千の天使がバスケットボールする

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『アラフォー女子のベイビー・プラン』

2012-05-13 14:23:14 | Movie
結婚はいつでもできる。経済力と体力さえあれば、野田聖子さんのように50歳過ぎても出産できる。しかし、自分の卵子で妊娠するには年齢制限がある。
アラフォー女子!仕事は順調、公私ともに充実しているが、そろそろ子育てという一大事業をはじめたい。ところが、さしあたって精子を提供してくれそうな夫も恋人もいないし、親友といってもよい男性の友人はイマイチで即圏外。最終便にまにあうためには、精子バンクにたよりしかないか・・・・。

と、ここからはじまるのが、このコメディ映画。人工受精で妊娠して男児のセバスチャンを出産したキャシー(ジェニファー・アニストン)は7年ぶりに故郷からNYに戻って来る。(以下、内容にふれていまする。)キャシーを演じたジェニファー・アニストンはなかなか庶民的な美人だと思ったのだが、なんと今さらながら知ったのだがブラット・ピットの前妻だった!
「ハリウッドで最も稼ぎのいい女優」にランキングしているためか、邦題はいかにもキャシーが主人公のようになっているが、本当はキャシーが好きなのにアタックできない気の弱いダメ男の親友ウォーリー(ジェイソン・ベイトマン)の男性側の映画である。

「The Switch」

本当の原題はこれだ。
これにはキャシーにとって爆弾のような事実が隠されている。
日本の非配偶者間の精子提供者は、健康であること、感染症がなく遺伝的疾患もなく、プライバシー保護のために匿名で提供しなければならず、営利目的で行われるべきではないとの見解が学会でまとめられている。しかし、ここはNY。キャシーはお金でルックスがよいスポーツマンの精子を買う。米国では、非配偶者間の人口受精(AID:Artificial Insemination by Donor)は家庭で女性ひとりでも人工受精できるキットが17ドル程度で売られていて、ネットで希望する精子を購入したり注文できるサイトもある。すごい。

キャシーは相手の顔を知らない子どもをつくりたくないという理由から、知人を介してローランド(パトリック・ウィルソン)の精子を買うことになり、友人が企画して子づくり宣言のパーティーを開くのだが、驚いたことに精子提供者のローランドだけでなく妻も出席している。あきれたウィルソンは、精子を売る理由をローランドに尋ねるのだが、
「お金のため。教師をしているが給料が安い。妻も賛成している」
となんのくったくもない100%爽やかな笑顔で応える。仰天。

その後、薬草で泥酔したウィルソンはトイレにあったローランドの精子をうっかりこぼしてしまい、なんと自分のものを代用としてこっそり置いてしまう。記憶を失い、すっかり忘れていた”交換”を5歳になったセバスチャンの言動を見て、少しずつ記憶をとり戻しつつ真っ青になっていくウィルソン。つまり、酔った勢いで「The Switch」の暴挙をしてしまったウィルソンの物語である。勿論この映画はハッピーなコメディ映画だ。

しかし、考えたのは女性にとっては単なる精子提供者でもこどもにとっては、生物学上の父親となる。扶養する義務も育てる必要もないとは言え、男性にとって自分の知らない女性との間に自分の遺伝子をもったこどもが育つことに疑問やためらいはないのだろうか。日本では夏木静子さんの「ガラスの絆」を発端として人工授精が一般的に知られるようになり、すでに数千人から1万人程度のこどもたちが生まれているという。1948年にはじまった当初の提供者は、某大学医学部の優秀な医学生だったそうだが、現在は、ボランティアで提供される精子バンクを運営する複数のサイトがある。中には、提供者に東大、国立大学医学部卒(早慶は推薦や内部進学者が多くて対象外だそうだ)、身長175センチ以上で顔も平均以上に限定したサイトもある。不図、映画の中で人工授精に猛反対するウィルソンが、キャシーに「精子がホームレスのものにすりかえられて、そのこどももホームレスになった」という嘘をつく場面があったことを思い出した。果たして女性は頭脳優秀なこどもをそんなに望んでいるのか。ジョディ・フォスターだったらわかるけれど。

ウィルソンは身長も低く、容貌も普通。アナリストを務めているから頭脳はそこそこ優秀だろうが、運動神経はゼロでどんくさい。神経質で内向的、女にはもてない。けれども、セバスチャンにとってはよいパパ、そしてよい夫になりそうなところで映画はハッピー・エンド・・・か?セバスチャンは、とてもとても可愛い。ウィルソンとキャシーの間にあんなに可愛らしいこどもが生まれるわけがないと私は思っている。本当にウィルソンのこどもか?かなり確率は低いけれど、ローランドのこどもの可能性もゼロではないぞ。

さて、英国では精子を提供された人工授精のこどもは、18歳になると精子提供者が誰であるか、突き止めることができるようになった。 知らないうちに、100人以上のこどもがいたという紳士も登場するかもしれない。一番笑えたのは、本編がはじまる前に大文字の字幕も設定できますというスーパーが流れた時だ。近視は年寄りだけでないけれど、思い込みの人生はつまらない。

監督:映画『俺たちフィギュアスケーター』のジョシュ・ゴードンとウィル・スペック
2010年製作