9月28日、全国醸造機器工業組合で二人の方に講演をしていただきました。大変印象的だったのでご紹介します。
まず、株式会社岡永の社長、飯田永介さん。ご存知の通り、「日本名門酒会」を主宰されていています。演題のサブタイトルは「日本酒の新しい需要を創り出す」。
「仕入れて売るより、売ってから仕入れる仕組みはないか」、「革新し続けるものだけが強い定番になりうる」など、心に残る言葉がずいぶんありました。写真は「1年52週の生活提案」を説明されているところで、「(お酒は12月が一番売れるわけですが)12月の売上を上げようと思うと1月から活動開始しなくてはならない」。何事にも通じることだなあと、感心いたしました。
名門酒会さんは、海外マーケット開拓の先駆者のひとりでもある。かつて、パリに直営サケ店「カーヴ・ド・フジ」を出されていたのをご存知の方もいると思います。にも拘わらず「まだまだ日本酒のことを知らない人がほとんど。説明し伝えていく努力が大事」とのこと。これは、そのことを実践されている説明的「チラシ」や「3連コースター」のPPT画像です。
活動指針として、「強みの上に己を築け(Build on strength、またはBuild on your own strength、ドラッカーの言葉)」を引用されていましたが、大いに「経営」を学ばせていただいた思いでした。
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次は新潟の蔵元、麒麟山酒造株式会社の若い社長、齋藤俊太郎さん。これは、麒麟山の商品構成を説明されているところ。驚いたことに「普通酒が7割、特定名称酒が3割」の販売とのこと。
「特定名称酒」重視や、「首都圏市場・海外市場」シフトする経営戦略が一般的な中で、「地酒とは地元につよいこと」「地元に飲んでもらう普通酒を売るための戦略」という、逆転型経営戦略には感心させられました。
そのほか、「米作りから取り組む」「『自社ブランド』と同じく『地域ブランド』も大事」「地元企業と組む戦略」など、日本酒のこれからを考える上で大変参考になりました。
逆風の業界にあって、お二人の話には大いに勇気づけられました。岡永さんは明治17年(1884年)創業、麒麟山酒造さんは天保14年(1843年)創業とのこと。革新的経営は、長年の積み重ねから生まれるものだ、とも感じました。
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余談ながら、講演会の場所は日比谷公園の中にある「松本楼」(カレーライス!で有名)。最近、新聞などで時々紹介されていますが、松本楼の常務、小坂文乃さんの曾祖父の梅屋庄吉さんは、孫文に巨額の資金提供をして辛亥革命を支えたそう。孫文の妻、宋慶齢も梅屋が引き合わせたもので、彼女が弾いた燭台付きピアノや、何枚かの写真資料が松本楼に展示されています。福田総理の時代、2008年には、胡錦濤主席もここにやってきたそう。中国ではこのような日中のポジティブな近代史をクローズアップする人は少ないように思います。最近、関係悪化の報道が続きますが、両国の関係が改善されることを祈るものです。
代表取締役 喜多常夫