きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

<神の見えざる手>が働かない、ワインの需要と供給

2008年12月02日 15時56分45秒 | Weblog
9月29日土曜日、山梨大学で行われたASEV Japan(日本ブドウワイン学会)に参加しました。総会の後の講演で、今更ながら「難しい問題だなあ」と考えさせられた事をご紹介します。(安田まりさんの、「EUワイン改革とワイン法」という講演から)



「世界のワイン生産量(赤線)」と「世界のワイン消費量(青線)」のグラフ(フランス下院の資料)。横軸は1970年から2005年まで取ってあるけれど、何たることか、35年間一度として消費が生産を上回ったことがない!! 

「需要が多ければ価格は上がり、供給が多ければ価格は下がる」、「需要と供給は、価格を媒介として<神の見えざる手>でバランスする」というのを経済学で習いますが、35年というロングレンジを費やしても、ワインではこの経済原則がはたらかなかったことになります。テーブルワインが減って高級ワインが増えたので、単価はむしろ上がっているのでしょう。



「欧州ワイン共通市場制度」は1962年に誕生。その当時から「減らす」ことを意図して制度を作ったそうで、半世紀にわたって、抜根奨励金、栽培制限、蒸留(ワイン消化)を続けてきたそうです。日本のコメ減反政策も似た側面がありますが、保護政策というのは本当に難しい。

世界中でワイン造りに情熱を燃やす人々がいる一方で、全体としては半世紀もワインがあまり続けているとは、なんだか愕然としてしまいました。

たとえば、清酒やビールは、消費が減っているといえども、生産量と消費量はほぼ同じだと思うのですが、ワインの場合は、過剰分を蒸留する手があるのも、原因の一つでしょう。食糧と競合しない、材木、海藻、藁などから作るバイオエタノールが脚光を浴びていますが、ワイン(や、その他のアルコール飲料)由来のバイオエタノール増産のほうが合理的なのかもしれない、、、といったことも頭をよぎりました。

列車の都合で、講演途中で退席したのが残念でしたが、考えさせられる講演でした。


喜多常夫

最新の画像もっと見る

コメントを投稿