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ガリバーのネット証券参入-「ジョインベスト証券」

2006-05-12 23:48:56 | Nonsense
今週号の「週刊東洋経済」の特集は、<僕らの知らない「未来格差」生涯給料>だった。
他人の懐具合を推察するのは、卑しいことだと思ってはいるが、生涯賃金という側面から社会のひとつの断層をみるこの企画は、なかなか考えさせられるので一度ブログにも書いてみたいものである。
ところである男子大学生の友人が生涯賃金No1のキーエンス(6億837万円)に就職が内定したという世間話から、5/13号の「トップの履歴書」のある方のお顔の話題にうつった。
彼曰く「いかにも野村総研の顔」という診断がくだったのが、明日サイトオープン予定のジョインベストメント証券の社長、福井正樹氏である。
かって野村総合研究所のプレイアデスというシステムを利用し、また惜しくも廃刊になってしまった同名の機関紙を愛読していた者として、彼のなにげない感想に思わずうなづいてしまった。

ジョイ(喜び)+ジョイン(参加)+インベスト(投資)の造語(私には、さらに”ベスト(最高)”も兼ねているように思える)から来る「ジョインベスト証券」は、ガリバーと称された野村證券系のネット専業証券会社である。今や個人投資家の8割超がネット証券経由で売買する時代に、ようやく巨人も遅ればせながら動きだしたというわけだ。しかしその背景を調べてみると、興味深い野村證券の迷走ぶりも浮かぶ。

ジョイン社は野村HDとしての経営戦略であり、野村證券の営業戦略ではない。だからネット証券の横綱「松井証券」のシステムを受託した実績をもつ野村総研の元金融ITイノベーションセンター長の福井氏が、社長として就任した。また、野村本体とのカニバリゼーションをさけるために、あえて”野村”というブランドの冠をはずした。事実、福井氏は、野村證券本体への競争意識はないと語っている。そしてもうひとつの理由として、投信の通販にのりだした「野村ファンドネット証券」の事実上の失敗という痛みから、”野村”の冠を与えることに社内では慎重だった。そして楽天グループのように、新しいコミュニティサイト、ネット上で発生するニーズのサービス・商品化という非金融へのビジネス拡大まで構想をもつ同社としては、「社名に”野村”が入る方が違和感がある」ということになる。証券会社がたちあげたネット証券というよりも、シンクタンク兼IT企業がネット上にあたらしい金融の広場をつくるという感じに近いのかもしれない。

大御所、野村の最大の強みは、富裕層の顧客基盤である。こうした富裕層をつかむコツは、新規公開株を優先的に割り当てることだ。リテール営業のビジネスモデルを語るには、地方支店に配属されているベンチャー企業発掘専門担当者の存在が欠かせない。地方の営業マンは、発掘された企業の上場を手助けしながら、経営者の個人資産の運用にも入り込んでいく。そして上場するあかつきには、新規公開株をお得意さまに割り当てるという、質量ともに人的資源の豊富な野村だから可能なこの一石二(三?)鳥ビジネスモデルは、かって「完成形」とまで賞賛された。しかし、ネット専業証券によってこの完成形も崩れつつある。まず富裕層の開業医や医師たちが肌あいがあうのかネット証券を利用するようになり、その一方町やのぼんぼん達は気楽に取引ができるネットに興味を示す時代になった。なんたってガリバーは、体が大きいだけにこまわりがきかない。

ネット専業証券の社長は、マネックス証券のようなベンチャーか松井証券のように金融ビッグバン後の生残りをかけた中小規模の証券出身が多い。彼らは未開の道なき道を歩き、手数料の引き下げや情報サービスの豊富さを競い、システムに大金を投資して便利さと安さとサービスで真剣勝負をしている開拓者である。そんな彼らのつくった細い道を、野村というブルドーザーが後を追いかけているように見える。「PUFFY」をイメージキャラクターに使い、メディアも話題にとりあげてくれるのも豊かなバックグランドがあるからだ。
その開拓者のひとり、松井道夫社長は、会長を務めるネット証券評議会で「野村には、是非参加して欲しい」と発言している。
他のネット証券会社は、こうした泰然とした発言をどのような思いで受け止めているのであろうか。
福井社長は、「客が得たサービスに対して、どれくらいの対価を支払っているかが大事」と、手数料に関しては、相手が下げたからといって下げるつもりはないと公言している。さすがに、確率統計専攻の”いかにも野村総研の顔”である。(為参考←)

しかしかって野村本体は「ネット専業証券は脅威ではない。いざとなったら思いっきり手数料を下げて一網打尽にすればいいだけの話」と豪語していた。
5月8日に発表されたジョインベスト証券の手数料体系は、業界最低水準。こうなったら体力勝負にもつれこむか、キレル小粒の独創性の競い合いか。
”一網打尽”という表現に、思わずターゲットの小魚たちを応援したくなった。

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