゆるバブルは、「低金利×高レバリッジ」の抱き合わせ販売で発生する。2001年、ご存知連邦準備理事会(FRB)議長のグリーン・スパン氏は歴史的な低金融政策の舵取りを行う。詳細は、アラン・グリーンスパン氏の自伝「波乱の時代」(下)を一読を。実質経済成長率、実質所得、雇用、鉱工業生産、卸・小売売上高から全米経済研究所(NBER=National Bureau of Economic Research)によってリセッション(景気後退)の判定がされたからだ。それだけではなく、さらに04年8月証券取引委員会(SEC)は、商業銀行が国際決済銀行規制(BIS)によって自己資本の12.5倍までしか投資できないのに、これまで投資銀行に課していたレバレッジの上限を大幅に緩和したために起こった。その背景は、株式委託手数料でボロ儲けをしていた投資銀行が、手数料自由化によってうまみがなくなり、M&Aの仲介をはじめるも他の金融機関の参入で収益減少。そこであらたな収益源として目をつけたのが、住宅ローンを証券化した債務担保証券(CDO)などの金融商品だった。ただ、邪魔だったのがレバレッジの投資規制。投資の収益率よりも、借りた金利が低ければ低いほど利益が上がる原理から、当時ゴールドマン・サックスのCEOだったポールソン前財務長官が、レバレッジの規制をはずさせたのだった。かくして、国公認のギャンブルが始まった。

ITバブル崩壊と9.11テロを経験したグリーンスパン氏は、日本のようなデフレに陥る危機を救うため、金融緩和を続け、CDOやクレディット・ヂhフォールト・スワップ(CDS)などの金融革新を高く評価していた。信用リスクを他者に移転・分散するシステムが銀行の貸し渋りを防ぐとよんでいた。なるほどと、私も納得してしまうのだが、ここから先、もっともわかりやすいのが岩田氏の説明である。CDSというのは、一種の保険のようなもので、倒産や破綻という現象がランダムに起こればリスク・ヘッジができるのだが、サブプライムローン商品のようにすべての金融機関が住宅価格上昇を前提にリスクをとると、CDSの原理が働かず地震保険のようになってしまうというのだ。グリーンスパン氏はそこを見誤り、また欧州もCDOやCDSを買いあさったために地震が世界中に拡がってしまったのである。

最後に、そこまで言うかと思ったのがインタビュアー氏の「やはりグリーンスパンによる人災か」という質問である。いくらFRB議長とはいえ、権力の王様ではない。岩田氏によると今回の一番の教訓が「非銀行」発の金融危機だということだ。LTCM破綻の時は、銀行団の協力でゆるやかに公的資金を注入することなく解体に成功した、グリーンスパン氏は世界中からお見事と称賛された。成功の美酒というものは、その後の判断力を鈍らせるということか。。。

■アーカイヴ
「波乱の時代」(上)アラン・グリーンスパン著
「波乱の時代」(下)
家計震える師走入り

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