「ASEV Japan 日本ブドウ・ワイン学会・西日本地域 第一回研究会」が、5月22日に京都大学・農学部で開催されました。ワインの学会、研究会というと、どうしても主産地の山梨、あるいは東京が中心。西日本という地域に根差した学会があってもいい時期ではないか、という趣旨。大学研究者、ワイン生産者、また関係企業の方など、予想以上に多くの方々が集まられていて驚きました。
「日本ブドウ・ワイン学会西日本支部創設に向けて」と題した基調講演をされる、京都大学農学部の小田教授。
小田先生が西日本支部創設の音頭を取られました。ご専門の社会科学的・農業経済的切り口のお話、またUCデーヴィスでのワイン研修体験のお話のほか、自然科学分野についても、「音とにおいの相関」「細胞数を増やしてやれば」「実験室でできなくても現場では」などなど、「勝手に思ってるんですが」と注釈されながら示唆に富んだお話でした。
「倍数化技術、台木や野生ブドウへの利用」についての講演される、京都府立大学、生命環境学部の本杉准教授。
写真は、フィロキセラがブドウの根に針をさしている写真。単為生殖と有性生殖を繰り返す、フィロキセラの大変奇妙な生態は読みかじったことがありますが、こうやって針をさすことや、日本に今でも結構いることは不勉強で知りませんでした。(ワイン業界以外の方のために説明すると、フィロキセラとはブドウ樹の大敵の昆虫で、歴史的に世界で何度かワイン産業を壊滅させた。)
「我が社の栽培品種とワイン造り」について講演される丹波ワインの末田さん。
栽培しているブドウ品種を次々スライドで紹介されましたが、その数はなんと約40種!! 丹波ワインさんは日本一多くの品種を作られているワイナリーではないでしょうか!? 写真はピノノワールとそのクローン番号ですが、クローンによる差などにも言及され、大変勉強になりました。本杉先生の倍数化台木(4倍体は根が短いので水分抑制となる)のブドウの試験栽培も行われているそうです。
いまや消費者視点こそビジネスの基本といわれます。しかし、(小生自動車好きなのでワインのたとえ話でなくて恐縮ですが)英国車ミニやフランスのシトロエン2CVは、マーケッターの意見でなく、設計者の意思を押しとおして作られた異形の製品だった、それゆえ長年愛されロングセラーとなった、と言われます。工業製品でさえ、本当にヒットする製品はマーケットリサーチの産物でない場合も多い。多数のブドウ品種を栽培している意味や消費者ニーズに関する質問がありましたが、丹波ワインさんのスタイルをみていて私はなんとなくそんなことを連想しました。
さて、研究会が終わって懇親会。これは、僭越ながら乾杯の音頭をとる筆者。
参加者の皆さんが持参された西日本のワインは次のごとし。(ワイン関係者でもご存じの方が少ないのではないかと思う銘柄もあります!)
丹波ワイン
カタシモワイン
天橋立ワイン
スタイルワイナリー(小林康志さん)
仲村ワイン工房
飛鳥ワイン
ヒトミワイン
琵琶湖ワイン(太田酒造)
神戸ワイン
北条ワイン、など
因みに私が持参したワイン(下の写真)は、西日本ではないのですが、北海道の月浦ワイン、ミュラートゥルガウ2007。ジャパンワインコンペティション入賞だけあって、皆さんに好評でした。
喜多常夫(代表取締役)