1月12日のブログに引き続き、見聞録(その2)、です。
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<ビックリ?!>x2 +<ポイント!>x5 +<これは何?>x1
<ビックリ?!①>
目的地サンテミリオンに入る前に、お隣のポムロールにちょっと寄り道。ボルドーで最も高価なワインはポムロールの「ペトリュス」でしょう。で、そのペトリュスの前、というか道を挟んだところに忽然と「鳥居」がある!!
思わず、拝礼・かしわ手を打とう、、、、と思ったが、何を拝んでいいのか。鳥居の先にはムエックスさん(ペトリュスのオーナー)の社屋があるけれど、拝んでありがたく飲みなさい、というブラックジョーク??
ムエックスさんが日本好き、ということで最近建立したらしい。日本人としては、「ミニ万里の長城」が建たなくてよかった(いまや高級ボルドーワインの最大の消費地は中国なので)ような、、、でもちょっとおかしい、意味不明だぞ、でした。日本国以外のワイナリーで、鳥居を建ててしまったのは、世界でここだけではないか?!
さて、本論。「サンテミリオンで最も先鋭的設備」との紹介を受けて「シャトー・フォージェール(Château Faugères)」を訪問先に選びました。ヴィンヤードに突然現れる醸造所は、辺りでみたこともないような、こんな近代建築。
サンテミリオンの市街とその周りのワイン生産地域は「ユネスコの世界遺産」に指定されている伝統地域なのだけれど、聞けばユネスコのルールでは「世界遺産区域内に建物を新築する場合、<伝統的なもの>か<ものすごく近代的なもの>のいずれか」ということらしい。
これは、建物の最上部から、1kmくらい離れた元のフォージェールの建屋方面を眺めたところ。フォージェールの醸造コンサルタントは、かのミッシェル・ロラン。重力式レイアウトを織り込んで十二分に検討を重ねたという建築は、世界的建築家、マリオ・ボッタ(作品には、サンフランシスコ近代美術館、渋谷のワタリウム美術館など)による。
<ポイント!①>
さて、入ってまず目につくのが、画像処理ブドウ自動選果システム。前回のバンフィにも登場したけれど、「ブーハー・ヴァスラン」のシステム。この2年ほどで、ボルドーで有力なシャトーには、これが結構入った。縦長部分の上部にカメラがあって、その下でブドウ粒を空中に放り出して画像で良否を判別する。能力は1秒に処理できる粒数に依存するわけですが、トン数に直すと5~10トン/時の処理能力。
<ポイント!②>
醗酵はオークバット(オーク製タンク)による。ただし、温度コントローラー(私が眺めている先)が付いているのに注目! ステンレス・タンクでなく、オークバットにこだわっている高級シャトーは従来から多かったけれど、温度制御がビルトインされものはほとんど見なかった。ところが、最近は高級ワイナリーが導入するようになってきた。世界的に夏の異常高温や、冬の異常低温が常態化するなかで、温度調整なしでは乗り切れない、という事情もあるのでしょう。ステンレス・タンクでなくオークバットにする理由は、やはり「酸素透過度」と「オークから出る微量有用成分」が決め手。
<ポイント!③>
この醸造所にはメンブランプレスはない。オークバットのフロアの1階下にある、このバスケットプレスで搾っている。バスケットがフォークリフトで簡単に出し入れでき、プロコンで圧力制御をおこなう、「新世代の自動バスケットプレス」。メンブランプレスに比べて、濁度の低い清澄なジュースが取れることがバスケットの魅力。バスケットプレス上部のみを吹き抜けとして、無用に天井高さが高くなることを防いでいるのに注意。なお、これはヴァスランの「JLB」だけれど、DIEMMEにも同様の機種があります。
なお、上の写真で頭に手をやっているシルエットの女性、下の写真で樽から果皮をかき出している女性が、フォージェールのワインメーカー。醸造所内を走り回って作業されていて話はしませんでしたが、若くてとてもきれいな方です。フォージェールのウェブサイト(日本語もある!)に顔写真があります。
<ポイント!④>
フォージェールでは、樽で醸し醗酵を行っている。樽が自由回転できる「オクソライン」と、醗酵後の果皮を取り出すために樽の鏡に取り付けたステンレスの蓋。
<ポイント!⑤>
なお、樽洗浄機はMOOGのシステムでした。(当社が日本代理店をしているので、牽強付会と思われては困るのですが、スイスのMOOGの樽洗浄システムは世界中のワイナリーで活躍しています。)
<これは何?①>
クイズ、これは何かわかりますか? オークバットの近くに設置してあります。
<ビックリ?!②>
カベルネS、メルロ、Cフラン、Pヴェルドなど、複数のブドウ品種を混ぜて仕上げる(アッサンブラージュする)のがボルドーワインの伝統、常識、真髄であるのは皆さんご存知の通り。ところが、シャトー・フォージェールのトップブランドの「Peby」は「おきて破り」。なんとメルロ100%。右岸ならでは、ということでしょう。
日本でポピュラーな「プピーユ」はメルロ100%で有名ですが、筆者は不勉強でボルドーのGrand Cru赤ワインで、単一品種モノがあるのは知りませんでした。因みに、写真の2001年Pebyは、シャトーの訪問者向け特別タリフで85ユーロ也。
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最後の写真は、フォージェールとは違うのですが、すぐ近くのシャトー・ド・プルサック(Château de Pressac)。サンテミリオンのグランクリュで、近代建築のフォージェールとは対極の伝統的な「お城」。ここでは、DIEMMEの閉鎖式メンブランプレス(オレンジ色の機械)を使っていました。(CMになりますが、DIEMMEはメンブランプレスのほかに除梗破砕機も制作しています。21世紀にはいって以降、日本における除梗破砕機のシェアは、DIEMME・きた産業がトップです。)
代表取締役 喜多常夫
「パッケージ資材をご採用いただいた新製品」(きた産業からキャップ、びん、ラベルなどをご採用いただいた新製品)、または、「設備をご採用いただいた新製品」(きた産業から納入させていただいた充填設備や製造設備による新製品)をご紹介します。
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l 岡山県「辻本店」様
l 「梅酒夢真蔵」(500ml)
l 純米酒ベースの梅酒。
l キャップをご採用いただきました。
l 宮崎県「都城ワイン」様
l 「2010都城ワイナリー新酒」(720ml)
l 新ワイナリーOPEN記念ワイン。
l ラベルをご採用いただきました。
l 鳥取県「稲田本店」様
l 「完熟梅辛淡麗純米酒百花魁」(180ml)
l ラベルをご採用いただきました。
l 石川県「福光屋」様
l 「酒炭酸」(200ml)
l 純米、長期熟成酒(5年以上)使用した発泡性清酒。
l ガラスびん、キャップをご採用いただきました
2泊3日の駆け足で、雪の新潟と福島に出張しました。年の初めのご挨拶をかね、清酒メーカーを中心に回らせていただいたもの。(日程の都合で回りきれないお得意先が多かったこと、失礼の段お詫びいたします。)
数年ぶりの新潟訪問と、十数年ぶりの福島訪問は、「縮小市場の中でも品質の設備投資を怠らないお蔵」、「グローバル市場に積極的な若い蔵元」、「スパークリングや和リキュールの話題」など、活力や底力を感じるものでしたが、今回は仕事ではなく「雪」をご紹介します。
今年の日本海側の連日の雪は、テレビでもよく報道されるところ。これは新潟県の阿賀町津川。道路は除雪してあるけれど、屋根の上の雪は1mくらい。
津川から福島県の会津若松へ列車で移動。「JR磐越西線」というローカル線をご存知ですか? 1時間40分ほどの旅。大雪の中、津川駅から列車に乗るのはわずか4人。
磐越西線は単線。乗り降りする人とてない「上下列車すれ違い駅」にて。反対行きの列車も乗客は僅か。
今回、特に雪深かったのは福島の榮川酒造さんの磐梯蔵。磐梯山の観光道路「磐梯ゴールドライン」沿いにある。ちょうどうまく除雪車が来ていて、道を確保。
道沿いの家の「つらら」は、1mを優に超す。
ようやく榮川酒造・磐梯蔵へ到着。一面真っ白。車は四輪駆動です。
なお、雪のないときの写真はこれをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/e/dd871836bea7afc60c08c6ac1f509de2
こちらは磐梯蔵に隣接する直売店の「ゆっ蔵」。屋根の雪の厚さもさることながら、周り一面、雪、雪、雪。
新潟と福島の蔵元の活力と同時に、雪国の大変さを痛感させられた出張でした。
代表取締役 喜多常夫
昨年末、イタリアのトスカーナと、フランスのボルドーに出張したのに合わせて、いくつかワイナリーを見てきました。今回から3回連続ブログで、ワイン銘醸地から最新のワイン設備事情をご紹介します。
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<世界でここだけ?!>x2 +<注目!>x3 +<これは何?>x2
「トスカーナでアイドル日が1日とれるんだけど、ワイン醸造設備で参考になるところはないかな?」とイタリアのワイン機械取引先に尋ねたところ、「遠いけど、モンタルチーノのバンフィ」、と奨められました。モンタルチーノは、キアンティ、モンテプルチアーノと並ぶ、「トスカーナDOCG」御三家の一つ。(DOCG=イタリアワインの統制保証原産地呼称)
地図で見ると鉄道でバンフィに行くのはちょっと難しそう。フィレンツェから車で向かう。2時間くらい南に走るとモンタルチーノ、という丘の上の小さな町に着く。これはその町にあった(赤い点)。「DOCGの数はこれ以上増えない」ルールだそう。
<世界でここだけ?!(その1)>
モンタルチーノの町からさらに15分ほど走ったところに、目的地「バンフィ(Castello Banfi)」があった。醸造所でまず驚かされたのは、オリジナルで作らせたというこんな変わり種タンクは世界でここだけではないか。「両者のいいところを活かした」とのことで、中間部分がオークバット(オーク製のタンクのこと)、上下が温度調整機能付きステンレス・ジャケット・タンク。オークバット内に蛇管を通したり、ステンタンク内にオーク板を沈めるよりは良いと思うけれど、実際に作ってしまうか?!と驚きました。天井部には、タンクの移動やメンテを行うためのクレーンが設置されているのに注意。オークバット部分はボルト止めで、ある年限で交換を予定しているそうです。
<注目!(その1)>
ずらりと並ぶ「オーク&ステンレス・タンク」は床に設置されているように見えますが実はプラットホーム。実はその下には「もう1個のステンレス・タンク」があって(すなわち、「ステンレス・タンク」の上に「オーク&ステンレス・タンク」が乗っている2階建て)、醗酵が終わったワインはポンプを使わず「重力式(gravity)」で下のタンクに移す。いまや、「重力式は、新規ワイナリー設計の前提条件」であるのを再確認。
<注目!(その2)>
そして、その下部のタンクの間にレールが設置してあって、「DIEMME(ディエメ)」のメンブランプレスが列車のように移動できるよう設置されています。バンフィのプレスはこのほか、DIMMEが4~5台、ブーハーが1台という比率。DIEMMEの信頼度の高さを物語ります。
パイプの向こうに、ズラリと並ぶDIMME。CMになりますが、当社が日本代理店をしているDIEMMEは、ブーハー・ヴァスランに次ぎメンブランプレスで世界2位のシェア。イタリア、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、いくつかの主要ワイン生産国ではトップシェアです。
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<世界でここだけ?!(その2)>
世界でここだけ?!、と驚いたのは「オーク&ステンレス・タンク」ばかりではありません。もっと驚いたのは、「自動選果システム」主要3機種を2010年に一気に導入(!)して、比較しながら使っていたこと。どれも非常に高価だし、短い収穫期間に同時に3つを使いこなす人材と人数も必要。「3機種一気導入」、なんてことをしている(できる)ワイナリーは、世界でここだけではないか?
まず1つ目は、「ペレンク(Pellenc)」の画像処理・自動選果システム。写真からわかる通り、「房の状態」で人手による選果を行った後、除梗機を通して、粒がペレンクの機械に入る。
2つ目は、「ブーハー・ヴァスラン」の画像処理・自動選果システム。ペレンクも同じだけれど、縦長の板のような部分の下で、粒を空中に放出し、カメラで認識した不良果実をエアで吹き飛ばす。
3つ目は、「アモス」の自動選果システム。液に浮かせて比重で選果を行う、という独特のシステム。
<注目!(その3)>
で、3機種のどれが一番いいのか? 案内してくれたコンサルタント氏とワインメーカー氏によれば、「ペレンクがいい」とのこと。日本には、ペレンクのワイン機器は果樹用カッター以外はほとんど入っていないと思いますが、なかなかポテンシャルのある機械のように見えました。(ペレンクの設備にご興味のある方は、ご照会ください。資料やDVDがあります。)
非常にオープンなワイナリーで端から端まで見せてもらいました。以上で紹介したタンクや自動選果の他にも、興味深い醸造設備がいくつかありましたが、ここではあと一つだけ、写真で紹介しておきます。
<これは何?(その1)>
これは何か想像できますか?除梗破砕機の近くに設置してありました。
いままでイタリアで見たワイナリーでは、フランチャコルタの「カデルボスコ」の設備が飛びぬけて凄かったけれど、バンフィはカデルボスコに勝るとも劣らない設備でした。
バンフィでは、高級ワインの品質もさることながら、高価ではない価格帯のものの品質がとても高いことに感銘を受けました。ワイン設備がワイン品質に果たしている役割は極めて大きいと思います。
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<これは何?(その2)>
バンフィとは違う場所なのですが、最後に、トスカーナからの珍しい写真をもう1枚。これは何かわかりますか? 「カステッロ・ディ・ポミーノ(Castello di Pomino)」というワイナリーで撮影したもの。(Frescobaldiという大手の傘下。フィレンツェの東、30分ほどにある。ポミーノは、トスカーナ最小のDOC。)
正解:「サンジョヴェーゼ、ピノ・ネロ、シャルドネを、屋内で陰干ししている」、の図。甘みを凝縮して、Vinsanto(ヴィンサント)という、トスカーナ名物の甘いワインを作る。しばしば、ビスケットを浸して食べるのだけれど、ワイン好きで甘党には、これがなかなかいける。
代表取締役 喜多常夫