きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

「日本酒の海外マーケット」(醸友会)+「日本醸造・蒸留業界の国際化」?

2008年10月10日 14時05分35秒 | Weblog
日本醸友会シンポジウム(10月7日、於・東京の「北とぴあ」)に参加しました。昼からの3本の講演はいずれも「日本酒の海外マーケット」に関するもので、たいへん印象深いものでした。


写真は「日本酒の魅力」という演題で講演されるSAKEジャーナリストのジョン・ゴントナーさん。「アメリカの清酒輸入は、2001~2007年の平均成長率が、量で12%(!)、金額で18%(!!)」など、アメリカ最新事情を聞かせていただき、大いに勉強になりました。私は初めてお会いしたのですが、講演内容もさることながら、日本人として見習わなくては、と思うくらい礼儀正しい方で、とても感心しました。



次の写真は、ゴントナーさんの講演の後に質問される、篠田次郎さん。「今アメリカでは酒ブームだが、70・80年代は日本酒のために大変な努力をした人たちがいたのにブームにはならなかった」という質問。篠田さんのメールマガジンも読ませていただいていますが、いつもびっしり書きこまれたメルマガといい、盲目を押して質問に立たれる姿といい、清酒に対する熱意には頭が下がります。




「海を越えた酒樽はどこへ?」という演題で講演される、鈴木基子さん(海外日本酒応援団、ボストン在住)。写真はジェトロ調査によるアメリカの清酒十傑を紹介しているシーンで、「男山、くろさわ、久保田、若竹鬼殺し、月桂冠鳳麟、春鹿、八海山、大関吟醸辛口ドライ、松竹梅、辛丹波」。日本酒の市場や流通について綿密に分析されていて、とても参考になりました。



写真はありませんが、そのあとの松崎晴雄さん(日本酒輸出協会)の、アメリカ以外も含めた世界的なお話も興味深いものでした。海外マーケット戦略は、日本酒にとってますます重要になってきていることを痛感しました。


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シンポジウムで気になったことを書きます。講演や挨拶の中で「焼酎メーカーの方がおられたら恐縮ですが」というエクスキューズを何度か聞いたことです。醸友会には焼酎も参加されているし、醸友会の沖縄支部はたぶん全員が泡盛です。シンポジウム当日の利き酒会場でも、清酒と並んでちゃんと焼酎と泡盛がありました。が、実際には清酒メーカーの方が多数派で、清酒中心の会のように感じました。

私見ですが、シンポジウムでは焼酎や泡盛関係の講演も入れる、または「初日は清酒中心、二日目は焼酎中心」と1泊2日にする、などの対応が必要ではないでしょうか。

話は違いますが、私はIBD(the Institute of Brewing & Distilling、醸造と蒸留の学会)というイギリス系の酒類学会の会員です。19世紀に創設された由緒正しい学会で、数年前まではIOB(the Institute Of Brewing、ビール醸造中心の学会)と言っていましたが、数年前に蒸留酒と組むことにして、distillingを入れた名前に変わりました。以来、送られてくる学会雑誌には、毎号必ずウィスキーの話題がのります。バランスがとれているし、他の酒類事情を知ることは、自分の酒類のための発想に大変役立ちます。

清酒ばかりでなく、焼酎の輸出も伸びていると聞いています。焼酎の海外マーケット事情なども聞いてみたかった。そんなテーマがあれば九州・沖縄からの参加者もあり、人数はずいぶん増えたと思います。「焼酎メーカーの方がおられたら恐縮ですが」というエクスキューズがあってもいいのですが、その場合は「清酒メーカーの方がおられたら恐縮ですが」とエクスキューズできるような場面もあるような会の設定が必要ではないでしょうか。

国内では、清酒は本格焼酎に市場を取られている面があり、清酒と焼酎が仲良くできない側面もあるのは承知しています。しかし世界的視野でみると、「日本の伝統醸造酒」と「日本の伝統蒸留酒」です。世界に向かって、清酒と本格焼酎が同じ酒造組合であるメリットを活かせる時代に、今からなるのではないでしょうか。



「初日は清酒、2日目は焼酎」と書きましたが、個人的には連続4日で「1日目:清酒、2日目:焼酎・泡盛、3日目:ビール、4日目:ワイン。ほかに、アジアの醸造技術者を呼び込むために、英語セッション数本を2日目3日目あたりに設ける」、というのが一番いいと考えます。さらに、「醸造・蒸留関係の企業展示会」も同時実施すれば言うことなしです。技術者や研究者は好きなテーマの講演を聞けるし、最新機器も確かめることができる。

いくつかの酒類に関する英語セッションがあれば、たぶんアジアだけでなく欧米からの技術者も日本にやってくると思います。「日本酒の国際化」と合わせて、「日本醸造・蒸留業界の国際化」も進めねばなりません。



最近、業界に思うところが多く、少し前のブログではブドウ・ワイン学会(ASEV JAPAN)に関してもつい私見を書いてしまいましたが、放言をお許しください。


喜多常夫(代表取締役)