千の天使がバスケットボールする

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『おいしいコーヒーの真実』

2008-06-22 15:17:48 | Movie
コーヒー党の方には、ほろ苦い話。けれども、おいしいコーヒーを一杯飲む前に、お耳をかしていただきたい。コーヒーは世界でも日常的な飲物として、全世界で1日あたりの消費量は約20億杯分にもなる。年間売上は、800億ドル。それでは、私たちが、喫茶店でコーヒー1杯を飲むと、生産者の農家にいったいいくらのお金が渡るのだろうか。




コーヒーの価格変動は激しく、また生産国、品質・銘柄、消費国、喫茶店やコーヒーの種類によって、価格は大きく異なりそうだ。1998~99年、喫茶店(東京)のコーヒー1杯の平均価格が419円の時のコーヒーの生産者価格から焙煎豆価格のデーターによると次のとおりになる。

タンザニアのコーヒー農家 0.4%(1.7円)
タンザニアの流通業者・輸出業者 0.5%(2.1円)
日本の輸入業者・焙煎業者・小売業者 8.2%(34.4円)
日本の喫茶店 90.9%(381円)
現在は、コーヒー農家の取分がさらに下落し、なんと喫茶店コーヒ価格の0.1%である。
エチオピア連邦民主共和国の国民は、5人に1人がコーヒーで生計をたてている。しかし、2002年末、エチオピアのコーヒー農家は再び困窮し、飢餓に陥った。たった1杯のコーヒーを通して、生存のために戦っている何百万人という人々と自分たちが避けがたく結びついていることから、マーク、ニック・フランシス兄弟は、ドキュメンタリー映画を製作した。
これまでの映画と視点が違うのは、アフリカの貧困と悲惨さに先進国の哀れみの「かわいそうね」という映画鑑賞後の満足感を与えるものではない。

「精力的に働いている大柄な男性の名前は、タデッサ・メスケラ氏。高い教育を受けたエチオピア人の彼は、74000人以上のコーヒー農家をたばねているオロミア州コーヒー農協連合会の代表である。映画は、彼の行動を通して、次々とエチオピアの現状と矛盾をうきぼりにしていく。メッセージ性を強くうちださずに、事実を淡々と紹介して映画を観る我々に考えさせる。タデッサが、生産者に君達が生産しているコーヒーが、一杯いくらで飲まれているかという質問に答えられない彼ら。その価格差に驚き、あきれて怒る彼らの姿を通して、コーヒー豆が生産者から消費者に届くまで、非常に複雑なルートをたどり、世界市場において、石油に次ぐ巨大な国際的貿易商品であることを紹介している。彼らの無知は、かなしいかな、そもそもコーヒー価格は、ロンドン、ニューヨーク市場の商品取引において、生産者の関係のないところで決められている。懸命にどんなに働いても生活できない彼らは、最近では、コーヒー栽培から「チャット」という欧米では違法とされている大麻に生産をきりかえている。
「チャットの葉を噛むと、元気がでてくる」
「そう笑う青年の無知を笑えない。彼らは、最低限の教育すら受けられないくらい困窮しているのだから。教育の必要性を訴えて、農協連合会でえた利益を学校建設に提供しようという提案に賛同する人々の真剣な表情には、心底胸をうたれる場面である。
そして、1杯のエスプレッソに必要なコーヒー豆は50粒。ハイセンスなオフィスで極上のコーヒー豆からつくられたエスプレッソをご自慢しているイタリアのコーヒー・メーカーの老社長なのだが、そのコーヒー豆をすべて人の手で選り分ける仕事に従事する女性たちが受け取れる賃金は、8時間働いても、わずか0.5ドルという現実。

こうした状況を打破し、複雑な流通経路を簡略化し、生産者が直接焙煎業者と交渉して適正価格で取引できるように奮闘しているのが、タデッサ・メスケラ氏である。映画では紹介されていなかったが、メスケラ氏は、日本の農協で2ヶ月間共同運営の研修を受け、中間業者や輸入業者に支払われている金額を生産者が受け取れる協同組合のシステムに感銘を受けて、1999年故郷でコーヒー農協連合会を設立したのだ。(ちなみに、こうした発展途上国の原料や製品を適性な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す取り組みが、フェア・トレードである。)しかし、彼の運動は、まだまだ小さな力でしかない。だから、この映画の問いかけを考えなければならないだろう。メスケラ氏の言うように、「知ることは変革への最初のステップ」なのだから。

エチオピアでは、毎年700万人が緊急食糧援助を受けており、緊急支援に依存せざるを得ない状況に陥っている。しかし、アフリカの輸出シェアが1%増えれば、年間700億ドル創出できる。これは、アフリカ全体が受け取る援助額の5倍に相当する。途上国の人々に必要なのは、お金や食料をめぐんでやることだろうか。

映画の中で、最も印象に残ったのが、食料援助を受ける父親の理路整然とした言葉だ。
「こどもたちの前で、食料を恵んでもらう。そんな姿を見て育つ彼らが、果たしてこの国に夢をもてるのだろうか。施しはいらない。必要なのは、自立することだ」

監督:マーク&ニック・フランシス
2006年米国・英国制作



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5 コメント

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TBのごあいさつ (YASU47)
2008-06-22 20:47:19
はじめまして。
「おいしいコヒーの真実」の記事を見つけましたのでTBさせていただきました。とても考えさせられる映画でしたね。これからはフェアトレードについても真剣に関わっていきたいと思っています。
クラッシックの話題もとても豊富な素敵なblogですね。konstanzeさんとはblog名が同じモーツァルト繋がりということでも宜しくお願い致します(^_^)♪
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はじめまして。 (樹衣子*店主)
2008-06-23 21:43:52
>YASU47さま

ご訪問とコメントをありがとうございます。

フェア・トレードに関しては、以前から知っており、女性が経済的に自立できない国の女性労働者による手作りの小物などを購入もしていました。少しずつ認知されてきたとはいえ、あまりにも規模は小さいです。
今後、ひろくフェア・トレードのこころみが日本でも知られることを願っております。

>blog名が同じモーツァルト繋がりということでも

貴殿のブログ・タイトルに思わず笑ってしまいました!
こちろこそ、宜しくお願いします。
モーツァルト大好き人間より
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おいしいコーヒーの真実 (ETCマンツーマン英会話)
2014-08-05 18:30:54
>「こどもたちの前で、食料を恵んでもらう。そんな姿を見て育つ彼らが、果たしてこの国に夢をもてるのだろうか。施しはいらない。必要なのは、自立することだ」

とても大切なメッセージですね。彼らが自立するために何をしたらよいのでしょうか。思いをめぐらせます。
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世界は混迷中 (樹衣子*店主)
2014-08-27 22:20:49
所要で留守をしており返信が遅くなり失礼しました。

自分でもこんな映画を観ていたことをすっかり忘れていました。そんな私のような人が、結局、大半なのかもしれません。

英会話、もう少し何とかしないと・・・。
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おいしいコーヒーの真実 (ETCマンツーマン英会話)
2014-08-28 20:38:00
樹衣子*店主さま、お忙しい中お返事有難うございます。

これからもぜひ時間を見つけて更新してください。

英会話のお勉強も、ぜひ。。。(^-^)

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