千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

『お熱いのがお好き』

2012-05-10 23:07:39 | Movie
禁酒法時代のシカゴ。サックス奏者のジョー(トニー・カーティス)とベースを弾いているジェリー(ジャック・レモン)は、勤務先の酒場に警察の手入れが入って失業してしまう。たちまち生活に困窮したふたりは、新天地に職を求めて向かうために借りた車をとりにガレージに行った聖バレンタインのその日、ギャングの抗争事件を目撃してしまう。慌てて命からがらに逃げたジョーとジェリーだったが、ギャングのコロンボ一味から命を狙われる身となったしまった。一計を案じたジョーは、なんと女装してジョーはジョセフィン、ジェリーはダフニと名前を変えて、女性ばかりのオーケストラのメンバーとなってマイアミへの演奏旅行に加わることになるのだったが、一行にはとびきり魅力的なボーカル兼ウクレレ奏者のシュガー・ケーン(マリリン・モンロー)がいたのだった。。。

今年で没後50年となるセックス・シンボルのマリリン・モンローが主演の映画の1本。
それだけの予備知識で鑑賞したのだが、映画の中のギャグも演出もすべてが新鮮で現代でもちっとも色あせていないことに驚いた。監督のビリー・ワイルダー自身も加わった脚本は、ユーモラスとウィットに富んでいて素敵。軽快でテンポのよい会話の応酬が実におもしろい。彼らが窮地の策として女装して汽車に乗り込む時、「まるで裸を見られているみたい」と愚痴をこぼすダフニのリアルな表現に感心しているまもなく、「その大根足でよく言うよ」とジョセフィンの痛烈なショットがかえってくる。会話と、その会話の打ち返しのタイミングがこれ以上にないくらい最適なのだ。

ところで、マリリン・モンロー亡き後、”セックス・シンボル”という表現が似合う女優は絶えてしまった。金髪でも賢く、社会貢献活動にいそしみ、世間とうまくおりあっていける女優の中で様々な伝説を残したモンローは不滅な存在である。モノトーンの映像にシースルーのドレスを身につけて体をくねられせてけだるく甘い声で歌うモンローは、色気の化身である。私もほんのちょっっぴしでもよいから、色気の花粉を分けてもらいたいところだ。ちょっとぬけてて、お酒好き、けれども無垢なシュガーは最高に可愛い。

彼女に恋をしてしまうトニー・カーティスも上品な女装でなかなか美人なのだが、ジャック・レモンのダフニにはなんたってかなわない!笑った顔の真紅の唇の形、細くなった目をふちどるアイラインがつくる造形は、こんな女性がいそうだとあまりにもはまっている。『トッツイー』のダスティ・ホフマンや『ミセス・ダウト』のロビン・ウィリアムズは自然な女装で演技力を見せつけたが、ジャック・レモンはいかにも男が女装をしているという雰囲気を残しつつ奇想天外なおもしろさをだしている。タンゴを踊り、マラカスをふりながら腰もふるジャック・レモンの演技に心の底から笑わせられた。私はコメディ映画は実際は悲劇映画を撮るよりもはるかに難しいと思っているのだが、実によくできている。

本作は2000年に全米映画協会が選ぶコメディー映画ベスト100で第1位に輝いていた。これまで観たことがなかったのは、全くもって私の不覚だったということか。

有名なラストの名セリフも心に残るが、私が一番のお気に入りは、マイアミに向かう汽車の中でシュガーが救ってもらったお礼に「お礼に何かさせてちょうだい」とたずねると、すかさずダフニが嬉しそうに、
「いろいろあるわよ」
と応える。本当に嬉しそうに・・・。いろいろって・・・・。。。

監督:ビリー・ワイルダー
1959年 アメリカ製作