「ピエモンテにこんなブドウ畑があったとは!」
2019年11月、ミラノのワイン機器・資材の展示会「SIMEI 2019」参加にあわせ、北イタリアのワイン醸造所を訪問した。出張後、忙しくしていて報告がずいぶん遅れましたが、ブログで報告します。
その1:プロドゥットーリ・ネッビオーロ・ディ・カレーマ Produttori Nebbiolo di Carema
名前の通り、カレーマという村のネッビオーロワインの生産者(協同組合)。場所は、もう少し走ればスイス、というピエモンテ北部、人口700人ほどの谷あいの小さな村である。
当然、ぶどう品種はネッビオーロ。生育北限と言われる。畑は12ha、と言っても平地ではない。上の写真の右上を拡大すると、この通り、山の急斜面にブドウの段々畑がある。それも、なんだか柱のようなものが規則正しく立っている。
山に登って現地に行ってみると、こんな具合。長い歴史の中で谷間を流れる川から人手で石を運びあげ、その石で急斜面に段々畑を作ったそう。さらに「ドゥピン」と呼ばれる石の柱を作ってブドウを支える。仕立て方は垣根でなく、棚(ベルゴラ)。ただし大きな面積のブドウ棚が広がる日本と違って、棚は短辺3mくらいの長方形で独立していて、それぞれの棚に若干の角度があって、独特の方式。角度の緩い片流れの屋根が、斜面一面にある感じ。光と風を取り入れる工夫だろう。
頂上に近づくにつけアクセス道路はこんな感じ。機械が入れない場所が多く、畑の手入れは手作業が中心。収穫は当然すべて手作業。ピエモンテ州にこんなワイン用ブドウ畑があったとは、驚きです! どうしてこんな不便なブドウ畑を作ったのだろう??
ブドウの枝を固定しているのは、ブドウの蔓。屋根の支柱は木材。プラスチックは全く使わない方針だそう。すばらしい!
案内してくれた若い女性自身が、今シーズン畑で選果を手伝った様子を自分のスマホで撮っておいたものを見せてもらった。悪いところを、そのまわりごと大胆にカット、もったいないと思うほどでした。
こちら、醸造所の様子。年100kl規模の生産量。コンパクトにまとまっている。
壜内二次のスパークリングも、年間3,000 本程度とごく少量だが作っている。フレームの上にピュピトルを固定するのはいいアイデアだと感心。安全そうだし、日本でも取り入れたい、と思いました。
最後に試飲。とても素晴らしい。価格は1本10€台が多い。これほどの労力をかけて、どうしてそんなに安いのか、不思議です。
その2:リ・アイローニ GliAironi
これはワイン醸造所ではない。ルート上にある、米農家「GliAironi」がNEROという、イタリア初のSAKEを作っているというので、訪問。ご覧のように色は濃い褐色。米からつくるのでSAKEとしたそうだが、製法はベルモットに近い。人物は、リ・アイローニの代表者で、NEROの発案者、コンテさん。
NEROの詳細については、別資料をご覧ください。
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/sake-nero.pdf
リ・アイローニのコンテさんと、今回のイタリア出張者5人のスナップ写真。
その3:アントニオーロ Antoniolo
カレーマ村から東に50㎞程、ガッティナーラ村にある家族経営の醸造所。今時、ウェブサイトもない、という。このGattinara村の地図で、Cantina(醸造所)は街中、12haほど所有する畑は山の中に散在、と説明を受ける。
ガッティナーラは、50年前まではバローロやバルバレスコのあるランゲより格上と言われていたが、衰退。今は畑と森が一体になった感。この地方ではネッビオーロはスパンナと呼ばれ、ガッティナーラがその最高峰とされる。火山性土壌で、ミネラル豊富なワインになる。
突然ですが、ベンチでくつろぐ私。アントニオーロのブドウ畑を見渡す人気のない丘の上に、忽然と、この巨大ベンチがある。いつの時代のものとも知れない古い石塔も。
街に帰って醸造所を見学。こんな年代ものバスケットプレスも現役。上のアンビル・プレートが固定で、バスケットが持ち上がる方式。写真は載せないが専門なのでほかの設備を記録しておくと、プレスがVELO、除梗破砕機がEnochemical、冷凍機はKREYER、壜詰め機はB.C.、ラベラーはEnos、コルカ―はAROL。
伝統的にセメントタンクで発酵。中央の機器はBosioのマイクロ・オキシジェネーション装置。伝統だけでなく、新しいテクノロジーも取り入れています。
その後、大樽で熟成。ステンレスタンクは見当たらない、という珍しい醸造所だった。
番外編:「Eataly イータリー」にて
イータリーはイタリア主要各都市にあるイタリア食材の店、日本にも進出していて有名。これはミラノの旗艦店のワイン量り売りの売り場。ビオワインで、「1リットル3.5ユーロ(=400円強)」。この写真にはないけれど、左側にビオではないものもいくつか並んでいて、そちらは3.0~3.2ユーロ。田舎のカンティーナの直売量り売りよりは高いけれど、それでも安いですね。
その2に続く
機械担当 喜多隆海