きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

フランス・シャトー視察(ボルドー右岸編)

2012年12月28日 09時26分39秒 | Weblog

ボルドー地区をドルドーニュ河とジロンド河で分けたとき、東側の地域を「右岸」と呼びます。左岸は100ヘクタールを超える大きな畑を持つシャトーが有るのに対し、右岸は数~数十ヘクタール未満の小さなシャトーが多く、メインに栽培されているブドウ品種も左岸がカベルネ主体、右岸がメルロー主体となります。前回の左岸編3か所に続き、右岸の3つのシャトーをご紹介します。



その4 ポムロールの「シャトー・レヴァンジル」:ラフィットのロートシルトが所有するシャトー。どこでも、まず土壌の説明が有りますが、ここは土壌サンプルが透明の筒にいれてあり、わかりやすい。特徴は、小石混じりの粘土質の表層の下に酸化鉄の岩盤の層が有ることだそうで、ペトリュス→レヴァンジル→シュヴァルブラン→フィジャックと地続きの名だたる4つのシャトーがこの土壌だそうです。やはり、ワインは土壌なのでしょうか。写真はご一緒したヴィラデストの小西さんと、ワインメーカー氏。



醗酵には45HLのコンクリートタンク20基を使用しています。タンク上部に移動式の破砕機を設置し、重力式でタンクに落としこみ。写真は、同じくご一緒した五一ワインの奥野さん。



発酵後はこのバスケットプレスで搾り、地下の樽貯蔵室に、これまた重力式で流れていく仕組みとなっています。



その5 サンテミリオンの「シャトー・ボー・セジュール・ベコ」:プルミエ・グランクリュ・クラッセ・Bの格付け。この辺りの地下は石灰岩で出来ており、かつってボルドーの市街地の建物建設のための石切場だったトンネルがセラーとして利用されています。この近辺のシャトーでは一般的な様子。



底部のほうが狭い「逆テーパータンク」を使用しています。上部が狭い「テーパータンク」はよく見ることが有りますが、「逆テーパー」は珍しい。果帽が広がり、接触面積で有利です。果帽が薄くなるのでピジャージュにせよ、ルモンタージュにせよ、作業性がいいようです。



その6 サンテミリオンの「シャトー・パヴィ・マカン」:新築中の事務所からの眺めはすばらしく、遠くには世界遺産サンテミリオンの街並みが見える。案内してくれたのはティアンポン氏。2006年の格付け見直し時にプルミエ・グランクリュ・クラッセ・Bに昇格した注目シャトーです。



コンクリートタンクとオークバットを併用しており、どちらも温度調節機能付。コンクリートタンクは畑ごとに容量を決め設計しており、タンクに畑の名前を書いています。上に立てかけてある大型もち焼き網は、果帽を沈めるためのもの。



こちらはオークバット。レールで動く、自動のパンチダウンがついています。



多くの種類の樽を使用しており、中にはブランデー樽のようなサイズの物も。最終的にブレンドをするのですが、味わいの違う複数の樽をブレンドしたほうが良いそうです。



訪問したシャトーではどこでも試飲をさせてもらえるのですが、基本的に若いワインが多く、渋みと酸味は相当の物です(樽から直接のものが、一番酸味が強い)。こんなワインが熟成すると良い方向にバランスが取れ、美味しくなるとはなんとも不思議です。穏やかな温度管理が出来るコンクリートタンクやオークバット、ポンプを使わない重力式レイアウトなど、すべての工程を丁寧に優しく扱うことが美味しいワインを作るポイントなのだと感じました。



東京営業部 今井孝


フランス・シャトー視察(ボルドー左岸編)

2012年12月20日 08時51分19秒 | Weblog

VINITECH展示会にあわせて、シャトーも訪問してきました。ボルドーは古くからワインの生産と交易で栄えた町で、市内を流れるガロンヌ川が三日月形に湾曲しているため「月の港ボルドー」と呼ばれているそうです。言うまでもありませんが、ボルドーワインと言えば世界で最も有名なワイン産地、一流シャトーの品質は世界の指標となっています。左岸の3つのシャトーを、各3枚の写真でご紹介します。


その1「シャトー・ラグランジュ」:サントリーさんが所有されるシャトーです。とても綺麗に整備されており、訪問時は冬に備え庭木の整備を行っていました。



ずらりと並ぶステンレスタンク。最近増設したそうで、畑の区画ごとに仕込みをするためだそうです。



カメラによる自動選果システムを取り入れています。奥は、ヴィニテック編でも触れたブーハーの新型除梗機「オシリス」。自動選果かコンベア選果かはシャトーによって違いますが、一定規模の有力なシャトーでは必ず選果をおこなっているようでした。



その2「シャトー・ポンテ・カネ」:近年品質が急上昇していると評判のシャトー。オーナーのテスロン氏はボルドーでは珍しく、シャトーに実際に住んでいるそうです。ここは、なんと馬(!)を利用して畑の耕作。トラクターを使用すると重さで土壌を痛めるためだそう。現在5頭から、将来は10頭まで増やしたいとのこと。



「選果コンベア」でブドウの房、果粒の選別を経て、ポンプを使わずに「重力式」で下のタンクへ投入される仕組み。



発酵はコンクリートタンク(写真)と、オークバット(木製タンク、写真割愛)を併用していて、メルロはコンクリートで、カベルネソーヴィニオンはオークバットで仕込むそうです。コンクリートタンクも側面がオークバットのようにテーパーになっています。



その3「シャトー・オー・ブリオン」:幸運にもオー・ブリオンにアポイントをとってもらうことができました。ご存知のとおり、1級格付けの5大グランシャトーの1つです。メドック地区ではなく、ボルドー市内から近いペサック・レオニャン地区にあります。



ガイド嬢が手にとって説明してくれているのはオー・ブリオン独特のタンク。上でアルコール醗酵、下でMLF。中間の斜めスペースはデッドスペースで使いません。



これが実際のそのタンク。上側のマンホールの裏にグリッドがついていて、液抜きはマンホールから行います。足場は開く構造になっており、下にはコンベアが配置されています。発酵後のモロミは、マンホールから取り出し、ポンプを使うことなくコンベアでプレス機へ。ポンプを利用するとワイン品質に悪影響を及ぼすと考えている様です。なお、写真はありませんが、ラグランジュと同じくブーハーのカメラによる自動選果システムが入っています。



オー・ブリオンの中に樽工房があります。樽工房をもっているシャトーは、シャトー・マルゴーなど数えるほどしかないそう。スガモロ社の職人が出張してきて実際の作業を担当。「ワイン品質を管理するには樽も管理しなくてはならない」という考え。新樽100%だそうです。



以上、3つのシャトーを訪問しましたが、最新鋭の設備や、重力式のレイアウトなど大変参考になりました。また広い自社畑にもかかわらず、土壌分析は各社しっかりやっており、その土地の持つテロワール引き出すことを大切にしていることを感じることができました。



東京営業部 今井孝


ボルドーのVINITECH(ヴィニテック)展示会

2012年12月12日 16時22分43秒 | Weblog

11月末、フランス・ボルドーのVINITECH展示会へ参加してきました。2年おきに開催されるもので、ワイン製造や果実・野菜に関して、畑での栽培から加工、包装までカバーする国際展示会です。特にワイン機器に関しては隔年で行われるイタリア・ミラノSIMEI展示会と並び、世界最大級の展示。会場の様子をご紹介致します。


会場に入るとトラクターやハーヴェスター数百台がお出迎え! 見上げるような巨大なハーヴェスターもあって、畑や産業の規模を感じることができます。日本のクボタもトラクターを出展していました。



イタリア「ディエメ」社の不活性ガス・バルーンプレスの最新型、「ヴェルヴェット・ニュートラル2」。不活性ガス環境で搾汁するスタイルは随分広まっているようです。



「ヴェルヴェット・ニュートラル2」を反対側から撮影した写真。ジュースは外気と遮断された下側のタンクにはいります。上のサブタンクは泡などを収容する補助タンク。



フランス「ザルキン」社のキャッパー。これはキャップと壜の両方にガスを吹き込むキャップ・キャッチャーのクローズアップですが、これでも置換率は通常50~60%程度だそう。ワインでスクリューキャップ「ステルヴァン」をご検討の方も多いと思いますが、ヘッドスペースエア置換の対策は必須です。液体窒素滴下だと80~90%になるそうです。



同じくザルキン社のキャッパーで「ステルヴァン・ラックス」(ネジ内蔵型でロールオンネジなし)用の1ヘッド機。御覧の通り側面にカムがあって、まずキャップを回転させて一定トルクでしめこんでから、次にスカートローラーでかしめる、Wアクションです。



スクリューキャップ「ステルヴァン」を製造するフランス「アムコー」社の展示ブース。当社は、ステルヴァンのほかワインキャップシュールをアムコーから輸入しています。ロゼワインが流行っている様子で、アムコーに限らず商品展示には多くのロゼが並んでいました。



樽洗浄機でおなじみのスイス「モーグ」社。新開発の「折りたたみ式タンク洗浄機」で、小さな車輪でマンホールから入れて広げると、ノズルが上に伸びて回転しながら高圧洗浄水を全方向に噴出します。写真は広がった状態。



有力ワイナリーではカメラによる自動選果がスタンダードになってきました。各社力を入れて展示をしています。写真は評判の良いフランス「ペレンク」社の選果システム。このペレンクはハーヴェスターから剪定ハサミまで手がけるユニークな会社で、日本でも同社の電動ハサミや電動ノコギリを扱っている農協がありますね。トラクターからハサミまで色はすべてこの黄色。



これは「ヴァスラン・ブーハー」社の新型除梗機、「オシリス」。2011年発売のようですが、この2年で相当売れたように見受けました。



日本ではお目にかかること出来ない、トラックに積んだ壜充填機。ヨーロッパでは比較的大きなワイナリーでも充填設備は自前の設備を持っていないところが多く、技術革新が早い、充填包装機械ならではのサービスです。



最後に、ワイン樽のアート展示の写真。日本でもワイン産地の余興では面白いかもしれませんね。



約1,500社の会社が出店している会場はとても広く、歩いて回るだけでも大変でしたが、色々と情報収集をすることが出来ました。日本の皆様に、お役に立てる情報を持って帰りますので、ご期待下さい。


東京営業部 今井孝