きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

イタリア・ワイン醸造所訪問記:その1<フランチャコルタ>

2013年11月26日 13時21分15秒 | Weblog

前回のブログでご紹介したとおりSIMEI(ワイン設備展示会)に行ったのですが、その機会にミラノから東に80kmほどのところにあるびん内二次発酵スパークリングワインの銘醸地、フランチャコルタに行き、3社のワイナリーを訪問してきました。



SIMEIの機会を利用してフランチャコルタを訪ねるのは、2005年、2011年に続きこれが3回目です。現在のようなびん内二次発酵スパークリングワイン・フランチャコルタの産地として確立されたのは1970年代からという新しい銘醸地。年々知名度も上がり、特にイタリア国内ではその地位はシャンパーニュに並ぶ勢い。イタリア国外ではまだまだシャンパーニュブランドにはかなわないようですが、最近めきめき販売量を伸ばしているプロセッコと比べると、やはり一つ格上とみなされていると思います。日本でも人気が出てきていますね。


いわば典型的なフランチャコルタ以外に個性のある生産者も色々と現れているようですが、今回の訪問では過去一度訪問したことのあるワイナリーを再訪し、いわば定点観測的に今のフランチャコルタを覗いてきました。


<カデルボスコ>
一社目は名実共にフランチャルコタを代表するワイナリー、カデルボスコです。フランチャコルタの中心地とも言うべきエルブスコ村にある同ワイナリーには2005年に訪問し、その設備の充実度に驚かされました。実は2011年にも訪問希望を伝えていたのですが工場改修と重なり断念、今回念願の再訪となりました。



「フランチャコルタ」としての生産量は130万本。ベッラビスタと並びフランチャコルタのトップブランドとして君臨しています。醸造所の前に広がる自社畑は10000本/haの密植、収量も大きく制限して高い原料品質を維持しています。ブドウ自体は点在する畑から集めてきますので、いつでもいい条件で処理できるように大きな冷蔵倉庫(写真の赤いシャッター)を備えています。



ブドウ処理エリアでは2008年に導入した(「選果システム」ならぬ)「洗果システム」が一際異彩を放っています。房の状態で選果された後、ブドウは2段階の水槽の中で洗浄され、さらに道中でブロワーによって水気を切られプレスに向かう格好です。これにより、汚れや不純物を除去できるので、結果的に亜硫酸使用量を低減できるとのこと。技術的には最先端というようなものではないのでしょうが、この規模で洗果システムを導入するというのは、やはり強烈な品質へのこだわりと独創性を感じざるを得ません。



セラー入り口のサイのオブジェは相変わらずすごい存在感。



写真は、ポンプで果汁やワインを送らなくてもいいようにするためのエレベーター式のタンク(「フライングタンク」と呼んでいました)。300klの超巨大アッサンブラージュ用タンクも以前のまま。やはり同社の醸造の根幹を担うシステムなのでしょう。



こだわりは充填工程にも随所に。コルクの天地を画像で解析していいほうの面を下にして供給する装置や、充填後のヘッドスペースに窒素ガスを吹き込んで打栓する装置など、自社がイニシアティブを取って開発した装置が多数あり、品質向上のための機械設備へのこだわり方は他の追随を許さないものがあります。また、ワイナリー見学者向けに製造工程をまとめたわかりやすいビデオも用意されており、地域のトップブランドとしてツーリズムの発展にも力を注いでいるように感じられました


<カヴァッレーリ>
二社目は同じくエルブスコ村にあるカヴァッレーリ社。こちらも2005年に続く二度目の訪問です。カデルボスコとは対照的に家族経営の小規模ワイナリーで、19世紀から同地でブドウ畑を所有する由緒正しい家系。前回は女性当主に案内いただきましたが、今回はそのお嬢さんにアテンドいただきました。年間15万本程度ながら、イタリアの代表的なワインガイドブックであるガンベロロッソ誌では毎年最高評価であるトレビッキエーリ(3つグラス)を獲得しています(もちろん、カデルボスコも常連です)。



醸造設備はごくオーソドックスなもので、日本のワイナリーの皆さんにとっても違和感がないように思います。ジロパレットは使用せず、未だに100%ピュピトルでおり下げを行なう奇特(?)なワイナリー。「手作業でなければ」ということではなく、機械の設置場所や設備投資の優先順序の問題とのこと。ちなみに、セラー内には当社が取り扱っているラガッツィーニ社の真新しいチューブポンプが鎮座。保守的な当主を説得して、ようやく今年購入してもらったそうです。デゴルジュマンやドザージュの工程は自社設備を持たず、移動式の業者にやってもらっているとのこと。この規模のワイナリーの場合はそのパターンが多いようです。



日本でも人気の出ているカヴァッレーリのフランチャコルタ。ロゼとスティルワイン以外は基本的にはシャルドネ100%。私には共通して微かなワサビの香りが感じられ、フルーティな中にも独特な刺激感のある興味深いフランチャコルタでした。なお、手に持っているのは普通の「シャンパンコルク」と、一部の製品に使用している「接液面にシリコン・ディスクの付いたシャンパンコルク」。



<フェルゲッティーナ>
最後は2011年に訪問したフェルゲッティーナ。元々はトップブランドの一方であるベッラビスタで醸造責任者をしていたガッティ氏が独立して設立したワイナリーで、その品質には定評があります。40万本程度の中堅ワイナリーですが、前述の二社同様ガンベロロッソのトレビッキエーリの常連で、2012年度版では年間最優秀発泡ワイン生産者にも選出されています。シャンパーニュと同じタイプの、直径に比べて高さの低いバスケットプレス(写真)を使用。



前回訪問時にはちょうどジロパレットのテストを行なっているところで、その後ジロパレットへの移行を進めています。クリーンでフルーティなフランチャコルタは同社の真骨頂で、日本のマーケットでもどんどん伸びているのがうなずけます。今回テイスティングした中でも2008年の「サテン」(圧力が若干低い目の設定の製品)は出色の出来でした。



ミラノから車で1時間足らずのフランチャコルタ地区は、ミラネーゼにとっても気楽に行ける銘醸地であり、北に広がるイゼオ湖(写真)と相まって観光地化への取り組みが進んできています。日本人ツーリストのミラノからの日帰りツアーも増えているそうで、ブランドとしてのフランチャコルタは順調に伸びているようです。ただシャンパーニュと比べるとまだまだかなわないのは事実で、世界中に高付加価値製品を輸出し、また世界中からツーリストを受け入れるには、まだ道のり半ばというところでしょうか。シャンパーニュのコピーではないフランチャコルタとしてのオリジナリティーを、その風光明媚な周辺地域と組み合わせてアピールしていけば、ますます発展しそうに思います。



印象的なことは、トップブランドであるカデルボスコはともかく、その他の二社で次世代への引継ぎが非常にいい形で行なわれていること、またそれら実力派ワイナリーの頑張りを背景に、いわゆるテロワールが大きく異なるような地域でも熱心に造りに励む生産者が増え、フランチャルコタ内でも多様性が生まれてきていることです。日本のワイナリーの皆さんにとっても参考に出来る点が色々とあるような気がします。



渡邊拓也(企画開発グループ)


ワールドパートナーとの打ち合わせ@ミラノの展示会

2013年11月15日 15時26分27秒 | Weblog

11月12日から、ワイン関連産業の世界2大展示会の一つ、「SIMEI(シメイ)」に来ています。場所はイタリア・ミラノ、出張者は喜多、渡邊、今井。2年に1回の開催で、今年は第25回、50周年となります。



きた産業は、ワインやビールなどの分野で海外からの輸入機器を多く販売しています。今回は、SIMEIに出展している海外パートナー企業をご紹介します。


イタリアの「カダルペ」社。ワインタンクやフィルターなどを生産。ステンレス加工の品質がとても高い。日本でもワイン用だけでなく梅酒用など、多くの納入実績があります。



イタリアの「ディエメ」社。ワインのメンブランプレスや除梗破砕機の世界トップメーカーの一つ。きた産業にとって、ワイン分野設備の旗艦サプライヤーです。



ベルギーの「ノマコルク」社。合成コルクの圧倒的世界トップ。年間20億個以上の生産数は、天然コルクやスクリューキャップを含めたワイン栓全体でみても、ポルトガルのアモリム社につぐシェア。



ドイツの「クライヤー」社。当社は主に冷却・加温装置を輸入していますが、酵母培養装置やヴィンヤードの気象観測装置など、多彩な機器を生産。



フランスの「エノコンセプト」社。びん内二次醗酵のスパークリングのためのジロパレットの最大手。右から二人目のマキシムさんはエノログの資格を持つ。



フランスの「ヴァランタン」社。びん内二次醗酵スパークリングのためのデゴルジュマンやドサージュの機械、コルク打栓やワイヤリングの機械を生産。左端は中国国籍のリンさん。アジア系社員のいる会社は珍しい。



イタリアの「ラガツィーニ」社。ワイン分野のチューブ・ポンプ(パーリスタリティック・ポンプ)では、信頼性や実績で圧倒的トップブランド。日本でもすでに10台以上ご採用いただいています。写真の超巨大モデルは鉱業用や建設用も意識した新製品。



チェコの「ヴィノロック」。「ヴィノロック」とはワインびんのためのガラス栓。もとはドイツ・アルコア社が販売していたものですが、数年前から実際の生産を担当していたチェコのガラス大手に販売が移っています。清酒・焼酎用の「サケ・ヴィノロック」プロジェクトを進行中。



イタリアの「コーエム」社。小~中規模のびん詰めラインが得意。ワイン分野だけでなく、ケミカルや化粧品分野にも強い。



アメリカの「TCW」社のカビネス社長と、イタリアの「モーリ」社のブースで。TCW社からはアメリカ製ローブポンプや半自動リンサーなどを、モーリからは半自動の充填機や小型のバスケットプレスなどを、輸入しています。



ほかにもまだ取引先が多くあるのですが、割愛させてもらいます。この10年ほどでこれほど多くの海外調達先が持てたことは、日本のお客様のおかげだと、心から感謝しています。



喜多常夫(代表取締役)


ASEV 日本ブドウ・ワイン学会2013 @山梨大学

2013年11月11日 11時40分32秒 | Weblog

11月9日、日本ブドウ・ワイン学会の年次大会が開催されました。場所は日本のワイン研究のメッカ、山梨大学です。



きた産業は学会の産業会員として毎年出展しており、今年も機械やパネルなどを展示させていただきました。出展担当は喜多、渡邊、今井の3名です。



今年は、フランス製の「ニネット」という半自動ラベラー機を持ち込みました。びんを置くだけで自動的に表と裏のタックラベルを貼り付けます。



これは、「サタケ」(精米機最大手、色彩選別機でも多くの実績を持つ)と検討中の「ブドウ自動選果システム」。PCでビデオを見ていただいたほか、パネル展示を行いました。



多くのワイン関係者の皆さんに当社の展示を見ていただきました。ありがとうございました。



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学会の様子もご紹介しておきます。これは午前の「ポスターセッション」の様子。熱心に質問される方がとても多かった。



そして午後が「オーラル(口頭発表)セッション」。「発表スライドの写真は撮らないように」とのことだったので、写真紹介はしませんが、酒類総合研究所の後藤奈美さんの「甲州のSNPs解析及び葉緑体DNA解析による分類学的検討」という発表の注目度がとても高く、一般誌の取材記者やカメラマンが大勢来ていました。発表によれば『「甲州」は中国の「v. davidii(中国名:棘葡萄)」という品種と「欧州系ヴィニフェラ種」の自然交配種。孫に当たるのでヴィニフェラ種の血統がほぼ3/4』なのだそうです。



オーラルセッションの写真がないので、学会会場の雰囲気をお伝えするために前日のUC Davisのボールトン教授の記念講演の写真を掲載しておきます。スクリーンの写真はUC Davisのポジティブ・エミッション(ゼロ・エミッションを通り越して、電気などが余剰になる! 水も雨水だけで10回くらいリユースするそう!!)ワイナリー。みなさん、熱心に聞いておられました。



たくさんの情報をいただき、また多くの方とお話しできて、実り多い日本ブドウ・ワイン学会でした。



喜多常夫(代表取締役)