2月8日、お酒の歴史に関する学会「酒史学会」の年次大会に参加しました。この学会としては第12回、前身の「日本酒造史学会」設立からでは30周年の記念大会。場所は奈良文化財研究所。私は、誘われて、何年か前から学会に加入しているのですが、大会に参加するのは初めてです。
開会の挨拶をされる、学会会長の兒玉徹さん(東京大学名誉教授)。
奈良文化財研究所の山本さんによる「酒と国家と民衆と-奈良時代の酒と諸白」のご発表。「白酒」とかかれている奈良時代の木簡。酒類関係者の方はご存知のとおり、かつて「白酒」「黒酒」があって、黒酒は灰(「久佐木灰」)をいれてつくるのですが、「燃やした灰を入れても黒くならないが、なにか情報がないだろうか」という質問がありました。
橿原考古学研究所の廣岡さんの「『考古学から見た日本酒の歴史』の展覧会」のご発表。底に穴のある土器は、酒造りのために米を蒸したのではないかという説がある一方、穴をふさいで蒸気を分散させるもの(清酒の甑の猿ーさるーにあたるもの)はまったく発掘されていないのだそうで、用途が違うという考えの方もいました。
そしてお坊さんの講演。正暦寺(しょうりゃくじ)住職の大原さん。正暦寺は、奈良市菩提山町(ぼだいせんちょう)にあるお寺で、清酒の菩提酛が始まったところ。
学会のあった奈良文化財研究所は、広大な「平城京跡」の敷地内にあります。小雪混じりの寒風吹きすさぶ中、ミニエクスカーションで「平城京・第一次大極殿」を見に行きました。中央で熱心に質問されているのは、月桂冠の栗山さん(元専務、現大倉記念館名誉館長)。前身の「日本酒造史学会」創立から、30年にわたる会員だそうです。
そして、学会の後はお楽しみ、懇親会。菩提酛のお酒を含め、学会参加者もちよりのさまざまなお酒を楽しみながら、いろいろな情報交換ができました。
「酒史学会」は、インターネットで検索してもほとんど情報が出てこないという、いまどき珍しい学会。酒の歴史にご興味のある方はぜひ参加されればいいと思います。
喜多常夫(代表取締役)