きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

ボルドーでシャトー見学(右岸編)

2017年01月18日 09時17分31秒 | Weblog

前回ブログ「ボルドーでシャトー見学(左岸編)」に続き「右岸編」、昨年11月末に訪問した3つのシャトーをご紹介させて頂きます。


「シャトー・デギュイユ」
コート・ド・カスティヨン地区のシャトー。標高100mを超える高台で、日照が十分で水はけが良いというロケーション。加えて、栽培葡萄がメルロー主体ということもあり、長野県塩尻地区のワイナリーと共通点を感じました。


タンクは木製・コンクリート製・ステンレス製の3種類。主力の木製タンクは醸造所の地下に円周状に配置され、タンク上部の蓋が醸造所の床の高さと合わせてあります。



エレベータの後ろに2基見えるのは、ニューマティックの「パンチダウン」(タック上部に浮かんだ葡萄を上からかき混ぜる装置)。醸造所床面をタンクの上まで移動させて使います。ブドウの投入も同じ方法。斜面のあるロケーションをうまく利用してグラビィティー方式になっています。



樽貯蔵庫は古い木材を組んでつくられた屋根が印象的で、シャトーの歴史を感じます。木樽は内面のトースト加工を抑えたものを多く使用し、熟成期間も短くすることで、メルローの果実味を大切にしたワインづくりを目指しているとのことでした。



試飲したのは2007年のシャトー・デギュイユ(左)と、2013年のセカンドラベル(右)。ファーストのフランス国内での販売売価は15€程度とのことで、コストパフォーマンスの高さに驚かされました。




「シャトー・パヴィ」
サンテミリオン地区の有名シャトー。2012年のサンテミリオン格付け見直しで、「プルミエ・グランクリュ・クラッセ・A」に昇格しました。数あるプルミエ・グランクリュ・クラッセのなかでも「A」がつくのが最高位です。オーナーは元々パリでスーパーマーケットを経営していたペルス夫妻で、事業の一部を売却した資金で設備や建物に相当額の投資を行い、トップシャトーの仲間入りを果たしました。


外観はまるで高級ホテルのようでした。投資額の大きさがうかがえます。誇らしげに「A」の文字が彫り込んであるのが見えます。



ペルス夫妻がオーナーになって、大容量のコンクリート製タンクから、小容量(80HL)のフレンチオーク製タンク20基へと変更されました。本当に使用しているのか?と思わされるくらい床が清潔でした。



樽の貯蔵スペースも非常に清潔。ファーストラベルの熟成期間は24か月以上としており、先に紹介した「シャトー・デギュイユ」とは対照的に、果実のフレッシュさよりも複雑性や奥行きに重きをおいたワインづくりを目指しています。



よく見てもらうと、キャップシュールとびんの境目にICタグがつけられているのが見えます。情報管理と、イミテーション防止の目的です。



試飲をしたのは2006年のヴィンテージ。地元のワインショップでも200€~300€台と、一般の人には容易に手が出せない価格になっています。



シャトーの周りを取り囲むヴィンヤードはこんな感じ。とてもきれいに手入れされている印象でした。なお、時期は11月末です。




「シャトー・ボールガール」
ポムロール地区のシャトー。すぐ近くにサンテミリオン地区との境界線があり、ペトリュスなどの有名シャトーが集まる「カトゥーソ台地」と呼ばれる絶好のテロワールに畑を所有しています。


葡萄処理の部屋。Pellenc社の「除梗機」(右:回転式ではなく側面からはたく方式)と「画像選果装置」が並んでおかれていました。



驚かされたのは、大型テレビサイスのタッチスクリーンによる、タンクの制御システム。スマホのように、指(手のひら)タッチで画面がスライドします。ほぼ全ての工程を一元管理しています。



タンクは独特の形のコンクリート製。驚いたことにタンク壁面内に温調のパイプを埋め込んでいるとのこと。(通常はタンク内にステンレスの放熱板や蛇管をいれる。) コンピューター制御による徹底した温度管理には、木製よりもコンクリート製の方が向いているとのことでした。



これは、グラビティ―方式で葡萄をタンクに落とすホッパー。写真では床面に置いてありますが、葡萄を満たした後、天井のホイストでタンク上部の通路まで持ち上げて使います。



樽貯蔵庫には空調システムが備えられ、、レンガを利用して湿度の調整をしているとのことでした。



4つのヴィンテージを試飲させて頂きました。ちなみにミニボトル3本に蓋をしているのは、当社が日本での販売代理店を担わせて頂いている「ヴィノロック」というガラス栓です。製品自体には天然コルクが使われていますが、今回の試飲のように一度開封したワインに蓋をするのに、ヴィノロックが重宝されています。



今後10年のうちに半数近い葡萄(約9ヘクタール分)を植え替えるとのことでした。より良い品質を求める新しいオーナーの方針によるものですが、非常に大きな決断だと思います。見学をさせて頂いたご縁ですので、シャトー・ボールガールの今後に注目したいと思います。


今回のフランス出張では、Vinitechでワイン関連の資材や機械を学び、シャトー見学を通じてワインづくりに対するこだわりや各シャトーの戦略を学ぶことができました。この貴重な経験を糧にして、今後ますます日本のワインメーカー様やワイン関連のお得意先様のお役に立てるよう、努めてまいりたいと思います。



東京営業部 喜多郁森


ボルドーでシャトー見学(左岸編)

2017年01月05日 14時35分36秒 | Weblog

VINITECH展示会にあわせて訪れたシャトーについて、喜多郁森(ふみもり)よりご紹介させて頂きます。今回は「左岸編」で、なんと「5大シャトー」のうち、3つを訪問しました。


「シャトー・オー・ブリオン」
ボルドー市街から車を走らせること約10分で到着。都市部からの近さゆえに、他地区の畑よりも1~2度平均気温が高く、ボルドーで最も早くブドウの収穫を行うシャトーの一つだそうです。シャトーの入り口にて、当社社員4人と、今回ご一緒したお得意先様3人です。



ボルドー最古のシャトー、オー・ブリオンは、ボルドーで最も早く1970年代から「ステンレスタンク」を採用したそうです。当時は批判的な意見が大勢を占め、「一級格付けを見直すべき」という声もあったようですが、今ではステンレスタンクがボルドーでも主流。オー・ブリオンではいまもそのタンクが使われています。
 


タンクの構造に関する質問など、私たちの質問があまりに専門的でガイドさんが即答できず、シャトー内の詳しい人に携帯電話で聞いてから答えて頂く、という場面もしばしばありました。
 


見学を終え、いよいよ試飲! 2007年ビンテージのオー・ブリオン(右)とラ・ミッション・オー・ブリオン(左)。後者は向かいにある醸造所のワインで、現在は同じスタッフが同じ方法で仕込んでいるとのことです。オー・ブリオンはご存知の通り、典型的なボルドータイプの壜ではなく、独特のなで肩壜を採用していますが、1958年ビンテージからだそうです。



打栓後10年経過しているのに、コルクはこんなにきれいです。コルク栓の価格も、ガイドさんが即答できなかった我々の質問の一つ。電話で担当者に聞いてくれたのですが、なんと1個1.5~2ユーロ(190~250円!)だそうです。




「シャトー・マルゴー」
5大シャトーの中では日本で最も人気が高く、有名なのではないでしょうか。シャトーに続く専用の並木道の先にある正門は高さ5メートル程。いかにも格式が高い。



最近、新しく醸造所を増設しています。これはその入り口。中は小型のステンレスタンクが並んでいましたが、マンホールの位置が高いなど、構造が一般的なものと違いました。



こちらは古い醸造所内。やはり目を引くのは、タンクです。葡萄の出来具合や畑の収穫量に対し、最適な対応がとれるよう様々な容量の木製とステンレス製のタンクを備えています。この種類豊富なタンクによって商品数を増やすことができ、16年からはサードラベルまで造ることが可能になったようです。



印象的だったのは、「樽工房」の存在。オー・ブリオンにも樽工房がある(今回は見学できず)そうですが、そちらは樽会社スガモロの出張アトリエ。マルゴーは社内に樽職人を抱えているそうです。



20万本のシャトー・マルゴーをビンテージごとにストックしている地下貯蔵室も近年つくられたもの。試飲室から見ることができるようになっているのですが、ここに眠っているワインの価値は総額いくらになるのでしょうか・・・。



試飲したのは2004年のマルゴー(右)と、2009年のセカンドラベル(左)です。私、喜多郁森(ワイン勉強中)も、日常ではとても手が出せないマルゴーを存分に堪能させて頂きました。




「シャトー・ラフィット・ロートシルト」
筒は、ラフィットの畑の地面を縦方向に縮小した断面模型。土壌の説明からスタートしたことが印象的でした。ポイヤック村の中でも最も北に位置しており、石灰質を基盤とする砂利質の土壌は、メドック地区の中でも最上位と言われています。



タンクはステンレス製のほか、コンクリート製のものも備えられていました。コンクリートタンクは、温度緩衝性や酸素透過性のほか、四角さゆえスペース効率が良い、という利点が挙げられます。



地下の貯蔵庫では、円を描くように樽が保管されていました。長方形のスペースに並べて保管をするよりも、ラッキングや澱引きでの移動距離を約30%削減できるとのこと。とても神秘的な雰囲気で、年2回クラシックコンサートも行われるそうです。



試飲もこの地下貯蔵庫で行いました。今回試飲をしたのは、2007年ビンテージのラフィット・ロートシルト。



初めてのボルドー訪問で、5大シャトーの3つを見学出来るという幸運に恵まれました。いずれのシャトーも固有の歴史、特徴、こだわりがあり、妥協がないまさにトップシャトーだと感じました。「ボルドーでシャトー見学(右岸編)」に続きます。



東京営業部 喜多郁森